失恋した上に嫌われ、死んでしまった俺は…目が覚めたら彼に愛される世界に居た。

17

　俺は、暗い闇の中に佇んでいた。

　俺……何でこんな所に、一人でいるんだろう？

　っていうか……「俺」って、何？
　自分の事が、よく分からない──。

　すると、遠くにぼんやりと光が見えた。

　よく分からないけど……とりあえず、行ってみようかな。

　俺は、その光に向かって歩いた──。

※※※

　ここは……病院の廊下？

　あ、誰かいる。

　男の人だ。
　何でこんなに泣いてるんだろう。
　誰か、大事な人を亡くした……とか？

『……何で俺を庇ったんだよ。お前を見限った俺をさ……どうして──！？』

　この人、優しいね。
　そんな見限られるような事をした悪い奴の為に、そんなに涙を流してさ──。

　すると場面が変わり……そこには、数人の女の子が集まっていた。

『わ、私たちが、あんな事に協力したせいじゃないよね？』

『違うよ、あれは事故なんでしょ？自殺だったら、まだしもさぁ……。』

　不安そうな顔で話す女の子たちに、さっきの男が詰め寄った。

『お前ら、あいつのファンだよな？協力ってなんだ？その話、詳しく聞かせろ！』

『えっと、その……彼が、あいつが邪魔だからって……それで、私たちに──』

　その剣幕に、女の子たちは何事かを必死に訴えた──。

　あぁ、また場面が変わっちゃった。

　あれ、この男は……さっきの男と違うな。
　この人は、可愛いらしい感じだ。

　あの男は、ワイルドでカッコ良い感じだったし……この二人、芸能人かモデルでもやってるのかな──？

『お前……自分のファンを利用して、何してんだ！あいつが不正してるって、ファンに教えて貰ったってお前は言ったけど……本当は、違ったんだな。ファンの子たちに何もかも聞いた。お前は繋がってたファンを利用し、後に証言者になるよう頼み……そうした上で、あいつが不正してた事にして、あいつを陥れようとした。お前……何でそんな馬鹿な事──！』　

『だって俺……本当は、あいつの事が大嫌いだったんだ！そしたら丁度、あの子たちもあいつの事嫌ってたし……。も、もういいじゃない！俺がそんな事してもしなくても、結果的にドラマは俺たちが結ばれる事になったんだし……ね？そもそもさ、あいつが死んだのは、俺のした事とは関係ない──』

「黙れ！確かにあれは事故だった……。でもその前に、お前のした事のせいで誤解した俺の態度が、あいつの心を殺した。俺は……結果的にあいつを二回も殺してしまったんだよ！なのにもう、あいつに謝る事も出来ない──！こんな事になって……もう、お前とは無理だ。あのドラマは、責任をもって最後まで出演するけど……その後は、NEXTは終わりだ。』

『そ、それって……解散って事！？っていうか、俺とは無理って……まさか俺と別れる気じゃないよね！？最近ろくに構ってくれなかった上に、そんな事言うなんて酷い！』

『酷いのはどっちだ！無理なんだよ……お前のそんな裏の顔を知ったら。もうとても、この先一緒にはやって行けない──。』

※※※

　そして二人は、公私共に別れる事になり……その後は、完全に縁を切ってしまった。

　あの可愛い男の人は、まだ未練があったみたいだけど……この人は、もう全く彼を見ていなかった。

　彼の心は、死んだその人に向いていたのだ──。

『俺……何であの時、お前の話を聞かなかったんだろう。俺たち、幼い頃からずっと一緒にいた幼馴染だったのに。責任感の強いお前がさ、そんな不正する訳ないって……冷静になって考えたら、ちゃんと分かったのに──。』

　ねぇ……そんなに悲しまないでよ。
　誰だってさ、間違える事はあるだろう？

　そんなに仲がいい人だったのなら、きっとその死んじゃった人は、あなたの事を怒ってないし恨んでもないよ──？