スプラヴァン!

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1章 九州編

第9話  リングワ・・・リング1

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オキナワ 木部エリア

「ユイー!」
「ハナー!」

パチン

 オキナワに着いたユイはかつての友だちのハナと
待ち合わせ場所で再会。ハイタッチして会った
ハイビスカスのかみかざりを付けたウェーブヘアーの子は
オキナワ時に遊んでいた友だちで、私がここに来るのを
知っていながら待ってくれた。

「相変わらずひきしまった体ね、向こうでも水泳を
 欠かさずやってるのね、ど~れ」

ムニッ

「キャッ、こんなとこでぇ~!?」
「ほほう、決して超えられないかべはそのままに
 その他はほとんどしまっている。やっぱ全国クラスね」

こんなやりとりをするくらい親しんでいる。
というのはハナのいとこが水族館の経営をしていて、
新作を観に来てほしいとさそわれる。
オキナワを出て1~2年経ってもなつかしいとは言わない。
セリオとヒサシもいて、ほんの少しばかり時がもどる。
陽射しをあびながら目的地に向かった。


木部エリア 羊ら海水族館

「こっちよー!」
「お、アオブダイが増えたな!」
「いつ来てもキレイよね」

 数分後、連れられて来た私はなつかしくも美しい
水そうを目にする。
とにかく青、水色の背景に泳ぐ魚たちを見わたして、
改めてりゅうきゅうの海に感心。
セリオが水槽について不思議さがあると言った。

「いっつも思うんだけど、これってよくガラスが
 割れたりしないよな?」
あつさ60cmもあるから簡単に割れないのよ。
 水っていっぱい入れると重くなるからたえられるように
 造られてるわけ」

陸とちがって水中世界はギッシリと満たされているから、
支えももっと強くしなければならない。
当たり前のように海ももっと重いもの。
そんな動物をここまで運ぶわけだから細かく大変で、
ちょっとしたウォーターケースを学んだ。


 ちょうどイルカショーをやっているようだ。
少しおくれたけど、まだやっているから十分観られる。
もう何回観にきただろうか。

「あっ、こっち空いてるよ!」
「ノーノー、いとこがちゃんと場所用意してくれてるから
 一般席に行く必要なっし」
「それはありがたい、こっちといい向こうといい
 ホントにめぐまれてるよお」
「おおげさ、何年もの付き合いだから当然じゃない。
 特等席を用意してるからすわろ座ろ」

オキナワとカゴシマの間で青いイベントに会ってばかり。
夏になるとずいぶん良いことが多い気がする。
どこへ行っても特別あつかいされてちょっとかたがすくむ。
九州の地域事情に感謝しつつ、ここは素直に受け入れた。
観客たちもよろこびの顔でショーを楽しんでいる。
人と海の生物の距離はここが一番近い。
イルカはホ乳類だという。
陸と海は分かれているのに、動物の種類は場所によらず、
同じ種類という共通の動物だ。

ピーッ バシャバシャ

「新しい芸!」
「カワイイ~!」

イルカがボールを持ちながら垂直泳ぎしている。
はなでついてパス、輪っかをゴールに飛ばしたり
人のマネをするみたいに、楽しそうな目をして芸をする。
とても頭が良いから、ああやって細かい芸を覚えられて
おどろかせることができる。
単純に言ってカワイイ、ただそれだけなものの。


「・・・・・・」

私はふと何気にそれを見ていた。
輪っかの間へジャンプするイルカはそこにいるけど、
いっしょになって目に映るものがある。
何か放物線を描く様な水玉にみえた気がして、
輪はただのプラスチック。
でも、今はなんとなくちがう物に見えて、
あたかも水とすれちがう透明の輪に変わるもよう。
別にショーとは関係ないのに、そう思えてならない。
つい自分がそこをくぐっているかの様に、
ふと言葉に出した。


「・・・・・・ねえ、水の輪っかってある?
 アレを打つウォーターガンとかできないかな?」
「へ、水鉄ぽに!?」

ハナの最後の発音がとぶ。
まとまっていない気持ちを思わず口に出してしまった。
どこに向けたのか、今と関係ないことをしゃべってしまい
困らせてしまう。

「なによ、どうしたの?」
「ハッ、い、いや、つい思ったことしゃべっちゃって。
 えへへ、なんでもないよ!」

ただ、いつも水を目にしているせいか、
ショーの光景がイメージと重なってしまう。
とびはねる海の友だちと同じ人の友だちの間で、
プールのゆらぎが次第にゆるやかになって終わる。


 イルカショーの後、こんな話題がいつまでも続いて
私たちはウオバトの全国事情をネットで調べてみた。
なんとなくな発言からこんなことをするなんて、
女どうしならではのヒマさだ。

「オキナワ初の水鉄砲を作るゥー!?」
「イルカさんの動きを観ていてなんとなく思って、
 い、いきなり頭の中でひらめいちゃって・・・その」

しかし、技術的にきばつな形物なんて作れっこない。
あきらめようと思っていたら、
ハナがある人に聞いてみようと言う。

「コスギのおっちゃんのとこは?」
「校長先生に?」

校長先生の実家は和がし屋をやっていて、
よくキバツな商品を作っている(番外編参照さんしょう)。
しかもスポーツを通した教育界のえらい人だから、
何かしら手助けしてもらえるかもしれない。
さすがにこれは小学生だけでどうにかできることじゃない。
とっぴょうしながらも決め手大人の知識を借りるべく、
今日はハナの家にまって明日にそなえた。
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