79 / 99
第50話 反射光
しおりを挟む
オリハルコンオーダーズの一員、白峰光一との交戦は
マナとの協力で苦戦の果てにようやく終わった。
黒幕の一部の破壊による散乱が残るものの、
仕掛人は跡形もなく消え去り、ホール内は静寂になる。
(光一が黒幕の一部だったなんてな・・・)
同級生の1人が晃京の占拠者だったという事実が、
あっけにとられたなんてレベルじゃなかった。
意外性なんて今までの経験からもう慣れたと思ったが、
今回は違う。
晃京の支配者の一角が目の前に立ちふさがり、
偽りなく人のままで姿を現した。
しかも、なかなか手強い相手だった。
上級悪魔を召喚できるなど、組織に選ばれただけはある。
まだ他にも数人いる事に目まぐるしいが、
とりあえず今はマナを助けなければ。
剣で切り、ほどいて床に降ろした。
「大丈夫か!?」
「私は平気です」
見たところ怪我はなく、疲れ切った顔をしているが
マナは本当に危害を加えられていなかった。
光一は彼女に好意をもち、あげくに自分へ嫉妬して
挑戦しに招いたのだろう。
人の事なんて言えないポジションだけど、
お互い衝突する場に呆れ事すら口に出せなくなる。
「同じクラスの連中がACを使うなんて、
すっかり見慣れたのもあんまりだけど。
今回はちょっと堪えた。
あいつも・・・ACを持っていた。
しかも、オリハルコンオーダーズだったとは」
「私も意外でした。
黒いACはあまりにも強大で、
1人でこなせられなかったのが残念で」
「無理もない。
図書委員どうし近い所にいたからこそ、
偶然分かったんだろうな」
「光一さんは学園中において特に高い適性力を
もっていたようです。
あの人が所持していた書物にACが入っていて
不審に単独で調べていたんです」
「それで光一が黒なのを気付いたのか。
ここに来る前に俺達に相談してくれれば」
「実は私、光一さんの事を前から知っていたんです。
以前、あの人にACの件を内緒にしてって話ですが、
すでに気付かれていました」
「えっ!?」
「そして、彼は黒い鉱石を所持していた事で、
オリハルコンオーダーズに関与した疑いが強まり、
私だけでここを密偵したかったのです」
「だからって、単身でこんな無茶をしなくても。
そういえば、ジネヴラさんは?」
「・・・姉の居場所は分かりません。
二手に別れてから、行方が」
ジネヴラさんも独自行動でここにいなかった。
教会も気取られないように動き、
常に裏取りばかりする見えない相手だけに、
隠密行動をする必要があったのだろう。
「まあ、そうだな。
俺もあいつの罠にかかったくらいだし。
お前がAC使いだって事を気が付くくらいだしな」
「だけど、光一さんは前から存在に気付いてました。
図書室に侵入した人の話、ありましたよね」
「ああ、確か魔術書を漁りにきてたって」
「その人は光一さんの指示で来ていた人です。
私が図書室で設置した監視カメラに内蔵した
クォーツを辿られてACを気取られたんです」
「な・・・!?」
「悪魔の書も噓だったんです。
本には元から悪魔を封じる力はありません。
後に光一さんもACの適性をもっていると気付いて、
イチかバチか、オリハルコンオーダーズに
加入する振りをしてここに来たのですが、
結局、それも察知されてしまって」
「なんという賭けを・・・意外に、
お前も大胆な事をするもんだな」
「でも、助けに来てくれると信じていました。
危険な賭けなのは否定できませんけど、
こうして1人占拠者を発見できましたし」
功を奏したおかげで、1つのきっかけが生まれた。
危険を省みずに単身で挑もうとしたのだ。
ゴールデンラブラドライトをここで返す。
着かず離れず側にいてくれた光に、
ロザリアさんの幻惑から守ってくれたのは
こちらも感謝しなくてはならないから。
「マナ・・・」
「ありがとうございます、聖夜さん」
一瞬、抱きついてしまいそうになったが離される。
3日風呂に入れなかったようで、身体を気にされた。
連絡してから主任も調査と警察が数人来る。
彼女を背負ってゆくつもりだったけど、
目を気にして自力で歩き、ここからすぐに外へ出た。
この事件はニュースになり、広報に知られるも
報道内容が大きく異なっていた。
一学生による同級生誘拐という扱いで、
ACに関するものは一切語られずに終わる。
地元を除いては大事もなく関心はもたれず、
よくある事件という印象しかもたれなかった。
すぐさま調べにきた科警研の介入で、
光一の所有していたACが判明した。
オブシディアン、黒曜石とよばれる夜墨の様な鉱物は
扱いにクセのある闇の力を秘めたものだった。
並大抵の適性では扱えず、ヤギや死神の様な上級悪魔も
召喚できるそこいらのACとは規格の違いだ。
若者の光一ですら、あれだけの能力を解放していた。
それを手に入れた形跡は本人がすでにいないので、
詳細を明らかにする事ができなかったが、
役人の伝手で司書補が国の上層と繋がっていたのが判明。
しかし、彼も行方不明になっていた。
複数形の名称からして、他にも何人かいるはず。
まだ強大な力をもつ者が存在するのを忘れてはならない。
捕縛で吐かせられなかったのは主任もがっかりする。
「彼を逮捕できなかったのは痛いわね。
あんたが助けた女性議員も利用して、
議事堂前で人の塊を形成していた」
「あいつは学園でも1~2を争う優秀なやつでした。
話から国の誰かと繋がりがある発言をしていたので」
「星の家柄からして相当の接点はありえる。
これは・・・これは私の推測だけど、
相当大きなバックボーンが控えている。
絶対にただのテロリストなんかじゃないわ」
あいつが言っていたイデオロギー。
主任から主義の意味を教えられて、
テロまがいと思いにくい節もなんだか納得。
直接的、物理的な力だけでなく人脈を利用した
流れすらも結晶を泳がせていた。
八起はこれ見よがしに人の内を知る者。
オリハルコンオーダーズは強力な力をもっている。
そして自分も。
得体の知れない適性者どうしの抗争であり、
人間という枠を超えた戦いなのだ。
マナとの協力で苦戦の果てにようやく終わった。
黒幕の一部の破壊による散乱が残るものの、
仕掛人は跡形もなく消え去り、ホール内は静寂になる。
(光一が黒幕の一部だったなんてな・・・)
同級生の1人が晃京の占拠者だったという事実が、
あっけにとられたなんてレベルじゃなかった。
意外性なんて今までの経験からもう慣れたと思ったが、
今回は違う。
晃京の支配者の一角が目の前に立ちふさがり、
偽りなく人のままで姿を現した。
しかも、なかなか手強い相手だった。
上級悪魔を召喚できるなど、組織に選ばれただけはある。
まだ他にも数人いる事に目まぐるしいが、
とりあえず今はマナを助けなければ。
剣で切り、ほどいて床に降ろした。
「大丈夫か!?」
「私は平気です」
見たところ怪我はなく、疲れ切った顔をしているが
マナは本当に危害を加えられていなかった。
光一は彼女に好意をもち、あげくに自分へ嫉妬して
挑戦しに招いたのだろう。
人の事なんて言えないポジションだけど、
お互い衝突する場に呆れ事すら口に出せなくなる。
「同じクラスの連中がACを使うなんて、
すっかり見慣れたのもあんまりだけど。
今回はちょっと堪えた。
あいつも・・・ACを持っていた。
しかも、オリハルコンオーダーズだったとは」
「私も意外でした。
黒いACはあまりにも強大で、
1人でこなせられなかったのが残念で」
「無理もない。
図書委員どうし近い所にいたからこそ、
偶然分かったんだろうな」
「光一さんは学園中において特に高い適性力を
もっていたようです。
あの人が所持していた書物にACが入っていて
不審に単独で調べていたんです」
「それで光一が黒なのを気付いたのか。
ここに来る前に俺達に相談してくれれば」
「実は私、光一さんの事を前から知っていたんです。
以前、あの人にACの件を内緒にしてって話ですが、
すでに気付かれていました」
「えっ!?」
「そして、彼は黒い鉱石を所持していた事で、
オリハルコンオーダーズに関与した疑いが強まり、
私だけでここを密偵したかったのです」
「だからって、単身でこんな無茶をしなくても。
そういえば、ジネヴラさんは?」
「・・・姉の居場所は分かりません。
二手に別れてから、行方が」
ジネヴラさんも独自行動でここにいなかった。
教会も気取られないように動き、
常に裏取りばかりする見えない相手だけに、
隠密行動をする必要があったのだろう。
「まあ、そうだな。
俺もあいつの罠にかかったくらいだし。
お前がAC使いだって事を気が付くくらいだしな」
「だけど、光一さんは前から存在に気付いてました。
図書室に侵入した人の話、ありましたよね」
「ああ、確か魔術書を漁りにきてたって」
「その人は光一さんの指示で来ていた人です。
私が図書室で設置した監視カメラに内蔵した
クォーツを辿られてACを気取られたんです」
「な・・・!?」
「悪魔の書も噓だったんです。
本には元から悪魔を封じる力はありません。
後に光一さんもACの適性をもっていると気付いて、
イチかバチか、オリハルコンオーダーズに
加入する振りをしてここに来たのですが、
結局、それも察知されてしまって」
「なんという賭けを・・・意外に、
お前も大胆な事をするもんだな」
「でも、助けに来てくれると信じていました。
危険な賭けなのは否定できませんけど、
こうして1人占拠者を発見できましたし」
功を奏したおかげで、1つのきっかけが生まれた。
危険を省みずに単身で挑もうとしたのだ。
ゴールデンラブラドライトをここで返す。
着かず離れず側にいてくれた光に、
ロザリアさんの幻惑から守ってくれたのは
こちらも感謝しなくてはならないから。
「マナ・・・」
「ありがとうございます、聖夜さん」
一瞬、抱きついてしまいそうになったが離される。
3日風呂に入れなかったようで、身体を気にされた。
連絡してから主任も調査と警察が数人来る。
彼女を背負ってゆくつもりだったけど、
目を気にして自力で歩き、ここからすぐに外へ出た。
この事件はニュースになり、広報に知られるも
報道内容が大きく異なっていた。
一学生による同級生誘拐という扱いで、
ACに関するものは一切語られずに終わる。
地元を除いては大事もなく関心はもたれず、
よくある事件という印象しかもたれなかった。
すぐさま調べにきた科警研の介入で、
光一の所有していたACが判明した。
オブシディアン、黒曜石とよばれる夜墨の様な鉱物は
扱いにクセのある闇の力を秘めたものだった。
並大抵の適性では扱えず、ヤギや死神の様な上級悪魔も
召喚できるそこいらのACとは規格の違いだ。
若者の光一ですら、あれだけの能力を解放していた。
それを手に入れた形跡は本人がすでにいないので、
詳細を明らかにする事ができなかったが、
役人の伝手で司書補が国の上層と繋がっていたのが判明。
しかし、彼も行方不明になっていた。
複数形の名称からして、他にも何人かいるはず。
まだ強大な力をもつ者が存在するのを忘れてはならない。
捕縛で吐かせられなかったのは主任もがっかりする。
「彼を逮捕できなかったのは痛いわね。
あんたが助けた女性議員も利用して、
議事堂前で人の塊を形成していた」
「あいつは学園でも1~2を争う優秀なやつでした。
話から国の誰かと繋がりがある発言をしていたので」
「星の家柄からして相当の接点はありえる。
これは・・・これは私の推測だけど、
相当大きなバックボーンが控えている。
絶対にただのテロリストなんかじゃないわ」
あいつが言っていたイデオロギー。
主任から主義の意味を教えられて、
テロまがいと思いにくい節もなんだか納得。
直接的、物理的な力だけでなく人脈を利用した
流れすらも結晶を泳がせていた。
八起はこれ見よがしに人の内を知る者。
オリハルコンオーダーズは強力な力をもっている。
そして自分も。
得体の知れない適性者どうしの抗争であり、
人間という枠を超えた戦いなのだ。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説


調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
常世の守り主 ―異説冥界神話談―
双子烏丸
ファンタジー
かつて大切な人を失った青年――。
全てはそれを取り戻すために、全てを捨てて放浪の旅へ。
長い、長い旅で心も体も擦り減らし、もはやかつてとは別人のように成り果ててもなお、自らの願いのためにその身を捧げた。
そして、もはやその旅路が終わりに差し掛かった、その時。……青年が決断する事とは。
——
本編最終話には創音さんから頂いた、イラストを掲載しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる