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初恋を捨てられない俺は、もう恋などできないと思ってた。

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『結婚、ですか?』

『うん、しようと思ってる。俺、彼女の事が好きで好きで堪らないんだ。いや……愛してるんだ。』

『……そう、ですか。』

『俺、まだ十八歳だからって……親にも、相手の親にも、周りの人たちにも反対されて──。でも本当は……俺が日本人じゃないからかな?だから余計にさ……。』

 そう言って、悲し気な笑みを浮かべる彼に、俺はフルフルと首を振った。

『俺は……先輩と、その彼女さんの幸せを願ってます。例え周りが反対しても、俺は……俺だけは──。』

『ありがとう。俺……いい後輩持ったな。高校卒業したら、俺はすぐ彼女とこの街を出て行く事にしててさ。誰にも言わないつもりだったけど……貴博、お前にだけは言っておくな──。』

※※※

「──い。おい、味噌汁覚めるぞ?」

「あ……うん、そうだね。」

 俺は、今から三年前の……あの人と、最後に交わした言葉を思い出していた。

 あの人、今頃どこに……いや、そんなの知る必要はないな。

 ただあの人が、愛する人と幸せに暮らしていてくれさえすれば、俺は、それで──。

「お前……顔色良くないな。どこかから帰って来たみたいだけど……全然寝てないのか?」

「……うん。最近、っていうか、三年前から不眠でねぇ。まぁ……薬飲んだり体が疲れ切っちゃえば寝られるから、問題ないよ。」

「……そう、か。」

「そうそう。それに、流石にあれだけ抱かれれば……あ、いや……何でもない。」

 やば……こいつノンケだったな。

 俺も人の事言えないな……昨日の酒が残ってるか?

 俺は慌てて彼と自分が食べ終わった皿を下げ、食洗器に突っ込んだ。

「ふぅん?だったら……それ終わったら、こっちに来いよ。」

「……え?」

 俺は訳が分からないと思いながらも、彼の元へ行き、隣に座った。

 すると彼は、俺の腕をグイッと引き……倒れ込んだ俺は、そのまま彼の太ももの上に頭を預ける形になった。

 な、何だこれ。
 もしかして、膝枕──?
 
「ご飯食べさせて貰った礼だ。俺、今金持ってないから。」

「そ、んなの……お金なんていいよ。むしろ、朝ごはん一緒に食べて貰えて良かったし……。俺一人だったら、きっと、ろくに食べてないもん……。」

 こいつの膝……程よく固くて、それでいて温かくて……あぁ、何か眠くなって来たな。
 
 っていうか、俺の頭、そんなに撫でないでよ──。

「だって俺……いい奴じゃないから。本当は……嫉妬で、心が一杯……だったのに──。」

 そして俺の意識は、眠りの世界へと落ちて行った──。

 だからそんな俺を、彼がどんな目で見ているかなど……何も気付けなかった──。
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