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おじ様……今日は玲央と一緒に、秀一郎様の家に行く事になってると、そう嬉しそうに話してたな。
榊家に……彼に気に入られた今、この家はもう安泰だって。
これからは部下に仕事を任せ、俺は名ばかりの役員になって遊んで暮らす。
そうなったら、お前は学校を辞めろ。
俺の傍で、俺に一生尽くせ……そう、言っていた。
俺は、ぐったりした身体のまま、キッチンに立った──。
「……ねぇ、シュウ君。シュウ君は……卵焼きが好きって言ってたね。それから、ウインナーも。後は……ミートボールが食べたいって言って。」
俺は、改めて買ってきた食材を冷蔵庫から取り出し、料理を始めた。
「シュウ君は、ピクニックに行った事ないんだもんね。初めてのお弁当は、シュウ君が食べたいって話してた物を入れるね──。」
俺は次々に料理を作り、それを大きなお弁当箱に詰めた。
これで最後。
俺はもう……彼の為に、何も作る事はないのだろう──。
「お前……何してんの?」
キッチンに佇む俺を見て、玲央がビックリした様に俺を見た。
「お弁当……これ、持って行って?」
「はぁ、何でさ?きっと榊家に行ったら、一流のシェフが作った料理が待ってるのに──」
「約束……したから。最後に、それだけ守らせて?お願い、玲央──。」
「よく分かんないけど……まぁ、持ってくだけならいいか。要らないって言われたら、帰りに捨てればいいんだし。っていうか僕、今朝はお前に構ってる暇ないの、忙しいんだよ。可愛い僕をより可愛く見て貰う為に、思いっきりお洒落しないとね~。」
そう言って、玲央はウキウキした足取りでキッチンを後にした──。
そして榊家との約束の時間が迫り、俺は出かける玲央とおじ様を玄関で見送った。
「僕、榊家の皆さんに気に入られたら、もうこのまま帰って来ないかもしれないね。お前とは、これでお別れかも。」
そう言って、お弁当を持った玲央は家を出て行く。
「では礼音、私も行くよ。家内は愛人と旅行中だから、家の事は任せたぞ?玲央がこのまま榊家で生活する事になったら、この家は私とお前の二人きり……たっぷりお前おを可愛がる事が出来る。私が帰って来るのを、楽しみに待ってろよ?」
おじ様は俺にキスをし、玲央に続き家を出た──。
家に一人になった俺は、思わず笑みを零した。
「楽しみに、待つ……?この家で……?」
俺は、すぐに自分の部屋に向かった。
そして俺は、カツラも眼鏡もコンタクトも外しゴミ箱に押し込むと、最低限の荷物を鞄に詰め、それを手に家を出た──。
※※※
「わぁ……何も変わってない。」
俺は、シュウ君と出会ったあの公園に来ていた。
ここに来るのは、シュウ君と別れた時以来だ。
この地に来て、残された記憶を頼りに思い出の公園が判明しても……俺は、どうしてもここに来れずにいた。
だって……今の俺がここに来たら、この神聖な思い出の地を、穢してしまう気がしたから──。
「この場に立つのは……あの時の、無垢で天使みたいな……穢れてなかった頃の俺じゃないと。そう思ってたけど……もう、これで最後だから……。」
あの人との待ち合わせ時間、もうすぐだな。
以前、あの家を抜け出し、会いに行こうとしていた父さんの古い知人──。
あの人の連絡先が、まだ変わってなくて良かった。
彼に連絡を取ると、彼は俺にも出来る仕事があると言い……困ってるなら力になるよと言ってくれたのだ。
詳しい話は会ってからすると言ってたから、どんな仕事かは分からないけど……その仕事に就いて、何とか生きれるところまで生きて……そしたら、その後は──。
「出来たら、父さんと母さんが居る所に逝きたいけど……俺、母さんとの約束を破っちゃったし……無理だよね──。」
俺は二人が居るであろう空を見上げ、静かに涙した──。
榊家に……彼に気に入られた今、この家はもう安泰だって。
これからは部下に仕事を任せ、俺は名ばかりの役員になって遊んで暮らす。
そうなったら、お前は学校を辞めろ。
俺の傍で、俺に一生尽くせ……そう、言っていた。
俺は、ぐったりした身体のまま、キッチンに立った──。
「……ねぇ、シュウ君。シュウ君は……卵焼きが好きって言ってたね。それから、ウインナーも。後は……ミートボールが食べたいって言って。」
俺は、改めて買ってきた食材を冷蔵庫から取り出し、料理を始めた。
「シュウ君は、ピクニックに行った事ないんだもんね。初めてのお弁当は、シュウ君が食べたいって話してた物を入れるね──。」
俺は次々に料理を作り、それを大きなお弁当箱に詰めた。
これで最後。
俺はもう……彼の為に、何も作る事はないのだろう──。
「お前……何してんの?」
キッチンに佇む俺を見て、玲央がビックリした様に俺を見た。
「お弁当……これ、持って行って?」
「はぁ、何でさ?きっと榊家に行ったら、一流のシェフが作った料理が待ってるのに──」
「約束……したから。最後に、それだけ守らせて?お願い、玲央──。」
「よく分かんないけど……まぁ、持ってくだけならいいか。要らないって言われたら、帰りに捨てればいいんだし。っていうか僕、今朝はお前に構ってる暇ないの、忙しいんだよ。可愛い僕をより可愛く見て貰う為に、思いっきりお洒落しないとね~。」
そう言って、玲央はウキウキした足取りでキッチンを後にした──。
そして榊家との約束の時間が迫り、俺は出かける玲央とおじ様を玄関で見送った。
「僕、榊家の皆さんに気に入られたら、もうこのまま帰って来ないかもしれないね。お前とは、これでお別れかも。」
そう言って、お弁当を持った玲央は家を出て行く。
「では礼音、私も行くよ。家内は愛人と旅行中だから、家の事は任せたぞ?玲央がこのまま榊家で生活する事になったら、この家は私とお前の二人きり……たっぷりお前おを可愛がる事が出来る。私が帰って来るのを、楽しみに待ってろよ?」
おじ様は俺にキスをし、玲央に続き家を出た──。
家に一人になった俺は、思わず笑みを零した。
「楽しみに、待つ……?この家で……?」
俺は、すぐに自分の部屋に向かった。
そして俺は、カツラも眼鏡もコンタクトも外しゴミ箱に押し込むと、最低限の荷物を鞄に詰め、それを手に家を出た──。
※※※
「わぁ……何も変わってない。」
俺は、シュウ君と出会ったあの公園に来ていた。
ここに来るのは、シュウ君と別れた時以来だ。
この地に来て、残された記憶を頼りに思い出の公園が判明しても……俺は、どうしてもここに来れずにいた。
だって……今の俺がここに来たら、この神聖な思い出の地を、穢してしまう気がしたから──。
「この場に立つのは……あの時の、無垢で天使みたいな……穢れてなかった頃の俺じゃないと。そう思ってたけど……もう、これで最後だから……。」
あの人との待ち合わせ時間、もうすぐだな。
以前、あの家を抜け出し、会いに行こうとしていた父さんの古い知人──。
あの人の連絡先が、まだ変わってなくて良かった。
彼に連絡を取ると、彼は俺にも出来る仕事があると言い……困ってるなら力になるよと言ってくれたのだ。
詳しい話は会ってからすると言ってたから、どんな仕事かは分からないけど……その仕事に就いて、何とか生きれるところまで生きて……そしたら、その後は──。
「出来たら、父さんと母さんが居る所に逝きたいけど……俺、母さんとの約束を破っちゃったし……無理だよね──。」
俺は二人が居るであろう空を見上げ、静かに涙した──。
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