上 下
10 / 28

10

しおりを挟む
「……ここが音楽室で、こっちは美術室。一度に覚えなくても平気だよ、移動教室の時は僕が一緒に行くから!」

「あ、ありがとう、シオンさん。」

「シオンでいいよ!僕も君の事、ロイスって呼びたいし。光魔法と闇魔法……それぞれ全く違うけど、立派な魔力の使い手になりたいって志は同じだもんね。」

 そう言って、シオンはニコニコと微笑んだ。

 初対面の俺に、こんなに優しくしてくれるなんて……シオンって、すっごくいい子だなぁ。

 こんな子だから、攻略対象の皆に好かれるんだろうな。

「シオンを始めて見た時、ビックリしたよ。大勢の生徒が集まってたから、何事かと思って見てれば、すごく格好いい人たちに囲まれてる、可愛い子が居るんだもん。まさかそれがシオンで、同じクラスだったなんて。」

「あの人たちは、皆生徒会執行部のメンバーでね、僕も仲良くさせて貰ってるんだ。格好いいか……でも、ロイスの隣に居た彼も、格好いい子だったね。」

「あの子、俺の弟なんだ。学年は一つ下だけど……今日一緒に、この学校に編入して来て──。」

 するとシオンは、少し考え込みこう言った。

「ねぇ、ロイス。ロイスの弟さんなら、僕も是非仲良くしたいな。僕に紹介してくれる?」

「……え?あ、も、勿論いいよ。」

 あ、れ……何か、一瞬心がもやもやして……。

 でも、シオンとジュリアス様が接触するのは、ゲームとしては当然の流れだ。
 
 なのに俺、シオンにジュリアス様と仲良くして欲しくないって……一瞬、そう思ってしまった。
 
 俺、心狭すぎだな。
 推しを取られるとか、弟を取られるとか、そんなつまんない嫉妬して……。

 推し、弟……うん、そうだよね。
 他に理由なんて──。

※※※

「兄上!こちらです、席を取っておきました……そちらの方は?」

「彼は、同じクラスの──」
 
「シオン・フォードです。ロイスと同じクラスですが……僕は彼とは違い、光魔法の使い手です。どうぞお見知りおきを。」

「……俺は、ジュリアスと申します。兄上がお世話になっております。」

「ジュリアス……今日のお昼は、シオンも一緒に……。」

「兄上が仰るなら、私は構いません。」

 そう、言ってるけど……何だかその顔がちょっと不機嫌そうなのはどうして……?

 俺、ずっとジュリアス様のお兄ちゃんやってきたから、すぐ分かるよ──?

「あ、あのね、今日はシオンに学園を案内して貰ったんだ。」

「そうですか。兄がお世話になりました。」

「フフッ……何だか、ジュリアスの方がお兄さんみたいだね。しっかりしてて、頼りがいがありそう。」

 うん……お恥ずかしながら、よく言われる……。

「ねぇ……ジュリアスさえ良かったら、生徒会に入らない?今、人手が足りなくてね……皆大変なんだ。だから僕も、色々と仕事を手伝ってるの。」

「そっか、それで皆と一緒に……。ジュリアス、どうする?せっかくだから──」

「今はまだ、俺はこの学園の事を何も知りません。そんな俺が入っても、逆に迷惑になります。」

「そう……でも、すごくやりがいはあるんだよ。この学園に慣れてきた頃、また改めて聞くから……今度は是非いい返事を頂戴ね──?」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

悪役令息に転生しましたが、なんだか弟の様子がおかしいです

BL / 連載中 24h.ポイント:78pt お気に入り:2,268

【本編完結】作られた悪役令息は断罪後の溺愛に微睡む。

BL / 連載中 24h.ポイント:383pt お気に入り:4,342

ビッチな僕が過保護獣人に囲われている件について。

BL / 連載中 24h.ポイント:142pt お気に入り:2,095

VRMMO内で一目惚れした相手は運命でした。

BL / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:118

社畜サラリーマンの優雅な性奴隷生活

BL / 連載中 24h.ポイント:589pt お気に入り:1,517

身代わりで帝国の第2皇子に嫁いだ庶民派冒険者王子の話。

BL / 完結 24h.ポイント:276pt お気に入り:426

シャルルは死んだ

BL / 完結 24h.ポイント:227pt お気に入り:1,725

蝶々炎舞

BL / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:52

処理中です...