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その夜……俺はルーのベッドの上で、彼と向き合っていた。
「ねぇ、ルー。あの場で言ったよね……俺の事、待ってたって。ルーは召喚魔法で、偶然俺を呼び出したんじゃないんだね。」
「あぁ。誰でも良かった訳じゃない。俺は、優衣だけが欲しかった。優衣に……また会いたかったんだ。」
「ま、た──?」
「実はね……俺と優衣は幼い頃に、一度だけ会ってるんだよ。」
「え!?俺、前にもこの世界に来た事が──」
「いや……俺が、優衣の居る世界に行ったんだ。あれは……城の書庫にある、古い魔導書を読んでいた時だった。俺は、その本から凄い魔力を感じてはいたが……つい夢中になり読んでしまい、ある呪文を声に出し読み上げた。すると次の瞬間、自分の周りがグニャリと歪んで……気づいたら、見知らぬ場所に佇んでいた──。」
※※※
『ここは……一体どこなんだ?どうして俺は、こんな所に──』
『わぁ、そのお洋服、キラキラできれいだねぇ。』
『……え?』
その声に驚き振り返れば……そこには五歳くらいの、可愛らしい男の子が居た。
『でも一番きれいなのは、その髪の毛だね。ゆいのお家にあるメダルそっくり!』
『メダル……?いや、この髪の毛は……失敗作で。本当は、金色じゃないと──』
『そうなの?でも、ゆいは銀色でも嬉しいよ?ううん……本当は、銀でも金でもいいの。自分が一生懸命頑張ったなら、銀でも胸張れるもん!』
自分が、一生懸命頑張ったら……?
そんな事、考えた事もなかった。
自分の価値は、常に周りから決められるものとばかり──。
『ねぇ、お兄ちゃん。ゆいと遊ぼう?』
『遊ぶって……もう暗いよ?今は、夜……じゃないの?』
『そーだけど……ゆい、お家に一人ぼっちだから。だから寂しくて眠れないの。ねぇ、一緒にブランコ乗ろう!あ、すべり台も乗りたい!』
ブランコ、すべり台……それがどういう物かはよく分からなかったけど……この子が楽しそうにしてるのを、俺が断る事で悲しませたくなかった。
だから俺は、その子と遊ぶ事にした──。
『フフッ……こんなに楽しいの、ゆい初めて!』
『俺もだよ……こんなふうに、時間を忘れ遊んだのは。』
その時、俺の右手がうっすらと消えかかっている事に気付いた。
この頃には、俺が唱えたのは転送呪文の一つで……俺はとある異世界に来て、異世界人であるこの「ゆい」という子と出会ったのだと理解していた。
そして、自分がもうすぐこの世界から消え、元の世界に帰るという事も──。
『お兄ちゃん、お名前何て言うの?』
『俺は……ルーカスだ。』
『るーかす?じゃあ、るーだね。るー君、またゆいと遊んで?ゆい、明日もここに来るから!』
『そ、れは……ごめんね、約束できない。』
『ッ……なんで?ゆい、きらい?』
『そんな……嫌いなんかじゃないよ!俺は……君が好きだよ。出会ってから、まだ少ししか時間が立ってないけど……俺はゆいが好きだ。でも、その約束はできない。だけど……今は無理でも、いつか必ず、君とまた会えるから。』
『じゃあ、じゃあね……ゆいが眠れない時に迎えに来て?ゆい、一人ぼっちの夜が大嫌いなの。もし会えたら……ゆいが寂しくないように、ぎゅって抱きしめてね?』
『……眠れない夜だね。分かった、約束するよ。』
俺たちは、キュッと指を絡ませ、指切りをした。
その絡まった俺の指がどんどん透けていき……そしてその子の、ゆいの声も遠くなっていった。
『るー、俺、待ってるね!俺の事、忘れないでね──!』
「ねぇ、ルー。あの場で言ったよね……俺の事、待ってたって。ルーは召喚魔法で、偶然俺を呼び出したんじゃないんだね。」
「あぁ。誰でも良かった訳じゃない。俺は、優衣だけが欲しかった。優衣に……また会いたかったんだ。」
「ま、た──?」
「実はね……俺と優衣は幼い頃に、一度だけ会ってるんだよ。」
「え!?俺、前にもこの世界に来た事が──」
「いや……俺が、優衣の居る世界に行ったんだ。あれは……城の書庫にある、古い魔導書を読んでいた時だった。俺は、その本から凄い魔力を感じてはいたが……つい夢中になり読んでしまい、ある呪文を声に出し読み上げた。すると次の瞬間、自分の周りがグニャリと歪んで……気づいたら、見知らぬ場所に佇んでいた──。」
※※※
『ここは……一体どこなんだ?どうして俺は、こんな所に──』
『わぁ、そのお洋服、キラキラできれいだねぇ。』
『……え?』
その声に驚き振り返れば……そこには五歳くらいの、可愛らしい男の子が居た。
『でも一番きれいなのは、その髪の毛だね。ゆいのお家にあるメダルそっくり!』
『メダル……?いや、この髪の毛は……失敗作で。本当は、金色じゃないと──』
『そうなの?でも、ゆいは銀色でも嬉しいよ?ううん……本当は、銀でも金でもいいの。自分が一生懸命頑張ったなら、銀でも胸張れるもん!』
自分が、一生懸命頑張ったら……?
そんな事、考えた事もなかった。
自分の価値は、常に周りから決められるものとばかり──。
『ねぇ、お兄ちゃん。ゆいと遊ぼう?』
『遊ぶって……もう暗いよ?今は、夜……じゃないの?』
『そーだけど……ゆい、お家に一人ぼっちだから。だから寂しくて眠れないの。ねぇ、一緒にブランコ乗ろう!あ、すべり台も乗りたい!』
ブランコ、すべり台……それがどういう物かはよく分からなかったけど……この子が楽しそうにしてるのを、俺が断る事で悲しませたくなかった。
だから俺は、その子と遊ぶ事にした──。
『フフッ……こんなに楽しいの、ゆい初めて!』
『俺もだよ……こんなふうに、時間を忘れ遊んだのは。』
その時、俺の右手がうっすらと消えかかっている事に気付いた。
この頃には、俺が唱えたのは転送呪文の一つで……俺はとある異世界に来て、異世界人であるこの「ゆい」という子と出会ったのだと理解していた。
そして、自分がもうすぐこの世界から消え、元の世界に帰るという事も──。
『お兄ちゃん、お名前何て言うの?』
『俺は……ルーカスだ。』
『るーかす?じゃあ、るーだね。るー君、またゆいと遊んで?ゆい、明日もここに来るから!』
『そ、れは……ごめんね、約束できない。』
『ッ……なんで?ゆい、きらい?』
『そんな……嫌いなんかじゃないよ!俺は……君が好きだよ。出会ってから、まだ少ししか時間が立ってないけど……俺はゆいが好きだ。でも、その約束はできない。だけど……今は無理でも、いつか必ず、君とまた会えるから。』
『じゃあ、じゃあね……ゆいが眠れない時に迎えに来て?ゆい、一人ぼっちの夜が大嫌いなの。もし会えたら……ゆいが寂しくないように、ぎゅって抱きしめてね?』
『……眠れない夜だね。分かった、約束するよ。』
俺たちは、キュッと指を絡ませ、指切りをした。
その絡まった俺の指がどんどん透けていき……そしてその子の、ゆいの声も遠くなっていった。
『るー、俺、待ってるね!俺の事、忘れないでね──!』
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