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リョウとユキ
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シンが階段から突き落され、目を覚ますまでのリョウとユキのお話です。
これがあった方が、リョウの心がもう少し分かりやすいかと思い書きました。
番外編に行く前に読んで頂けたら幸いです。
※※※
蓮見が怒った様に教室を飛び出して行き、俺はやれやれとその場に座り込んだ。
あいつからいつも感じる、ネットリとした視線……彼にその目で見つめられる度に、俺は気分が悪くなる。
はっきりとした理由は分からないが……心の中から、自然と嫌悪感の様なものが湧いて来るのだ。
ただの転校生……そしてただのクラスメイトに、何故ここまでそう感じるのだろう──。
そして慎は、いつも俺とそんな蓮見の距離が近くなる事を怯えていた。
だから俺は、極力蓮見との接点を持とうとしなかったし、いくら蓮見が「ユキ」と名前で呼んでと強請ってきても、頑なに断り続け……今まで一貫して、彼の事を名字でしか呼ばなかった。
「なぁ慎……俺がどれだけお前を好きか……どうすればその全部を、お前に伝える事が出来るんだろうな──?」
慎とは、最近まともに話せてない。
だから今日は、一緒に帰りたくて教室で待ってたんだけど……まさか、あいつに捕まるとはな──。
教室には、まだ慎の鞄が置いてある。
そろそろ、戻って来るとは思うけど……。
すると、何やら廊下の方が騒がしい事に俺は気付いた。
何だ……喧嘩か?
って、あの声は……さっき出て行った蓮見と……それから、慎だ──!
慎は、痛い、離してと、悲痛な声を上げていた。
蓮見……あいつ、慎に一体何を──!?
※※※
急いで教室を飛び出し廊下を進めば……そこには、慎の胸ぐらを掴み上げる蓮見がいた。
「し、慎!」
あいつ、何て事を──!
慎を傷つけるんなんて……蓮見……もう二度目はないって、俺はそう言ったよな──!?
ん……?
あ、れ……二度目って何だ?
その一度目は……一体、何だった──?
あぁ……頭の中で、色んな映像が流れて……これは何だ?
こんな事、俺は知らない。
これは、一体誰の記憶だ──!?
そしてそんな蓮見に、慎は目に涙を滲ませこう言った。
『ごめん……なさ、い……りょ、う。』
だが蓮見は恐ろしい顔で……何の躊躇もなく、慎を階段下に突き落としたのだ。
※※※
「し、シン──!」
俺は必死に手を伸ばしたが……その手は、彼に届く事はなかった。
慎……シン……!
俺は……俺は、また失うのか?
俺はまた、お前を──!
真っ青になり震える俺を見て、蓮見はニコリと笑いこう言った。
「来てくれたんだ、亮……ううん、リョウ。これで邪魔者は居なくなったよ?だから、また俺を愛してね!」
その笑顔と言葉に、俺は何故自分がこんなにも彼を嫌悪するのか、ようやく理解した。
「あ……あ、ああぁぁ──!」
思い出した……全部、何もかもだ。
俺がここにいる理由、生まれてきた理由。
そしてあいつを……慎を、こんなにも愛する理由を──。
そうか……お前はまた、あいつを傷つけたんだな。
ここはもう、あの世界ではないのに。
ここは俺が、今度こそあいつを守り、そして愛したいと願った世界だ──!
※※※
「……俺がお前を愛するだって?ふざけた事を言うな、ユキ──!」
俺は縋りついて来るユキの手を払い除け、階段から落ちた慎……否、シンの元へ駆け寄った。
「な、何でだよ!何でそいつの所に行くの?リョウはあの世界でも、ドラマの中でも俺の恋人だったじゃない!だったら、この世界でも──」
「違う!この世界では、俺の愛する人はただ一人……ここに居るシンだけだ!」
「い、嫌だよ、そんなの……俺は認めないんだから──!」
ユキはその場に崩れ落ち号泣……その声を聞き、駆け付けた担任の教師により取り押さえられた。
そしてシンは……一番下まで落ちきる前に、偶然そこに居合わせた体育教師に受け止められ、大きな怪我を負わずに済んだ。
シンは念の為にと病院に運ばれ、そこでも医者に命に別状はないと言われたが……でも、何故か彼は目を覚ましてくれない。
医者は、恐らく精神的なショックではないかと話したが……頼む、シン──。
どうか目を覚ましてくれ──!
俺は、お前に言わなきゃならない事が沢山あるんだ。
あの世界で伝えられなかった事、そしてこの世界でこれからお前にしてやりたい事が、山ほどあるんだ。
「俺は、今度こそお前を失いたくない。俺は……慎としても、シンとしても……お前が好きだ、愛してるんだ。」
俺は、眠り続けるシンにその目覚めを乞うかの様に、そっとキスを落とした──。
これがあった方が、リョウの心がもう少し分かりやすいかと思い書きました。
番外編に行く前に読んで頂けたら幸いです。
※※※
蓮見が怒った様に教室を飛び出して行き、俺はやれやれとその場に座り込んだ。
あいつからいつも感じる、ネットリとした視線……彼にその目で見つめられる度に、俺は気分が悪くなる。
はっきりとした理由は分からないが……心の中から、自然と嫌悪感の様なものが湧いて来るのだ。
ただの転校生……そしてただのクラスメイトに、何故ここまでそう感じるのだろう──。
そして慎は、いつも俺とそんな蓮見の距離が近くなる事を怯えていた。
だから俺は、極力蓮見との接点を持とうとしなかったし、いくら蓮見が「ユキ」と名前で呼んでと強請ってきても、頑なに断り続け……今まで一貫して、彼の事を名字でしか呼ばなかった。
「なぁ慎……俺がどれだけお前を好きか……どうすればその全部を、お前に伝える事が出来るんだろうな──?」
慎とは、最近まともに話せてない。
だから今日は、一緒に帰りたくて教室で待ってたんだけど……まさか、あいつに捕まるとはな──。
教室には、まだ慎の鞄が置いてある。
そろそろ、戻って来るとは思うけど……。
すると、何やら廊下の方が騒がしい事に俺は気付いた。
何だ……喧嘩か?
って、あの声は……さっき出て行った蓮見と……それから、慎だ──!
慎は、痛い、離してと、悲痛な声を上げていた。
蓮見……あいつ、慎に一体何を──!?
※※※
急いで教室を飛び出し廊下を進めば……そこには、慎の胸ぐらを掴み上げる蓮見がいた。
「し、慎!」
あいつ、何て事を──!
慎を傷つけるんなんて……蓮見……もう二度目はないって、俺はそう言ったよな──!?
ん……?
あ、れ……二度目って何だ?
その一度目は……一体、何だった──?
あぁ……頭の中で、色んな映像が流れて……これは何だ?
こんな事、俺は知らない。
これは、一体誰の記憶だ──!?
そしてそんな蓮見に、慎は目に涙を滲ませこう言った。
『ごめん……なさ、い……りょ、う。』
だが蓮見は恐ろしい顔で……何の躊躇もなく、慎を階段下に突き落としたのだ。
※※※
「し、シン──!」
俺は必死に手を伸ばしたが……その手は、彼に届く事はなかった。
慎……シン……!
俺は……俺は、また失うのか?
俺はまた、お前を──!
真っ青になり震える俺を見て、蓮見はニコリと笑いこう言った。
「来てくれたんだ、亮……ううん、リョウ。これで邪魔者は居なくなったよ?だから、また俺を愛してね!」
その笑顔と言葉に、俺は何故自分がこんなにも彼を嫌悪するのか、ようやく理解した。
「あ……あ、ああぁぁ──!」
思い出した……全部、何もかもだ。
俺がここにいる理由、生まれてきた理由。
そしてあいつを……慎を、こんなにも愛する理由を──。
そうか……お前はまた、あいつを傷つけたんだな。
ここはもう、あの世界ではないのに。
ここは俺が、今度こそあいつを守り、そして愛したいと願った世界だ──!
※※※
「……俺がお前を愛するだって?ふざけた事を言うな、ユキ──!」
俺は縋りついて来るユキの手を払い除け、階段から落ちた慎……否、シンの元へ駆け寄った。
「な、何でだよ!何でそいつの所に行くの?リョウはあの世界でも、ドラマの中でも俺の恋人だったじゃない!だったら、この世界でも──」
「違う!この世界では、俺の愛する人はただ一人……ここに居るシンだけだ!」
「い、嫌だよ、そんなの……俺は認めないんだから──!」
ユキはその場に崩れ落ち号泣……その声を聞き、駆け付けた担任の教師により取り押さえられた。
そしてシンは……一番下まで落ちきる前に、偶然そこに居合わせた体育教師に受け止められ、大きな怪我を負わずに済んだ。
シンは念の為にと病院に運ばれ、そこでも医者に命に別状はないと言われたが……でも、何故か彼は目を覚ましてくれない。
医者は、恐らく精神的なショックではないかと話したが……頼む、シン──。
どうか目を覚ましてくれ──!
俺は、お前に言わなきゃならない事が沢山あるんだ。
あの世界で伝えられなかった事、そしてこの世界でこれからお前にしてやりたい事が、山ほどあるんだ。
「俺は、今度こそお前を失いたくない。俺は……慎としても、シンとしても……お前が好きだ、愛してるんだ。」
俺は、眠り続けるシンにその目覚めを乞うかの様に、そっとキスを落とした──。
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