推し様の幼少期が天使過ぎて、意地悪な義兄をやらずに可愛がってたら…彼に愛されました。

櫻坂 真紀

文字の大きさ
上 下
1 / 28

1

しおりを挟む
 あ、ヤバい──。
 
 そう思った時には、もう遅かった。
 
 俺の体は車に跳ね飛ばされ……そのまま冷たい地面に叩きつけられた。
 
 昔から何かとツイてなかったけど、最期までこんな目に合うなんてな……。
 
 薄れゆく意識の中、俺はこう思った。

 あぁ……神様……。
 もし次に生まれるなら……どうかもっと幸せな人生を、この憐れな俺にお恵み下さい──。

※※※

「お坊ちゃま、起きて下さい。このままでは、お約束のお時間に間に合いませんよ?」

 ぅ…ん、おぼっちゃま……?
 誰、それ……もしかして、俺の事──?

「今日は、ジュリアス様がこの家に見える大事な日です。早く支度をせねば、間に合いませんよ?」
 
 ちょ……ちょっと待って、今ジュリアス様って言った──!?
  
 ジュリアス様って言ったら、俺がハマってるBLゲームに出てくる、大好きな推し様の名前じゃないか──!

 そう、俺は大のBLゲーム好き……中でも、あるゲームに出て来るジュリアス様が大・大・大好きな腐男子だ。

 ジュリアス様のお名前が出た以上、寝てる場合じゃない──!

 俺は、慌ててベットから飛び起きた。

 ……ん?
 俺、車に跳ねられたはずなのに、何でこんなにピンピンして……?

 そっか、これってもしかして、あの──!

「やった──!俺、死んだけど生きてる!これって異世界転生だよね?俺、もしかして大好きなBLゲームの主人公に、転生しちゃった!?」

「転生?ゲーム?……大丈夫ですか、お坊ちゃま?」
 
 喜びで飛び跳ねる俺を、メイドさんが心配そうに見てくる。

 おっと……いけない、いけない。
 
 主人公のシオンは、こんなキャラじゃなかった。
 物静かで控えめな、儚げな男の子だ。

「驚かせてしまって、申し訳ありません。……さあ、早速着替えを致しましょうか。」

 そう言って俺は、鏡の前にストンと座り自分の顔を見た──。

※※※
 
 え……?
 これ、主人公と違うし──!

 このサラサラの銀の髪、吊り上がった青い目、意地悪そうで不敵な笑み──。
 ちょっと知ってる人物より幼い感じがするけど……この感じだと、十二、三歳かな?

 でもこの顔の作りは……まさかとは思うけど、あの悪役令息ロイスだよね──!?
 
 俺はあまりのショックで、後ろにひっくり返った。

「お坊ちゃま?!ロイスお坊ちゃま、しっかりして下さい!だ、誰か来て──!」

 そしてメイドさんに名前を呼ばれた瞬間……俺は、生まれてからここまでの記憶を、全て取り戻したのだった。

 うん、間違いない。
 我儘で高飛車な性格のこの男の子は、悪役令息ロイスの幼少期!
 
 俺、悪役令息のロイスになってる──!

 こうして一度死んだ俺は、悪役令息ロイスに驚きの転生を果たしたのであった──。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています

八神紫音
BL
 魔道士はひ弱そうだからいらない。  そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。  そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、  ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない

てんつぶ
BL
 連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。  その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。  弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。  むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。  だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。  人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目

カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

処理中です...