推し様の幼少期が天使過ぎて、意地悪な義兄をやらずに可愛がってたら…彼に愛されました。

櫻坂 真紀

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18 ジュリアス視点

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「ようこそ、ジュリアス。ここが君の部屋だよ!」

 シオンは俺の手から荷物を受け取り、俺の手を引くと部屋に招き入れた。

「すぐ使える様に、掃除は僕がしておいたよ?」

「わざわざ、ありがとうございす。」

「もう……敬語は辞めてって言ったじゃない。」

「ですが、あなたは俺の先輩にあたる人ですし……。」

「もう、ジュリアスは固いんだから。会長たちとは大違い。あの人たちは、すぐに僕に打ち解けて、シオン、シオンって、もううるさいくらい名前を呼んでくるんだもん。」

「あなたは……それが嬉しくないのですか?」

「まぁ、悪い気はしないけど……でも、本命の人に呼ばれなきゃ意味無いかな。」

 そう言って、シオンは俺をじいっと見つめた。

 この目は……何だ?

 この目に見られると、どうにも心が落ち着かない。
 まるで、心を絡め取られるような……。

 俺は彼から目を反らし、彼の手から荷物を預かり背を向けた。

「荷物の片づけがありますので……申し訳ありませんが、部屋から出て貰えますか?」

「……そんな。僕、手伝ってあげるよ。」

「いえ。ここに長居はする気は無いので、たいして荷物も持って来ませんから大丈夫です。それより、会長があなたに自室に来て欲しいと仰ってました。待ってらっしゃるでしょうから、早く行かれた方が良いかと。」

「……分かった。でも、また遊びに来させてね?」

 そう言って、シオンは部屋を出て行った。

※※※

 部屋を掃除、か──。
 見た所、特に変わった様子はないが……。

 何か危険な物が仕掛けてあったりする様な、そんな不自然さは感じない。

 俺は、腕のブレスレットを外した。

 これは、父から借りた魔力を抑える魔道具だ。

 シオンは、俺に魔力がないと思っている。
 だから俺に何かしてくるとすれば、俺が感じ取る事が出来ない魔力を用いた罠だろう。

 俺は全神経を集中し、シオンの魔力の気配を探った。

「……ここだ、床から強い魔力を感じる。」

 俺は部屋に置かれたテーブルを端に寄せ、敷かれた絨毯をじっと見た。

「見た所、何の変哲もない絨毯だが……どうしてここから……。そうか──!」

 俺は敷かれていた絨毯を引き剥がし、床を見た。

「……魔法陣?これは……魔法の本によると、光魔法の魔法陣、か?でも何だ、この赤黒い魔法陣は……。こんなおぞましい魔法陣が、本当に光魔法の──?」

 俺は、ポケットからハンカチを取り出し魔力を籠めると……その魔法陣の上にそれを広げた。
 するとそのハンカチに、その魔法陣と同じ物がジワリと浮き上がってきた。

 これで、万一この魔法陣が消されても、ここに証拠は残る。
 これには魔法陣の形だけでなく、その性質、描いた者の情報がそっくりそのまま写されているから──。

 だは俺は、魔法陣から放たれる魔力に気分が悪くなり、すぐに絨毯を戻した。

 気を抜いたら、この魔法陣の影響を全身に受ける事になる……。

「この部屋に居る間は、こうして兄上の魔力を纏い……精神を集中させ、この身に眠る聖剣の力に縋るよりないな。」

 そうでもしなければ……恐らく三日三晩の内に、この魔法陣の魔力に身も心も染まってしまうだろう──。

「確か……会長たちの部屋の準備をしたのも、シオンだったな。きっと彼は、この魔法陣と同じ物を彼らの部屋にも描いているはず──。」

 会長たちも、こうして自室で身も心もこの魔法陣に……シオンの力に、身を蝕まれて行ったんだろうか──?

 しかし会長たちは、その強さの違いはあれど、それぞれに魔力を持っている。

 この魔法陣の影響を受けただけで、今の様になったとは思えない……。

 そこで俺は、留守にしている副会長と会計の部屋に、こっそりと忍び込む事にした。

 魔力で部屋の鍵もすぐに開いた。
 本来、こんな泥棒の様な真似はしたくはないが……シオンの正体を掴む為だ。

 お二人共、悪く思わないで下さいね──。
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