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罰を受けた悪の令息の取り巻きは…素顔を隠した謎の男にお買い上げされ、溺愛されてます。
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『リオン……お前が今、目隠し様の元に居ると知り安心したよ。
お前があんな酷い目にあったのに、助けに行けず何もできなかった父をどうか許しておくれ。
いや……お前があのシリウス様の下僕となって居た時から、何も出来なかった情けない父を──。
フォルス様から、お前との婚約破棄の理由を聞いた時は耳を疑ったよ。
お前が色んな殿方に色目を使った挙句、複数の男と隠れて付き合っていたと彼は私に話した。
そしてその証拠だと言って、私に何枚かの写真を見せてきたんだ。
するとその写真には……確かに他の男と抱き合うお前や、腕を組み歩くお前の姿が写っていた。
そしてそれらを私に見せた後、彼はこう言った。
こんなふしだらな者とは、この先やっていけない──。
それに、俺には好きな人ができた。
その人と、新しく婚姻関係を結びたい。
その人物は……弟のシエルだ。
私は驚いてすぐにシエルを呼び、そして話を聞いた。
するとシエルは、もうそれを了承済みだと言うじゃないか。
私の知らないところで、二人はこっそり話を進めていたんだよ。
私は……これには何か裏があるのではないかと思い、密かに調べる事にした──。』
そっか……フォルス様が婚約者に迎えたかった相手って、俺の弟のシエルだったんだ。
と言っても、あの子は父が拾って来た捨て子で血の繋がりは無いが……俺よりもうんと整った容姿をして居て愛嬌があって、誰からも好かれるような子だ。
そして、あの子は昔からフォルス様にとても懐いて居て……そんなシエルの事を、フォルス様は俺よりもずっと気に入ってらした。
手紙を持つ俺の手が、震える──。
俺は、一枚目の手紙を読み上げるとふうっと一つ息を吐いた。
「リオン、顔色が悪い。続きは、また改めた方が──」
「いいえ、大丈夫です。最後までちゃんと読みたいです。だから……お願いがあります。目隠し様、俺の事を抱きしめて下さいませんか?」
「勿論。さあ、おいで──?」
そう言って、手を広げる目隠し様。
目隠し様が、いつものように優しく微笑み俺を見て下さってる……。
俺は嬉しくなり、目隠し様の腕の中に飛び込んだ。
そしてそんな俺の背中に優しく回された目隠し様の手は、とても温かかった。
あぁ、何て温かいんだろう。
この手の温かさを、俺はずっと前から知ってる。
そう、昔からずっと……。
あれ……昔って、いつ──?
俺は今、目隠し様に初めて出会った時じゃなくて……それよりもっと、もっとずっと昔を頭に思い描いた。
俺が目隠し様と出会って一緒に過ごすようになってから、まだそんなに経ってないのに……。
なのに俺は、この方の事をもっと昔に知っている気がする──。
俺は目隠し様からそっと体を離すと、その顔をじっと見つめた。
「目隠し様……俺は、どんなあなたも受け入れます。そして、あなたの事を愛します。あなたが俺を受け入れて下さったように、愛して下さったように──」
「そうか……リオンなら、きっとそう言ってくれると思っていたよ。では……君が俺の事を本当の名で呼んでくれたら、俺は君にこの素顔を見せよう」
目隠し様の、お名前……?
何だろう……分かりそうで分からない。
いや、思い出せそうで思い出せないんだ。
俺と目隠し様は、昔どこかで会っている気がしてならない。
きっとそうだ。
俺はそう思いつつ、父からの二枚目の手紙に目を通し始めた──。
『私はまず、その写真の出所を調べる事にした。
これらの写真が、いつどこで撮られたのか。
また、これを撮った人物はどこの誰なのか。
そうして調べて行く内に、恐ろしい事実が判明した。
この写真を撮ったのは、隣の領地に住むシエルの知り合いの男だった。
私はすぐに彼の元を訪ね、この写真は一体何なのかきつく問い詰めた。
すると彼はようやく口を割って、事の真相を語り始めた。
そもそも、この写真は全て捏造だ──。
全く関係のない男と男の写真を撮って、その片方の顔にリオンの顔を合成しただけ。
その男二人は、金を払って雇った奴らだ。
でも……そいつらへの金は、俺が払ったんじゃない。
俺を雇った人物が、払ったんだ。
とんでもない額の金を俺達に払ってくれたぜ、あいつは。
俺たちはあいつに頼まれ、言われた通りにしただけだ──。
そこで私は、その人物が誰かを尋ねた。
すると彼はこう言った。
弟のシエルだ、と──。
私は信じたくない気持ちで一杯だったが……私帰宅したは、シエルに問い質した。
すると観念したシエルは、全てを白状したよ。
昔から、フォルス様が好きだった──。
何とかして、フォルス様を自分のものにしたかった。
それには、婚約者である兄の存在が邪魔だった。
だからシエルは、お前がシリウス様の取り巻きとして男に媚を売って居た事を思い出し……それであの写真を捏造する事にした。
そしてその写真を見たフォルス様は……お前の悪評を知っていたせいですぐにそれを信じ、お前に婚約破棄を言い渡したのだ。
しかし自分を小馬鹿にされたと思い込み怒りが収まらない彼は、お前に罰を与えるという名目で、お前をあの「蜜月の箱庭」などと言う如何わしい場所へ売り飛ばしてしまった。
私はそれを知ると、お前がまだそこに囚われているのではないかと思い、急ぎ店に駆け付けた。
でも……お前は既にそこには居なかった──。
店の者に必死に頼み込みお前の行方を尋ねれば、お前を買った者が居ると言うじゃないか。
私はお前を連れ戻そうと、その人物が誰なのかを店の者に聞いた。
すると……返って来た答えは、あの「目隠し様」だった。
お前があんな酷い目にあったのに、助けに行けず何もできなかった父をどうか許しておくれ。
いや……お前があのシリウス様の下僕となって居た時から、何も出来なかった情けない父を──。
フォルス様から、お前との婚約破棄の理由を聞いた時は耳を疑ったよ。
お前が色んな殿方に色目を使った挙句、複数の男と隠れて付き合っていたと彼は私に話した。
そしてその証拠だと言って、私に何枚かの写真を見せてきたんだ。
するとその写真には……確かに他の男と抱き合うお前や、腕を組み歩くお前の姿が写っていた。
そしてそれらを私に見せた後、彼はこう言った。
こんなふしだらな者とは、この先やっていけない──。
それに、俺には好きな人ができた。
その人と、新しく婚姻関係を結びたい。
その人物は……弟のシエルだ。
私は驚いてすぐにシエルを呼び、そして話を聞いた。
するとシエルは、もうそれを了承済みだと言うじゃないか。
私の知らないところで、二人はこっそり話を進めていたんだよ。
私は……これには何か裏があるのではないかと思い、密かに調べる事にした──。』
そっか……フォルス様が婚約者に迎えたかった相手って、俺の弟のシエルだったんだ。
と言っても、あの子は父が拾って来た捨て子で血の繋がりは無いが……俺よりもうんと整った容姿をして居て愛嬌があって、誰からも好かれるような子だ。
そして、あの子は昔からフォルス様にとても懐いて居て……そんなシエルの事を、フォルス様は俺よりもずっと気に入ってらした。
手紙を持つ俺の手が、震える──。
俺は、一枚目の手紙を読み上げるとふうっと一つ息を吐いた。
「リオン、顔色が悪い。続きは、また改めた方が──」
「いいえ、大丈夫です。最後までちゃんと読みたいです。だから……お願いがあります。目隠し様、俺の事を抱きしめて下さいませんか?」
「勿論。さあ、おいで──?」
そう言って、手を広げる目隠し様。
目隠し様が、いつものように優しく微笑み俺を見て下さってる……。
俺は嬉しくなり、目隠し様の腕の中に飛び込んだ。
そしてそんな俺の背中に優しく回された目隠し様の手は、とても温かかった。
あぁ、何て温かいんだろう。
この手の温かさを、俺はずっと前から知ってる。
そう、昔からずっと……。
あれ……昔って、いつ──?
俺は今、目隠し様に初めて出会った時じゃなくて……それよりもっと、もっとずっと昔を頭に思い描いた。
俺が目隠し様と出会って一緒に過ごすようになってから、まだそんなに経ってないのに……。
なのに俺は、この方の事をもっと昔に知っている気がする──。
俺は目隠し様からそっと体を離すと、その顔をじっと見つめた。
「目隠し様……俺は、どんなあなたも受け入れます。そして、あなたの事を愛します。あなたが俺を受け入れて下さったように、愛して下さったように──」
「そうか……リオンなら、きっとそう言ってくれると思っていたよ。では……君が俺の事を本当の名で呼んでくれたら、俺は君にこの素顔を見せよう」
目隠し様の、お名前……?
何だろう……分かりそうで分からない。
いや、思い出せそうで思い出せないんだ。
俺と目隠し様は、昔どこかで会っている気がしてならない。
きっとそうだ。
俺はそう思いつつ、父からの二枚目の手紙に目を通し始めた──。
『私はまず、その写真の出所を調べる事にした。
これらの写真が、いつどこで撮られたのか。
また、これを撮った人物はどこの誰なのか。
そうして調べて行く内に、恐ろしい事実が判明した。
この写真を撮ったのは、隣の領地に住むシエルの知り合いの男だった。
私はすぐに彼の元を訪ね、この写真は一体何なのかきつく問い詰めた。
すると彼はようやく口を割って、事の真相を語り始めた。
そもそも、この写真は全て捏造だ──。
全く関係のない男と男の写真を撮って、その片方の顔にリオンの顔を合成しただけ。
その男二人は、金を払って雇った奴らだ。
でも……そいつらへの金は、俺が払ったんじゃない。
俺を雇った人物が、払ったんだ。
とんでもない額の金を俺達に払ってくれたぜ、あいつは。
俺たちはあいつに頼まれ、言われた通りにしただけだ──。
そこで私は、その人物が誰かを尋ねた。
すると彼はこう言った。
弟のシエルだ、と──。
私は信じたくない気持ちで一杯だったが……私帰宅したは、シエルに問い質した。
すると観念したシエルは、全てを白状したよ。
昔から、フォルス様が好きだった──。
何とかして、フォルス様を自分のものにしたかった。
それには、婚約者である兄の存在が邪魔だった。
だからシエルは、お前がシリウス様の取り巻きとして男に媚を売って居た事を思い出し……それであの写真を捏造する事にした。
そしてその写真を見たフォルス様は……お前の悪評を知っていたせいですぐにそれを信じ、お前に婚約破棄を言い渡したのだ。
しかし自分を小馬鹿にされたと思い込み怒りが収まらない彼は、お前に罰を与えるという名目で、お前をあの「蜜月の箱庭」などと言う如何わしい場所へ売り飛ばしてしまった。
私はそれを知ると、お前がまだそこに囚われているのではないかと思い、急ぎ店に駆け付けた。
でも……お前は既にそこには居なかった──。
店の者に必死に頼み込みお前の行方を尋ねれば、お前を買った者が居ると言うじゃないか。
私はお前を連れ戻そうと、その人物が誰なのかを店の者に聞いた。
すると……返って来た答えは、あの「目隠し様」だった。
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