失恋した上に嫌われ、死んでしまった俺は…目が覚めたら彼に愛される世界に居た。

16

「い、痛い……幸君、離して！」

　俺の声を無視し、教室から少し離れた所まで連れて来た幸は、俺を睨みこう言った。

「盗み聞きするなんて、そんなの卑怯者のやる事だ！…あぁ、でも仕方ないよね。シンは、卑怯者だったもんね。相変わらずこの世界でも変わらないんだね。」

「な、に…？幸君、それって──。」

　俺は、笑みを浮かべ近づいて来る幸に恐ろしくなり、思わず後退りした。

　今……幸は、この世界って言った？

　もしかして、この幸って……あのユキ、なのか──？

　どういう事だ？
　ユキも俺と同じで、死んだ後ここに来たのか？
　
　それって、もしかして亮に愛されたくて？
　でも、あの世界でユキとリョウは幸せになったんじゃ──？

「俺ね……ずっとシンも、慎の事も嫌いだったんだ。だって……俺以外に、俺の大好きなリョウに大事にされる存在なんか要らない……邪魔なんだよ！」

　そう言って、幸は俺の胸ぐらを掴んできた。

「お前が死んだ後、大変だったんだから！リョウは自分のせいだってすごく落ち込んで、俺にろくに構ってくれなくなるし……俺の言葉ももう届かなくなっちゃうし……。最後は、シンが居なきゃもうNEXTはやってけない、解散しようとか言うんだよ！？おまけに、それを機に俺と別れるって──！お前のせいだ、お前が死んだから……！お前が、リョウの心まで持って行っちゃたんだよ──！」

「く、苦し……ユキ、離して──。」

「今度こそリョウと結ばれようって願って生まれ変わって来たら、このドラマの世界でさ……。シンは知らずに死んだけど、最後の台本はやっぱり俺と亮が結ばれる結末だったんだよ？だからこの世界に生まれて来れてラッキーって思ったのに……シン！何でお前までここに居るんだよ！？昔も今も……どこまで邪魔するんだよ、お前はさ──！」

※※※

　そう、だったんだ……。
　やっぱり俺はあの時死んでて、そしてここはドラマの中の世界で……俺はそこに生まれ変わった、転生者みたいなものだったんだ。

　そしてこの目の目に居る幸も……前世で一緒にアイドルやってたユキなんだな。
　
　あれ、じゃあリョウは……？
　リョウはどうなったんんだろう。

　リョウは、あの亮に生まれ変わってはいないの……？

　駄目だ、息がまともにできなくて……もう、考えられない──。

「お前みたいな邪魔者、さっさと消えちゃえ！ここは、俺とリョウが愛し合う世界なんだ！お前は要らない……お前がリョウに愛される事はないんだよ！」

　そっか……俺、二人にとって邪魔者なんだ。
　現世でもこの世界でも、俺は要らない……愛されない存在なんだ。

　なのに、なのに俺は──！

「ごめん……なさ、い……りょ、う。」

「リョウの名前を呼ぶな！」

　そしてユキは、俺をそのまま階段から突き落した。

「……し、シン──！」

　最後に聞いたのは、俺の名を呼ぶ……リョウ──？