失恋した上に嫌われ、死んでしまった俺は…目が覚めたら彼に愛される世界に居た。

櫻坂 真紀

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 よし、これで二人分の弁当は完成した。

 そろそろ、亮の家に行くか。

 ドラマの中の亮は朝が凄く苦手で……俺が起こしに行かなきゃ、全く起きられない奴だ。

 実際のリョウも若干朝が苦手で…ホテルで同室になった時とか、俺が良く起こしてたっけ。
 でもそれも、ユキが加入してくる前の話だけど──。

 現実世界の事を思い出し胸が痛くなったが、それを振り払う様に俺は制服に袖を通した。

 今は、俺が亮の恋人で居られるんだ。
 この世界に居られる時しか叶わない望みなんだ、ユキの事を思い出し落ち込んでたら勿体ないよな──。

 亮の家は……俺と同じマンション内にある設定だ。

 俺の足はスイスイと進み、ある一室の前でピタリと止まった。

 俺は部屋の鍵を鞄から取り出し、扉を開けた。

 亮の家の両親は父が海外に出張中で、母は看護師……そんな忙しい二人の助けになろうと、俺は亮の世話を買って出て、鍵まで預けて貰っているという間柄だ。

「おはよう、ポメ吉。」

 ドラマの時と同じように、亮の家には可愛らしいポメラニアンが居た。

 俺の顔を見るなり、可愛く一声鳴きし駆けよって来る。

 でも……近くまで来たポメ吉はピタリと止まり、小首を傾げた。

「……犬には分かるのかな、いつもの俺じゃ……慎じゃないって。ポメ吉……上手く言えないけど、今は俺がこの世界の慎なんだ。でもこの世界の慎と同じくらいお前の飼い主が大好きだよ。だから……俺とも仲良くしてくれるか?」

 ポメ吉は俺をじっと見て……そしてキャンと鳴き、俺に飛びつき尻尾を振った。

 俺の事、受け入れてくれたんだ……。

 俺は嬉しくなって、ポメ吉を抱きしめた。

「じゃあ、お前のご主人起こしてくるな?その後で、三人で朝ごはんにしよう。」

 俺は亮の部屋に向かい、深呼吸をした。

 おはよう、起きてっていうの、久しぶりだ……。

 何か、ドキドキして来た。
 顔があっつい……!

「よし、入るぞ。」

※※※

 ベッドの中で、亮は気持ちよさそうに眠っていた。

 うわ……本当に亮が居る!
 でもこの寝相、リョウそのものだ……。

「リョ……亮、朝だよ。起きて?」

 俺は、ゆっくりと亮の身体を揺すった。

「慎……あと、少し。」

「駄目、新学期早々遅刻はマズイだろう?ポメ吉もお腹空かせて待ってるぞ。」

「うん…。」

「俺……朝ごはん、一緒に食べたいよ。」

 これ、ドラマのセリフには無かったな。
 つい、本音が……。
 
 だって俺、もうずっとお前と一緒にご飯食べてないんだ。
 お前の家に泊って朝ごはん一緒に食べるとか、お前がユキとそうなってからは全然──。

 すると亮はガバリと起き上がり、俺を見た。

「何だよ、朝からそんな悲しそうな顔して……嫌な夢でも見たのか?」

「夢……?」

 そうだな……今までの事、夢なら良かった。
 こっちが本当の世界で、あっちが夢ならどれだけ良かったか。
 
 って、この世界が夢って訳でもないか……?

「慎、大丈夫か?」
 
 亮は、俺をそっと引き寄せ抱きしめた。

 その温かさと優しさに、俺は思わず目に涙を滲ませた。

「よしよし泣くな……俺が居るから、大丈夫だぞ。」

 亮は、俺の頭を優しく撫でてくれた。

 頭、撫でて貰えるなんて……こんな触れ合い、夢みたいだ……でも二人は恋人同士だから、こういう事があってもおかしくはないのかな。

 俺は亮の腕の中で、一時の幸せに浸った──。
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