6 / 11
6
しおりを挟む
「それをご神託で知った俺は、ミゲルに対し強い怒りを覚えた。俺の事を助けてくれた……俺の初恋の相手である大事なシエルに、そんな事をするなどとても許せなかった。俺は、君が他の男と婚約する事は耐えた。君が幸せになれるならと思って……。でも、君が不幸のどん底に突き落とされる……そればかりは許せなかった。その気持ちを知った神が、昔の出来事を含めた上でミゲルに罰を与えたんだ。きっかけは自分でかけた呪いでも、その病がいつまでも治らず苦しんでいるのは、その罰が続いているからだ。」
「そういう事なんですね。あの……ナイルとの婚約、なぜ許そうと?」
「俺は見た目がこうだから、邪神様なんて呼ばれているだろう?そんな男の花嫁は……可哀そうだと思ってね。」
「そんなこ、と……いえ……確かに俺は、あなたの花嫁になれと聞かされた時、こう思いました。俺は邪神様の供物にすぎないと……。でもここであなたと過ごす内に、毎日あなたに愛を囁かれる内に、俺の心は変化していきました。今まで、ちゃんと言葉にしなくてごめんなさい。イグニス様……俺はあなたを愛しています。どうか、いつまでも一緒に居て下さい──。」
※※※
「ミゲル、ナイルは居ないんだね。」
「ナ、ナイル様は……最近は俺の所には──。でも、また来てくれるよ!」
……どうだろうか。
ナイルは、最近はミゲルよりも若く健康なご子息と、仲良くされているという噂を聞いたけど──。
「それよりシエル兄様、お父様がイグニス様にお金の援助を頼んだのでしょう?今日は、そのお金を持って来て下さったんだよね!?」
「……ねぇ、ミゲル、この方に見覚えは無い?」
俺は、両手をそっとミゲルの前に出した。
「この方…?な、何これ、黒蛇じゃないか!こんな気味の悪い物、見舞いに持ってこないでよ!」
「ミゲル、この方に一言謝れば、その病は治るんだよ。その痣は消え、元の可愛い顔に戻れるんだ。ミゲルは、ナイルが自分を好きになったら……すぐに呪いを解いて貰い、その痣を消す予定だったんでしょう?」
「そ、それは……!フン……馬鹿らしい。何で人間様が、蛇みたいな気持ち悪いものに謝らなきゃいけないのさ!くだらない冗談を言いに来たのなら、さっさと帰ってよ!」
その瞬間、黒いもやが黒蛇を包んだかと思うと……黒蛇は、イグニス様の姿に戻った。
「君は選択を誤った。この先の君の命運は、もはや神のみぞ知る。さぁ……行こうか、シエル。」
「はい、イグニス様。」
「ま、待って……どういう事?黒蛇がイグニス様って……イ、イグニス様、どうか俺にお金を……!い、行かないで、シエル兄様──!」
帰りの馬車の中、俺はイグニス様にお礼を述べた。
「これで、けじめをつける事ができました。もう、二度と弟とは会いません。俺の夫であるあなたを傷つけ、再び無礼を働いたのですから。」
「夫か……シエルにそう呼んでもらえる俺は、幸せ者だね。」
「……俺があなたの家に向かうのは、これで二度目ですね。一度目の俺は、悪の令息と言われ不幸のどん底にあった。でも今は……全く違います。俺の心は、幸せで一杯です。」
馬車の窓から、空を流れる一筋の星が見えた。
星よ……俺の願いを叶えて?
どうかいつまでも、この方と共に、幸せであれますように──。
捨てられた悪しき令息の俺は、邪神様にこの身と愛を捧ぐ──。
「そういう事なんですね。あの……ナイルとの婚約、なぜ許そうと?」
「俺は見た目がこうだから、邪神様なんて呼ばれているだろう?そんな男の花嫁は……可哀そうだと思ってね。」
「そんなこ、と……いえ……確かに俺は、あなたの花嫁になれと聞かされた時、こう思いました。俺は邪神様の供物にすぎないと……。でもここであなたと過ごす内に、毎日あなたに愛を囁かれる内に、俺の心は変化していきました。今まで、ちゃんと言葉にしなくてごめんなさい。イグニス様……俺はあなたを愛しています。どうか、いつまでも一緒に居て下さい──。」
※※※
「ミゲル、ナイルは居ないんだね。」
「ナ、ナイル様は……最近は俺の所には──。でも、また来てくれるよ!」
……どうだろうか。
ナイルは、最近はミゲルよりも若く健康なご子息と、仲良くされているという噂を聞いたけど──。
「それよりシエル兄様、お父様がイグニス様にお金の援助を頼んだのでしょう?今日は、そのお金を持って来て下さったんだよね!?」
「……ねぇ、ミゲル、この方に見覚えは無い?」
俺は、両手をそっとミゲルの前に出した。
「この方…?な、何これ、黒蛇じゃないか!こんな気味の悪い物、見舞いに持ってこないでよ!」
「ミゲル、この方に一言謝れば、その病は治るんだよ。その痣は消え、元の可愛い顔に戻れるんだ。ミゲルは、ナイルが自分を好きになったら……すぐに呪いを解いて貰い、その痣を消す予定だったんでしょう?」
「そ、それは……!フン……馬鹿らしい。何で人間様が、蛇みたいな気持ち悪いものに謝らなきゃいけないのさ!くだらない冗談を言いに来たのなら、さっさと帰ってよ!」
その瞬間、黒いもやが黒蛇を包んだかと思うと……黒蛇は、イグニス様の姿に戻った。
「君は選択を誤った。この先の君の命運は、もはや神のみぞ知る。さぁ……行こうか、シエル。」
「はい、イグニス様。」
「ま、待って……どういう事?黒蛇がイグニス様って……イ、イグニス様、どうか俺にお金を……!い、行かないで、シエル兄様──!」
帰りの馬車の中、俺はイグニス様にお礼を述べた。
「これで、けじめをつける事ができました。もう、二度と弟とは会いません。俺の夫であるあなたを傷つけ、再び無礼を働いたのですから。」
「夫か……シエルにそう呼んでもらえる俺は、幸せ者だね。」
「……俺があなたの家に向かうのは、これで二度目ですね。一度目の俺は、悪の令息と言われ不幸のどん底にあった。でも今は……全く違います。俺の心は、幸せで一杯です。」
馬車の窓から、空を流れる一筋の星が見えた。
星よ……俺の願いを叶えて?
どうかいつまでも、この方と共に、幸せであれますように──。
捨てられた悪しき令息の俺は、邪神様にこの身と愛を捧ぐ──。
35
お気に入りに追加
194
あなたにおすすめの小説
落ちこぼれβの恋の諦め方
めろめろす
BL
αやΩへの劣等感により、幼少時からひたすら努力してきたβの男、山口尚幸。
努力の甲斐あって、一流商社に就職し、営業成績トップを走り続けていた。しかし、新入社員であり極上のαである瀬尾時宗に一目惚れしてしまう。
世話役に立候補し、彼をサポートしていたが、徐々に体調の悪さを感じる山口。成績も落ち、瀬尾からは「もうあの人から何も学ぶことはない」と言われる始末。
失恋から仕事も辞めてしまおうとするが引き止められたい結果、新設のデータベース部に異動することに。そこには美しいΩ三目海里がいた。彼は山口を嫌っているようで中々上手くいかなかったが、ある事件をきっかけに随分と懐いてきて…。
しかも、瀬尾も黙っていなくなった山口を探しているようで。見つけられた山口は瀬尾に捕まってしまい。
あれ?俺、βなはずなにのどうしてフェロモン感じるんだ…?
コンプレックスの固まりの男が、αとΩにデロデロに甘やかされて幸せになるお話です。
小説家になろうにも掲載。
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
お疲れ騎士団長の癒やし係
丸井まー(旧:まー)
BL
騎士団長バルナバスは疲れていた。バルナバスは癒やしを求めて、同級生アウレールが経営しているバーへと向かった。
疲れた騎士団長(40)✕ぽよんぽよんのバー店主(40)
※少し久しぶりの3時間タイムトライアル作品です!
お題は『手触り良さそうな柔らかむちむちマッチョ受けかぽよぽよおじさん受けのお話』です。
楽しいお題をくださったTectorum様に捧げます!楽しいお題をありがとうございました!!
※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。
婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました
ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。
愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。
*****************
「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。
※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。
※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。
評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。
※小説家になろう様でも公開中です。
【完結】遍く、歪んだ花たちに。
古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。
和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。
「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」
No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる