推し様の幼少期が天使過ぎて、意地悪な義兄をやらずに可愛がってたら…彼に愛されました。

櫻坂 真紀

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 悪役令息ロイス──。
 
 彼は、俺の大好きな推し様……ジュリアス様の「義理の兄」という立場にあたる。
 
 そんな幸せな立場にある癖に……この男ときたら、まぁ最低な奴なのだ。
 
 とある事情で一緒に暮らす事になったジュリアス様を、これでもかという程虐め抜く。
 
 自分の年齢や立場が上なのを利用して、ジュリアス様をまるで下僕扱いしたのだ。
 
 そのおかげで、ジュリアス様は大の人嫌いになり……大層捻くれた性格になってしまった──。
 
 でも……そんな重い過去を背負った彼が、俺にはとっても魅力的に感じたんだ……。
 
 棘のある話し方に、冷たい目……だけど、主人公には少しずつ心を開いて行き……あぁ、ゲームのシーンが次々に蘇って来て……思い出しただけで、胸がドキドキする──。

 それにしても、ジュリアス様がこの家に初めてやって来るその日から、俺の二度目の人生スタート(?)って最高だよね!
 
 だってゲームでは、ジュリアス様がこの家に来た時の描写なんて、出て来なかったもん。
 
 ジュリアス様の過去のお姿、たっぷり堪能させて貰うぞ──!

※※※

「失礼します。ジュリアス様をお連れ致しました。」
 
 扉が開かれ、執事が部屋に入ってきた。
 
 そしてその後にジュリアス様が……あれ、来ないんですけど──?
 
 なんで?
 もしかして……この家に来るの嫌だった?
 俺、悪役令息だけど怖くないよ~?

 すると扉の向こうから、金色のフワフワした髪に赤い瞳を持った、十歳前後の可愛らしい男の子が、モジモジと顔を覗かせた。
 
 な、何だこの子、小動物みたい──!
 
 っていうか、このビジュアルって、やっぱり……。
 
 お父様はそんな男の子の様子を見て苦笑いし、声をかけた。

「何をしているジュリアス、早く入っておいで。」
 
 やっぱりそうだ、ジュリアス様だ──!
 
 俺より背が小さい……すぐに抱っこできそう……あぁ、何て可愛らしいんだ──。

 その男の子は、心の中で見悶えている俺を見て、頬を赤くしておずおずと呟いた。

「は、初めまして……ジュリアスと申します。今日からよろしくお願いします……ロ、ロイスお兄様。」

 お、おにいさま?
 ジュリアス様が、俺に向かってロイスお兄様と言った……?
 
 ゲームの中では「あの男」、もしくは「あいつ」呼ばわりだったのに……何それ、初対面ってこんな感じだったの──!?

「ご、ごめんなさい。お兄様だなんて……まだお会いしたばかりなのに、図々しいですよね。」
 
 何も言わない俺に、ジュリアス様は俺が怒っていると捉えたらしい。
 
 悲し気な表情を浮かべ俯くと、プルプルと体を震わせ黙ってしまった。

 ヤ、ヤバい……推し様を泣かせちゃった──!?

「違うんです、ジュリアス様!あ、いえ……ジュリアス。俺、君に兄と呼ばれた嬉しさの余り、言葉が出なかっただけなんだ。それにこの怒った顔は元々だから、あまり気にしないで欲しいな?」

「……そうなのですね。良かった。」
 
 ジュリアス様は安心したように、エヘヘと笑った……笑った……?
 あのジュリアス様が、お笑いになったぁ──!?
 
 ゲーム前半は「フン。」で、後半あたりで「フン…!」くらいの、笑い方しかしなかったあのジュリアス様が、「エヘヘ」って笑っただと!?
 
 俺は、ゲームと目の前の現実のギャップについていけず、思わず膝からガクリと崩れ落ちた。

「だ、大丈夫ですかお兄様?どこかお苦しいのですか!?」
 
 ジュリアス様が慌てて俺に駆け寄ってきて、そっと背中を撫でてくれる。
 
 その瞬間、俺の中にあったジュリアス様のイメージは崩壊……そしてすぐさま、再構築された。
 
 天使だ……俺の推し様は、天使だったんだ──!
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