推し様の幼少期が天使過ぎて、意地悪な義兄をやらずに可愛がってたら…彼に愛されました。

櫻坂 真紀

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「そんなに、不安な顔をなさらないで下さい。」

 そう言って、ジュリアスは俺の頬に軽いキスを落とした。

「俺は、あそこに残ります。そして、会長たちの様子を探ってみます。もしかしたら……彼らは何かの魔法で操られ、ああなっているのかも知れません。」

「魔法って……まさか、シオンの光魔法……?」

「そこを含め、俺は調べて見ますね。もし彼に問題があるなら、何とかしなければいけません。今様子がおかしいのは、生徒会執行部のメンバーだけですが……これが学園全体に広がりを見せれば大変です。彼らの様に、あなたを迫害しようとする者、危害を加えようとする者が現れるかもしれませんので。」

「俺を……?」

 さっきの会長の目を思い出し、俺はぶるりと震えた。

 駄目……怖がってちゃ駄目だ……。
 ジュリアスの方が、もっと危ない場所に居るのに。

 俺は、ジュリアスの恋人で、お兄ちゃんだ。
 俺は、俺を守るジュリアスを守る為に、魔法を学んでるんだから。
 
 もしシオンが変な魔法を使い、ジュリアスに危害を加えるなら……俺はどんな手を使ってもそれに対抗し、ジュリアスを守らないと──。

「ジュリアス……俺も、光魔法の事を調べてみるよ!俺はジュリアスの愛を信じる……だから、ジュリアスも俺の愛を信じてね──?」

※※※

 俺は闇魔法しか使えないから……こうして光魔法について調べる機会は余り無い。

 ジュリアスは言った。
 生徒会執行部のメンバーはシオンの操り人形……愛玩動物の様だと。

 人の心を……思考を操る魔法はあるにはあるけど……でも光魔法にそんな禍々しい魔法など──。

「何でロイスが、光魔法の本を読んでるの?」

 その声に、俺は思わず手から本を落としてしまった。

「シ、シオン……。あの、たまには気分を変えて、読んでみようかなって。それにシオンは、俺に魔法の事を色々教えてくれただろう?だから、俺もこうして勉強すれば、シオンに何か教えてあげられるかもって。」

 俺の言葉に、シオンはクスクスと笑い出した。

「僕に教える……?やだなぁ、ロイス。僕の方がロイスよりも成績がいいんだから、君に教わるだなんて……恥ずかしいよ。それより、ジュリアスの事で話があるんだ。」

「ジュ、ジュリアスがどうしたんだ!?あの子に何か──」

「何かって何?僕が彼に何かしたとでも?」

「いや、そんな事は……。」

「まぁいいや。ジュリアスはね、暫く家には帰らない、その間は学園の寮に身を置く事にするそうだよ。さっき、会長とそう話してるのを聞いちゃった。今、生徒会の仕事が忙しいからね。生徒会執行部のメンバーは皆、寮の特別室を使ってるから……ジュリアスもそこを使う為に、その許可を会長に貰ってたみたい。」

 ジュリアスが、寮に……?

 待って……確か、シオンも学生寮に住んでる設定だった。
 そして彼は主人公特権で、執行部のメンバー……攻略対象の部屋に、自由に行く事ができたはず……。

 もしこれがゲーム通りなら、シオンはきっとジュリアスの部屋も訪ねる。

 一つの部屋で、仲良さげに寄り添い話をするシオンとジュリアスが頭に浮かび、俺の顔はサアッと青くなった。
 
 確か、ゲームの中のジュリアスルートで……親密になった二人が、その部屋の中でキスをする場面が描かれてた。
 
 そ、そんなの嫌だ──!

※※※

「フフ、どうしたのロイス?そんなに青い顔をして……。ジュリアスなら大丈夫だよ。彼の事は、僕が君に代わり、しっかり面倒を見てあげるから。」

 そう言って、シオンは去って行った──。

 シオン……何だか、以前のシオンじゃないみたいだ。

 主人公のシオンは、他人から何か教えて貰う事を恥だと思わない……ありがとうと言い受け入れる子だった。

 それに最後に俺に笑いかけたあの目……あれと同じ目を、俺は以前に……転生前に見た事がある。

 あれは、あの子は──。

 でも……今は確証がない。

 とにかく、ジュリアスに話をしないと。

 今日すぐ、寮には行かないだろうから……帰ったら、俺の考えてる事を全て伝えなきゃ──。
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