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15 秀一郎視点
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「あまり彼らを馬鹿にするな。話し相手は、お前の遊び相手の男だそうだな。お前は彼に……今より良い暮らしを手に入れる為、レオとして俺と付き合っているだけだと、そう話した。この会話は風紀委員が録音したし、その男の証言もある。」
「違います!む、息子はあなたが好きすぎて、どうしてもあなたの恋人になりたかっただけです!それと、我が家の為を思いやったまでの事!身寄りのない子を育てるには、何かと金がかかり──」
「だから、湊に家政婦の代わりをやらせたと?」
「そ、それは……働かざる者食うべからずと言うか……。」
「それだけじゃない。あなたは、湊に愛人の役目も負わせた。彼が他に行き場がない、何も抵抗できない立場にあるのを良い事に……!あなたの家に居た元家政婦が、一度だけ……あなたの部屋から湊が服を乱し、泣きながら出て行くのを見たと証言してくれました。」
「う、嘘だ!」
「それに、あなたの奥様もこう証言なさいました。あなたはあの子に夢中になり、その身体を蹂躙していると──。」
「あ、あいつが!?」
「あなたの奥様は、あなたにはもう魅力感じない。あなたと縁を切り愛人と一緒になりたいから、警察で全てを話す……とも仰いました。」
「俺は……あいつに裏切られたのか……。クソ──!やはりあの女はダメだ……もう俺には礼音しか──礼音、今迎えに行くぞ!」
男は血走った目で、湊の名前を呼んだ。
「湊……湊 礼音。あなたたち親子の事を調べる上で、彼の事も調べさせて貰ったが……俺が出会ったあの子──。
あの子は自身をレオと言ったけど……本当の名前は、レオンだったんだ。きっと周りからレオと呼ばれていて、幼かったから、そう名乗ったんだろうけど……。その事にすぐに気づいてれば……何より、もっと早くあなたたちの事を調べていれば、こんな回り道をせずに済んだのに──!あの子はあなたのものじゃない、俺のものだったんだ!それを穢し奪ったあなたを、俺は決して許さない。あなたのやった事は立派な犯罪だ、然るべき罰を受けて貰わねば……!」
「待って、秀一郎様!父さんが犯罪者だなんて──」
「玲央、お前も立派な罪人だ。平気で嘘を付き、色んな人の心を踏みにじり……そんな人間はこの榊家に……俺に必要ない!お前は俺の大事な……愛するレオではないんだ──!」
「あ、そ、そんな……あと、少しだったのに……。」
玲央は、その場でガクリと崩れ落ち涙した。
俺はそんな彼の胸ポケットから、チラリと見えていたあのハンカチを抜き取った。
「これは返して貰う。これは俺と彼を繋ぐ、大事な宝物だから──。」
※※※
その後、駆けつけた警察によって、玲央の父親は連行された。
榊家と、俺とレオの前から消えてくれれば、俺はそれでいい。
後は社会が、法が彼を裁き、罰を与える。
否……勿論、それは表向きだ──。
正直、人の目も法律も何もなかったら、俺はあの男の命を奪っている。
それくらい、あの男が憎い。
でも、そんな権利は俺にはないし……それをしたところで、あの子は救われないから──。
そして玲央、お前は一人ぼっちになったな。
父親がああなっては、事業どころではない。
母親は、家庭より愛人を選んだ。
お前を守ってくれる者は、もう居ないんだ。
お前が酷い事をしてきた湊と、お前は同じ立場になったんだ……これは、その報いだろうな。
涙を流し、虚ろな顔でこの家を出て行った玲央。
彼が、この先どうやって生きていくかなど俺は知らないし……もう、関わりのない事だ──。
俺がまずやらなければいけない事は、湊を一刻も早くあの家から救い出す事。
湊……いや、レオはあの家に、今一人残されているはず……早く、迎えに行かなければ──。
そうしたら、俺は、君に……君との初恋を──。
※※※
「秀一郎様、大変です。湊さんが、家を出てしまったそうです!」
東が、慌てた様子で部屋に入って来た。
「な、何だって!?」
「迎えに行った者から連絡があり、家はもぬけの殻だと。」
レオ……今まで何があってもあの家を出なかったお前が、どうして今日、この時になって──!
レオは、あの男に学校と買い出し以外の外出を禁じられていた。
だから、そんなレオが行ける場所……行きそうな場所は──。
「違います!む、息子はあなたが好きすぎて、どうしてもあなたの恋人になりたかっただけです!それと、我が家の為を思いやったまでの事!身寄りのない子を育てるには、何かと金がかかり──」
「だから、湊に家政婦の代わりをやらせたと?」
「そ、それは……働かざる者食うべからずと言うか……。」
「それだけじゃない。あなたは、湊に愛人の役目も負わせた。彼が他に行き場がない、何も抵抗できない立場にあるのを良い事に……!あなたの家に居た元家政婦が、一度だけ……あなたの部屋から湊が服を乱し、泣きながら出て行くのを見たと証言してくれました。」
「う、嘘だ!」
「それに、あなたの奥様もこう証言なさいました。あなたはあの子に夢中になり、その身体を蹂躙していると──。」
「あ、あいつが!?」
「あなたの奥様は、あなたにはもう魅力感じない。あなたと縁を切り愛人と一緒になりたいから、警察で全てを話す……とも仰いました。」
「俺は……あいつに裏切られたのか……。クソ──!やはりあの女はダメだ……もう俺には礼音しか──礼音、今迎えに行くぞ!」
男は血走った目で、湊の名前を呼んだ。
「湊……湊 礼音。あなたたち親子の事を調べる上で、彼の事も調べさせて貰ったが……俺が出会ったあの子──。
あの子は自身をレオと言ったけど……本当の名前は、レオンだったんだ。きっと周りからレオと呼ばれていて、幼かったから、そう名乗ったんだろうけど……。その事にすぐに気づいてれば……何より、もっと早くあなたたちの事を調べていれば、こんな回り道をせずに済んだのに──!あの子はあなたのものじゃない、俺のものだったんだ!それを穢し奪ったあなたを、俺は決して許さない。あなたのやった事は立派な犯罪だ、然るべき罰を受けて貰わねば……!」
「待って、秀一郎様!父さんが犯罪者だなんて──」
「玲央、お前も立派な罪人だ。平気で嘘を付き、色んな人の心を踏みにじり……そんな人間はこの榊家に……俺に必要ない!お前は俺の大事な……愛するレオではないんだ──!」
「あ、そ、そんな……あと、少しだったのに……。」
玲央は、その場でガクリと崩れ落ち涙した。
俺はそんな彼の胸ポケットから、チラリと見えていたあのハンカチを抜き取った。
「これは返して貰う。これは俺と彼を繋ぐ、大事な宝物だから──。」
※※※
その後、駆けつけた警察によって、玲央の父親は連行された。
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後は社会が、法が彼を裁き、罰を与える。
否……勿論、それは表向きだ──。
正直、人の目も法律も何もなかったら、俺はあの男の命を奪っている。
それくらい、あの男が憎い。
でも、そんな権利は俺にはないし……それをしたところで、あの子は救われないから──。
そして玲央、お前は一人ぼっちになったな。
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※※※
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