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あの後、ノアから話を聞いた理事長は激怒……、サリュー様は学園からの退学を余儀なくされた。
本人の同意なく神の愛し子に手を出そうとした事は、重罪に当たるらしい。
それに、神の愛し子の友人である俺を、公衆の面前で貶めた事も、その罪を重くした重くした要因だった。
そして、問題はそれだけでは終わらなかった。
サリュー様は学園で起こした騒ぎが元で、次期王としての品位に欠けると判断され、第一王子でありながら、王位継承権を剥奪されてしまったのだ。
でも理由は、何も今回の件だけではない。
彼は平民に対して非常に強い差別意識を持っていて、それが言葉の端々から感じられた。
いずれ王になろうという者が、そういう差別意識を持ち軽々しく口にする事は、あまりに危険な事なのだ。
更には、人の話に耳を貸さず、自分の考えが一番正しいと思うあの俺様で傲慢な性格…それが最も、王の資質に欠けると判断されたらしい。
こうして王位継承権は、第二王子のカイル様へと移った。
『カイル様…ご迷惑をおかけすることになると思いますが、よろしくお願いします。』
ノアが言ってたのは、こういう事だったのか。
『構いません、これまでの兄上の言動から、いつかこうなるとは思っていましたから。』
そしてカイル様は、もう既にその覚悟はできていたんだ。
俺に……何かできる事は無いかな──。
この前も、沼に落ちた時も……俺ってば、カイル様に助けて貰ってばかりだもん。
毎日寒い日が続くし…カイル様、風邪など引かれてなければいいけど。
カイル様は、あれから学園を休んでいる。
きっと今後の事で、色々とお忙しいんだろう。
でも、そのマリーって女の子は、そんな時も彼の傍に居て彼を支えてるんだろうか──?
「せめてカイル様が、学園に来てくれればな……。だってあそこは、男子しか居ない場所で……マリーは入って来れないもん。」
もしこのまま、カイル様が学園に来なかったらどうしよう。
兄であるサリュー様とああなっては、俺はもうカイル様との縁も切れてしまうのだろうか──?
でも、それもありえるかもしれない。
だってサリュー様が騒ぎを起こした所に、今後もわざわざ通うなんて事……。
※※※
教室に向かう俺を見つけたノアが、笑みを浮かべ近づいて来た。
「おはようございます、アルト様。」
「おはよう、ノアさん!今日だったな、幼馴染のアダムさんが転入してくるのって。」
「はい!彼、神の愛し子である僕の守り人になるべく、この学園へ転入する事になりまして。……あんな事があったものですから、彼も私の傍で守りたいと言ってくれたのです。」
「良かったね、ノアさん。そこまで言ってくれる彼なら、きっとノアさんの事、大事にしてくれるね!」
「はい!でも……ごめんなさい。僕のしたことで、カイル様がこうして学園をお休みする事態になって……。」
「ううん、ノアさんのせいじゃないよ。王になる為には、学ばなければならない事が沢山あるよね。今までと全て同じ、という訳にはいかないよ──。」
俺が好きだったのは、脇役キャラで第二王子のカイル様。
でも第二王子という立場に収まらず、次期王を目指す事になったお方は……もう、脇役キャラとはとても言えないよな。
「アルト様、ようやく見つけました!」
「大変なんです、アルト様!」
「どうしたの皆、そんなに慌てて?」
俺の元に、取り巻きの子たちが駆けつけてきた。
「俺たち、カイル様がご結婚なさるという話を聞いたのです!」
カイル様が、結婚だって……?
そんな……嘘だろう……?
これじゃあ、ゲームの中と全く同じ展開じゃないか──!?
本人の同意なく神の愛し子に手を出そうとした事は、重罪に当たるらしい。
それに、神の愛し子の友人である俺を、公衆の面前で貶めた事も、その罪を重くした重くした要因だった。
そして、問題はそれだけでは終わらなかった。
サリュー様は学園で起こした騒ぎが元で、次期王としての品位に欠けると判断され、第一王子でありながら、王位継承権を剥奪されてしまったのだ。
でも理由は、何も今回の件だけではない。
彼は平民に対して非常に強い差別意識を持っていて、それが言葉の端々から感じられた。
いずれ王になろうという者が、そういう差別意識を持ち軽々しく口にする事は、あまりに危険な事なのだ。
更には、人の話に耳を貸さず、自分の考えが一番正しいと思うあの俺様で傲慢な性格…それが最も、王の資質に欠けると判断されたらしい。
こうして王位継承権は、第二王子のカイル様へと移った。
『カイル様…ご迷惑をおかけすることになると思いますが、よろしくお願いします。』
ノアが言ってたのは、こういう事だったのか。
『構いません、これまでの兄上の言動から、いつかこうなるとは思っていましたから。』
そしてカイル様は、もう既にその覚悟はできていたんだ。
俺に……何かできる事は無いかな──。
この前も、沼に落ちた時も……俺ってば、カイル様に助けて貰ってばかりだもん。
毎日寒い日が続くし…カイル様、風邪など引かれてなければいいけど。
カイル様は、あれから学園を休んでいる。
きっと今後の事で、色々とお忙しいんだろう。
でも、そのマリーって女の子は、そんな時も彼の傍に居て彼を支えてるんだろうか──?
「せめてカイル様が、学園に来てくれればな……。だってあそこは、男子しか居ない場所で……マリーは入って来れないもん。」
もしこのまま、カイル様が学園に来なかったらどうしよう。
兄であるサリュー様とああなっては、俺はもうカイル様との縁も切れてしまうのだろうか──?
でも、それもありえるかもしれない。
だってサリュー様が騒ぎを起こした所に、今後もわざわざ通うなんて事……。
※※※
教室に向かう俺を見つけたノアが、笑みを浮かべ近づいて来た。
「おはようございます、アルト様。」
「おはよう、ノアさん!今日だったな、幼馴染のアダムさんが転入してくるのって。」
「はい!彼、神の愛し子である僕の守り人になるべく、この学園へ転入する事になりまして。……あんな事があったものですから、彼も私の傍で守りたいと言ってくれたのです。」
「良かったね、ノアさん。そこまで言ってくれる彼なら、きっとノアさんの事、大事にしてくれるね!」
「はい!でも……ごめんなさい。僕のしたことで、カイル様がこうして学園をお休みする事態になって……。」
「ううん、ノアさんのせいじゃないよ。王になる為には、学ばなければならない事が沢山あるよね。今までと全て同じ、という訳にはいかないよ──。」
俺が好きだったのは、脇役キャラで第二王子のカイル様。
でも第二王子という立場に収まらず、次期王を目指す事になったお方は……もう、脇役キャラとはとても言えないよな。
「アルト様、ようやく見つけました!」
「大変なんです、アルト様!」
「どうしたの皆、そんなに慌てて?」
俺の元に、取り巻きの子たちが駆けつけてきた。
「俺たち、カイル様がご結婚なさるという話を聞いたのです!」
カイル様が、結婚だって……?
そんな……嘘だろう……?
これじゃあ、ゲームの中と全く同じ展開じゃないか──!?
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