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番外編①
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俺が邪神様……否、イグニス様の元へ花嫁として来てから、もう半年ほどが経った。
弟のミゲルの件もあり、イグニス様と夫婦として過ごす心の余裕がなかったから……それだけの時間が過ぎてしまった事に気づいた時には、驚いたのと同時に後悔もした。
俺……いつもイグニス様に気遣って優しくして貰ってばっかりだから、たまには俺がイグニス様の為に何かして差し上げたい──!
そう思い、イグニス様に何かして欲しい事は無いか、欲しい物は無いかとお尋ねしたら──…
『シエルを花嫁に迎え、妻として傍に置き……こうして一緒に居られるだけで、十分俺は幸せだよ。』
そう言って抱きしめられ、キスを貰う事になってしまった。
とっても嬉しいんだけど……でもまた、幸せを貰ってしまった。
俺だって、何かをイグニス様に捧げたいのに──。
※※※
『でしたら、イグニス様の誕生日に、何か贈り物をされてはいかがでしょう。誕生日プレゼントという事になれば、イグニス様も遠慮なく受け取って下さいますよ。』
イグニス様の付き人アンブラさんは、悩む俺にそうアドバイスしてくれた。
そうなんだ……イグニス様、もうすぐお誕生日なんだ。
だったら、何をお贈りしようかな?
物もいいけど……そうだ!
イグニス様は甘い物がお好きでお茶を良くされるから、ティーカップを贈ろうかな。
この前、お気に入りのカップが欠けてしまったと、ガッカリしてみえたから。
……せっかくだから、お揃いのを買おうかな。
お揃いのティーカップで、一緒にお茶を楽しむイグニス様と俺──。
あぁ、何か想像しただけで嬉しいし、お茶の時間が楽しみになって来ちゃった。
後は、誕生日といったらお誕生日ケーキ。
買うのもいいけど……せっかくだから作ってみようかな。
実は俺は、お菓子作りが昔から大好きだ。
あの家に居た時も作ってたけど……ミゲルは素人の作った物は気持ち悪いって食べてくれなくなったし、元婚約者のナイルは甘い物は要らないって人だったから、いつの間にか作らなくなっちゃったんだよね。
でもイグニス様は甘いの好きだし……それに、初めてこの家に来た時、イグニス様の手料理がとても嬉しかったから……今度は俺が作ってあげたい。
「決めた。明日早速、プレゼントのティーカップを見に行こう!」
あんな事があって、街に行くのは久しぶりで緊張するけど……でもイグニス様に喜んで貰いたいもん──!
※※※
「シエル、明日街に行くとアンブラと話していたけど……何か大事な用があるのかい?」
イグニス様の言葉に俺はドキッとしたが、すぐに平静を装った。
「あの、庭に撒くお花の種を買いに行きたいんです。バラも好きだけど、何か他にも咲かせたいなと思って。」
「そうか。すまないが……俺は明日知人と約束があり、一緒には行けないんだ。」
「イグニス様、大丈夫です。一人でもちゃんと買い物出来ますから。」
「分かったよ、気を付けて行っておいで。」
心配して下さったのに……ごめんなさい、イグニス様。
本当はあなたに隠し事はしたくないけど、プレゼントは誕生日当日まで秘密にしておきたいから……だから明日は、俺一人で出かけてきますね──。
弟のミゲルの件もあり、イグニス様と夫婦として過ごす心の余裕がなかったから……それだけの時間が過ぎてしまった事に気づいた時には、驚いたのと同時に後悔もした。
俺……いつもイグニス様に気遣って優しくして貰ってばっかりだから、たまには俺がイグニス様の為に何かして差し上げたい──!
そう思い、イグニス様に何かして欲しい事は無いか、欲しい物は無いかとお尋ねしたら──…
『シエルを花嫁に迎え、妻として傍に置き……こうして一緒に居られるだけで、十分俺は幸せだよ。』
そう言って抱きしめられ、キスを貰う事になってしまった。
とっても嬉しいんだけど……でもまた、幸せを貰ってしまった。
俺だって、何かをイグニス様に捧げたいのに──。
※※※
『でしたら、イグニス様の誕生日に、何か贈り物をされてはいかがでしょう。誕生日プレゼントという事になれば、イグニス様も遠慮なく受け取って下さいますよ。』
イグニス様の付き人アンブラさんは、悩む俺にそうアドバイスしてくれた。
そうなんだ……イグニス様、もうすぐお誕生日なんだ。
だったら、何をお贈りしようかな?
物もいいけど……そうだ!
イグニス様は甘い物がお好きでお茶を良くされるから、ティーカップを贈ろうかな。
この前、お気に入りのカップが欠けてしまったと、ガッカリしてみえたから。
……せっかくだから、お揃いのを買おうかな。
お揃いのティーカップで、一緒にお茶を楽しむイグニス様と俺──。
あぁ、何か想像しただけで嬉しいし、お茶の時間が楽しみになって来ちゃった。
後は、誕生日といったらお誕生日ケーキ。
買うのもいいけど……せっかくだから作ってみようかな。
実は俺は、お菓子作りが昔から大好きだ。
あの家に居た時も作ってたけど……ミゲルは素人の作った物は気持ち悪いって食べてくれなくなったし、元婚約者のナイルは甘い物は要らないって人だったから、いつの間にか作らなくなっちゃったんだよね。
でもイグニス様は甘いの好きだし……それに、初めてこの家に来た時、イグニス様の手料理がとても嬉しかったから……今度は俺が作ってあげたい。
「決めた。明日早速、プレゼントのティーカップを見に行こう!」
あんな事があって、街に行くのは久しぶりで緊張するけど……でもイグニス様に喜んで貰いたいもん──!
※※※
「シエル、明日街に行くとアンブラと話していたけど……何か大事な用があるのかい?」
イグニス様の言葉に俺はドキッとしたが、すぐに平静を装った。
「あの、庭に撒くお花の種を買いに行きたいんです。バラも好きだけど、何か他にも咲かせたいなと思って。」
「そうか。すまないが……俺は明日知人と約束があり、一緒には行けないんだ。」
「イグニス様、大丈夫です。一人でもちゃんと買い物出来ますから。」
「分かったよ、気を付けて行っておいで。」
心配して下さったのに……ごめんなさい、イグニス様。
本当はあなたに隠し事はしたくないけど、プレゼントは誕生日当日まで秘密にしておきたいから……だから明日は、俺一人で出かけてきますね──。
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