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窓をカリカリと引っ掻く音が聞こえ、俺は机から顔を上げた。
「アンブラ、お帰り!」
ジュリアスが、俺の魔獣アンブラを呼んだのはすぐ分かった。
きっと、ジュリアスの手に負えない事が起きたんだ。
「これは……成程、学園の誰かには頼めないね。この魔法陣からは……確かにシオンの気配がする。でも、もう一つ……俺の闇の魔力に近いものを感じる。そしてそれは、あの夢で感じた悪しき気配とよく似てる。それからこの魔法薬。光魔法で調合されてるとあるけど……カプセルの中身が見えないから、本当かどうかは怪しいものだなぁ。ゲームでは、シオンはこんな魔法薬など作ってなかったのに……。」
ジュリアスが、危険を顧みず掴んできてくれたこれらの品。
俺が、これからその正体を突き止めてみせるね──!
※※※
俺はそれらを手に、魔法商店のマルスさんの元を訪ねた。
彼は悪魔と人間のハーフで、魔法薬にも詳しいから──。
「……うん。確かに、この魔法陣には悪魔の気配を感じるな。話を聞く限り、これは相手を支配し、自分の虜にする魔法陣だな。悪魔が好きな魔法陣の一つだ。光魔法の魔法陣と配列がそっくりなんだが……その性質は、全く別の代物だ。」
「やっぱり……。じゃあこの薬は?」
「こうしてカプセルを割って中を見てみるとだな……ロイス様、これはとても薬とは呼べないぞ。これじゃあ人を元気にするどころか、腑抜けにしちまうよ。この成分には、飲んだ者の思考能力を麻痺させ、魔力を減退させる作用があるからな。」
「それ、すごく危険じゃない!」
「こんな物を人に飲ませるなんざ、立派な犯罪行為だ。憲兵に知らせれば、違法魔法薬製造ですぐに捕らえられ、牢屋行き決定だぞ?これを作った奴は、並の悪魔より余程恐ろしい奴だなぁ。」
「こんな酷い事、よく……ううん、あの子だから出来たのか。」
「そいつは悪魔と契約し、そうなったんじゃなく……元が悪魔の様な奴だから悪魔と契約できたんだなぁ。悪魔ってのは、そういう本質を持つ者をこよなく愛し……そして、自身もそういう存在なんだ。俺の父は悪魔だが……人間の娘に、おまけに聖女に恋した、いわゆる半端者だった。そんな父ですら、恋した母に対し、何度その心を誘惑し、虜にし、堕落させたいと思ったか分からない……そう言っていた。そしてそれが悪魔の本能なのだと。悪魔は欲に忠実だ。これを作った奴も、こんな事をしてでも欲しいものがあるんだろう。」
欲しいもの……?
じゃああの子、会長たち皆の心が欲しかったのかな……。
否、でもだったら、どうして自分を慕う彼らの事を重いだなんて言ったのか……。
彼の本当に欲しいものは、もしかしたら彼らじゃなく……ジュリアスただ一人、とか──?
「アンブラ、お帰り!」
ジュリアスが、俺の魔獣アンブラを呼んだのはすぐ分かった。
きっと、ジュリアスの手に負えない事が起きたんだ。
「これは……成程、学園の誰かには頼めないね。この魔法陣からは……確かにシオンの気配がする。でも、もう一つ……俺の闇の魔力に近いものを感じる。そしてそれは、あの夢で感じた悪しき気配とよく似てる。それからこの魔法薬。光魔法で調合されてるとあるけど……カプセルの中身が見えないから、本当かどうかは怪しいものだなぁ。ゲームでは、シオンはこんな魔法薬など作ってなかったのに……。」
ジュリアスが、危険を顧みず掴んできてくれたこれらの品。
俺が、これからその正体を突き止めてみせるね──!
※※※
俺はそれらを手に、魔法商店のマルスさんの元を訪ねた。
彼は悪魔と人間のハーフで、魔法薬にも詳しいから──。
「……うん。確かに、この魔法陣には悪魔の気配を感じるな。話を聞く限り、これは相手を支配し、自分の虜にする魔法陣だな。悪魔が好きな魔法陣の一つだ。光魔法の魔法陣と配列がそっくりなんだが……その性質は、全く別の代物だ。」
「やっぱり……。じゃあこの薬は?」
「こうしてカプセルを割って中を見てみるとだな……ロイス様、これはとても薬とは呼べないぞ。これじゃあ人を元気にするどころか、腑抜けにしちまうよ。この成分には、飲んだ者の思考能力を麻痺させ、魔力を減退させる作用があるからな。」
「それ、すごく危険じゃない!」
「こんな物を人に飲ませるなんざ、立派な犯罪行為だ。憲兵に知らせれば、違法魔法薬製造ですぐに捕らえられ、牢屋行き決定だぞ?これを作った奴は、並の悪魔より余程恐ろしい奴だなぁ。」
「こんな酷い事、よく……ううん、あの子だから出来たのか。」
「そいつは悪魔と契約し、そうなったんじゃなく……元が悪魔の様な奴だから悪魔と契約できたんだなぁ。悪魔ってのは、そういう本質を持つ者をこよなく愛し……そして、自身もそういう存在なんだ。俺の父は悪魔だが……人間の娘に、おまけに聖女に恋した、いわゆる半端者だった。そんな父ですら、恋した母に対し、何度その心を誘惑し、虜にし、堕落させたいと思ったか分からない……そう言っていた。そしてそれが悪魔の本能なのだと。悪魔は欲に忠実だ。これを作った奴も、こんな事をしてでも欲しいものがあるんだろう。」
欲しいもの……?
じゃああの子、会長たち皆の心が欲しかったのかな……。
否、でもだったら、どうして自分を慕う彼らの事を重いだなんて言ったのか……。
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