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「マリー、マリー……あ~、やっぱ分かんない。」
マリーっていう女の子のキャラクター、思い当たる節がないな。
知らない内に、知らない人と結婚してたカイル様──。
そもそもBLゲームだから、女の子はほとんど出て来なかった。
つまりそれで分からないなら、もうそのマリーって子が、そのお相手という事で確定──?
夕べは、一睡もできなかった。
おかげで、目の下の隈が凄い……。
家の使用人たちには、サリュー様との婚約破棄が原因で俺がこうなったと思われ、散々気を使われる始末だし──。
※※※
ボーっとした頭でフラフラと校庭を歩いていると、朝から何やら騒がしい声が──。
「……さい。どうか、離して下さい!」
男の子の、叫び声?
え、待って、この声は──!
「考え直せ、ノア。何故、そんな平民なんて……!」
「彼の事を何も知らないのに、彼を悪く言わないで!」
やっぱり、ノアだ。
そして彼と話しているのは、サリュー様だった。
ノア、勇気を出して自分の気持ちを伝えたんだな。
「……お前を他の男に渡すなんて、絶対に嫌だ!」
ちょ、ちょっと、何やってんだあの男──!?
そこには、ノアに無理やりキスを迫る、サリュー様の姿があった。
「辞めろよ!」
俺は思わずその場から駆け出し、思い切りサリュー様を突き飛ばした。
「うっ!……ア、アルト、お前何しに来た?まさか、俺への気持ちが諦められず、邪魔をしようと……!?」
「馬鹿な事言うな!嫌がる相手に無理やりキスを迫るなんて、お前は何て卑劣なんだ。ノアは勇気をもって、自分の気持ちをあなたに伝えたんだぞ?その相手に対してこんな仕打ちをするなんて……あんまりじゃないか!」
「……生意気な事を言う様になったな、お前は。振られた奴は、引っ込んでいろ!それともその口……俺が塞いでやろうか?お前とは一度もキスしてなかったし、大人しくなるなら最後にしてやっても構わんぞ?」
サリュー様はニヤリと笑い、俺の腰を引き寄せ……嫌がる俺に、無理やり顔を近付けて来た。
近くで、ノアの息を飲む音が聞こえる。
や、やだ……俺の初めてのキスが、こんな……!
俺が好きなのは、こうしたいって思うのは、カイル様だけなのに──!
※※※
「お辞め下さい、兄上!」
もう少しで唇が触れ合う所で、俺の腕が後ろへと引かれ……俺の身体は、温かくて大きなものに抱き止められた。
こ、この声、まさか──。
「……カ、カイル!お前、兄である俺の邪魔をしようと言うのか!?」
「兄上……。どうかこれ以上、情けない姿を晒すのはお辞め下さい。学園の生徒たちも、皆こちらを見ていますよ?」
その言葉に周りを見れば、登校してきた大勢の生徒たちが、心配そうにこちらを見ていた。
お、俺……皆の前でキスされそうに──!
俺は余りの恥かしさに、思わず目に涙を滲ませた。
その顔を見られたくなくて、カイル様の胸に顔をうずめる。
そんな俺を、カイル様は庇うかのように抱きしめ、片手で頭をそっと撫でてくれた。
「……チッ!分かったよ。だがノア、俺は、本当にお前が──!」
「ごめんなさい。今のあなたの姿を見て、僕の心は完全に決まりました。僕は人に対して暴言を吐いたり、思い通りにならなければこんな酷い仕打ちをする方を絶対に好きになりません。もし今後僕に、そして友達のアルト様に暴言を吐こうものなら……神の愛し子である僕があなたを許しません。そしてこれまでの事は、学園の理事長にお知らせします!カイル様……ご迷惑をおかけする事になると思いますが、どうかよろしくお願いします。」
「……構いません、これまでの兄上の言動から、いつかこうなるとは思っていましたから。」
「ノ、ノアが、あの伝説の神の愛し子だと……!?神の愛し子の怒りに触れた者には不幸があるというが……俺は一体どうなるんだ!?ノア、頼む、どうか許してくれ──!」
そうだった、今の今まで忘れてた忘れてた!
主人公であるノアは、光魔法が使える男の子だけど……その真の姿は、この世界に一人しかいないとされる神の愛し子だったんだ。
確かゲームのラストの方で、それが発覚するんだったな。
でも神の愛し子って、王子であるサリュー様がこんなふうになるくらい、強い権限を持ってたのか……。
途中でゲームを辞めちゃったから、そこまでは知らなかった──。
マリーっていう女の子のキャラクター、思い当たる節がないな。
知らない内に、知らない人と結婚してたカイル様──。
そもそもBLゲームだから、女の子はほとんど出て来なかった。
つまりそれで分からないなら、もうそのマリーって子が、そのお相手という事で確定──?
夕べは、一睡もできなかった。
おかげで、目の下の隈が凄い……。
家の使用人たちには、サリュー様との婚約破棄が原因で俺がこうなったと思われ、散々気を使われる始末だし──。
※※※
ボーっとした頭でフラフラと校庭を歩いていると、朝から何やら騒がしい声が──。
「……さい。どうか、離して下さい!」
男の子の、叫び声?
え、待って、この声は──!
「考え直せ、ノア。何故、そんな平民なんて……!」
「彼の事を何も知らないのに、彼を悪く言わないで!」
やっぱり、ノアだ。
そして彼と話しているのは、サリュー様だった。
ノア、勇気を出して自分の気持ちを伝えたんだな。
「……お前を他の男に渡すなんて、絶対に嫌だ!」
ちょ、ちょっと、何やってんだあの男──!?
そこには、ノアに無理やりキスを迫る、サリュー様の姿があった。
「辞めろよ!」
俺は思わずその場から駆け出し、思い切りサリュー様を突き飛ばした。
「うっ!……ア、アルト、お前何しに来た?まさか、俺への気持ちが諦められず、邪魔をしようと……!?」
「馬鹿な事言うな!嫌がる相手に無理やりキスを迫るなんて、お前は何て卑劣なんだ。ノアは勇気をもって、自分の気持ちをあなたに伝えたんだぞ?その相手に対してこんな仕打ちをするなんて……あんまりじゃないか!」
「……生意気な事を言う様になったな、お前は。振られた奴は、引っ込んでいろ!それともその口……俺が塞いでやろうか?お前とは一度もキスしてなかったし、大人しくなるなら最後にしてやっても構わんぞ?」
サリュー様はニヤリと笑い、俺の腰を引き寄せ……嫌がる俺に、無理やり顔を近付けて来た。
近くで、ノアの息を飲む音が聞こえる。
や、やだ……俺の初めてのキスが、こんな……!
俺が好きなのは、こうしたいって思うのは、カイル様だけなのに──!
※※※
「お辞め下さい、兄上!」
もう少しで唇が触れ合う所で、俺の腕が後ろへと引かれ……俺の身体は、温かくて大きなものに抱き止められた。
こ、この声、まさか──。
「……カ、カイル!お前、兄である俺の邪魔をしようと言うのか!?」
「兄上……。どうかこれ以上、情けない姿を晒すのはお辞め下さい。学園の生徒たちも、皆こちらを見ていますよ?」
その言葉に周りを見れば、登校してきた大勢の生徒たちが、心配そうにこちらを見ていた。
お、俺……皆の前でキスされそうに──!
俺は余りの恥かしさに、思わず目に涙を滲ませた。
その顔を見られたくなくて、カイル様の胸に顔をうずめる。
そんな俺を、カイル様は庇うかのように抱きしめ、片手で頭をそっと撫でてくれた。
「……チッ!分かったよ。だがノア、俺は、本当にお前が──!」
「ごめんなさい。今のあなたの姿を見て、僕の心は完全に決まりました。僕は人に対して暴言を吐いたり、思い通りにならなければこんな酷い仕打ちをする方を絶対に好きになりません。もし今後僕に、そして友達のアルト様に暴言を吐こうものなら……神の愛し子である僕があなたを許しません。そしてこれまでの事は、学園の理事長にお知らせします!カイル様……ご迷惑をおかけする事になると思いますが、どうかよろしくお願いします。」
「……構いません、これまでの兄上の言動から、いつかこうなるとは思っていましたから。」
「ノ、ノアが、あの伝説の神の愛し子だと……!?神の愛し子の怒りに触れた者には不幸があるというが……俺は一体どうなるんだ!?ノア、頼む、どうか許してくれ──!」
そうだった、今の今まで忘れてた忘れてた!
主人公であるノアは、光魔法が使える男の子だけど……その真の姿は、この世界に一人しかいないとされる神の愛し子だったんだ。
確かゲームのラストの方で、それが発覚するんだったな。
でも神の愛し子って、王子であるサリュー様がこんなふうになるくらい、強い権限を持ってたのか……。
途中でゲームを辞めちゃったから、そこまでは知らなかった──。
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