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19 ジュリアス視点
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「やはり、この部屋にも同じ魔法陣が……。」
副会長と会計、二人の部屋の床にも同様の魔法陣があり、その上に絨毯が敷かれていた。
「形は一緒だが、彼らの部屋にある魔法陣は、俺の部屋の物よりもずっと赤黒い色をしている。ん……この薬のような物は何だ?さっき、副会長の部屋にもあったが──。」
俺はその瓶を手に取り、中身を観察した。
『この薬は、シオンが光魔法で調合してくれた特製の薬なんだ。仕事で忙しい俺たちの体を気遣い、こうして作ってくれたんだよ。』
そう言って、執行部のメンバーが服用しているものだ──!
俺は、その瓶の中から一粒薬を取り出すとポケットにしまい、彼らの部屋を後にした──。
※※※
一旦自室に戻った俺は、鞄からある本を取り出した。
それは、悪魔に関する本だった。
兄上が夢で見た、悪魔に魂を売った少年……その人物が今のシオンの中に居るなら、この本から何かヒントが得られるかもしれない。
「悪魔は人を誘惑し、虜にし、堕落させる恐ろしい存在……。そして、その悪魔と契約した者は……悪魔の力を使う事が出来る。その方法は……もし魔法陣を描くならば、そこに契約者たる自身の血を混ぜ込めばいい。そうすれば、より強力な魔法陣を描ける──。」
では、あの赤黒い魔法陣は、シオンの血を混ぜた……ある意味、呪われた魔法陣という訳か。
恐らく、魔法陣の力が弱まると、その上からまた血を重ねているんだろう。
それで彼らの部屋の魔法陣は、あんなに濃い色を──。
「悪魔は人を誘惑し、虜にし、堕落させるか……まさに、今の彼そのものだな。魔法陣は良い証拠になった。後は、この薬の成分が分かれば……。」
この世界に、こういう魔法薬に詳しい人物は居たか……?
魔法学の教師か、それに長けている生徒に聞くしか……でも、先程の魔法陣のような恐ろしい代物なら、そう簡単に渡す事などできない。
彼らまで、危険に巻き込む事になってしまう。
それに、シオンの手がそこまで回っていないとも言えない。
この学園外で魔法薬に詳しく……そして、信頼のおける人物は──。
「そうだ……あの方なら──!だが、俺は今すぐここを離れられないし……。」
『ジュリアス……困った事があったら、すぐに知らせてね?……いつでも、俺の事を頼ってね?』
兄上……ここは、あなたの力をお借りします──。
「来い、アンブラ!」
すると、窓の外に一つの黒い影が降り立ち……窓を開ければ、それはすぐに俺の胸元にピョンと飛び込んで来た。
「ニャーン。」
それは、真っ黒な美しい毛並みをした猫だった。
兄上は立派な魔獣だというが……兄上と同じで、とても可愛らしい生き物だ。
「来てくれてありがとう、アンブラ。君には、この魔法薬を兄上の所に届けて欲しいんだ。要件はこのメモに書いたから、薬と一緒に渡してくれ。魔法薬は、あの魔方陣を映したハンカチに包むよ。これらは全て、シオンの悪事を暴く証拠になる。だから一刻も早く、兄上に渡して欲しいんだ。さぁ、首を出して……苦しくはないかい?」
「ニャ!」
「メモは……尻尾に結び付けておくね。」
「ウニャン!」
「アンブラ……兄上はそろそろ、夕食を食べ始める頃かな?一緒に住むようになり、こうして別々に夕食を取る日が来るなど、夢にも思わなかったけど……。俺は大丈夫、早速あなたの力に助けられたと……離れていても、あなたとちゃんと繋がっていると、そう兄上に伝えておくれ。」
「ニャン!」
元気よく返事をし、アンブラは夕闇の中へと消えて行った──。
副会長と会計、二人の部屋の床にも同様の魔法陣があり、その上に絨毯が敷かれていた。
「形は一緒だが、彼らの部屋にある魔法陣は、俺の部屋の物よりもずっと赤黒い色をしている。ん……この薬のような物は何だ?さっき、副会長の部屋にもあったが──。」
俺はその瓶を手に取り、中身を観察した。
『この薬は、シオンが光魔法で調合してくれた特製の薬なんだ。仕事で忙しい俺たちの体を気遣い、こうして作ってくれたんだよ。』
そう言って、執行部のメンバーが服用しているものだ──!
俺は、その瓶の中から一粒薬を取り出すとポケットにしまい、彼らの部屋を後にした──。
※※※
一旦自室に戻った俺は、鞄からある本を取り出した。
それは、悪魔に関する本だった。
兄上が夢で見た、悪魔に魂を売った少年……その人物が今のシオンの中に居るなら、この本から何かヒントが得られるかもしれない。
「悪魔は人を誘惑し、虜にし、堕落させる恐ろしい存在……。そして、その悪魔と契約した者は……悪魔の力を使う事が出来る。その方法は……もし魔法陣を描くならば、そこに契約者たる自身の血を混ぜ込めばいい。そうすれば、より強力な魔法陣を描ける──。」
では、あの赤黒い魔法陣は、シオンの血を混ぜた……ある意味、呪われた魔法陣という訳か。
恐らく、魔法陣の力が弱まると、その上からまた血を重ねているんだろう。
それで彼らの部屋の魔法陣は、あんなに濃い色を──。
「悪魔は人を誘惑し、虜にし、堕落させるか……まさに、今の彼そのものだな。魔法陣は良い証拠になった。後は、この薬の成分が分かれば……。」
この世界に、こういう魔法薬に詳しい人物は居たか……?
魔法学の教師か、それに長けている生徒に聞くしか……でも、先程の魔法陣のような恐ろしい代物なら、そう簡単に渡す事などできない。
彼らまで、危険に巻き込む事になってしまう。
それに、シオンの手がそこまで回っていないとも言えない。
この学園外で魔法薬に詳しく……そして、信頼のおける人物は──。
「そうだ……あの方なら──!だが、俺は今すぐここを離れられないし……。」
『ジュリアス……困った事があったら、すぐに知らせてね?……いつでも、俺の事を頼ってね?』
兄上……ここは、あなたの力をお借りします──。
「来い、アンブラ!」
すると、窓の外に一つの黒い影が降り立ち……窓を開ければ、それはすぐに俺の胸元にピョンと飛び込んで来た。
「ニャーン。」
それは、真っ黒な美しい毛並みをした猫だった。
兄上は立派な魔獣だというが……兄上と同じで、とても可愛らしい生き物だ。
「来てくれてありがとう、アンブラ。君には、この魔法薬を兄上の所に届けて欲しいんだ。要件はこのメモに書いたから、薬と一緒に渡してくれ。魔法薬は、あの魔方陣を映したハンカチに包むよ。これらは全て、シオンの悪事を暴く証拠になる。だから一刻も早く、兄上に渡して欲しいんだ。さぁ、首を出して……苦しくはないかい?」
「ニャ!」
「メモは……尻尾に結び付けておくね。」
「ウニャン!」
「アンブラ……兄上はそろそろ、夕食を食べ始める頃かな?一緒に住むようになり、こうして別々に夕食を取る日が来るなど、夢にも思わなかったけど……。俺は大丈夫、早速あなたの力に助けられたと……離れていても、あなたとちゃんと繋がっていると、そう兄上に伝えておくれ。」
「ニャン!」
元気よく返事をし、アンブラは夕闇の中へと消えて行った──。
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