14 / 39
13
しおりを挟む
おじ様……今日は玲央と一緒に、秀一郎様の家に行く事になってると、そう嬉しそうに話してたな。
榊家に……彼に気に入られた今、この家はもう安泰だって。
これからは部下に仕事を任せ、俺は名ばかりの役員になって遊んで暮らす。
そうなったら、お前は学校を辞めろ。
俺の傍で、俺に一生尽くせ……そう、言っていた。
俺は、ぐったりした身体のまま、キッチンに立った──。
「……ねぇ、シュウ君。シュウ君は……卵焼きが好きって言ってたね。それから、ウインナーも。後は……ミートボールが食べたいって言って。」
俺は、改めて買ってきた食材を冷蔵庫から取り出し、料理を始めた。
「シュウ君は、ピクニックに行った事ないんだもんね。初めてのお弁当は、シュウ君が食べたいって話してた物を入れるね──。」
俺は次々に料理を作り、それを大きなお弁当箱に詰めた。
これで最後。
俺はもう……彼の為に、何も作る事はないのだろう──。
「お前……何してんの?」
キッチンに佇む俺を見て、玲央がビックリした様に俺を見た。
「お弁当……これ、持って行って?」
「はぁ、何でさ?きっと榊家に行ったら、一流のシェフが作った料理が待ってるのに──」
「約束……したから。最後に、それだけ守らせて?お願い、玲央──。」
「よく分かんないけど……まぁ、持ってくだけならいいか。要らないって言われたら、帰りに捨てればいいんだし。っていうか僕、今朝はお前に構ってる暇ないの、忙しいんだよ。可愛い僕をより可愛く見て貰う為に、思いっきりお洒落しないとね~。」
そう言って、玲央はウキウキした足取りでキッチンを後にした──。
そして榊家との約束の時間が迫り、俺は出かける玲央とおじ様を玄関で見送った。
「僕、榊家の皆さんに気に入られたら、もうこのまま帰って来ないかもしれないね。お前とは、これでお別れかも。」
そう言って、お弁当を持った玲央は家を出て行く。
「では礼音、私も行くよ。家内は愛人と旅行中だから、家の事は任せたぞ?玲央がこのまま榊家で生活する事になったら、この家は私とお前の二人きり……たっぷりお前おを可愛がる事が出来る。私が帰って来るのを、楽しみに待ってろよ?」
おじ様は俺にキスをし、玲央に続き家を出た──。
家に一人になった俺は、思わず笑みを零した。
「楽しみに、待つ……?この家で……?」
俺は、すぐに自分の部屋に向かった。
そして俺は、カツラも眼鏡もコンタクトも外しゴミ箱に押し込むと、最低限の荷物を鞄に詰め、それを手に家を出た──。
※※※
「わぁ……何も変わってない。」
俺は、シュウ君と出会ったあの公園に来ていた。
ここに来るのは、シュウ君と別れた時以来だ。
この地に来て、残された記憶を頼りに思い出の公園が判明しても……俺は、どうしてもここに来れずにいた。
だって……今の俺がここに来たら、この神聖な思い出の地を、穢してしまう気がしたから──。
「この場に立つのは……あの時の、無垢で天使みたいな……穢れてなかった頃の俺じゃないと。そう思ってたけど……もう、これで最後だから……。」
あの人との待ち合わせ時間、もうすぐだな。
以前、あの家を抜け出し、会いに行こうとしていた父さんの古い知人──。
あの人の連絡先が、まだ変わってなくて良かった。
彼に連絡を取ると、彼は俺にも出来る仕事があると言い……困ってるなら力になるよと言ってくれたのだ。
詳しい話は会ってからすると言ってたから、どんな仕事かは分からないけど……その仕事に就いて、何とか生きれるところまで生きて……そしたら、その後は──。
「出来たら、父さんと母さんが居る所に逝きたいけど……俺、母さんとの約束を破っちゃったし……無理だよね──。」
俺は二人が居るであろう空を見上げ、静かに涙した──。
榊家に……彼に気に入られた今、この家はもう安泰だって。
これからは部下に仕事を任せ、俺は名ばかりの役員になって遊んで暮らす。
そうなったら、お前は学校を辞めろ。
俺の傍で、俺に一生尽くせ……そう、言っていた。
俺は、ぐったりした身体のまま、キッチンに立った──。
「……ねぇ、シュウ君。シュウ君は……卵焼きが好きって言ってたね。それから、ウインナーも。後は……ミートボールが食べたいって言って。」
俺は、改めて買ってきた食材を冷蔵庫から取り出し、料理を始めた。
「シュウ君は、ピクニックに行った事ないんだもんね。初めてのお弁当は、シュウ君が食べたいって話してた物を入れるね──。」
俺は次々に料理を作り、それを大きなお弁当箱に詰めた。
これで最後。
俺はもう……彼の為に、何も作る事はないのだろう──。
「お前……何してんの?」
キッチンに佇む俺を見て、玲央がビックリした様に俺を見た。
「お弁当……これ、持って行って?」
「はぁ、何でさ?きっと榊家に行ったら、一流のシェフが作った料理が待ってるのに──」
「約束……したから。最後に、それだけ守らせて?お願い、玲央──。」
「よく分かんないけど……まぁ、持ってくだけならいいか。要らないって言われたら、帰りに捨てればいいんだし。っていうか僕、今朝はお前に構ってる暇ないの、忙しいんだよ。可愛い僕をより可愛く見て貰う為に、思いっきりお洒落しないとね~。」
そう言って、玲央はウキウキした足取りでキッチンを後にした──。
そして榊家との約束の時間が迫り、俺は出かける玲央とおじ様を玄関で見送った。
「僕、榊家の皆さんに気に入られたら、もうこのまま帰って来ないかもしれないね。お前とは、これでお別れかも。」
そう言って、お弁当を持った玲央は家を出て行く。
「では礼音、私も行くよ。家内は愛人と旅行中だから、家の事は任せたぞ?玲央がこのまま榊家で生活する事になったら、この家は私とお前の二人きり……たっぷりお前おを可愛がる事が出来る。私が帰って来るのを、楽しみに待ってろよ?」
おじ様は俺にキスをし、玲央に続き家を出た──。
家に一人になった俺は、思わず笑みを零した。
「楽しみに、待つ……?この家で……?」
俺は、すぐに自分の部屋に向かった。
そして俺は、カツラも眼鏡もコンタクトも外しゴミ箱に押し込むと、最低限の荷物を鞄に詰め、それを手に家を出た──。
※※※
「わぁ……何も変わってない。」
俺は、シュウ君と出会ったあの公園に来ていた。
ここに来るのは、シュウ君と別れた時以来だ。
この地に来て、残された記憶を頼りに思い出の公園が判明しても……俺は、どうしてもここに来れずにいた。
だって……今の俺がここに来たら、この神聖な思い出の地を、穢してしまう気がしたから──。
「この場に立つのは……あの時の、無垢で天使みたいな……穢れてなかった頃の俺じゃないと。そう思ってたけど……もう、これで最後だから……。」
あの人との待ち合わせ時間、もうすぐだな。
以前、あの家を抜け出し、会いに行こうとしていた父さんの古い知人──。
あの人の連絡先が、まだ変わってなくて良かった。
彼に連絡を取ると、彼は俺にも出来る仕事があると言い……困ってるなら力になるよと言ってくれたのだ。
詳しい話は会ってからすると言ってたから、どんな仕事かは分からないけど……その仕事に就いて、何とか生きれるところまで生きて……そしたら、その後は──。
「出来たら、父さんと母さんが居る所に逝きたいけど……俺、母さんとの約束を破っちゃったし……無理だよね──。」
俺は二人が居るであろう空を見上げ、静かに涙した──。
21
お気に入りに追加
1,233
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる