捨てられた悪しき令息は、花嫁となり邪神様にその身を捧ぐ。

櫻坂 真紀

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「……ああ、確かにそんな事がありました。」

 ミゲルは、強い魔力の持ち主だった。
 幼い頃はそれが上手くコントロールできず、いつも弱い動物を虐めていた。

『ミゲル駄目だよ、辞めて!蛇が可哀そうだよ。』

『いいの!だって黒い蛇は悪いものって、お父様言ったもん。』

『違う、悪いのはミゲルだよ。……蛇さん、ごめんね?でももう大丈夫、怪我が治るまで俺の元に居てね──?』

「……だけどあの黒蛇、少しして姿を消してしまったのです。俺はあちこち探しましたが、あの子はついに見つからなくて……とても心配しました。」

「シエルは優しい子だね。大丈夫……その後、あの子は無事に神の元へ帰れた。シエルが毎晩星に祈ってくれたおかげで、黒蛇はそこまで回復する事ができたんだよ。」

 俺は、闇魔法しか使えない。
 回復系の魔法は使いたくても使えないから、俺はいつも誰かを救いたい時は星に祈った。
 
「でも……俺があの黒蛇にした事を、何故なぜイグニス様はご存じなのですか?」

「実は……あの黒蛇は、俺なんだ。俺は、蛇に姿を変えられるんだよ。これはおおやけにはなっていないけど、俺の一族は代々この地を守護する神に仕えていてね。この顔の文様もんようは、その証だ。まぁ……通常は白蛇なんだけど、俺は例外らしくてね。こんな黒い蛇の形の文様が、こうして顔に浮かんでしまったから……ついには皆に邪神様と呼ばれ、恐れられる様になってしまった。」

「そう、だったんですね。」

 まさかあの時俺が助けた黒蛇が、このイグニス様だったとは……。
 しかも再び出会い、こうして夫婦になってるだなんて──。

※※※

「俺は、俺を虐めた者に容赦はしないよ。それに何より、俺はこの地の神にとても可愛がられているからね……その神が許さない限り、あの子の病は治らないのさ。」

「でもどうして今頃になって、ミゲルはそんな報いを受ける事に……?」

「それは、彼が君をおとしいれようとしたからだ。」

「俺を……?」

「ミゲルの今の現状は神による罰だが……その始まりは別にある。ミゲルは、君の婚約者のナイルの事を密かに好きだった。いつか君から、奪ってやりたいと思っていたんだ。それで、ある企みを思いついた。彼は黒魔術師に金を払い、自分に呪いをかけさせた。そして顔にあざを作り、それを闇魔法を使う君がやった様に見せかけたんだ。シエルの部屋に呪術の本をこっそり置いたのも、彼だよ。」

「ミゲル……なんて卑劣な真似を──!」
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