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4 玲央視点

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「よく来てくれたな。さぁ、入ってくれ。」

「はい、秀一郎様。」

 秀一郎様は俺の肩を抱き、自室へと招き入れてくれた。

「甘い物、好きだったろう?今日は、チョコレートケーキにしたから。」

「ありがとうございます。」

 チョコか……抹茶ならまだ良かったのに。
 僕、甘い物苦手なんだよね~。

 ていうかあいつ、あんな見た目で甘い物が好きとか……似合わなさすぎでしょう。

 まぁ昔は僕と同じで、すっごく可愛かったらしいから、違和感なかったろうけどさ──。

「昔公園で遊んだ時、俺が家からチョコレートを持っていくと、お前は喜んでくれたな。今度、あの公園に一緒に出掛けてないか?」

「はい、是非!」

 公園なんてどうでもいいんだよね~……それより、もっとイイ所に行きたいんだけど。

 僕はさ、あなたとさっさと既成事実作って、あなたのものになりたいんだよね。

 知ってるよ、あなたが男にしか……否、あいつにしか興味ない事。
 だからあなたの家は、もうお兄様がさっさと結婚し、子供も作り、そっちに家を任せるんでしょう?

 でも別にあなたは勘当された訳でもなく、ちゃんと両親たちにも愛され、将来は事業の一つを任せて貰う約束だって事をさ。

 あなたの事は、探偵雇って何かと調べさせて貰ったからね──。
 
 その事業に父の事業が関われたら、僕の家はもっと金持ちに、もっと成り上がれるんだ……。
 土地成金の家の息子が、本当の金持ちの息子になれるなら……僕はなんだってやってやる。
 
 その為には、あいつの恋心も、あなたの恋心も利用させて貰うから──。
 
※※※

 三か月前、この学校に入る事になり、下見に来た時……僕は、この人に声をかけられた。

『レオ……お前、レオだよな?』

『そう、ですけど?』

『俺だよ、シュウ……秀一郎だ。レオ……ここに帰って来てたんだな……会いたかった──!』

 帰る……?
 あぁ、あいつの知り合いかな。

 ふ~ん。
 あいつに、こんなカッコいいお坊ちゃまの知り合いがいたとはね。

 ハハッ……こいつは利用できるな。
 しかも、またあいつをからかってやる事が出来るし……一石二鳥じゃん。

 何より僕、こんなイケメンと一度は遊んでみたかったんだよね。
 あんな田舎の学校じゃ、ろくな男が居なかったからさ──。

『お久しぶりです。僕も……あなたに会いたかった──!』

 そして家に帰った僕は、あいつに命じた。
 
 また、僕と一緒の学校に通う事。
 そして、見た目を変えろ……学校では静かに過ごせと──。

 父と母には事情を説明し、この先僕が上手くやれば、もっといい暮らしをさせてあげられると約束をした。
 そしたらあの二人は、僕があいつに何をしようが、どう扱おうが、全く何も言わなくなった。

 今では、僕と一緒になりあいつをいたぶってるくらいだ──。

※※※

「…お、玲央。どうした、ぼんやりして?」

「いえ……あなたと初めて会った時の事を、思い出してました。」

 すると秀一郎様は、一冊のアルバムを取り出し、僕に見せた。

「この写真、覚えてるか?あの公園で撮って貰ったんだ。」

「あぁ、ありましたね。そんな事が。」

「お前はこの時から変わらないな………。この天使の様な愛くるしさを残し、お前は大きくなった。」

 ふ~ん……あいつ、本当に可愛かったんだ。
 てか、今の僕の顔立ちとよく似てるな。

 遠い親戚からそう聞いた時は、冗談かと思ったけど……この写真を見たら納得だな。

 あーあ、時の流れって残酷。
 可愛かった子役が、大きくなって劣化するのと同じか。

 同じ先祖の血が、少しは流れてると言うのに……僕と違って、お前は失敗作だったんだな。
 
 同じ先祖というのは、あいつの母親が僕の家と遠い親戚関係にあるようで……その縁で、こうしてあいつを引き取る事になったのだ。
 
 まぁ、僕の家くらいの金持ちじゃないと、あんな資産価値のない子供を預かるのは無理だよね。

 というのも、あいつの両親は、周りの反対を押し切り愛を実らせた。

 そして二人は、半ば駆け落ち同然の様に姿を消し……そしてその後、あいつが生まれたそうだ。

 でも、そんな事するから罰が当たったんじゃないの?
 片方は病気で……もう片方は事故死って──。
 しかもその事故は、突っ込んできた車から母親があいつを庇い、その命を落とした悲惨なものだったのだと聞いた。

 以前あいつが僕の機嫌を損ねた時、お前の母親が死んだのはお前のせいだ、そう言ってやった事があるけど……あの時のあいつの顔といったら……思い出すだけで笑えるよ。

「どうした、何がおかしいんだ?」

「いえ……これは、秀一郎様と一緒に居られるのが嬉しくて……それでこんな笑顔になってしまうんですよ──。」
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