失恋した上に嫌われ、死んでしまった俺は…目が覚めたら彼に愛される世界に居た。

櫻坂 真紀

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 俺と亮は試験明けの休みを、デートという形で楽しんでいた。

 デートって言っても、一緒に服を買いに行ったり映画を見たり、夜は亮の家で夕食を一緒に食べる……そんな高校生らしいものだ。

 でもこれが、凄く楽しかった。
 こんなふうに人目を気にせず外出できて……それも好きな人と一緒だなんて、夢みたい──。

「亮、本当にいいのか?この服買ってて貰って……。」

「俺が追試を免れたのは、慎が勉強教えてくれたからだ。てか、いつかお礼したくてバイト代貯めてたんだよ。」

 亮は時々バイトをしていて、俺とのデートの時は食事代を出してくれたりするけど……服は初めてだ。

「それにさ……前も言ったけど、最近のお前は大人っぽくて色気がある。だから絶対この服が似合う!」

 真面目な顔でそんな事を言う亮に、俺は思わず吹き出して笑ってしまった。

 そっか、今の俺、色気があるのかぁ……。
 でも亮だって、時にはそんな俺より大人っぽかったりして……一緒に居る俺をドキドキさせてくれるよ?

「じゃあお返しに、今日の夕ご飯は亮の大好きなハンバーグにするな。」

「やった!お前のハンバーグは唐揚げに並ぶ絶品だからなぁ。」

「亮のには目玉焼きも乗っけてあげる。」

 俺の言葉に亮のテンションは更に上がり、その後も楽しいデートは続いた。

 このまま、ずっとこの時間が続けばいいのに──。
 
※※※

「あぁ~、お腹一杯!今日も美味しかったよ、慎。片づけは俺がするから、休んでて?」

「うん、ありがとう。俺、ポメ吉と遊んでるね。」

 亮のこういう所、優しくて好きだ……。

 あの世界のリョウは、ユキの分なら片づけてくれたけど……俺のは基本無視だったからな。
 
 意地悪とかじゃなくて、シンなら一人で何でもできるだろ?
 リーダーなんだし、丈夫だよな?……みたいな感じだった。
 
 いつからか、自然とそういう空気になっちゃってたんだよなぁ。

 それに対して、俺も文句を言う訳じゃなかったけど……でも、ちょっと寂しい所があった──。

「クーン。」

 抱いていたポメ吉が、俺の頬をペロリと舐めた。

「ごめん、心配かけちゃった?大丈夫だよ……ポメ吉は優しいイイ子だな。」

 俺はポメ吉を抱き上げ、フワフワの身体に顔を埋めた。

「可愛いなお前。あいつも……本当にお前を飼いたいって言ってたな。でもユキは犬が苦手だから、結局諦めてたけど……。」

「ユキって誰?」

「あっ……!」

 いつの間にか片づけが終わった亮が、俺を後ろから抱きしめた。
 
 驚いた俺の手から、ポメ吉がストンと降りてケージに戻って行く。

「ポメ吉とあんまり仲良しだから、混じろうと思ったら……ユキって知らない名前が出てくるし、お前はしょんぼりしてるし……。お前をそうさせてるのは、そのユキもそうだけど……一番は、あいつ……だな?誰かは分かんないけど、腹立つ。」

 そう言って亮は、俺の頬にキスを落とした。

 何か今の亮って……ドラマの中の亮よりも、積極的というか……スキンシップが激しい?

 そうだとしたら、多分、俺がそうさせてるんだろうな。

 ドラマの中の慎は、最初から亮の恋人って設定だったから、亮に愛されてるって自信があってもう少し堂々としてて……幸が現れるまでは幸せ一杯で、悲しい顔とか思い悩む顔をほとんど亮に見せてなかったから──。

「ご、ごめん。」

 俺は、自分が亮から慎を奪ってしまった気持ちになり、謝罪の言葉を口にした。

「俺は、お前に怒ってるんじゃない。その名前も分からない奴と、ユキに腹が立つ。俺は、お前を悲しませる奴は嫌いだよ。」

 亮は、キッパリとそう吐き捨てた──。
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