5 / 33
5
しおりを挟む
よし、これで二人分の弁当は完成した。
そろそろ、亮の家に行くか。
ドラマの中の亮は朝が凄く苦手で……俺が起こしに行かなきゃ、全く起きられない奴だ。
実際のリョウも若干朝が苦手で…ホテルで同室になった時とか、俺が良く起こしてたっけ。
でもそれも、ユキが加入してくる前の話だけど──。
現実世界の事を思い出し胸が痛くなったが、それを振り払う様に俺は制服に袖を通した。
今は、俺が亮の恋人で居られるんだ。
この世界に居られる時しか叶わない望みなんだ、ユキの事を思い出し落ち込んでたら勿体ないよな──。
亮の家は……俺と同じマンション内にある設定だ。
俺の足はスイスイと進み、ある一室の前でピタリと止まった。
俺は部屋の鍵を鞄から取り出し、扉を開けた。
亮の家の両親は父が海外に出張中で、母は看護師……そんな忙しい二人の助けになろうと、俺は亮の世話を買って出て、鍵まで預けて貰っているという間柄だ。
「おはよう、ポメ吉。」
ドラマの時と同じように、亮の家には可愛らしいポメラニアンが居た。
俺の顔を見るなり、可愛く一声鳴きし駆けよって来る。
でも……近くまで来たポメ吉はピタリと止まり、小首を傾げた。
「……犬には分かるのかな、いつもの俺じゃ……慎じゃないって。ポメ吉……上手く言えないけど、今は俺がこの世界の慎なんだ。でもこの世界の慎と同じくらいお前の飼い主が大好きだよ。だから……俺とも仲良くしてくれるか?」
ポメ吉は俺をじっと見て……そしてキャンと鳴き、俺に飛びつき尻尾を振った。
俺の事、受け入れてくれたんだ……。
俺は嬉しくなって、ポメ吉を抱きしめた。
「じゃあ、お前のご主人起こしてくるな?その後で、三人で朝ごはんにしよう。」
俺は亮の部屋に向かい、深呼吸をした。
おはよう、起きてっていうの、久しぶりだ……。
何か、ドキドキして来た。
顔があっつい……!
「よし、入るぞ。」
※※※
ベッドの中で、亮は気持ちよさそうに眠っていた。
うわ……本当に亮が居る!
でもこの寝相、リョウそのものだ……。
「リョ……亮、朝だよ。起きて?」
俺は、ゆっくりと亮の身体を揺すった。
「慎……あと、少し。」
「駄目、新学期早々遅刻はマズイだろう?ポメ吉もお腹空かせて待ってるぞ。」
「うん…。」
「俺……朝ごはん、一緒に食べたいよ。」
これ、ドラマのセリフには無かったな。
つい、本音が……。
だって俺、もうずっとお前と一緒にご飯食べてないんだ。
お前の家に泊って朝ごはん一緒に食べるとか、お前がユキとそうなってからは全然──。
すると亮はガバリと起き上がり、俺を見た。
「何だよ、朝からそんな悲しそうな顔して……嫌な夢でも見たのか?」
「夢……?」
そうだな……今までの事、夢なら良かった。
こっちが本当の世界で、あっちが夢ならどれだけ良かったか。
って、この世界が夢って訳でもないか……?
「慎、大丈夫か?」
亮は、俺をそっと引き寄せ抱きしめた。
その温かさと優しさに、俺は思わず目に涙を滲ませた。
「よしよし泣くな……俺が居るから、大丈夫だぞ。」
亮は、俺の頭を優しく撫でてくれた。
頭、撫でて貰えるなんて……こんな触れ合い、夢みたいだ……でも二人は恋人同士だから、こういう事があってもおかしくはないのかな。
俺は亮の腕の中で、一時の幸せに浸った──。
そろそろ、亮の家に行くか。
ドラマの中の亮は朝が凄く苦手で……俺が起こしに行かなきゃ、全く起きられない奴だ。
実際のリョウも若干朝が苦手で…ホテルで同室になった時とか、俺が良く起こしてたっけ。
でもそれも、ユキが加入してくる前の話だけど──。
現実世界の事を思い出し胸が痛くなったが、それを振り払う様に俺は制服に袖を通した。
今は、俺が亮の恋人で居られるんだ。
この世界に居られる時しか叶わない望みなんだ、ユキの事を思い出し落ち込んでたら勿体ないよな──。
亮の家は……俺と同じマンション内にある設定だ。
俺の足はスイスイと進み、ある一室の前でピタリと止まった。
俺は部屋の鍵を鞄から取り出し、扉を開けた。
亮の家の両親は父が海外に出張中で、母は看護師……そんな忙しい二人の助けになろうと、俺は亮の世話を買って出て、鍵まで預けて貰っているという間柄だ。
「おはよう、ポメ吉。」
ドラマの時と同じように、亮の家には可愛らしいポメラニアンが居た。
俺の顔を見るなり、可愛く一声鳴きし駆けよって来る。
でも……近くまで来たポメ吉はピタリと止まり、小首を傾げた。
「……犬には分かるのかな、いつもの俺じゃ……慎じゃないって。ポメ吉……上手く言えないけど、今は俺がこの世界の慎なんだ。でもこの世界の慎と同じくらいお前の飼い主が大好きだよ。だから……俺とも仲良くしてくれるか?」
ポメ吉は俺をじっと見て……そしてキャンと鳴き、俺に飛びつき尻尾を振った。
俺の事、受け入れてくれたんだ……。
俺は嬉しくなって、ポメ吉を抱きしめた。
「じゃあ、お前のご主人起こしてくるな?その後で、三人で朝ごはんにしよう。」
俺は亮の部屋に向かい、深呼吸をした。
おはよう、起きてっていうの、久しぶりだ……。
何か、ドキドキして来た。
顔があっつい……!
「よし、入るぞ。」
※※※
ベッドの中で、亮は気持ちよさそうに眠っていた。
うわ……本当に亮が居る!
でもこの寝相、リョウそのものだ……。
「リョ……亮、朝だよ。起きて?」
俺は、ゆっくりと亮の身体を揺すった。
「慎……あと、少し。」
「駄目、新学期早々遅刻はマズイだろう?ポメ吉もお腹空かせて待ってるぞ。」
「うん…。」
「俺……朝ごはん、一緒に食べたいよ。」
これ、ドラマのセリフには無かったな。
つい、本音が……。
だって俺、もうずっとお前と一緒にご飯食べてないんだ。
お前の家に泊って朝ごはん一緒に食べるとか、お前がユキとそうなってからは全然──。
すると亮はガバリと起き上がり、俺を見た。
「何だよ、朝からそんな悲しそうな顔して……嫌な夢でも見たのか?」
「夢……?」
そうだな……今までの事、夢なら良かった。
こっちが本当の世界で、あっちが夢ならどれだけ良かったか。
って、この世界が夢って訳でもないか……?
「慎、大丈夫か?」
亮は、俺をそっと引き寄せ抱きしめた。
その温かさと優しさに、俺は思わず目に涙を滲ませた。
「よしよし泣くな……俺が居るから、大丈夫だぞ。」
亮は、俺の頭を優しく撫でてくれた。
頭、撫でて貰えるなんて……こんな触れ合い、夢みたいだ……でも二人は恋人同士だから、こういう事があってもおかしくはないのかな。
俺は亮の腕の中で、一時の幸せに浸った──。
57
お気に入りに追加
1,200
あなたにおすすめの小説
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた
やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。
俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。
独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。
好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け
ムーンライトノベルズにも掲載しています。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる