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「悔しかったら、取り返してみろよ!」
ジュリアス様から取り上げた花を掲げ、ジュリアス様を小突くユジン──。
ジュリアス様は悔しそうに涙を滲ませ、彼に立ち向かって行く。
「返してよ、それはお兄様への──」
「お兄様……?お前、ロイス様の本当の弟でもないのに目障りなんだよ!お前が来るまでは、ロイス様はずっと俺と遊んでたのに……ロイス様は、俺だけのものだったのに!これ以上痛い目に遭いたくなきゃ、早くこの家から出て行け!」
そう言って、ユジンはジュリアス様を突き飛ばした。
ジュリアス様は、その場で尻もちをつき……その手の平からは血が滲んでいた。
それを見た瞬間……俺の中で、何かがプツリと切れる音がした。
「よくも……よくもジュリアスを傷つけたな──!」
俺は二人の元へ駆け出し、ユジンに掴みかかった。
「ユジン、ジュリアスは俺の大切な弟だぞ……例え血が繋がっていなくてもだ!今までの服の汚れはや怪我は、お前の仕業だったんだな!?」
「ロ、ロイス様……!?」
俺の剣幕に、ユジンは真っ青な顔で震えている。
そしてジュリアスも、驚いた表情で俺を見ている。
そっか……ジュリアス様の前で、こんなに怒った姿など見せた事ないもんな。
ジュリアス様に出会う前のロイスは、悪役令息らしく我儘なお坊ちゃまだったけど……俺がロイスになって、ジュリアス様がここに来てからは、もうそんな子供じゃなくなって……。
っていうか……どうして俺、さっきからこんなに体が熱いんだ……?
体の中が、真っ黒な炎で焼き尽くされそうだ──!
「もしこれ以上、ジュリアスに酷い事をするなら、俺がお前を許さない!ジュリアスを傷つける者は……あ、れ──?」
俺は激しい眩暈に襲われ、その場にガクリと崩れ落ちた。
そしてそのまま地面へと倒れ込みそうになる俺を、ジュリアス様が慌てて抱き留めた。
「お兄様……ロイス兄様、しっかりして下さい!」
「ジュ、ジュリアス、泣かないで……俺、大丈夫、だから──」
俺の意識は、そこでプツリと途切れた──。
※※※
次に目が覚めた時、俺は自室のフカフカのベットに寝かせられていた。
そしてそんな俺を、心配そうに覗き込むお父様と……目に涙を滲ませるジュリアス様が──。
「ロイス、気が付いたか。ロイス……お前は、魔力に目覚めたんだよ。」
「ま、りょく……?」
そうか、悪役令息ロイスは、魔力持ちという設定だったな。
その性格からか、主人公のシアンと違い、闇魔法が得意な子だった。
あの時体の中に感じた黒い炎は、自身に目覚めた闇の魔力だったんだ──。
ジュリアス様から取り上げた花を掲げ、ジュリアス様を小突くユジン──。
ジュリアス様は悔しそうに涙を滲ませ、彼に立ち向かって行く。
「返してよ、それはお兄様への──」
「お兄様……?お前、ロイス様の本当の弟でもないのに目障りなんだよ!お前が来るまでは、ロイス様はずっと俺と遊んでたのに……ロイス様は、俺だけのものだったのに!これ以上痛い目に遭いたくなきゃ、早くこの家から出て行け!」
そう言って、ユジンはジュリアス様を突き飛ばした。
ジュリアス様は、その場で尻もちをつき……その手の平からは血が滲んでいた。
それを見た瞬間……俺の中で、何かがプツリと切れる音がした。
「よくも……よくもジュリアスを傷つけたな──!」
俺は二人の元へ駆け出し、ユジンに掴みかかった。
「ユジン、ジュリアスは俺の大切な弟だぞ……例え血が繋がっていなくてもだ!今までの服の汚れはや怪我は、お前の仕業だったんだな!?」
「ロ、ロイス様……!?」
俺の剣幕に、ユジンは真っ青な顔で震えている。
そしてジュリアスも、驚いた表情で俺を見ている。
そっか……ジュリアス様の前で、こんなに怒った姿など見せた事ないもんな。
ジュリアス様に出会う前のロイスは、悪役令息らしく我儘なお坊ちゃまだったけど……俺がロイスになって、ジュリアス様がここに来てからは、もうそんな子供じゃなくなって……。
っていうか……どうして俺、さっきからこんなに体が熱いんだ……?
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「もしこれ以上、ジュリアスに酷い事をするなら、俺がお前を許さない!ジュリアスを傷つける者は……あ、れ──?」
俺は激しい眩暈に襲われ、その場にガクリと崩れ落ちた。
そしてそのまま地面へと倒れ込みそうになる俺を、ジュリアス様が慌てて抱き留めた。
「お兄様……ロイス兄様、しっかりして下さい!」
「ジュ、ジュリアス、泣かないで……俺、大丈夫、だから──」
俺の意識は、そこでプツリと途切れた──。
※※※
次に目が覚めた時、俺は自室のフカフカのベットに寝かせられていた。
そしてそんな俺を、心配そうに覗き込むお父様と……目に涙を滲ませるジュリアス様が──。
「ロイス、気が付いたか。ロイス……お前は、魔力に目覚めたんだよ。」
「ま、りょく……?」
そうか、悪役令息ロイスは、魔力持ちという設定だったな。
その性格からか、主人公のシアンと違い、闇魔法が得意な子だった。
あの時体の中に感じた黒い炎は、自身に目覚めた闇の魔力だったんだ──。
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