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結婚って……やっぱり、あのマリーって女の子かな。
俺は学園からの帰り道を、一人寂しく歩いていた。
寒いな……もうすぐ、雪が降りそうだ。
お二人の結婚式は……きっと、春の暖かい日に執り行うんだろうな。
大勢の人に祝福され、カイル様とお相手のマリーは見つめ合い、幸せそうに笑う──。
そんな姿を想像し、俺の目に涙が浮かんだ。
「せっかく、この世界に来れたのに……俺、カイル様のハートを射止める事ができななった。現実世界みたいに、このまま、また何もできず終わるのかな。」
……ううん、そんなの嫌だ。
ゲームみたいに、諦めて途中放棄したくない。
そうだよ……せっかくこの世界に来れた上に、婚約破棄してカイル様に恋してもいい立場になったんじゃないか。
なのに俺、まだカイル様に自分の気持ち、何一つ伝えてない。
ちゃんと勇気を出し、言葉にして伝えよう。
その結果、例え振られる事になったとしても──。
※※※
「お忙しいのは分かっています。ですが、どうか一目だけでも。」
「申し訳ありません、アルト様。今、お客様がみえておりまして。」
俺はカイル様がお見えになるはずのお城の前で、門番に止められていた。
「ほんの少しで良いのです。どうか──。」
「アルト!?……彼を通して。大丈夫だ、お客様はもう帰られたから。」
そこには、心配そうに俺を見るカイル様が──。
カイル様、やっと会えた……!
良かった、お元気そうだ。
「頬が真っ赤になってるじゃないか……。寒い中、ずいぶん待たせてしまったんだね。」
そう言って、優しく俺の頬を撫でるカイル様に、俺の心臓はドキドキと高鳴った。
「い、いいえ!突然来てしまってごめんなさい。でも俺、どうしてもカイル様に会いたくて……!」
「そうか……。俺も君にね、渡したい物があったんだよ。ついて来てくれるかい?」
客室へと通された俺に、カイル様は紙袋を差し出した。
「これ、俺のストール……。今日まで、持っていて下さったのですか?」
「やはり君のだったね。君が、何度かそれを身に着けていたのを覚えていたから。風邪を引かない様に俺にかけてくれたんだよね、ありがとう。」
俺はそのストールを、ギュッと抱きしめた。
「カイル様…俺、カイル様に大切な話があってここに来ました。信じられないかもしれないけど、どうか俺の話を聞いて下さい。俺は……あなたが好きです。この世界に来る前から、俺はあなたが好き。あなたに会いたくて、あなたの傍に居たくて、あなたに振り向いてもらう為、俺はここに来ました。そして今、アルトとしてここに存在しています。だから見た目はアルトでも、中身は……アルトの気配は残ってるけど、アルトじゃないんです。俺……ずっとあなたが好きです!例えあなたが、もうすぐ結婚すると知っても……。」
「ちょっと待って。結婚って、俺がかい?」
「はい。学園で聞いたんです。それに……俺がこのストールをカイル様に巻いた時、あなたはマリーって女の子の名を呼びました。だから、カイル様はその方と結婚なさると思って……。」
俺の目に、ジワリと涙が滲んだ。
「アルト、よく聞いて?俺には結婚話は来てないよ。しかし、マリーか……。うん、確かに彼女は俺の大事な子だね。紹介するから、俺の部屋においで?」
カイル様の、お部屋!?
ゲームじゃ一回も出て来なかった、秘密の場所。
こんな状況じゃなかったら、嬉しいんだけどな……。
俺はカイル様に手を引かれ、彼の後をついて行った。
どんな、女の子なのかな?
カイル様……俺に自分を諦めさせる為に、その子を披露したいんじゃないよね──?
俺は学園からの帰り道を、一人寂しく歩いていた。
寒いな……もうすぐ、雪が降りそうだ。
お二人の結婚式は……きっと、春の暖かい日に執り行うんだろうな。
大勢の人に祝福され、カイル様とお相手のマリーは見つめ合い、幸せそうに笑う──。
そんな姿を想像し、俺の目に涙が浮かんだ。
「せっかく、この世界に来れたのに……俺、カイル様のハートを射止める事ができななった。現実世界みたいに、このまま、また何もできず終わるのかな。」
……ううん、そんなの嫌だ。
ゲームみたいに、諦めて途中放棄したくない。
そうだよ……せっかくこの世界に来れた上に、婚約破棄してカイル様に恋してもいい立場になったんじゃないか。
なのに俺、まだカイル様に自分の気持ち、何一つ伝えてない。
ちゃんと勇気を出し、言葉にして伝えよう。
その結果、例え振られる事になったとしても──。
※※※
「お忙しいのは分かっています。ですが、どうか一目だけでも。」
「申し訳ありません、アルト様。今、お客様がみえておりまして。」
俺はカイル様がお見えになるはずのお城の前で、門番に止められていた。
「ほんの少しで良いのです。どうか──。」
「アルト!?……彼を通して。大丈夫だ、お客様はもう帰られたから。」
そこには、心配そうに俺を見るカイル様が──。
カイル様、やっと会えた……!
良かった、お元気そうだ。
「頬が真っ赤になってるじゃないか……。寒い中、ずいぶん待たせてしまったんだね。」
そう言って、優しく俺の頬を撫でるカイル様に、俺の心臓はドキドキと高鳴った。
「い、いいえ!突然来てしまってごめんなさい。でも俺、どうしてもカイル様に会いたくて……!」
「そうか……。俺も君にね、渡したい物があったんだよ。ついて来てくれるかい?」
客室へと通された俺に、カイル様は紙袋を差し出した。
「これ、俺のストール……。今日まで、持っていて下さったのですか?」
「やはり君のだったね。君が、何度かそれを身に着けていたのを覚えていたから。風邪を引かない様に俺にかけてくれたんだよね、ありがとう。」
俺はそのストールを、ギュッと抱きしめた。
「カイル様…俺、カイル様に大切な話があってここに来ました。信じられないかもしれないけど、どうか俺の話を聞いて下さい。俺は……あなたが好きです。この世界に来る前から、俺はあなたが好き。あなたに会いたくて、あなたの傍に居たくて、あなたに振り向いてもらう為、俺はここに来ました。そして今、アルトとしてここに存在しています。だから見た目はアルトでも、中身は……アルトの気配は残ってるけど、アルトじゃないんです。俺……ずっとあなたが好きです!例えあなたが、もうすぐ結婚すると知っても……。」
「ちょっと待って。結婚って、俺がかい?」
「はい。学園で聞いたんです。それに……俺がこのストールをカイル様に巻いた時、あなたはマリーって女の子の名を呼びました。だから、カイル様はその方と結婚なさると思って……。」
俺の目に、ジワリと涙が滲んだ。
「アルト、よく聞いて?俺には結婚話は来てないよ。しかし、マリーか……。うん、確かに彼女は俺の大事な子だね。紹介するから、俺の部屋においで?」
カイル様の、お部屋!?
ゲームじゃ一回も出て来なかった、秘密の場所。
こんな状況じゃなかったら、嬉しいんだけどな……。
俺はカイル様に手を引かれ、彼の後をついて行った。
どんな、女の子なのかな?
カイル様……俺に自分を諦めさせる為に、その子を披露したいんじゃないよね──?
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