Crystal of Latir

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        正倉院蓮の決意2

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 気が付けば、文化会館に足を運んでいた。
理由、意味は特にない。何となく世界の生い立ちに
自然と目が追ってそこまで着いていただけだ。
先祖達も創造と破壊の狭間に動かされてきたはず。
日本は核を落とされたにもかかわらず、
民主主義も独裁も理想の世界に近づけられない。

(頑張れど、頑張れど、いつまでも叶わない。
 一部の厳しさも今ではとどかないものもあるのか)

ふと、自衛隊時代を思い出していた。
常に周囲と合わせ、ホウレンソウをきちんとこなして
乱れぬ配列、整列が理想的な世界に思えてくる。
表も裏も無き、強硬な存在こそ統制がとれる。
せっかくの休日に、答えも見出せない自分が不甲斐ふがいない。
こんな時でも体の機能は常に回る。
展示物を横切り、トイレに行こうとした時だ。










「「「刻は止まる」」」
「え!?」

突然、声が聴こえた。
側には誰もいない、聴き間違えたと思いきや
幻聴らしい台詞にしては覚えがなさすぎた。
自衛隊時代の音感は鈍ったわけでない。
外部から誰かが大声で発したものなのか。
いや、防音設備でドアが開いたわけでもない。
どうやら反響はすぐ身近から巡り、
発生源は周囲ではなく自身の中からだった。

(声は・・・・・・私の中からだ)

そういえば、妻が似た言葉を言っていた。
遠い星にいる何者かが結晶を介して訴えにくると、
他人に気付かれずにひっそりと届かせる。
私の場合は体内に潜む位置から響かせてきたのだ。

(そうか・・・だから私にも)

当時、ミネラルショーで妻に言われた言葉が
今更ながらここで理解できた。
ダイアモンドの結晶を宿す自分にようやく御告げの様な
声が聴こえてくる。
巫女云々うんぬんの区別もなく、不特定多数の人間には
骨以外の金属塊が生成されているのだろう。
だが、止まるとは何だ?
刻とは時間を意味するものだと推測するものの、
そんな事を当然出来るわけがない。


 以来、硬質を秘めたまま人間社会を継続した。
そして、また蒔村都知事に呼ばれて勧告を受ける。
早く日本から出て行けと無心され、
総理大臣も次第に体裁を懸念し始めてゆく。
対する私は防衛大臣としての成果は大きくこなしたとも
言えずにそのまま生きてゆく。
大きな戦乱が起こらずとも事件で小粒に命は消え、
不況はいつまでも終わらず、自殺者数も減少せず。
人民どころか自分の身すらも守れやしない。
ただ、ダイアモンドの声は度々体内に響かせていた。
強硬 凝結 不可侵 破壊不可 停滞 平 和
単なる結晶の性質がいつまでも脳内に伝わり、
説得とも宣告とも判別できずに悩まされる。

(私だけ・・・何故・・・こんな言葉が?)

ダイアモンドから告げられた言葉と己の信念が並ぶ。
意思と石。
己の思想と言語が重なり、固まり、凝縮してゆく。
何だか頭が重くなる。
どうして、無関係な言語どうしが集うのか?
周囲から不審に思われないように姿勢を真っ直ぐ保つ。
その時、背後から声をかけられる。

「正倉院大臣ですか?」
「あなたは?」

参事会員で後ろ姿でも私だと気付いたという。
この人は晃京都旗の交換をしにきたらしく、
帰る途中で見かけたようだ。
あの旗は彼の先祖がデザインして代々管理しつつ、
役員を務めている。最近の近況はどうかと話をした。
最中、ふと思った事を聞いてみる。

「そういえば、あの模様はいかにして決められたのか?」
「先祖の話によると、あれは太陽の六方向から光を放つ
 イメージを用いて日本を照らすようにと決めたそうです。
 首都であるここだけに、輝かしき発展のためとして」
「太陽・・・か」
「晃京告示として今でも通用しているのかは定かでは
 ないと思いますが、経済が低迷しかけた今でこそ
 再起を図れる機会が訪れたら良いですね。
 亀の子マークなんて呼ばれていたりもします」
「真上からそう見えるからか」

彼の言う様に、近年よりずっと曇りが続く現代で
光の当てる機会も迷いがちとなる。
街の様子があんな風では私とて弁論もしきれない。
そこを懸念していようと場合は変わらず。
もう声が聴こえない、だからとはいえ自分との関係はなく
いつまでもこんな所で往生していられず、
顔を上げ直すと、旗が視界に収まった。

「!!??」

晃京都旗の紋様に目が留まる。
6角形より光を放つ様な6本の線。
中心の点は中心故に留まり、不動の如く位置。
模様は知っていたものの、今日の今で見て何かしら
印象が頭の中に入った気がした。
どこにもぶれぬ等しい波紋が静かに整う感じになる。
シンプルな装飾を表現しているだけの
まるで結晶みたいなもの。
動かない、動かさせない。
当然絵であるから不動たる物であるわけだが。
紫の背景に白い線の模様。
外見からシンプルながらも総掛かりとした説得で、
フレームに目を留まらせている時だった。




   死ぬ気でやれば何だってできる
   止めてと私にささやいている
   明鏡止水
   ダイアモンド、結晶は固まる
   世界を固める




「「止まれ・・・トマッテシマエ」」

止まるというのは平和的現象と想像。
世界そのものを止めてしまえば?
内心のしんから案が生まれてくる。
肥溜めの中にあろうがダイアモンドは不変。
妻に買ってあげたダイアモンドの指輪。
あの6点留めが都旗と重なり、
平和の象徴を想像し始めてゆく。
助言されて選んだ型は自分が果たせなかった


(6点留めは欠けにくく、しっかりと姿勢を保ち続ける。
 時は絶えず回り続ける。
 私の本質は空間を制御できる事)

意識を通じて思考が変わってゆく。
1~2点留めは支えが取れやすい。
何事にも動じぬ6はあらゆる方向を守り、
自分の迷いをどうにか振り払うべく
鬱屈うっくつがどこか理想への出口に向かう感じが
頭をザラザラと巡っている。

「「はあっ、はあっ、不干渉こそナニよりの平和。
  凝結した内在こそ動態の完全制御ォ」」

人間は自由をたがえ過ぎた。
脳内に電気が走る様に役目の囲いを決定付ける。
ダイアモンドの適性とは刻の停止。
この性質、力の存在意義を絶対に絶やしてはならない。
これでようやく自分のやるべき道が明かされた。
己に内在するしるべは時を凝結するという事。
世界最高度の塊で世を包み、正し、乱れぬ空間を
形成する御題なのだ。

「ど、どうしたんですか?」
「い、いえ・・・大丈夫です」

不審な態度をしてしまったか、様子を聞かれる。
正体は気付かれていないから問題はないだろう、
この思想は突然ながらも重要な意味をもち、
今後の使命としてずっと懐に閉まっておく。


 以来、さらに時を進み続けてゆく。
防衛大臣に就き、権力ある立場についても
まだ止まるわけにはいかなかった。
ただ、1人のみでそのような事ができるのか
確信にとどいていない。
とある某所のホテルで度々落ち合っている。
仕事以外はほぼ、ここで皆と会談している。
外部に話が漏れる心配はないが、
今日は珍しく無影師範が訪ねてきた。
武道を教え込まされてきた昔話など、
積もる話を通り越して人生の過程を分かち合うように
話し合う。はたから見ればただの会合。
それなりの立場となれば職務以外でも他業界と接する
機会は普通に与えられる。
そして、苗字の由来について聞かれる。

これは1993年にあった話。
突然言われた理由は神来杜という語が珍しいようで、
今まで疑問に思った事を当時で話した。

「神来杜は巫女の様な役目だというのか?」
「はい、様々な条件付きの下、めいを妻の側として
 継続する事が向こうとの承諾事項でした」
「結晶の生業、儂と同じ構成か。
 聞いた事はあるが、どこの末裔まつえいだったか。
 宝石商の者か?」
「そうですね、海外遠征で縁をもち今に至りました。
 ただ・・・今はおいそれと神来杜を出すのが
 遺憾いかんに思えています」

師範も家系とどこか接点をもつと覚えがあるそうだが、
正倉院も神来杜も生い立ちが分かっていない。
ACという世界から秘匿されてきた存在を司る家柄に、
末裔が辿る事すら困難な道に違いはない。
向かいから小さな凬と共に発言した。

「うむ、そうだな。家が違えど、志は等しきしるべ
 教えが培ったようで何よりだ。
 武道より鍛錬された臓結晶には少々興味がある」
「本当ですか!?
 あなたに気概があれば是非とも!」
「後、儂からも案がある。正倉院の名を貸そう」
「師範の苗字をですか!?」
「神来杜のままでは辿られるだろう?
 あくまでも、身を案じてだ」

苗字を変更するよう勧められた。
スキャンダルやAC関連を狙う者が必ず現れて
家族にまた被害が及ぶ。沙苗に任せて家を出る決意も
こうして2人のために忍ぶ他になかったのだ。

そして、現代に戻る。
彼も世界最高峰たるACを宿し、巡り合わせもある意味
必然的にそうなったのかもしれないだろう。
師範は天藍会、政治家などの有権者を主に警護する
寺院を拠点とする組織。
神来杜以外でも結晶をまつわる一派がいて、
当時はそういう類の所以ゆえんは聞かされていない。
理由は何となくだが師範の適性も知りたくなる。
エドワード先生の機材で確認、
ここで新たに驚異的なACが判明。
師範はエメラルドの適正者だった。
念を入れて確認をとると世界最高峰、
四大ACの1つなのが明らかになる。
ダイアモンドもそれらの1つだ。
私の素性を話すべきか。
えにしを信じてあの計画を少し漏出した。

「新たなる再構築世界?」
「はい、私今・・・体内にある結晶を宿しています。
 内より声は、歪な現状をこの力で変革をもたらす
 計画を考えています」
「・・・・・・」

正直に打ち明けた。
正直、師範は理解していない面構つらがまええだ。
説明が荒唐無稽こうとうむけいすぎたか。
自分は出来る範囲で語ったつもりだが。
約30秒くらいの沈黙。
この人は基本、何を考えているのか理解できない。
だからとはいえ、私もまともな説明や事情もできていない
間柄で互いのキャッチボールの再確認が必要だ。
結晶は常に資源価値をもち、人を魅惑させる惑物わくぶつ
星も塊であり、重力の網でき付ける。
天藍会もよくACを狙う者が絶えず、
従うフリをして物色する輩も度々いるらしい。
確かにもう神来杜を名乗る資格もなく、
家族を形成する事ができない失格者。
こちらは断る理由はないが、余程に肝心な理由。
家族について懸念があると師範は述べた。

「代を継いできた経験においても、希少物は
 いつの時代でも数多あまたより気を引かせる。
 ヨーロッパからの介入がないとは言い切れん。
 それに息子がいるのだろう?
 彼にも再び凶行の手が来ないとは言い切れん。
 同類たる異端者などがまた君を狙ってくるだろう」
「確かに・・・」

聖夜の黒は接近しようものなら、再び噴き出してくる。
自分は承諾し、正倉院を名乗る事を決めた。
20になった沙苗に預けている。
生活費も毎月振り込み、生活は保障させているが、
ダイアモンドの件は一切話していない。
聖夜に真実を知られる恐れもあり、私と同じように
社会の迫害などで自害される危険もあった。
そこで迷いなくあの計画を打ち明ける。
師範は条件付きで受け入れて、組織に加入。
また1人=1つのかけがえなき者が寄せてくれた。


 こうして、また月日は去ってゆき、通常の生活を送る。
さらに新たなメンバー達も加わった。
海外派遣のビ・エンド、教会のジネヴラ・アヴィリオス、
息子と同じ学園の白峰光一も私の思想に参加。
少しずつ賛同者を増やし続けてゆく。
時を経て、より強力な鉱石に刻印を刻み、
エドワード先生にサファイアの適正。
ジネヴラにルビーの適正が次々と明かされてゆく。
試行錯誤さくごを幾度もこなし、そして
ダイアモンド、ルビー、サファイア、エメラルドの
四大ACの精製に成功した。

とはいえ、無影師範の言葉に胸に突く。
異質なる力を求めて自分を狙ってくる。
決して逃れられない宿命をどう克服するべきか、
防衛大臣に相応しい働きかといえば多少の否定が入る。
姑息こそくなネズミの様に立ち回る事をしている
今の自分など、どうでも良い。

後、もう1つ重要な課題も残る。
ダイアモンドの勅令をいつどこでどのように起こすのか、
計画もまともに立てられていない。
平和のためとはいえ、完遂までのルートを設計できず。
刻を止める場所はどこで行うべきか?
元から困難を極めるものであやふやに迷うところ、
エドワード先生から意外な場所をもたらされた。

「絶対防壁、アブソルート?」
「金環日食時に大いなる異界の連携として支えとなる
 アンテナ役といっても良い」

2012年、5月21日に日本で発生する金環日食。
太陽と月の視点が重なる事で結晶の効果が最も増幅する
時期だと指摘された。
しかし、途中で邪魔される危険性も当然あり、
先生の絶対防壁内で行う方が安定するようだ。
さらに、ビ・エンドのポリカーボネート障壁を
晃京周囲に張り巡らし、維持する事で
計画を成功させる根城を提案される。
ダイアモンドからさらに強固な七色に輝く壁は、
核ミサイル直撃すら不可能な程強固らしい。

「そのような仕様は一体?」
「現代兵器の砲撃すら破壊不可能のそれは
 かつて、星の偉人と交わした設備といわれている。
 紛争から身を守るためと書いてある」

同時に星に対する掲示でもあり、
計画推進を大きく促すものであった。
仕組みはまったくといって理解できない構造で、
女性の血から生成された性質だという。
アブソルートは古来に避戦地として居住区を
設けるために生成された。
しかし、誰でも開発できる代物ではなく、
教会はまだ製法を知る者がいるものの、
実際に造れず選ばれた資質のみ構築可能な存在なようだ。

「そこに生成が可能なのがダイアモンド適性者、
 私の央にそんな能力があるとは・・・」
「ダイアモンドは確かに最高度を誇る。
 女性の血に限る条件はまだ不明だが、
 介入できるのも、またダイアモンドに限るようだ」
「私と同類の何者かが圧倒的な防壁を築いたのか。
 歴史上にもダイアモンドの適性をもつ者がいたとは」
「医学からして数滴の血液と結晶の混合で
 細胞分裂を起こす様に増幅するくらいしか分からん。
 また、新たに判明したら伝えよう。
 この本を読んでみるといい。
 専門外でも理解しやすくなるだろう」

入門書、らしき文献を受け取る。
しかし、内部で生成すると外出時に奇襲を受けるので
施設を借りて複数のACを実行日に適性者を招いて
1人ずつ理想世界を築く事を立てた。
そのためには電気エネルギーが必要であり、
それを晃京のどこかに備えてゆく必要もあるという。
防衛省直下の設備は無理、直に指示を出そうものなら
すぐに発覚される。
思えば、組織結成から彼らに助言されてばかり。
世界最高のACを秘める自分が身にもちつつも、
ろくに結晶を知らないというのも少々恥だ。


 そして、またしばらくの月日が流れる。
組織は少しでも多くの賛同者と結晶追究のために、
アブソルートから次々とACを生み出してゆく。
そこには常識を疑う性質、能力が発見されて私の頭も
理解が追い付かせるのに一苦労しがちだ。
もう常識の通じない世界に居る。
分かっていたが、目に入る情報があまりにも奇怪。
エドワード先生から借りた本をきちんと少しずつ読む。
そう鑑みつつ文字を辿っていくと、
見慣れぬ単語が目に付く。

(オリハルコン・・・)

という単語が目に付いた。
現実には存在しない鉱石が記載されているのは何故か。
話によると、古代ギリシャ、ローマの文献に記載された
物語で書かれた造語らしい。
理想を形にする未知のもの。
ただ、実在しない物に考慮しても特に意味を見出せず。
これといった事情がなく初めて知ったものの、
あくまでも想像上の存在。
個人的入れ知恵はないが、意識の底に沈めておく。


 2011年、11月を迎えた。
政府は自衛隊、軍備縮小の方針を行うと言う。
防衛省とて全てが自分の意思で賛同するわけがない。
慎重に事を進めていこうとしのんだ。
だが、ここで予想もつかぬ展開が起こる。
自衛隊らしき組織に待ち伏せされていた。
自分の指揮下ではない。
“防衛出動”の権限から内閣が発動したに違いない。
高橋か武田かが迂回して上に通達を出したようだ。
よって、ACは晃京各地に散開。
砲撃の一部を受け、散り散りになってしまった。
もし、私を嫌疑にかけているのならば
いずれ隙をうかがって自分を拘束してくるはずだ。
超極秘裏に派遣で呼び出したビ・エンドを回らせて
防衛省外の対策をとろうと図る。

また思わぬ情報が入ってきた。
聖夜の同期がACの回収を依頼させる。
それを機に、本格的な結晶との関わりをもつ。
予想していたのと違い、時期早々だ。
報告によると、暴動者排除に悪魔召喚の実験で
エドワード先生がスケルトンの召喚を一部誤り、
学園に向かってしまったようでエンドを配置させた。
公共の場は人の出入りが多く、かつ息子の動向も
見やすいのでおあつらえ向きだ。
どういう訳か、首都高速道路にいたのは心外だが。
エンドにアメジスト回収がてら近づかないよう
気を配らせたのが慎重を要する。

私も結晶の知識を多少蓄えなくてはならない。
先生を始めとした優秀な者達も集い、振り回されるのは
リーダーとしても適さない。借りた本にも目を通して
読み進めると、もう1つの架空物質
ミスリルとよばれる鉱石が書かれていた。
これも非実在物質で、海外作者が現実的説得として
ファンタジー小説の設定として作られた造語だ。
それにしても、人とは随分と想像豊かに結晶を思いつく。
確かに想像、意思より繋がりを求めて形成されるが、
実際は金銭的価値、工業価値くらいのはず。
賛同とは一体どういう要素が含まれるのか。
異界の従者は何故我々に訴えてくるのだろう。
ジネヴラと白峰が近況を語る。

「ボス、お身体のダイアモンドは本調子で?」
「私はずっと変わらん、来たるべき日のために
 いつでも本懐を成す覚悟はできている。
 聖夜も大分、ACと馴染んでいるようだが。
 ところで、教会の意向はどうなんだ?」
「相変わらず都庁解放の方針を変えてないようで。
 でも、私がいる限り中に入られる事はありません。
 聖夜君の熟成も5月までには間に合わせます。
 妹も、いずれは私が関与してる事に気付くでしょう」
「彼女はこちらに来る意思はありそうか?
 できれば、彼女も我々の下に加わってほしいが」
「そうですね・・・来るべき時に私が説得します。
 あ、それから新たな適性者を見つける方法が
 あるそうです」
「更なる方法が?」
「ええ、刻印をインターネット上に表示して
 観た者の眼から適性者を見分けられる術です」
「そんな事も可能なのか!?」
「白峰君のアイデアを不特定多数の中から
 適性者を選出する方法を編み出したようです。
 エドワード先生の手助けもありますが」

彼は文明の利器もACに利用する方法を模索。
図書館管理者の息子で刻印を目視して、
当日に肉体を停止させずに選ぶようだ。
眼は水晶体を含み、クォーツ内にある刻印を見せると
視神経を辿って体内の金属性を調べられるという。
しかも、きちんとしたサイトなどではなく、
端々のコメント欄でも効果があるようで、
今文明の粋を借りて招集効率に拍車をかけられた。
眼圧測定とばかり、悪魔の検査もここまでくるとは。
いや、異界の者だ。
自分に言い聞かせるように妻の語源へ立ち戻る。
AC集合体の行き先、顕末けんまつに何が迎えるのか。
後、気になるのがジネヴラの妹であるマナを
この組織に加入させるかどうか。
実姉が招くのが当然だと推測するが、白峰が誘うと言った。

「僕が直接招待しましょうか?
 図書委員のよしみもあり、
 誘いやすいポジションに位置しています」
「紛れて変な事するつもりじゃないでしょーね?
 あんたがスケコマシなの知ってるんだから」
「な、ナニを言うんですか!?
 僕は同期として肩を並べようと思ったのが動機で――」
「ゴホン」
「あ・・・ええ、すみません。
 対処につきましては私が直に当たります。
 その時は・・・その時で」
「そうか・・・」
(女は着眼点が違う)

今のやり取りはともかく、招集はメンバー達に
引き続き任せておこうとした。
対して、こちらの双対たるダイアモンドの都合は
きちんと成せる段取りを備えているのか不安も否めず。
エドワード先生の供述のまま従い、最硬度どうしを
アブソルート内で重ねて合わせる事で計画は成就。
肝心の聖夜は都合よく引き受けるだろうか。
黒の力は侮れない。
私ですらまったく制御が及ばずにみるみる溢れ出し、
テロリスト集団の体液を吸収しきった恐るべき
破滅の情勢を白の力で均衡を図る。
もし、息子が拒否して同じ動向となったら・・・。
まだ考えない事にする。
映像刻印についてはジネヴラと白峰が対応してくれる。
ネットを介して4月1日に公開するという。
架空と空想の交わる要素の果ては現実か、虚無きょむか。
無影師範も天藍会を離脱。
私の組織に参加表明をして頂いた。

「もう少しで我々の塊は成就を果たせます。
 師範がエメラルドの最適性となった事に、
 光栄に存じます」
「風を理解しきれるのは儂しかおらんだろう。
 が、武士道はもう必要のない存在となる。
 居場所はすでに限られてこよう」
「そうでしょうか?」
「例えばだ・・・人体にとって要らぬ角質が出ると、
 皮膚から溢れるあかを削り落とすには?」
「硬質化した物質でこする」
「という事だ。
 効率とは無駄をぐ事。
 取れぬ瘡蓋カサブタは何であれ、
 擦らねばいつまでも本分まで重しをもたらせる」

有機物は無機物と違い、老廃物を生む。
組織結成から異なる生い立ちや様々な視点で
一癖ある師範の話も直ぐに理解できるようになった。
結局は一種の武力介入で変えてゆかねばならない。
戦場に英雄など存在しない。
歯車がせめぎ合うだけだ。
そう、架空だからこそ実現への道を求め、
犠牲をもってしても踏み固めた道を歩くべき。
死ぬ気でやれば何でもできる。
組織名も新たに命名。
新たな力を得た今、本当の意味で防衛する義務と使命を
世界の救世として果たす刻を待つ。
真の平和へ近づく機会をここでこそ生み出すべきなのだ。

「後は太陽と月の重なりを待つのみ」

本当にこんな現実を迎えるなど思っていなかった。
九死に一生を得たあの日から、もう運命は定まり
生きる重圧で質と心は固められてゆく。
もう止められない。
2012年、5月21日7時34分。
全てはこのトキにより世界は変わる。
結晶こそ我が理想に相応しき世界なのだ。

「息子の覚醒を待ち、変革の刻を待とう」

白峰光一、ビ・エンド、ジネヴラ・アヴィリオス、
正倉院無影、エドワード・エルジェーベト。
等しき境遇より選ばれた者達へ、
かけがえなき御石のメンバー達に号令をかけた。










「我々はオリハルコンオーダーズ。
 歪なる世界を静寂に導く者なり。
 並進対称性に整う固の配列こそ、真の平和である」



――――――――――――――――――――――――
ミネラルショーは当時、東京ドームで開催されてなく
創作なのでご了承下さい。
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