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ジュリアスが生徒会執行部に入って、学校で会う時間が以前よりもグンと減った。
お昼も一緒に食べられない、帰りも一緒に帰る事が出来ない……そんな日もある。
ちょっと寂しいけど……離れてても心は繋がってる……だから、俺は大丈夫。
それに、自分の好きな人が一生懸命にやってる事の邪魔になっちゃいけない。
俺は、こうして陰ながら見守る事が出来れば、それで十分──!
って、思ったけど……ジュリアスが生徒会執行部で頑張ってる様子が見たくて、俺はお弁当を片手に生徒会室の前に来ていた。
ジュリアスの事をさりげなくシオンに聞いてみても、普通に頑張ってるよ、くらいにしか教えてくれないから。
というか、最近のシオンは生徒会室に入り浸る様になってて、俺とゆっくり話す時間がないのだ。
何だか、それもちょっと気になるんだよね……。
だから俺は、お昼のお弁当を届けるという名目でここを訪ねたのだ──。
※※※
コン、コン──。
「誰だ?」
「失礼します。ジュリアスの兄で、ロイスと申します。彼に昼食を持って来ました。」
「ジュリアスの兄……あぁ、闇魔法の。ここは、一生徒が勝手には入れないが?」
出て来たのは、生徒会長であり、俺様王子であるライナー様だった。
「あの、ほんの少しでいいのです。お昼も仕事をしている弟が心配で──」
「あいつなら、シオンと共に食事に出た。フン……お前の様な闇魔法の使い手が、ここに入れると思うな。ここはな、光魔法の気配に溢れた神聖な場所だ。もう来るな──。」
そう言って、彼は乱暴にドアを閉めた。
な、何だ、あれは……。
いくら俺様キャラだからって、ライナーは何も悪い事をしてない人間に対し、あんな物の言い方をする人じゃなかった。
それに何より、あの冷たい目……。
人を見下し、排除しようとするあの目は……確かに、昔──。
それに……今、指輪がかすかに反応したような……?
「兄上!」
「ジュ、ジュリアス!?シオンとお昼に行ったんじゃ──」
「いいえ、無理やり連れて行かれただけです。俺は、あなたがそのお弁当を持って来てくれるのを待ってたんです。さぁ、こちらに来て下さい。」
ジュリアスに連れて行かれたのは、生徒会執行部が管理している裏庭だった。
「ここに掛けて下さい。いいお天気ですし……こうして外でお弁当を食べるのも、楽しいですね。」
そう言って笑いかけるジュリアスに、俺はどうしようかと思ったが、先程の事を話した。
「……だから、俺がここで食事をするのは、マズいんじゃないかと思って。」
するとジュリアスは不機嫌そうな顔になり、一つため息を吐いた。
「その理屈が通るなら、シオン様も一生徒……生徒会室に入り浸ってるのは問題なはずですよ。なのに、何のお咎めもないどころか……むしろ会長たちは喜んで招き入れている。兄上……会長は、あの生徒会室は光魔法の気配に溢れた神聖な場所と仰ったんですね?俺には……とてもそんな場所には思えません。」
「……え?」
「優秀な人材が集まる場だから、自分の為になる……そう思い執行部に入りましたが……今の会長たちからは、学ぶ事はありません。彼らは皆、あのシオンという人間に溺れている。まるで彼の操り人形……いえ、愛玩動物といってもいいかもしれません。これは、以前兄上が仰った、ゲームの設定か何かでしょうか?」
「た、確かに、全員と結ばれるハーレムエンドはあるけど……でもそんな操り人形とか、愛玩動物だなんて感じるような禍々しいものじゃ……。ねぇジュリアス……そんな中に居て、ジュリアスは大丈夫なのか?」
「俺は魔力が一切ないですが……あなたへの強い愛がありますからね。彼らの様に、シオンを愛おしいと思ったり、その傍に居たいと感じた事は、未だ一度もありません。それに……俺の中には聖剣も眠ってますし、そのおかげかも知れません。」
愛……。
確かに、俺はジュリアスが大好き。
そしてジュリアスも俺が好き。
俺たちは間違いなく愛し合っててて、聖剣も彼を守ってくれてるはず。
でも……それでも心配だよ──。
お昼も一緒に食べられない、帰りも一緒に帰る事が出来ない……そんな日もある。
ちょっと寂しいけど……離れてても心は繋がってる……だから、俺は大丈夫。
それに、自分の好きな人が一生懸命にやってる事の邪魔になっちゃいけない。
俺は、こうして陰ながら見守る事が出来れば、それで十分──!
って、思ったけど……ジュリアスが生徒会執行部で頑張ってる様子が見たくて、俺はお弁当を片手に生徒会室の前に来ていた。
ジュリアスの事をさりげなくシオンに聞いてみても、普通に頑張ってるよ、くらいにしか教えてくれないから。
というか、最近のシオンは生徒会室に入り浸る様になってて、俺とゆっくり話す時間がないのだ。
何だか、それもちょっと気になるんだよね……。
だから俺は、お昼のお弁当を届けるという名目でここを訪ねたのだ──。
※※※
コン、コン──。
「誰だ?」
「失礼します。ジュリアスの兄で、ロイスと申します。彼に昼食を持って来ました。」
「ジュリアスの兄……あぁ、闇魔法の。ここは、一生徒が勝手には入れないが?」
出て来たのは、生徒会長であり、俺様王子であるライナー様だった。
「あの、ほんの少しでいいのです。お昼も仕事をしている弟が心配で──」
「あいつなら、シオンと共に食事に出た。フン……お前の様な闇魔法の使い手が、ここに入れると思うな。ここはな、光魔法の気配に溢れた神聖な場所だ。もう来るな──。」
そう言って、彼は乱暴にドアを閉めた。
な、何だ、あれは……。
いくら俺様キャラだからって、ライナーは何も悪い事をしてない人間に対し、あんな物の言い方をする人じゃなかった。
それに何より、あの冷たい目……。
人を見下し、排除しようとするあの目は……確かに、昔──。
それに……今、指輪がかすかに反応したような……?
「兄上!」
「ジュ、ジュリアス!?シオンとお昼に行ったんじゃ──」
「いいえ、無理やり連れて行かれただけです。俺は、あなたがそのお弁当を持って来てくれるのを待ってたんです。さぁ、こちらに来て下さい。」
ジュリアスに連れて行かれたのは、生徒会執行部が管理している裏庭だった。
「ここに掛けて下さい。いいお天気ですし……こうして外でお弁当を食べるのも、楽しいですね。」
そう言って笑いかけるジュリアスに、俺はどうしようかと思ったが、先程の事を話した。
「……だから、俺がここで食事をするのは、マズいんじゃないかと思って。」
するとジュリアスは不機嫌そうな顔になり、一つため息を吐いた。
「その理屈が通るなら、シオン様も一生徒……生徒会室に入り浸ってるのは問題なはずですよ。なのに、何のお咎めもないどころか……むしろ会長たちは喜んで招き入れている。兄上……会長は、あの生徒会室は光魔法の気配に溢れた神聖な場所と仰ったんですね?俺には……とてもそんな場所には思えません。」
「……え?」
「優秀な人材が集まる場だから、自分の為になる……そう思い執行部に入りましたが……今の会長たちからは、学ぶ事はありません。彼らは皆、あのシオンという人間に溺れている。まるで彼の操り人形……いえ、愛玩動物といってもいいかもしれません。これは、以前兄上が仰った、ゲームの設定か何かでしょうか?」
「た、確かに、全員と結ばれるハーレムエンドはあるけど……でもそんな操り人形とか、愛玩動物だなんて感じるような禍々しいものじゃ……。ねぇジュリアス……そんな中に居て、ジュリアスは大丈夫なのか?」
「俺は魔力が一切ないですが……あなたへの強い愛がありますからね。彼らの様に、シオンを愛おしいと思ったり、その傍に居たいと感じた事は、未だ一度もありません。それに……俺の中には聖剣も眠ってますし、そのおかげかも知れません。」
愛……。
確かに、俺はジュリアスが大好き。
そしてジュリアスも俺が好き。
俺たちは間違いなく愛し合っててて、聖剣も彼を守ってくれてるはず。
でも……それでも心配だよ──。
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