推し様の幼少期が天使過ぎて、意地悪な義兄をやらずに可愛がってたら…彼に愛されました。

櫻坂 真紀

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 あの出来事があってから、俺はジュリアス様の顔をまともに見る事が出来なくなってしまった。

 そんな中、ジュリアス様が生徒会に入る事を了承した事を、俺はシオンから聞かされた。

「彼ももう、学園生活に慣れて来たからね……それに、ロイスの事が凄く大好きなのは分かるけど、そろそろお兄ちゃん離れもしないと駄目じゃない?」

「お、お兄ちゃん離れ……?」

「彼ね、年齢よりも落ち着いてるし、穏やかで優しいし、剣の腕だって凄いし、何よりあの容姿。モテない訳がないよ。でも、学園の行き帰りや休み時間、お昼もずっとロイスと一緒でしょう?皆、中々声かけるチャンスがなかったみたい。」

 そっか……でも、当然だよね。

 だって、あのジュリアス様だもん。

 それに本来なら、ジュリアス様は学園に入ってすぐ、生徒会執行部の一員になるっていうルートがあったくらいだしね。

 ジュリアス様が生徒会執行部に入ったら、このシオンとの距離がグッと近くなるな。

 そういえばシオン…生徒会執行部の中で、誰が好きなのかな。

 もう、誰かのルートに突入しててもいい時期だよね──?

※※※

「シオンはさ……生徒会執行部のメンバーの中で、いいなって思ってる方は誰かいらっしゃるの?」

「どうして?」

「だって……皆、素敵な殿方ばかりだし……いつも傍に居たら、特別に好きとか、そういうふうには思わない?」

「う~ん、どうだろう……皆それぞれに良い所があるから。僕は……皆の事が平等に好きかな。」

 み、皆って……それってまさか、伝説のハーレムエンド──!?

「でも、ジュリアスが入って来てくれたら変わるかも。」

「…え?」

「だってジュリアス、紳士的でとても素敵じゃない。執行部の皆は僕に甘くて……何だかそれが、時々重いなって思う事があるけど……ジュリアスは、他の生徒を見る目と同じ目で僕を見てる。それが、ちょっと新鮮なんだ。」

「そう、なの……。」

 今、何か引っかかる所があった……。

 皆の、攻略キャラの気持ちが重い……?

 ゲームの中のシオンは、皆から愛を向けられても、その愛にいつも誠実に向き合ってた。
 自分を大事にしてくれる事に、ありがとうって感謝の気持ちを常に持ってた。

 それが、台詞や表情、行動からちゃんと伝わって来た。

 俺はこんなふうに周りに愛された事はなかったけど……こうして誰かに好きになって貰えたら、このシオンみたいにその気持ちに誠実に向き合おう、好きになってくれてありがとう……そういう気持ちでいたいと思えたのに……。

 でも、このシオンは、何だか──。

「どうしたの、僕の顔に何かついてる?」

 ニコリと微笑むシオンは、いつものシオンだ。

「う、ううん。何でもない……。」

 俺は……首に下がった指輪を、思わず服の上からギュッと握りしめた──。

※※※

「兄上、どこか体調でもお悪いのですか?あまり……食事が進んでいませんから。」

「え、そ、そうかな……。」

「この前言った事を気にしているのであれば……もう、忘れて下さって構いません。」

「え!?」

 俺は、半分以上残っていたランチから目を上げ、ジュリアス様を見た。

「俺の気持ちが、あなたのご負担になるなら……俺はこの気持ちは捨てます。ですから、どうかあなたは、以前の様に弟として俺を──」

「ま、待って!違う、そうじゃないんだ。俺……ジュリアスが生徒会執行部のメンバーになるって聞いて、それで……。」

「はい、シオン様から再三の誘いを受け、決めました。」

「それは……シオンがいるから、なの?メンバーになろうと思ったのは、彼があそこにいる、から……?」

 そう尋ねる俺の言葉は震えていて……それに気づいたのだろう、ジュリアス様は目を見開き俺を見た。

「いいえ、違います。俺があそこに入るのは、この学園を良くしたいからです。生徒がもっと学びやすく、そして良い学園生活を送れるよう……そうなれば、兄上ももっと、この学園生活を楽しめるのではないか。そう、思ったのも要因の一つです。」

「お、俺の為に……?」

「今の俺は、あなたに何が出来るだろう……そう考えた結果です。それに、優秀な人材が集まる生徒会執行部に入れば、色々と学ぶ事も多いでしょう。きっと、今後の役に立つと思いまして。」

 ジュリアス様……何て立派な考えを……何て素敵なんだろうか──。

 そして……こうして、いつも俺の事を考えてくれるあなたが……俺は、堪らなく好きだ──。

 俺の胸は、あの時……キスをされそうになった時と同じくらい、ドキドキしていた。

「お願い、ジュリアス……俺への気持ち、捨てないで?俺……漸く分かったんだ。俺……俺もね、ジュリアスが好き。あなたの事……一人の男として、好きなんだ──。」
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