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初夜を夫に拒否された瞬間、これが二回目の人生だと気付きました──。
前編
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「お前のような女、抱く気にならないんだよ──」
そう言って、夫は私の手を叩き落とすと……ベッドを降り、寝室から去って行く。
私は彼を追いかけようとして……シーツを踏みつけ、その場に転倒してしまった。
そして、その衝撃で……私は、全てを思い出したのだ──。
これ……前にもあったわね──。
「初夜」が、何度もある訳ない。
だけど、これは……間違いなく二回目だわ──!
あの男……前の時も、ああして私を拒んだ。
あの時の私は、彼の体調が悪かったのか……それともやはり、私に彼をそうさせるだけの魅力が無かったのか、悩みに悩んだ。
そして、それ以上彼に嫌われないようにと、その後は必死に彼に尽くしたのだ──。
朝は彼よりもうんと早く起き、使用人の手も借りず自ら彼の朝ご飯を用意し、毎日彼を見送り……帰って来たら、すぐに出迎え、彼より早く眠りにつく事など無かった。
でも、そんな私を彼は鬱陶しがり……次第に家に帰って来なくなった。
私は寝不足や心労が祟り、体が弱り……やがて謎の病に罹った後、命を落としたのだ。
うん……一回目の人生の事は、何と無しに覚えて居る。
私は、今の自分の姿を確認しようと、鏡台に近づいた。
すると床に、見慣れぬ物が──。
「これは……手鏡?一度目の私は、こんな物持ってなかったわ──」
不思議に思った私は、それを手に取り覗き込んだ。
すると、そこには……部屋を去った夫が映っていた。
彼は余所行きの服に着替え……家の近くにある広場で、誰かと抱き合っていた。
その瞬間、床に打ち付けた額がズキリと痛み……私は、まだ思い出せていなかった記憶を、ハッキリと思い出した。
そして私は、再びその鏡を覗き込んだ──。
「そう……あの二人、またこうして密会して居るのね。私をあんな目に遭わせておいて……よくもまぁ──。いえ、これは私にとっては二回目でも、あの二人にとっては初めての出来事。その恋の炎は、そう簡単には消えないわよね?でも……今度その炎で身を滅ぼすのは、私でなくあなた達の方だから……覚悟なさい──!」
私は、もうあの男には尽くさない。
決して、大事になどしてやらない。
だって……この二回目の人生は、私が幸せになる為にあるのだから──。
その後私は、彼の事業について色々と調べる事にした。
彼はある山から採れる魔法石を加工し、それを貴族や金持ちに売っていた。
彼は今も同じく、その事業で生計を立てているのね──。
私は、自分の部屋のクローゼットの奥から、ある箱を取り出した。
何かあった時の為……そう思い、隠しておいたものだけれど……今がその時だわ。
私はそれを抱き締め、ある事を祈った──。
するとその晩、夫が暗い顔で家に帰って来た。
その横には……彼の幼馴染の女が、心配そうに付き添っている。
「もう、俺の事業はお終いだ……」
「そんな事……あれは偶々よ」
「お帰りなさい……今日は、随分と早かったのね?」
「ちょっと、色々とあってな……」
「じゃあ、私はこれで──」
そそくさと還ろうとする彼女を、私は引き留めた。
「せっかくだから、この家でお酒でも飲んで行かない?いつもは外でしょうけど、偶には……ね?」
そう……夫の帰りが遅かったのは、二人がいつも、夜の街で楽しく過ごしていたからだ。
私は、それをあの鏡で知ってしまった。
そして……一度目の人生も、そうだったという事を──。
私の誘いに、女はどうしようか思案していたが……やはり、この男ともっと居たいのだろう。
分かったと言い、家に上がり込んだ。
そして、酒を飲む内に……二人は、今日起きたある事件を私に語り始めた。
「私の家で採れる魔石が、どうしてか皆、ただの石ころになっちゃってね……」
「こんな物、何の価値もないからと、上客のご貴族様に怒鳴られ……そこからたちまち悪評が広まって……このままじゃ、俺は事業が続けられなくなる!」
「あら、そう。」
「何だ、その素っ気ない態度は!夫がこんなにも苦しんでいるのに……妻として、慰めの言葉の一つも言えないのかか!?」
「冷たい人ね!これじゃあ、彼が余りに可哀相よ……!」
私は……涙を浮かべ喚く二人を見て、フッと笑った。
そう言って、夫は私の手を叩き落とすと……ベッドを降り、寝室から去って行く。
私は彼を追いかけようとして……シーツを踏みつけ、その場に転倒してしまった。
そして、その衝撃で……私は、全てを思い出したのだ──。
これ……前にもあったわね──。
「初夜」が、何度もある訳ない。
だけど、これは……間違いなく二回目だわ──!
あの男……前の時も、ああして私を拒んだ。
あの時の私は、彼の体調が悪かったのか……それともやはり、私に彼をそうさせるだけの魅力が無かったのか、悩みに悩んだ。
そして、それ以上彼に嫌われないようにと、その後は必死に彼に尽くしたのだ──。
朝は彼よりもうんと早く起き、使用人の手も借りず自ら彼の朝ご飯を用意し、毎日彼を見送り……帰って来たら、すぐに出迎え、彼より早く眠りにつく事など無かった。
でも、そんな私を彼は鬱陶しがり……次第に家に帰って来なくなった。
私は寝不足や心労が祟り、体が弱り……やがて謎の病に罹った後、命を落としたのだ。
うん……一回目の人生の事は、何と無しに覚えて居る。
私は、今の自分の姿を確認しようと、鏡台に近づいた。
すると床に、見慣れぬ物が──。
「これは……手鏡?一度目の私は、こんな物持ってなかったわ──」
不思議に思った私は、それを手に取り覗き込んだ。
すると、そこには……部屋を去った夫が映っていた。
彼は余所行きの服に着替え……家の近くにある広場で、誰かと抱き合っていた。
その瞬間、床に打ち付けた額がズキリと痛み……私は、まだ思い出せていなかった記憶を、ハッキリと思い出した。
そして私は、再びその鏡を覗き込んだ──。
「そう……あの二人、またこうして密会して居るのね。私をあんな目に遭わせておいて……よくもまぁ──。いえ、これは私にとっては二回目でも、あの二人にとっては初めての出来事。その恋の炎は、そう簡単には消えないわよね?でも……今度その炎で身を滅ぼすのは、私でなくあなた達の方だから……覚悟なさい──!」
私は、もうあの男には尽くさない。
決して、大事になどしてやらない。
だって……この二回目の人生は、私が幸せになる為にあるのだから──。
その後私は、彼の事業について色々と調べる事にした。
彼はある山から採れる魔法石を加工し、それを貴族や金持ちに売っていた。
彼は今も同じく、その事業で生計を立てているのね──。
私は、自分の部屋のクローゼットの奥から、ある箱を取り出した。
何かあった時の為……そう思い、隠しておいたものだけれど……今がその時だわ。
私はそれを抱き締め、ある事を祈った──。
するとその晩、夫が暗い顔で家に帰って来た。
その横には……彼の幼馴染の女が、心配そうに付き添っている。
「もう、俺の事業はお終いだ……」
「そんな事……あれは偶々よ」
「お帰りなさい……今日は、随分と早かったのね?」
「ちょっと、色々とあってな……」
「じゃあ、私はこれで──」
そそくさと還ろうとする彼女を、私は引き留めた。
「せっかくだから、この家でお酒でも飲んで行かない?いつもは外でしょうけど、偶には……ね?」
そう……夫の帰りが遅かったのは、二人がいつも、夜の街で楽しく過ごしていたからだ。
私は、それをあの鏡で知ってしまった。
そして……一度目の人生も、そうだったという事を──。
私の誘いに、女はどうしようか思案していたが……やはり、この男ともっと居たいのだろう。
分かったと言い、家に上がり込んだ。
そして、酒を飲む内に……二人は、今日起きたある事件を私に語り始めた。
「私の家で採れる魔石が、どうしてか皆、ただの石ころになっちゃってね……」
「こんな物、何の価値もないからと、上客のご貴族様に怒鳴られ……そこからたちまち悪評が広まって……このままじゃ、俺は事業が続けられなくなる!」
「あら、そう。」
「何だ、その素っ気ない態度は!夫がこんなにも苦しんでいるのに……妻として、慰めの言葉の一つも言えないのかか!?」
「冷たい人ね!これじゃあ、彼が余りに可哀相よ……!」
私は……涙を浮かべ喚く二人を見て、フッと笑った。
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