Crystal of Latir

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第54話  決戦前夜、それぞれの想いと・・・

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2012年5月20日

「事前配置、完了しました」
「ご苦労だった」

 陸将補の武田は部下に兵器配置完了の報告を受ける。
21日の作戦は目前に迫り、都庁の四方に目立たないよう
シートをかぶせられた装備を静かに潜ませていた。
先は未踏の地そのものな世界であるが、今は停滞の時。
数人の若者の持ち上げより、都庁の頂点へ上り詰めて
数ヶ月に及んだ結晶の支配を解き放つ時が、
明日には全て判明するだろう。
2人は悪魔の姿がほとんど現れない今に、
相手も入念な迎撃態勢にあると端から眺めてゆく。

「珍しく、這い出てきませんね」
「本格的に攻めに来ると分かっていて備えているな。
 周囲のバリケードも撤去し終えて、
 出現ポイントも潰されたのが効いているんだ」
「装備庁に手先がいたのは予想外でしたね。
 横槍故に劣勢の立場でありましたが、
 明日からは形勢逆転の関係となりそうです」
「もう、あの様な惨事さんじを繰り返すわけにはいかん。
 俺は今生きている。
 生物にとって何よりの塊の命を守るこそが
 のうのうと生き長らえた年長者の務めだからな」

部下に年寄りじみた貫禄を言いつける。
長生きしているからには確かな生存学を教えるのも
大切だと言いたかったからだ。
理由は言うまでもなく過去より味わった経験。
命を削った境遇を部下に同じ思いをさせたくなかった。

自分は当時、120人の部隊を抱えた隊長。
増尾や蓮とは違って最も少ない数で対応していた。
縦浜内ですでに滞在していたテロリストの手引きで、
入り組んだ地形による綺麗な掃討は叶わず。
奴らも合間を見計らうよう銃器をふんだんに用いって、
あっという間に50人が消えた。
巧妙な手口の現地で一度態勢を立て直すために
新米のいた10人だけタンク配置場所へ避難。
若年層をやすやすと死なせるわけにはいかず、
クリアリングの済んだ場所へ移させる。
予想通りか、その後でさらに20人の命を失ってしまい、
高齢の隊員の殉職者ばかり溢れてゆく。
幸運な事に以来は敵兵の数がパッタリと消えて、
他部隊の応援にと20人を割いて向かわせる。
それも無事に終わり、帰還してから自分の部隊は
計60人生存できた。

「あの時の判断は間違っていなかったと思ってる。
 現にお前もここに立てていられるしな」
「ごもっともです。
 当時は最新鋭だった44口径に、
 相手への威圧感をかけられました」
「人間は誰であろうと、理解不能に畏怖いふする。
 奴らは奇襲をしてきた。
 だから、今回は俺達が奇襲をさせてもらう」
「彼女の功労のおかげで今に至れましたね。
 ACという新機軸は1つの区切りとなりそうです」
「まあ、俺達も摩訶不思議の世界に囚われてきたが、
 一度吸収したもの程、頼りになるものなどない。
 そう、今度こそだ・・・。
 歪んだ塊を一歩たりとも侵食などさせん。
 安らぎ場という我々のノゾミがそこにあるんだからな」


 聖夜、マナ、厘香、カロリーナの4人が科警研の
執務室で主任からミーティングを受ける。
来るべき明日の都庁突入に向けて、
自分の役目は都庁の根源となる黒き結晶を阻止。
自衛隊の新型兵器投入を実践により、
オリハルコンオーダーズ組織の身柄を拘束するという
明確な目標をここで示された。

「以上、これで作戦は決まり。
 明日、21日の午前6時に都庁周辺エリアに集合」
「はい!」
「起床より、すぐに行動を起こせる状態でいるように。
 よって、今日ばかりは私が指定した所で寝てもらうわ。
 少し離れた区にホテルの部屋を用意したから、
 そこで泊まりなさい」

しっかりと自分達の待機場所も用意。
出動に備えてくれていた。
失敗は許されないとばかり、陣地をしっかりと配置して
すぐにでも出動できる態勢にのぞんでゆく。
マナ、厘香、カロリーナもすでに不足なものを
出さないよう徹底する。

「いよいよか」
「ようやく来ましたね」
「明日、全て」
「ま、やるようにやるわ」

郷は作戦外、元々特殊工作班の一員ではないから
今回は行動を共にする許可は下りなかった。
主任の後押しですぐホテルに行こうと思った矢先、
マナが何か用があると言う。

「聖夜さん、わたしておきたい物があります」
「ん、これは?」
「私達3人で作った御守りです」
「あ、ありがとう」
「作戦成功祈願として作成しました。
 そして、私達もそれぞれのACをわたしています。
 独自の属性に頼らない手段も考慮したので」
「独自のACって、適性は大丈夫なのか?」
「すでに確認しています。
 私も少しばかり風の力を使えるようになりました」

3人はそれぞれ属性が異なるACを回し交換していた。
マナは厘香からスフェーンをもらい、
厘香はカロリーナからハウライトターコイズをもらい、
カロリーナはマナからファイアークォーツをもらう。
強力でもない性質だけど、1つの属性にとらわれない
サポートをし合っていた。
後で万が一のために別の力で対処を迫られた時、
わずかな突破口をお互い模索していた。

「そういうわけか。
 1人が1つの属性って決まってるわけじゃないしな」
「あんたは何でも使えるから実感湧かないでしょうけど、
 適性をもつってけっこう大変なのよ」
「敵も何かしら属性をもつACを扱っているはず。
 少しでも多くの性質が使えたらってね」
「本当なら、自身の性能1つで乗り越えるべきだと
 思いますが、相手も人がいる以上手の内を十分に
 把握、対処しうる可能性があるので。
 いずれはこうなる運命なんですね・・・」
「?」

自分は何とも思わないけど、
ダイアモンドの適性はあらゆる面で結晶の頂点に
達する性質をもっているのだろう。
マナの言う運命という言葉に引っかかるが、
今は何かが分かるわけでもなく、
彼女達の加護を素直に受け取った。
武装の準備としてはこれで完了。
次は体をきちんと整える場所の確保で、
科警研から場面を変えて当ホテルに移す。


「で・・・一部屋!?」

なんと、予約してもらったルームは同室。
男1人、女3人で同室に利用しろというのだ。
若者相手に4部屋用意してくれる予算など
あるわけなかったのだろう。
プライバシーをおもいっきり無視した設定に、
少なくとも自分は気まずくなった。
横目で御三方おさんかたを見る。

「良いのか?」
「私は構わないけど?」
「18歳なんて、もう成人枠じゃない。
 何、恥ずかしいわけ?」
「男の人が多くいるわけではないので平気ですね。
 聖夜さんとなら気兼ねなく泊まれます」

3人共に平然とした様子。
男がなんぞと拒否反応を見せずに許容しているようだ。
意外に腹が座る彼女達の同意を得て、
自分だけ恐縮するのも体裁がつかない。
もちろん、心底嫌なわけがないものの、
男女間のプライバシーをここで突かれた。
それ以外は特に問題はない。


夕食を終えて、残すところ寝るだけの時間を迎える。
カロリーナも今回ばかりは夜間に出たりしない。
明日に備えてきちんと自己管理。
こうして集まるのも久々だと感じる。
いざこざ間があったから、そう思ったのだろう。
談笑を交えながらお互いに顔を見合わせている今、
大人しくさっさと寝れば良いものの、
ただでさえ異性といるので心象もぎこちない。
そういえば、3人はどうやってACと関わってきたのか。
今まで詳しく聞いていなかったから、知りたくなった。

「なあ、今まで詳しく聞いてなかったけど、
 お前達はどうやってACと関わったんだ?」
「どうしたのよ、突然?」

今後、何が起こるのか分からない。
ちょっとしたきっかけ、境遇くらい聞いておけば
気の持ちようがより強くなれると思ったから。
チームとしての、なんていう建前でしか彼女達の前で
言えないけど、内心も聞きたい本音もある。

「俺は学園の時襲われてパッと出に覚えたから、
 あれがACとの出会いだったけど。
 それぞれ何か理由とかあるんじゃないかって」
「ぜひ聞きたいなら、私は話しても良いです」
「本当に良いのか、まずはマナから」
「いざ、境遇話となるとちょっと恥ずかしいですね。
 でも・・・そうですね。
 私と教会との出会いは向こうの国からで、
 ヨーロッパから派遣で日本に来たのはそのままなのは
 すでに知ってると思います」
「中学の時に日本へ来たんだよな!
 当時は俺もビックリしてた。
 日本語ペラペラだし、慣れていたかのような感じで
 そんなお前は向こうで何してたのかなって」
「私は10歳に上がる前に両親を失い、
 ロストフ司教の下にいったのです」
「やっぱり、普通の生活じゃなかったのか。
 ロストフさんの言う通りだ・・・」
「あの時は生活の一転して大変なのは確かでした。
 私はすごく甘えっ子で、1人じゃ何もできずに
 いつも姉についてばかりいて」
「見たまんまな貫禄」
「そして、あるきっかけと共に私達はヨーロッパから
 身を遠ざけるようになったのです。
 教会の立場でありながら、本部から離れるように」
「・・・・・・離れて?」
「ええ・・・教会には身を引きつる様な風習から
 逃れるために私達はここに来たわけです」

私達は権力の陰部を避けるように日本に来た。
入会から作法を学び、ACの適性を理解するのに
あまり時間を要しない日々を過ごしてゆく。
しかし、定期で行う教会の大司教による儀式で
当時は内容が分からなかったが、
女性ばかり呼ばれていった事だけは覚えていた。
ある日、修道院の先輩シスター達がよばれていった後、
皆は泣きながら身を震わせて帰ってきた。
当時は何が起きていたのかは分からなかったが、
後に道徳観念をおかす内容のもの。
クォーツで一部始終を見たという姉は断固拒否。
家出をしてまで教会から逃げ出そうとした。
父、ロストフは私達を見かねて日本支部へ異動。
彼らの手がとどかない所にまで置いてもらい、
法治国家の強いここで今に至る。

「そして、都庁を覆う結晶も私達教会の秘術を
 担っていたものです。
 あの七色の結晶、アブソルートは元々安住の地として
 発案されたものなんです。
 しかし、時代が進んでも程遠き乱用ばかり。
 権力者達はただただ自己保身のみで、
 他から干渉できない禁断のそのを築くだけの
 領域しか扱わなかったようです。
 教会の法と切っても切れない概要の」
「そんな理由が・・・」
「ですが、今回の事件は完全な独断で築き上げた
 動機だと思っていません。首謀者は単なる私利私欲に
 都庁を占拠したものではないと予想。
 他のメンバーも秘術を知る人が」
「お前の――」
「おそらく明日、その結果が目前に現れると思います。
 私が代表でここにいるのが何よりの理由ですから」

都庁を塞いでいた塊は教会の秘術の一端を担っていた。
戦乱の絶えない中世時代に発明されたという絶対防壁で
安全圏を利用して籠城し続けてきたのだろう。
マナが選抜でここにいる理由もうなずける。

「なるほどな、オリハルコンオーダーズも相当に
 昔の知識を使って事件を起こしてた。
 だから、教会も昔から深く関わってたんだな」
「そうですよ、あなたに渡したレッドベリルも
 宝石業界ではとても貴重で、ACの効果を除外視でも
 ダイアモンド並みの価値がある代物なんですから」
「え、えええぇぇぇぇ!?」

最初に受け取った赤いACの価値を今更気付く。
値打ちに代えても彼女は大きな目標がある事に
自分は今追及しなかった。
晃京解放という大きな目標だけでなく、
マナはマナなりの役目を果たすために。

次は厘香の生い立ちを聞く。
天藍会というシークレットサービス家なのは
昔から知っていたけど、ACと家の所縁ゆかり
どうして風の弓矢を扱うようになったのかなどは
まったく知らなかった。
神社やヘヴンズツリーで見られた能力は確かに
悪魔と対等できるのはすでに知っている。
所々助けられたのもあるが、多少なりとも興味はある。

「次は厘香の話を聞きたい。
 お前は弓道部のエースでそれが得意なのは分かるけど、
 クリスマスイヴの日から風の力とか色々知ったんだ。
 どうしてACの力に目覚めたんだ?」
「実は私は元々風を操る能力はないの。
 翠のAC、加護を得るための作法が
 天藍会にある掟があったから」
「おきて?」
「適性のある巫女、それに目覚めるためには
 欠かせない通過儀礼を越さないといけなかった」
「それは・・・つまり?」










「私は・・・はこの中でずっと育てられてきた。
 3歳になるまで、外の世界を知らなかったの」
「はこ?」
「密閉容器の作法によって空間感知を養う修行の1つ。
 前方だけ開けた鉄格子の間から風をまとい、
 闇より極細の波長を見分ける暗視の目で
 光を導かせる役目だと教えられてきたから」

地下にある一室の中には古くから伝わる特別な金属製の
牢屋が敷かれている。
光の識別をして風の力の恩恵や扱いの成長をと、
体内にある適性力が外に漏れないように、
内蔵させ続ける過酷な修行の一貫。
匣の巫女、ACの適性が一定に達するまで出られない。
3歳を迎えるまで、食事や寝具以外の生活品以外は
与えられず、薄暗い鉄格子の中で育てられる。
父は掟に徹底していて、問答無用と仕来たりに従う性格。
泣き声に耐えかねた空兄さんや征十郎さんが
隙を見つけてはよく外に出してもらっていた。
私も酷い事をされているという実感も分からずに
ただ、暗がりが怖くて泣いていたのは覚えている。

「私が暗視できるのも、匣による影響。
 自由も奪われた狭い部屋で目覚め、
 光の強弱も判別できる能力を得た」
「そんな掟があったのか・・・天藍会に」

こんな監禁紛いな行為は普通なら刑事事件になるが、
法事として一部にねじ込まれものは知れずに制定。
理解できない母は家から出ていってしまう。
事実を知った私は一度、あの牢屋の理由を追及した。
父も父で代々伝わる作法は絶対の如く、
習わしに応じる必要があったために
異常による異質な能力なしで正倉院家は継げない。
ただ掟で従わなければならない、すまん、すまんって。

「お前も、相当な出生なんだな。
 そういえば、光についても話にあるけど、
 俺に光の剣を使わせた理由は何かあるのか?」
「私も詳しくは聞いてないよ。
 父は厳格で、ほとんど言葉にしない。
 因習をいつも内側に押し込めてばかりで、
 行動理由を知るのは難しくって」
「・・・・・・」

雰囲気からしてただならぬ因習らしき何かをもつ
気配もなくはないと思っていた。
空さんも征十郎さんも行動心理を把握する人は
なかなかいないようだ。
厘香の壮絶なる話はこれで終わる。
伊達に精通したACに特化してはいなかった。
風と光、正倉院家の者にしか理解できないのだろう。
譲り受けたミストルティンもまだ使いこなせない中、
都庁で役目を果たせられるのか手に覚えがない。
彼女は匣の力で都庁の間を封印する役目として
また代表でここにいる。
この国にまつわる翠の石も、明日の出来事で
何か答えが見つかるだろうと自分達に伝えた。

そして、最後はカロリーナの番。
黙って外国に行ったお騒がせ娘の
最も出会いが遅かった彼女に何があったのか、
耳を傾けながら静かにした。










「あたしは・・・・・・特にないわ」
「なにっ!?」
「ホントにないんだからしょうがないじゃない。
 どこでACと会っただの、どうやって育ったのとか、
 とにかく気が付いたら病院にいたんだから」
「気が付いたら?」
「あたし・・・どこで生まれたのか分かんないの。
 知ってるのはヨーロッパってくらいで、
 特別養護施設で教育を受けながら、
 エドワード先生に言われたまま生活してた。
 んで、仕事の1つでこっちに来ただけ」
「なら、元々日本に来たってのは?」
「そんなのシンプルよ。
 使命はただ、アンタをかっさらうために来たから」
「俺を拉致らち!?」
「でも、ムリだったのよ。マナと厘香に阻止されたから。
 いざ実行という日にこんな事件が起きて、
 晃京解決の中でアンタを海外に連れてこうものなら、
 アヴィリオス教会や天藍会とセンソーになるからって!
 ハハハハハ!」
「・・・・・・」

突拍子もないエピソードに、言葉もない。
カロリーナが来日したのは自分をさらうためだった。
病院を隠れ蓑にしたヨーロッパの組織は自分の適性を
利用するべく近づいてきたため。
3人は意味もなくACを伝えてきただけでなく、
自分の見えないところでの三すくみが
密かにやりとりされていたなど思いもよらない。
怪しげに行動していた理由がそれだったのか。

「で、防衛省総出に本部もお手上げ。
 予定変更でウヤムヤに今の状態だけど、
 向こうにいた記憶はやっぱりあんまりない感じかな。
 だから、持ち前の氷使いって事と
 19歳ってくらいしか判明してない」
「じゃあ、この事件が解決したら、
 いつでも俺を向こうに連行するつもりか?」
「もうなくなったわ。
 EUの介入で摘発くらって崩壊。
 今まで病院で寝泊まりできていたのも、
 エドワード先生とリリア先生のおかげだったし」
「ああ、そうか。
 すでに解散してたって主任も言っていたな」
「本当なら、もう宙ブラリンで生きる意味も
 へったくれもない立場になってた。
 でも、気が変わってきた。
 あたし、卒業したら探偵になるって!」
「俺の知る限りじゃ、2つ解決できたんだよな。
 自信ついて、持ち前の技量を活かすつもりか」
「それもあるけど、災禍転福さいかてんぷくっていうんだっけ。
 こっちに来てから本当に良いってあたし分かったの。
 あんた達と一緒にいた方が楽しいって!」
「お前・・・」

かなり大胆で適当なところもあるが、
カロリーナの性格が回り回って今に至る話だった。
こうして3人それぞれのエピソードを知った。
彼女達の境遇や思いを聞いて、なおさら後には引けず
負けるわけにはいかない気概がする。
明日に備えてもう寝る事にした・・・いのだが、
寝台が1つしかない。とっても大きなベッドが。
風呂場で寝るのを覚悟していたけど、
おもいっきり体が悪くなる。
すでに分かっていたように4人の視線はそこに向くのだが。

「さ、もう寝るわよ。
 夜更かししてると、明日に響いちゃうし」
「でも、俺は男だし――」
「いまさらなによ、4人スッポリ入るんだから
 ちゃっちゃと寝るっ!」
「実にアッサリと」

4人で1つの大きなベッドに入る。
体の全てが布団の中に収まるから寒さを感じず、
居心地は普通に良い。
たまに彼女達の足が触れる。
口には出せないけど、とても暖かい。
彼女達は俺が気にならないのか、
次第に会話も何もなくなり、それぞれの姿勢にして
まぶたに力が入らなく寝落ちにつく時。

「「聖夜」」
「「ん?」」
「「あんまり気負わずにやりなさい。
  あたしらがついてるんだから」」

寸前のカロリーナがひょっこりと顔を出して発言。
“あたしらがついてる”。
何故か寝る前に言ったのかは分からないけど、
この言葉で寝落ちとは別の安らぎも与えられた気がする。
最後までずっと背中を押してくれるようだ。
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