スプラヴァン!

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1章 近畿編

第5話  自然の入れ物、何よりも代えがたし

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土界エリア たまゆら

「あちゃあ、結局壊れてもうたか」
「かんにんしてや・・・」

 おじさんの所に行って竹筒が壊れた事を話す。
せっかく直してもらった水鉄砲はまた死をむかえて、
あの物はもう捨てられた。
おこられるから別に言う必要はないかもしれないけど、
どうしても一回言っておきたかった。

「わざとやないねん。
 つい、いきおいでリキんだら・・・スポーンて」
「ま、しょちじゃそうなるの。
 せや、なら今度来た時にゃ良いモンやるで。
 山菜採さんさいとりで良いモン見つけたさかい」
「いいっ、せっかく直してもらったのに、
 またくれるって!?」

また何かくれると言う。
別にマツタケとか見つけたわけでもあるまいし、
それが何かと聞いてもハッキリと教えてくれなかった。
まあ、くれると言うならえんりょなくもらっておくけど、
もらう以上に許してほしい気持ちが勝る。
今日はなけなしのこずかいでアクアチョコを200円分
買って、すごすごと店から出ていった。


(ったく、ろくな目にあわんわ・・・)

 良い事があったかと思えば、すぐに悪い事が起こる。
みんな同じ地球に住んでいるのに、納得できなかった。
家の温度計を観た時は37℃。
相変わらずの日光ぶりで、目を開けるのもつらい。
ノラ犬すらまともに歩いていない。
自然は昔よりもずっと変わったという。
動物といったら冬や春にによくさされるけど、
母ちゃんの話では昔は夏にさされるのが
ほとんどだったらしい。
イジョウキショウになってきて動物なり植物なり
映画でありそうなトツゼンヘンイが現れても
おかしくないんじゃないかと
ボケっとしながら曲がり角を通ったとき。










ドンッ

「おうふっ!?」

大人とぶつかってしりもち。
すぐに立ち上がって文句言おうとしたしゅんかん、
顔が引きつった。

「きょ、教頭先生ェ!?」
「すまんのう」

ギンジ教頭とぶつかってしまった。
オレの通う学校の先生とはち合わせになって、
けつが地面に落ちる。

「す、すんませんっ!」
「気を付けてな、こんな暑いさかい危ないで」

何事もなかったかのようにそのままオレが来た道へ
歩いていった。無事に一命をとりとめた。
ハッキリいって、うちの学校の校長と教頭はちょうこわい。
金色と銀色という組み合わせの風神雷神ふうじんらいじんみたいな
ふんいきで、いつもいかつい顔。
だれから見てもさけられる見た目でビビらせている。
入学式でも1年のやつらが数人なきだすくらいで、
当時はオレもビクビクしてた。
校長とはどうやら兄弟らしいけど、
ワンセットで教員をやってるなんてアリか。
教頭は弟の方でふだんからここで歩いているはずが
ないけど、めずらしいなと思った。


次の日 会心小学校 教室

「しっかし、なんでこないな竹筒なんやろか?」
「シャッガンにもどしてほしいわマジで」
「一発打ったらすぐ陣地にもどらなアカンし、しんど」

 クラスの友だちと水鉄砲の話題に変わり、
前の物にもどせとブーイング。
ショットガン型は壊れやすいけど、
水しぶきがスゴくてあびる方も楽しい。
でも、なんで竹を選んだのか?
予算ウンヌンとかいう割には、持ってくる量もおかしい。
土界に山はあるにはあるけど、多く配れるほど
そんなに竹が多くれるとは思えなかった。
たった7mしかない日本一低い山もあるだけあって、
数少ない自然にみんなも同意見で森林ばっさいすんなと
大人らに言ってやりたい。
すると、ダイキの方が変なことを言い始めた。

「おれ、こないだ聞いたんよ。
 校長が先生らと話していて
 セッキョーしてるのを見てた」
「校長が先生に~?」
「和をもってかいしとなす、
 自然との調和をもって・・・なんかしろと」
「は?」
「分からんけど、んなこと言いながら竹細工しとった。
 ただ、意味なく森林モンを切って作業すんなと」
「何がワじゃ、なにが!?」

貝しだから会心になったのか。
ダイキの言うことはたいていどこかまちがっていて、
後から直す、なかったことにするパターンばかりだ。
だから、あんまり深く考えるつもりはない。
でも、自然の入れ物という言葉は
どこか引っかかる気もする。
人が作った物ながら、人以外の物というきみょうな意味は
こいつのねじ曲がった言い分の中に
なんとなく正しいこともありえそうに思えた。
女子のヤエも加わって言いにくる。

「何、散歩の話?」
「男どうしでサンポして何が楽しいんや!?
 シャッガンにもどせっちゅうとんねん」
「あーなるほど、竹じゃダメなの?
 水で打てば同じじゃない?」
「全然ちゃうねんぞ、まあ言ってもしゃあないし。
 男のロマンに女なんぞ入れんわ!」
「あ~そう、じゃあもどるよう願ってガンバリナサイ」

というようなしょうもないやりとりで休み時間は終わった。
そして、今日の学校生活もいつも通りに過ごす。
やかましくも小さな7月を送る。
もうすぐ夏休みだ。


 下校の後、またたまゆらに行っておじさんの様子を見にいく。
買い食いすると超しかられるけど、今回は何も買うつもりもないから
ふつうに入っていった。
なんだかあやかり[おこぼれをもらう]に行くみたいだけど、
くれると言うなら素直にもらうのもオレ。
あやまりがてらあやかりに行った。
で、おおっぴらな顔でオレにくれた物は・・・。










カラン

おじさんに竹の水筒すいとうを作ってもらった。
なんだか表面が白っぽくて竹らしい緑じゃないけど、
わざわざ色をぬってくれたみたいだ。
どこかでとってきたのをこねてオレにくれたから
うれしかった。
今度こそ壊さずに使うようにしよう。


カッコーン

 家に帰ってからササっと風呂に入る。
ここで使うわけでもないのに、なぜか持ってきてしまう。
あいつがすぐいじると分かっているのか、
前の爆破事件から用心してつねにふところにかくす様に
心がける。
それにしても、竹は不思議ふしぎな植物だ。
中に水をためられるようになっていて、人が作ってなく
始めからこんな形になっているわけだから。
そして、さらに人がこうやって入れ物にする。
2つの仕組みとやることで新しく生まれる、みたいな。

「「大人って、手先細かいやん。
  みんなこうやって色んなの作れるからええよなー」」

大人は器用でうらやましいけど、
だれかがねらって作ったわけでもない自然の固い物を
入れ物として使おうなんてよく頭が働くもんだ。
少し使いづらいけど、マガジン用に使う事にした。

「ただいまんどりる。
 男はぁ、分かれぬぅ、いっぽんみぃちぃ~♪」
(ウルセーのが来た!)

兄が帰ってきて、つい反射で忍者のモノマネ。
またこれに手を出されるだろうと、
今度こそ見せないようにする。
いつもじゃないが、時たまかまわず入ってくる。
ここじゃ逃げ場もないし、タオルで包んでもバレるだろう。
かくれられるはずもないのに身をしずめて、
竹をくわえながらよくそうの中に入た。


ザブン


(・・・使えん水とんや)
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