17 / 28
17
しおりを挟む
あれ……ここはどこだろう?
俺、自分の部屋のベッドで眠ってた、よね……?
俺は、何故か真っ暗な空間の中を漂っていた。
すると、どこかから声が聞こえて来て……見れば、そこには二人の人物が──。
『何でだよ……何で勝手に俺の前から居なくなるんだ!』
『落ち着きなさい!あなた……あの子を嫌ってたじゃない。なのに、どうして……?』
『……そうだよ。嫌いだから、俺の許可なく死んだのが許せないんじゃん!まだまだあんなんじゃ足りないよ……。もっとあいつの嫌がる顔が、沢山見たかったのに──!』
何、この子……。
すごく怖い事、言ってるんだけど──!
そう思ったのは俺だけじゃない様で、その子の隣に居た女の人は、わずかに後退った。
『あいつを、もっと苦しめてやりたかったのに……。それが叶うなら、俺は悪魔にだって魂を売るよ?』
あ、くま……?
すると、その子がクルリと振り向き、その様子を呆然と見ていた俺を見て、ニヤリと笑った。
あっ……この子、俺、知ってる──。
『やあっと見つけた。お前……そんな世界に居たんだ──。』
※※※
「い、いやだあぁぁ──!」
「……兄上!?大丈夫ですか?しっかりして下さい!」
「あ、あれ……ここ、俺の部屋……?ジュ、ジュリア、ス……?」
「そうです。あなたの弟の……あなたの愛するジュリアスですよ。」
俺は、思わずジュリアスの胸に飛び込んだ。
「お、俺……夢、見てた。とても怖い夢。」
「一体、どんな夢なのです?」
「前に居た世界で、俺を酷く虐めてた男の夢。あの目は、間違いなく彼だ。あの子は言ったんだ、俺をもっと苦しめたかったって。それが叶うなら、悪魔にだって魂を売るって。」
「悪魔……。」
「あの子は、きっと悪魔と契約したんだ。それで、俺を追いかけこの世界に……!そして、その転生先は──。」
「シオン……だという訳ですね。」
「夢だから、何の証拠もないけど……!」
ジュリアスは、俺の背中をポンポンと優しくあやしながら、少し考え込んだ。
「シオンは……その身体は光魔法の使い手ですが……その魂は悪魔と契約した、悪しき心の持ち主……なのかも知れませんね。そしてそうならば、悪魔の力も使えるはず。兄上は彼にそんな設定はないと仰るかもしれませんが……転生者という事ならば、秘めた力があってもおかしくはない。」
「うん……。」
「ならば、あなたもそうなのでは?その身は闇魔法の使い手ロイスですが……その魂は温かく清いもので……聖なる力を秘めている──。」
「それと関係あるか分からないけど……俺、心当たりあったかも。実はね、俺は死ぬ直前に神様に願ったんだ。次に生れるなら、もっと幸せになりたいって──。前世の俺は、色々と散々だったから……。」
「ならば、あなたには神の加護があるのかもしれませんね。というのも、昨日あなたの魔力を頂き、今朝目が覚めた所……身体の調子が凄く良いのです。これを見て下さい……剣の鍛錬で付いた古傷が、綺麗に消えています。闇の魔力では、こうはなりませんから。」
「じゃあ俺は、意図せずジュリアスに加護のようなものを授けられたって事?」
「えぇ。ですが、あなたが俺を大切に想ってくれる心、愛してくれる心……それら全てが俺の加護になるのです。俺は、今日の放課後から寮へ入ります。そして必ずや、シオンの正体を暴き……あなたの元へと帰ってきますね。」
「うん。でもね、ジュリアス……困った事があったら、すぐに知らせてね?ジュリアスには、俺の使役する魔獣を付けるよ。呼べば必ず姿を現すから……だから、いつでも俺の事を頼ってね──?」
俺、自分の部屋のベッドで眠ってた、よね……?
俺は、何故か真っ暗な空間の中を漂っていた。
すると、どこかから声が聞こえて来て……見れば、そこには二人の人物が──。
『何でだよ……何で勝手に俺の前から居なくなるんだ!』
『落ち着きなさい!あなた……あの子を嫌ってたじゃない。なのに、どうして……?』
『……そうだよ。嫌いだから、俺の許可なく死んだのが許せないんじゃん!まだまだあんなんじゃ足りないよ……。もっとあいつの嫌がる顔が、沢山見たかったのに──!』
何、この子……。
すごく怖い事、言ってるんだけど──!
そう思ったのは俺だけじゃない様で、その子の隣に居た女の人は、わずかに後退った。
『あいつを、もっと苦しめてやりたかったのに……。それが叶うなら、俺は悪魔にだって魂を売るよ?』
あ、くま……?
すると、その子がクルリと振り向き、その様子を呆然と見ていた俺を見て、ニヤリと笑った。
あっ……この子、俺、知ってる──。
『やあっと見つけた。お前……そんな世界に居たんだ──。』
※※※
「い、いやだあぁぁ──!」
「……兄上!?大丈夫ですか?しっかりして下さい!」
「あ、あれ……ここ、俺の部屋……?ジュ、ジュリア、ス……?」
「そうです。あなたの弟の……あなたの愛するジュリアスですよ。」
俺は、思わずジュリアスの胸に飛び込んだ。
「お、俺……夢、見てた。とても怖い夢。」
「一体、どんな夢なのです?」
「前に居た世界で、俺を酷く虐めてた男の夢。あの目は、間違いなく彼だ。あの子は言ったんだ、俺をもっと苦しめたかったって。それが叶うなら、悪魔にだって魂を売るって。」
「悪魔……。」
「あの子は、きっと悪魔と契約したんだ。それで、俺を追いかけこの世界に……!そして、その転生先は──。」
「シオン……だという訳ですね。」
「夢だから、何の証拠もないけど……!」
ジュリアスは、俺の背中をポンポンと優しくあやしながら、少し考え込んだ。
「シオンは……その身体は光魔法の使い手ですが……その魂は悪魔と契約した、悪しき心の持ち主……なのかも知れませんね。そしてそうならば、悪魔の力も使えるはず。兄上は彼にそんな設定はないと仰るかもしれませんが……転生者という事ならば、秘めた力があってもおかしくはない。」
「うん……。」
「ならば、あなたもそうなのでは?その身は闇魔法の使い手ロイスですが……その魂は温かく清いもので……聖なる力を秘めている──。」
「それと関係あるか分からないけど……俺、心当たりあったかも。実はね、俺は死ぬ直前に神様に願ったんだ。次に生れるなら、もっと幸せになりたいって──。前世の俺は、色々と散々だったから……。」
「ならば、あなたには神の加護があるのかもしれませんね。というのも、昨日あなたの魔力を頂き、今朝目が覚めた所……身体の調子が凄く良いのです。これを見て下さい……剣の鍛錬で付いた古傷が、綺麗に消えています。闇の魔力では、こうはなりませんから。」
「じゃあ俺は、意図せずジュリアスに加護のようなものを授けられたって事?」
「えぇ。ですが、あなたが俺を大切に想ってくれる心、愛してくれる心……それら全てが俺の加護になるのです。俺は、今日の放課後から寮へ入ります。そして必ずや、シオンの正体を暴き……あなたの元へと帰ってきますね。」
「うん。でもね、ジュリアス……困った事があったら、すぐに知らせてね?ジュリアスには、俺の使役する魔獣を付けるよ。呼べば必ず姿を現すから……だから、いつでも俺の事を頼ってね──?」
177
お気に入りに追加
3,495
あなたにおすすめの小説

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる
彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。
国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。
王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。
(誤字脱字報告は不要)

生まれ変わったら知ってるモブだった
マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。
貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。
毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。
この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。
その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。
その瞬間に思い出したんだ。
僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。

異世界に転移したら運命の人の膝の上でした!
鳴海
BL
ある日、異世界に転移した天音(あまね)は、そこでハインツという名のカイネルシア帝国の皇帝に出会った。
この世界では異世界転移者は”界渡り人”と呼ばれる神からの預かり子で、界渡り人の幸せがこの国の繁栄に大きく関与すると言われている。
界渡り人に幸せになってもらいたいハインツのおかげで離宮に住むことになった天音は、日本にいた頃の何倍も贅沢な暮らしをさせてもらえることになった。
そんな天音がやっと異世界での生活に慣れた頃、なぜか危険な目に遭い始めて……。

BLゲームのモブに転生したので壁になろうと思います
雪
BL
前世の記憶を持ったまま異世界に転生!
しかも転生先が前世で死ぬ直前に買ったBLゲームの世界で....!?
モブだったので安心して壁になろうとしたのだが....?
ゆっくり更新です。
不憫王子に転生したら、獣人王太子の番になりました
織緒こん
BL
日本の大学生だった前世の記憶を持つクラフトクリフは異世界の王子に転生したものの、母親の身分が低く、同母の姉と共に継母である王妃に虐げられていた。そんなある日、父王が獣人族の国へ戦争を仕掛け、あっという間に負けてしまう。戦勝国の代表として乗り込んできたのは、なんと獅子獣人の王太子のリカルデロ! 彼は臣下にクラフトクリフを戦利品として側妃にしたらどうかとすすめられるが、王子があまりに痩せて見すぼらしいせいか、きっぱり「いらない」と断る。それでもクラフトクリフの処遇を決めかねた臣下たちは、彼をリカルデロの後宮に入れた。そこで、しばらく世話をされたクラフトクリフはやがて健康を取り戻し、再び、リカルデロと会う。すると、何故か、リカルデロは突然、クラフトクリフを溺愛し始めた。リカルデロの態度に心当たりのないクラフトクリフは情熱的な彼に戸惑うばかりで――!?

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。

悪役令息物語~呪われた悪役令息は、追放先でスパダリたちに愛欲を注がれる~
トモモト ヨシユキ
BL
魔法を使い魔力が少なくなると発情しちゃう呪いをかけられた僕は、聖者を誘惑した罪で婚約破棄されたうえ辺境へ追放される。
しかし、もと婚約者である王女の企みによって山賊に襲われる。
貞操の危機を救ってくれたのは、若き辺境伯だった。
虚弱体質の呪われた深窓の令息をめぐり対立する聖者と辺境伯。
そこに呪いをかけた邪神も加わり恋の鞘当てが繰り広げられる?
エブリスタにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる