推し様の幼少期が天使過ぎて、意地悪な義兄をやらずに可愛がってたら…彼に愛されました。

櫻坂 真紀

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 あ、ヤバい──。
 
 そう思った時には、もう遅かった。
 
 俺の体は車に跳ね飛ばされ……そのまま冷たい地面に叩きつけられた。
 
 昔から何かとツイてなかったけど、最期までこんな目に合うなんてな……。
 
 薄れゆく意識の中、俺はこう思った。

 あぁ……神様……。
 もし次に生まれるなら……どうかもっと幸せな人生を、この憐れな俺にお恵み下さい──。

※※※

「お坊ちゃま、起きて下さい。このままでは、お約束のお時間に間に合いませんよ?」

 ぅ…ん、おぼっちゃま……?
 誰、それ……もしかして、俺の事──?

「今日は、ジュリアス様がこの家に見える大事な日です。早く支度をせねば、間に合いませんよ?」
 
 ちょ……ちょっと待って、今ジュリアス様って言った──!?
  
 ジュリアス様って言ったら、俺がハマってるBLゲームに出てくる、大好きな推し様の名前じゃないか──!

 そう、俺は大のBLゲーム好き……中でも、あるゲームに出て来るジュリアス様が大・大・大好きな腐男子だ。

 ジュリアス様のお名前が出た以上、寝てる場合じゃない──!

 俺は、慌ててベットから飛び起きた。

 ……ん?
 俺、車に跳ねられたはずなのに、何でこんなにピンピンして……?

 そっか、これってもしかして、あの──!

「やった──!俺、死んだけど生きてる!これって異世界転生だよね?俺、もしかして大好きなBLゲームの主人公に、転生しちゃった!?」

「転生?ゲーム?……大丈夫ですか、お坊ちゃま?」
 
 喜びで飛び跳ねる俺を、メイドさんが心配そうに見てくる。

 おっと……いけない、いけない。
 
 主人公のシオンは、こんなキャラじゃなかった。
 物静かで控えめな、儚げな男の子だ。

「驚かせてしまって、申し訳ありません。……さあ、早速着替えを致しましょうか。」

 そう言って俺は、鏡の前にストンと座り自分の顔を見た──。

※※※
 
 え……?
 これ、主人公と違うし──!

 このサラサラの銀の髪、吊り上がった青い目、意地悪そうで不敵な笑み──。
 ちょっと知ってる人物より幼い感じがするけど……この感じだと、十二、三歳かな?

 でもこの顔の作りは……まさかとは思うけど、あの悪役令息ロイスだよね──!?
 
 俺はあまりのショックで、後ろにひっくり返った。

「お坊ちゃま?!ロイスお坊ちゃま、しっかりして下さい!だ、誰か来て──!」

 そしてメイドさんに名前を呼ばれた瞬間……俺は、生まれてからここまでの記憶を、全て取り戻したのだった。

 うん、間違いない。
 我儘で高飛車な性格のこの男の子は、悪役令息ロイスの幼少期!
 
 俺、悪役令息のロイスになってる──!

 こうして一度死んだ俺は、悪役令息ロイスに驚きの転生を果たしたのであった──。
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