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偽物の恋。

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 その後、愛嬌があるミチルはクラスに上手く馴染んで行き……やがて僕と同じくマネージャーをやってみたいと言うようになった。


 
 教室の外までミチルと一緒なのは息が詰まるような思いだったが……恋人である先輩がその話を聞きつけたようで、是非とミチルを新しいマネージャーにと誘った。



 丁度もう一人のマネージャーの女生徒が通学途中で事故に遭い、マネージャー業が出来なくなってしまい人手が足りて居なかったからだ。



 するとそれを聞いたミチルは大喜びし、先輩の為にも頑張りますと可愛く微笑んだ。

 

 その花がほころぶような笑顔を見た先輩は、途端に照れ臭そうに頬を赤く染め……それを見た僕は、何だか真っ暗闇に真っ逆さまに落ちて行くような恐ろしい感覚を覚えた。



 そうしてミチルが一緒にマネージャーをやるようになると、学校帰りはいつも先輩と二人で帰って居たのに、自然と三人で帰る事が当たり前となった。



 ミチルはいつも僕と先輩の間に入り、先輩を独占した。

 始めは僕に気を遣い話しかけてくれて居た先輩だったけれど、何時しかすっかりミチルとの会話に夢中になってしまった。



 途中でミチルが塾に行く事が決まり、それからは先輩と二人きりになれる日もあったけれど……その頃には先輩は部活で疲れたからなどと言い最低限の会話しかしてくれず、速足で帰路につき僕を置き去りにする事もあった。



 前のように沢山話せなくてもいいから、言葉の代わりに少しでも手を繋げたら……前のようにそっと頭を撫でて貰えたら、別れ際にキスをしてくれたらどれだけ嬉しいだろうと思ったけれど……それはもう、どれも叶わなかった。



 そうしてその頃の僕は、人間としても淫魔としても満たされない不安定な日々を送るのだった。



 だがそんなある日、僕は先輩と久しぶりに図書当番を一緒にやる事になり……少し浮かれた気持ちで図書室に向かった。



 でもそこで目にしたのは……カウンターに並んで座り、キスしそうなほど顔を近づけ楽しそうに談笑する先輩とミチルの姿だった。



 そこは僕が座る所なのに、どうしてミチルが居るの?

 どうして先輩は僕じゃなくて、いつもミチルにばかり笑いかけるの──?



 気が付いたら僕は、そんな二人に駆け寄りミチルをそこから立たそうとして居た。

 

 でも……僕に掴まれた腕が痛いとミチルが涙を滲ませ訴えた事で、僕はすぐに我に返った。



 するとそんな僕を先輩は咄嗟に突き飛ばし……そして、涙するミチルをギュッとその胸に抱きしめた。

 そしてその場に尻もちをつき目を見開く僕に、冷たい目線を投げかけて来て……もう偽物の恋は終わりにしようと言って来たのだ──。
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