推し様の幼少期が天使過ぎて、意地悪な義兄をやらずに可愛がってたら…彼に愛されました。

櫻坂 真紀

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 そしていよいよ、ニーチェ学園に登校する日がやって来た。

 俺とジュリアス様は途中からの編入生、主人公のシオンや他の攻略キャラたちより遅れて参戦(?)って事になるんだけど……今、学園はどうなってるんだ?

 シオンが、もう他のキャラたちと恋愛を楽しんでる頃なのかな?
 それとももう、誰かと結ばれちゃってる?

 それならそれで、俺としては安心……あれ、何で安心?

 あぁ、そっか……ジュリアス様を取られなくて済むから、かな。

 ん?待てよ……俺のジュリアス様好きは、あくまで推しとしての好きで……そういう、恋愛的な意味では──。

「……え、兄上。もう学園に到着ですよ。馬車を降りなければ。」

「え!あ、あぁ。」

 考え込んでる間に、俺たちを乗せた馬車はニーチェ学園の門の前に居た。

「そんなに緊張なさらなくても、俺が傍に居ますよ。さぁ、お手をどうぞ。」

 先に降りたジュリアス様が微笑み、俺に手を差し出す。

 ジュリアス様……まるで王子様みたいだ。
 
 攻略キャラの中に王子は居るけど……個人的には、この目の前のジュリアス様の方が何百倍も格好いい──!

 俺は思わずウットリと頬を染め、その手を取ると馬車から降りた──。

※※※

 そして、校舎までの道のりを歩いていると……何やら、あちこちから黄色い声がする。

 すると俺は、後ろから駆けて来た生徒にぶつかられ……思わずその場に倒れ込みそうに──。

 でもジュリアス様が咄嗟に抱き止めてくれたおかげで、俺は何とか無事だった。

「あの生徒……謝りもせず、何て無礼な!」

「助けてくれてありがとう、ジュリアス。俺なら大丈夫だから。それより……一体何の騒ぎだろうね?」

 見れば、その生徒が駆けて行った先に人だかりが出来ている。

「生徒会執行部の皆様、今日も素敵……!」

「会長様、こっち向いて!」

「無理だって。今や皆様は、あの光魔法の使い手……シオン様に夢中だもん。」

 生徒会執行部……シオン様……?

 って事は……あそこに居るのは、このゲームの攻略対象の皆様と……主人公シオンだ──!

 俺はちょっと興奮した様子で、彼らの姿を眺めた。

 さすがシオン、主人公だけあって可愛い……!
 それでもって、攻略対象たちは全員顔面レベル高すぎ……そりゃあ、生徒たちも集まって来るよ。

 でも俺は……こうして実際に他のキャラを見ても、やっぱりジュリアス様が一番好き──。

 その時……ふとシオンが顔を上げ、ジュリアス様の胸に抱かれている俺を見た。

 そしてその視線はすぐに外され、彼は生徒会執行部の皆と去って行ったけど……俺は、その場を動けずにいた。

 な、に……今の目。

 俺の事、まるで嫌な物でも見たみたいな……あれは、嫌悪の目だった。

 どうしてだ……?
 シオンって、あんな目をする子だったっけ……?

 まさか……攻略対象の一人であるこのジュリアス様の胸に、俺が抱かれていたから……とかじゃないよね──?
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