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ヴェンガンザ・アンタルティカ2
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見張りをしていた警察の陣中に、何が起きたのか
視界をしっかりと追える者はいなかった。
目に見えない不可視の存在はあまりにも鋭く、
白き細い氷結の脅威を見せつけた。
「という事です、ACの使用者が見えなくて」
「なるほどねぇ・・・」
翌日、マナはカロリーナに昨日の件を伝える。
しかし、監視が主の彼女でも氷魔の正体をつかめずに
人が直に仕掛けた瞬間を捉える事ができなかったと言う。
「観ていた瞬間、凄まじい吹雪が出て視界が覆われて
終わった時にはすでに手遅れでした」
「クォーツの視界でも、全部見れないなんて・・・
事前に怪しい行動してる奴とかいなかったの?」
「残念ながら、通行人の姿のみで怪しい素振りの人は
確認できませんでした。家の中からの発動もありますが、
被害者周囲の家からの発生源の跡がなく。
近辺の人達は何か持っていませんでした?」
「警察に歩いていた住民に所持品検査させたけど、
ACらしい物を持っていなかった。普通の宝石もね」
「そこにACがない?」
お互いの供述は解決の糸口を絡ませるような内容だ。
悪魔がいるからには関連するACが近くにあるはず。
にもかかわらず、塊の元は強引な取り調べも空しく
通行人誰1人として白。
現場から半径20m以内に住民が数人歩いている他に、
結晶と関わりのありそうな物がない。
2人は疑問をもつ。
あたかも異空間から来たのかと思わせるような状況だ。
「こんなの絶対おかしいわ。
悪魔の姿はともかく、物理的な干渉が発生したのなら
何かしら結晶があるのが絶対条件のはず」
「道端で落ちていた物から現れたならば、
すぐに場所を特定できるはずです。
なら、考えられるとすれば刻印と結晶を
別々にして能力を発動させたかもしれません」
「別に分けるなんて聞いた事ないわ。
結晶があってこそ刻印も書けるんだし。
刻印を体内に仕込む方法とかないの?」
「教会でもそのような手法を聞いた事は・・・。
身体に関する事なら、そちら医学の方が詳しいはず。
教会の範疇を超えたものかもしれません」
「そーくるか」
マナに覚えもなしと返される。
てっきり、宗教の秘術を考慮したのもアレだが、
氷の悪魔ならば、白や青色のACなどに当てはまると
根拠なしにでも憶測としてありえると言われた。
しかし、さすがの自分達も結晶全てに覚えがなく、
種類も全て把握できずに2人で話し合っても答えがでない。
厘香は家の用事で今は不在。
郷はバカなので、最初から当てにしていない。
で、1人で生存者を送りにいった玄男は
何をしているのかも内容に挙げられるが。
「ふーん、分かった。こっちの先生に聞いてみるか。
ところで聖夜は?」
「聖夜さんは・・・」
「ヘックション!」
この日、聖夜は自宅のベッドで寝たきりだった。
風邪をひいてしまい、38℃の熱がでて
とても調査できる体ではなかった。
あれだけ人が多ければうつるものもうつされる。
という事で、今回は休み。
適性の星も病気の1つくらい罹るのだ。
という訳で今回はカロリーナの視点に代わり、
凍傷事件を解決すべく乗り出した。
同じ水氷AC使いとして対抗意識を沸々とさせる。
どこから持ってきたのかと思われるであろう、
鹿撃ち帽を被って調査にのりだそうとした。
個人的プロファイリングによると、
おそらく犯人は自己主張しない傾向で、
周囲の目を欺きながら実行しているとふむ。
後は女ばかりを狙った変質者の線もありえるが、
黒星が男と決めつけるのは時期早々。
といっても、ろくに足跡もなく証拠不十分すぎなので
やっぱり一人だけじゃ無理。
さっそく人を当てにするカロリーナ・ホームズは
一度エドワード先生に相談する事にした。
聖オルガニック病院。
リリア先生は今忙しく自分に取り合っていられず、
院長室にいた80の元締めに聞く。
「先生、改めて聞くけど刻印を書いてから
結晶の力を発動させるんだよね?」
「そうだが、どうした?」
「学園周辺で氷の悪魔が出没したんだけど、
女ばっかり狙われてる。
で、ACの痕跡がほとんどなかったの」
「痕跡がない?」
「悪魔出現位置から100m以内の住民を
徹底的にもちものけんさしてもなかった。
たとえば・・・例えばだけど。
結晶と刻印を切り離すとかっていう方法とかない?」
「難しい話だな。
現在、異界との連携は結晶という短い波長の電磁波に
回折格子する物の中からでしか反応を示さん」
「短波長でX線でしょ?
思ったんだけど、科警研で使われてるようなのって
病院にはないの?」
「試作型ならあるが、科警研のものは改良型だ。
身体検査に使用するレントゲンとはまた異なる。
長谷部教授が独自に造ったものが警察、自衛隊に
割り当てられているはず」
「元の技術が出回ってるなら黒幕側も利用してるかも。
オリハルコンオーダーズの連中だって
同じものとか使ってそうじゃない?」
「彼らが一国に匹敵する設備ならそうかもしれんが。
ちなみに、どの様な悪魔だった?」
「ミロのビーナスみたいな女の氷みたいな姿だって。
デザイン的にどこのタイプか覚えがない?」
「ならば、海外製のACだろう。
ルネッサンス時代の構造を模しているならば、
ヨーロッパから仕入れてきたのかもしれん」
「やっぱ、ロッパ方面か・・・」
日本で精製された感じではないらしい。
海外から輸入したタイプを何者かが扱って
奇襲していた線が濃厚だと示した。
ただ、学園の限られた者ばかり狙う点で、
わざわざ外国から襲いにきたなんて話が飛びすぎる。
必ず身近に星がいるとにらみつつ、
どうにか誰よりも先に正体を突き止めたいと求めるも、
先生はその性質に異常性を示唆する。
「しかし、ずいぶんと手の込んだ手法を施したものだ。
ACを秘匿しつつ、能力を発動させる。
相当な技術力をもっているやもしれん」
「・・・・・・」
「記されている刻印にもまだ未知数な部分がある。
言語と融合した結晶よりかけ離れた性質は
ヨーロッパでも中々ないだろう。
もしかすれば、新手の新興宗教の可能性も。
不明な組織に不意討ちを受ける危険がある。
君は少々無鉄砲なところが見受けられるから、
あまり深入りし過ぎぬようにな」
「はーい」
釘を刺されるような注意を受ける。
まあ、そんな事くらいで引き下がる程腰抜けじゃない。
ある意味で冷たい指摘を意識されながらサラリとかわして、
病院を後にする。
当時の状況を一度整理し直してみた。
昴峰学園の生徒数人と住民。
マナの話によると、吹雪は南から発生したらしい。
空っ風はこの国だと北西からふく。
南からふぶいていたという情報から、
自然現象でないのは確か。
後は昴峰学園の女生徒ばかり被害に遭っているという
共通点も外せない。ヒットアンドアウェイな奇襲手口に、
自分は快楽目的で襲っているようには思えなかった。
氷漬けにしたところで本人達に接触できず、
ベロベロと舐める余裕もあるはずがないので、
目的を達成してさっさと終わらせる簡潔さを感じる。
だとしたら怨み晴らし。
女生徒の間で起きた線を大きく考慮する。
学園に来ていた子を片っ端から聞き取りしてみた。
「ねえ、あの子達の事について聞きたいんだけど?」
「なによ、あんたも犯人探しとかしてんの?
危ないからやめときなって」
「そういう訳にはいかないのよ、あたしは探偵だし。
奇怪な事件は見逃さずに出張ってんの」
「ああそう、でも、犯人っていっても、覚えてないわ。
あたしもただ、吹雪がすごかったくらいしか知らない。
粉雪が降ってたし」
「実際、現場には人と氷だけしかなかったし。
他に何かある?」
「あと1つ気になった事もある。
ほら、もうすぐバレンタインデーでしょ?
飽きずにもちきりになっちゃって」
「で?」
「実は被害にあった子達って、
みんな揉めてた子達だったのよ」
「・・・・・・」
2月14日にある女子が男子にわたす恒例の行事に、
彼女達がそれぞれわたす予定だった男生徒に対する
ちょっとした派閥もあったという。
同性が同じ相手にチョコを受け取らせる事に
拒否感をもたらして何かしら阻害をもたらす者もいた。
(犯人はバレンタインデーで誰かにチョコを
あげようとして邪魔者を排除している?)
被害者は何かしら犯人と繋がりをもつ線が浮上。
聞き込みをそこそこに切り上げ、
持ち物に何かヒントがないか、探そうと警察署へ向かう。
到着してさっそく被害者の所持品を見ようと、
許可をもらって調べてみる。
すると、話であった品物の1つが見つかった。
(あった、これか)
バレンタインチョコギブアンドラヴテイクという
タイトルで誰が誰にあげるかと徒然と書かれていた。
男子生徒の名前の横にハートの矢印で女子生徒の名前が
あみだくじみたいな羅列で表記している。
これを作った意図は分からないけど、
ひょっとしたら犯人もここに記載しているかもしれない。
(あっ、あいつの名前まで書いてある)
いつも同行させている男の名前もある。
しかし、女子生徒の名前が同じ覧に複数書いてある
事に目が留まった。
アイツもずいぶんモテるんだなとシレっとした目で追うと、
知っている名もあり、まだ生き残っている者もいるので
この件について覚えがないか聞いてみようと
携帯で1人ずつ連絡してみた。
「ちょっと話良い?」
「「カロリーナ? なに?」」
状況を知る女子生徒が沈んだ声で応じてくれた。
バレンタイン記帳の1人に手掛かりを求める。
話によると、彼女も事件がバレンタインの件と
関係があるのではと察知していたようだ。
この本は1冊のみで、複数存在していないという。
しかも、寄せ書きのように回し書きして
そもそも複数の名前が記載されていた事も気になる。
色ペンの極彩色で濁るくらい書かれている理由を
聞いてみた。
「「あのノートね・・・確かにあたしも書いたわよ。
あれから全然見てないけど」」
「調べによると、被害に遭った子達は皆このノートに
書いてた形跡があったけど、何か知らない?」
「「あんなの円納めのためだけに作っただけ。
だけどそれ、意味ないものになっちゃったの。
同じ名前の男ばかり増えてきちゃって、
ページがグッチャグチャになってたでしょ?」」
「うん、自己主張の押し合いですんごく見辛かった。
なら、同じ男にあげれば済む話じゃないの?」
「「そううまくいかないのが女なのよ。
なんつーか、すぐ独占禁止法を生み出すから。
付き合ってもいないのに“私の彼盗った~”とか
言い掛かり付けんのよ?」」
「そういうもんか」
「「で、どうにか出し抜こうと次はチョコに仕込むの。
中には質にすごくこだわってる子もいて、
外国産のカカオを注文していたり、
キンキンに冷えたものをあげようとしたり、
血を混ぜたりして作る子もいて」」
「へえ・・・」
「「リストや関係がグダグダになった矢先で
あんな事件が起きたんだから、天罰よ。
みんな引いちゃってる。
とにかく、あたしはもう関わりたくない!
チョコはやめるから絶対関係ないからね!」」
「分かったわ、ありがとう」
素早く電話を切られた。
もう記帳の事もこれといった未練もないようで、
彼女も事件から遠ざかろうとする。
他数名も連絡したが、似たような供述ばかりで
直接犯人の手掛かりも見つけられずに、
今日は時を終えた。
次の日、警察署保管庫に出向いてもう一度調べ直す。
まだ他にも手掛かりがないか、プロよろしく
見落としなく漁ってみた。
(まだ雪がくっ付いてる)
さらさらした砂の様で、よっぽど冷気の強さを漂わせる。
人の命を奪うまで極低温に浸させたくらいだから、
ここにいるだけで冷酷さも感じる。
とはいえ、悪魔の力も自然界同様の物理作用に混じり、
これといった証拠に当たる物は確認できなかった。
そして、学園にも足を向けて通学路で再び狙われそうな
位置を探し回るが、手掛かりは変わらなかった。
エドワード先生の言う通り、手の込んだ能力を仕掛けに
自分らしくなく、頭が熱くなりかける。
さすがに今回は無理かと椅子に座り込んでいると、
今日は手伝いで厘香も来ていたようだ。
「カロリーナちゃん、まだ調査してるの?」
「うん・・・証拠が見つからなくて。
希望の助っ人も1人ダウンしてるし、
マナの目ですら誤魔化す奴だから、証拠探しも骨だわ」
「ごめんね、私も手伝いとか多くて・・・。
ちなみに、悪魔が残した物とかはあった?」
「あんまし、奇襲も吹雪を一瞬吹かせて終わらせるやり方。
氷の悪魔だからね。
触った感触が粉雪だったから、実際降った雪と
混ざっちゃって収集できなかった」
「粉雪は関東に降らないよ。
東北とか、寒い地方でしか見られない雪だから」
「え!?」
なんと、粉雪は関東で降るものではなかった。
来日直後に高校入学したから、細かな環境まで
学んでいなかったのである。
(ん、じゃあ、あの時?)
本をめくると挟まれていたのは粉雪。
すでに溶けているはずの白き氷物はまだここに
痕跡を残していた。
(あたし・・・思い違いをしてた)
何故ならば、関東に降るはずのない雪は異物。
襲来時に本を読んでいた線もありえるが、
犯人はこの本を一度手にしていた事になる。
後は指紋を調べて割り出せばすぐに見つかるだろう。
だが、本だけで直接犯行を起こした証拠にはならない。
たまたま読んだと言われたらそこまでなので、
直に能力を発動したという証拠も必要だ。
側にあったカレンダーをふと見る。
バレンタインデーが近づいている。
ヴァレンティノがバレンタインを忘れているとは
なんたる失態。
自分は一度もあげた経験がないので、
無縁とばかり記憶のワードが遠ざかっていた。
それはさておき、今までの経緯で集めた情報をまとめ、
自分の推理として3つくらい立ててみた。
つまり、彼女達は男子生徒がかぶらないように
リストを作り上げ、縄張りデッドプールを築いている。
犯人も、チョコをあげるべくあげられない状況の内で
かぶらないまでも他とおおいかぶらせるように
目当ての男にアプローチしにくる可能性に注目。
星も負けじと関わりに来る線を踏み、
ここで一度整理してみた。
・犯人は女
・バレンタインデー関連で恨みをもつ
・目的の男子生徒と見知り経験がある
と、判明する部分だけ挙げてみる。
ここまで分かれば警察の調査でも見つかると思うが、
何がなんでも自分の手腕で明かしてやりたい。
が、犯行手口がまったく見つかっていなかった。
後は、どうやってACを扱っていたか。
「おおう、さむいさむい・・・」
「!?」
おっさんが温かくなるホカカカ(商品名)を
手で擦っている光景を見て、1つの確信を得る。
擦る、すなわち摩擦で熱を起こす動作で、
氷結と対称的な原理を観てある事に気付く。
スマホでエドワード先生に条件付きで確認をとる。
そして、“結晶というカテゴリーにスレスレ含む”ような
逸物の存在も、ACをそこから消えたように
見せかけるトリックもできると見出した。
(・・・・・・なるほど、こんな結晶もあるのね)
季節らしく清々しいまでに展開が早すぎるが、
複雑に乱れた線が1本に繋がった。
自分は無数にある鉱石の特殊性に、
常識というものがいかにして小さいのか思い知る。
この性質はあまりにも通常のものをかけ離れたもので、
日本の自然で採取するのは不可能。
確信をもち、ACを奮いかざしたものの正体を突き止めた。
翌日、星にとって邪魔者を排除した今の現状で
おそらく動きだすチャンスを捉えるため、
冷気を暴く炙り出し作戦を展開した。
「先生、ここでバレンタインイベントを
ここで開催したいんですけど?」
「バレンタインイベントォ!?」
学園にいた女教師にバレンタインチョコ宅配イベントの
開催許可を申し出た。
内容は教師が特別主催の下で女子生徒から代行して
男子へわたしてあげようというカットアウト方式で、
照れ隠し無用のオープンプレゼントギヴィングを提案。
生徒が開催したなんて言えば警戒されて来ないだろう。
だから、世代の離れた手を借りる策でやろうと決めた。
偽の捜査令状をチラつかせ、断りの道を絶たせる理。
毎回、こんなパターンを使ってる気がする。
(犯人の望みを交えた上でなら・・・きっと)
周囲の罠かけは今に始まったわけではないけど、
ACに突き動かされている者は歯止めをかけず。
犯人は必ずそこでアプローチをかけてくる。
星の望みを叶える策を編み出すのが囮の真骨頂なのだ。
2012年2月14日
数日後、問題迫った当日。
派手な演出も行わずに、即席で作った看板とテーブルに
校庭の片隅で女教師が面倒くさそうに催しする。
開始から数時間、学園にいくつかの贈り物が届く。
集まったのはわずか10箱。
グループでわたしにきた生徒はほとんどなく、
皆コッソリと隙をみて持ってきた。
目立つと角も立つので無理もなし。
自分は校舎2階から1人1人の顔を視認。
受け付け終了後、すぐに中身を調べにかける。
送った女子生徒の名前が堂々と記載された物を視て
決定打を発見する。
何故ならば、ありえない性質のチョコレートが混入。
そして製作者の名前が如実に書かれてあったからだ。
――――――――――――――――――――――――
忘れもしない小学校時代の出来事。
ある女子生徒が自分にチョコを差し出して
もらえると思いきや、別の男子生徒にわたせと。
そこでカットアウトという手法を学びました。
視界をしっかりと追える者はいなかった。
目に見えない不可視の存在はあまりにも鋭く、
白き細い氷結の脅威を見せつけた。
「という事です、ACの使用者が見えなくて」
「なるほどねぇ・・・」
翌日、マナはカロリーナに昨日の件を伝える。
しかし、監視が主の彼女でも氷魔の正体をつかめずに
人が直に仕掛けた瞬間を捉える事ができなかったと言う。
「観ていた瞬間、凄まじい吹雪が出て視界が覆われて
終わった時にはすでに手遅れでした」
「クォーツの視界でも、全部見れないなんて・・・
事前に怪しい行動してる奴とかいなかったの?」
「残念ながら、通行人の姿のみで怪しい素振りの人は
確認できませんでした。家の中からの発動もありますが、
被害者周囲の家からの発生源の跡がなく。
近辺の人達は何か持っていませんでした?」
「警察に歩いていた住民に所持品検査させたけど、
ACらしい物を持っていなかった。普通の宝石もね」
「そこにACがない?」
お互いの供述は解決の糸口を絡ませるような内容だ。
悪魔がいるからには関連するACが近くにあるはず。
にもかかわらず、塊の元は強引な取り調べも空しく
通行人誰1人として白。
現場から半径20m以内に住民が数人歩いている他に、
結晶と関わりのありそうな物がない。
2人は疑問をもつ。
あたかも異空間から来たのかと思わせるような状況だ。
「こんなの絶対おかしいわ。
悪魔の姿はともかく、物理的な干渉が発生したのなら
何かしら結晶があるのが絶対条件のはず」
「道端で落ちていた物から現れたならば、
すぐに場所を特定できるはずです。
なら、考えられるとすれば刻印と結晶を
別々にして能力を発動させたかもしれません」
「別に分けるなんて聞いた事ないわ。
結晶があってこそ刻印も書けるんだし。
刻印を体内に仕込む方法とかないの?」
「教会でもそのような手法を聞いた事は・・・。
身体に関する事なら、そちら医学の方が詳しいはず。
教会の範疇を超えたものかもしれません」
「そーくるか」
マナに覚えもなしと返される。
てっきり、宗教の秘術を考慮したのもアレだが、
氷の悪魔ならば、白や青色のACなどに当てはまると
根拠なしにでも憶測としてありえると言われた。
しかし、さすがの自分達も結晶全てに覚えがなく、
種類も全て把握できずに2人で話し合っても答えがでない。
厘香は家の用事で今は不在。
郷はバカなので、最初から当てにしていない。
で、1人で生存者を送りにいった玄男は
何をしているのかも内容に挙げられるが。
「ふーん、分かった。こっちの先生に聞いてみるか。
ところで聖夜は?」
「聖夜さんは・・・」
「ヘックション!」
この日、聖夜は自宅のベッドで寝たきりだった。
風邪をひいてしまい、38℃の熱がでて
とても調査できる体ではなかった。
あれだけ人が多ければうつるものもうつされる。
という事で、今回は休み。
適性の星も病気の1つくらい罹るのだ。
という訳で今回はカロリーナの視点に代わり、
凍傷事件を解決すべく乗り出した。
同じ水氷AC使いとして対抗意識を沸々とさせる。
どこから持ってきたのかと思われるであろう、
鹿撃ち帽を被って調査にのりだそうとした。
個人的プロファイリングによると、
おそらく犯人は自己主張しない傾向で、
周囲の目を欺きながら実行しているとふむ。
後は女ばかりを狙った変質者の線もありえるが、
黒星が男と決めつけるのは時期早々。
といっても、ろくに足跡もなく証拠不十分すぎなので
やっぱり一人だけじゃ無理。
さっそく人を当てにするカロリーナ・ホームズは
一度エドワード先生に相談する事にした。
聖オルガニック病院。
リリア先生は今忙しく自分に取り合っていられず、
院長室にいた80の元締めに聞く。
「先生、改めて聞くけど刻印を書いてから
結晶の力を発動させるんだよね?」
「そうだが、どうした?」
「学園周辺で氷の悪魔が出没したんだけど、
女ばっかり狙われてる。
で、ACの痕跡がほとんどなかったの」
「痕跡がない?」
「悪魔出現位置から100m以内の住民を
徹底的にもちものけんさしてもなかった。
たとえば・・・例えばだけど。
結晶と刻印を切り離すとかっていう方法とかない?」
「難しい話だな。
現在、異界との連携は結晶という短い波長の電磁波に
回折格子する物の中からでしか反応を示さん」
「短波長でX線でしょ?
思ったんだけど、科警研で使われてるようなのって
病院にはないの?」
「試作型ならあるが、科警研のものは改良型だ。
身体検査に使用するレントゲンとはまた異なる。
長谷部教授が独自に造ったものが警察、自衛隊に
割り当てられているはず」
「元の技術が出回ってるなら黒幕側も利用してるかも。
オリハルコンオーダーズの連中だって
同じものとか使ってそうじゃない?」
「彼らが一国に匹敵する設備ならそうかもしれんが。
ちなみに、どの様な悪魔だった?」
「ミロのビーナスみたいな女の氷みたいな姿だって。
デザイン的にどこのタイプか覚えがない?」
「ならば、海外製のACだろう。
ルネッサンス時代の構造を模しているならば、
ヨーロッパから仕入れてきたのかもしれん」
「やっぱ、ロッパ方面か・・・」
日本で精製された感じではないらしい。
海外から輸入したタイプを何者かが扱って
奇襲していた線が濃厚だと示した。
ただ、学園の限られた者ばかり狙う点で、
わざわざ外国から襲いにきたなんて話が飛びすぎる。
必ず身近に星がいるとにらみつつ、
どうにか誰よりも先に正体を突き止めたいと求めるも、
先生はその性質に異常性を示唆する。
「しかし、ずいぶんと手の込んだ手法を施したものだ。
ACを秘匿しつつ、能力を発動させる。
相当な技術力をもっているやもしれん」
「・・・・・・」
「記されている刻印にもまだ未知数な部分がある。
言語と融合した結晶よりかけ離れた性質は
ヨーロッパでも中々ないだろう。
もしかすれば、新手の新興宗教の可能性も。
不明な組織に不意討ちを受ける危険がある。
君は少々無鉄砲なところが見受けられるから、
あまり深入りし過ぎぬようにな」
「はーい」
釘を刺されるような注意を受ける。
まあ、そんな事くらいで引き下がる程腰抜けじゃない。
ある意味で冷たい指摘を意識されながらサラリとかわして、
病院を後にする。
当時の状況を一度整理し直してみた。
昴峰学園の生徒数人と住民。
マナの話によると、吹雪は南から発生したらしい。
空っ風はこの国だと北西からふく。
南からふぶいていたという情報から、
自然現象でないのは確か。
後は昴峰学園の女生徒ばかり被害に遭っているという
共通点も外せない。ヒットアンドアウェイな奇襲手口に、
自分は快楽目的で襲っているようには思えなかった。
氷漬けにしたところで本人達に接触できず、
ベロベロと舐める余裕もあるはずがないので、
目的を達成してさっさと終わらせる簡潔さを感じる。
だとしたら怨み晴らし。
女生徒の間で起きた線を大きく考慮する。
学園に来ていた子を片っ端から聞き取りしてみた。
「ねえ、あの子達の事について聞きたいんだけど?」
「なによ、あんたも犯人探しとかしてんの?
危ないからやめときなって」
「そういう訳にはいかないのよ、あたしは探偵だし。
奇怪な事件は見逃さずに出張ってんの」
「ああそう、でも、犯人っていっても、覚えてないわ。
あたしもただ、吹雪がすごかったくらいしか知らない。
粉雪が降ってたし」
「実際、現場には人と氷だけしかなかったし。
他に何かある?」
「あと1つ気になった事もある。
ほら、もうすぐバレンタインデーでしょ?
飽きずにもちきりになっちゃって」
「で?」
「実は被害にあった子達って、
みんな揉めてた子達だったのよ」
「・・・・・・」
2月14日にある女子が男子にわたす恒例の行事に、
彼女達がそれぞれわたす予定だった男生徒に対する
ちょっとした派閥もあったという。
同性が同じ相手にチョコを受け取らせる事に
拒否感をもたらして何かしら阻害をもたらす者もいた。
(犯人はバレンタインデーで誰かにチョコを
あげようとして邪魔者を排除している?)
被害者は何かしら犯人と繋がりをもつ線が浮上。
聞き込みをそこそこに切り上げ、
持ち物に何かヒントがないか、探そうと警察署へ向かう。
到着してさっそく被害者の所持品を見ようと、
許可をもらって調べてみる。
すると、話であった品物の1つが見つかった。
(あった、これか)
バレンタインチョコギブアンドラヴテイクという
タイトルで誰が誰にあげるかと徒然と書かれていた。
男子生徒の名前の横にハートの矢印で女子生徒の名前が
あみだくじみたいな羅列で表記している。
これを作った意図は分からないけど、
ひょっとしたら犯人もここに記載しているかもしれない。
(あっ、あいつの名前まで書いてある)
いつも同行させている男の名前もある。
しかし、女子生徒の名前が同じ覧に複数書いてある
事に目が留まった。
アイツもずいぶんモテるんだなとシレっとした目で追うと、
知っている名もあり、まだ生き残っている者もいるので
この件について覚えがないか聞いてみようと
携帯で1人ずつ連絡してみた。
「ちょっと話良い?」
「「カロリーナ? なに?」」
状況を知る女子生徒が沈んだ声で応じてくれた。
バレンタイン記帳の1人に手掛かりを求める。
話によると、彼女も事件がバレンタインの件と
関係があるのではと察知していたようだ。
この本は1冊のみで、複数存在していないという。
しかも、寄せ書きのように回し書きして
そもそも複数の名前が記載されていた事も気になる。
色ペンの極彩色で濁るくらい書かれている理由を
聞いてみた。
「「あのノートね・・・確かにあたしも書いたわよ。
あれから全然見てないけど」」
「調べによると、被害に遭った子達は皆このノートに
書いてた形跡があったけど、何か知らない?」
「「あんなの円納めのためだけに作っただけ。
だけどそれ、意味ないものになっちゃったの。
同じ名前の男ばかり増えてきちゃって、
ページがグッチャグチャになってたでしょ?」」
「うん、自己主張の押し合いですんごく見辛かった。
なら、同じ男にあげれば済む話じゃないの?」
「「そううまくいかないのが女なのよ。
なんつーか、すぐ独占禁止法を生み出すから。
付き合ってもいないのに“私の彼盗った~”とか
言い掛かり付けんのよ?」」
「そういうもんか」
「「で、どうにか出し抜こうと次はチョコに仕込むの。
中には質にすごくこだわってる子もいて、
外国産のカカオを注文していたり、
キンキンに冷えたものをあげようとしたり、
血を混ぜたりして作る子もいて」」
「へえ・・・」
「「リストや関係がグダグダになった矢先で
あんな事件が起きたんだから、天罰よ。
みんな引いちゃってる。
とにかく、あたしはもう関わりたくない!
チョコはやめるから絶対関係ないからね!」」
「分かったわ、ありがとう」
素早く電話を切られた。
もう記帳の事もこれといった未練もないようで、
彼女も事件から遠ざかろうとする。
他数名も連絡したが、似たような供述ばかりで
直接犯人の手掛かりも見つけられずに、
今日は時を終えた。
次の日、警察署保管庫に出向いてもう一度調べ直す。
まだ他にも手掛かりがないか、プロよろしく
見落としなく漁ってみた。
(まだ雪がくっ付いてる)
さらさらした砂の様で、よっぽど冷気の強さを漂わせる。
人の命を奪うまで極低温に浸させたくらいだから、
ここにいるだけで冷酷さも感じる。
とはいえ、悪魔の力も自然界同様の物理作用に混じり、
これといった証拠に当たる物は確認できなかった。
そして、学園にも足を向けて通学路で再び狙われそうな
位置を探し回るが、手掛かりは変わらなかった。
エドワード先生の言う通り、手の込んだ能力を仕掛けに
自分らしくなく、頭が熱くなりかける。
さすがに今回は無理かと椅子に座り込んでいると、
今日は手伝いで厘香も来ていたようだ。
「カロリーナちゃん、まだ調査してるの?」
「うん・・・証拠が見つからなくて。
希望の助っ人も1人ダウンしてるし、
マナの目ですら誤魔化す奴だから、証拠探しも骨だわ」
「ごめんね、私も手伝いとか多くて・・・。
ちなみに、悪魔が残した物とかはあった?」
「あんまし、奇襲も吹雪を一瞬吹かせて終わらせるやり方。
氷の悪魔だからね。
触った感触が粉雪だったから、実際降った雪と
混ざっちゃって収集できなかった」
「粉雪は関東に降らないよ。
東北とか、寒い地方でしか見られない雪だから」
「え!?」
なんと、粉雪は関東で降るものではなかった。
来日直後に高校入学したから、細かな環境まで
学んでいなかったのである。
(ん、じゃあ、あの時?)
本をめくると挟まれていたのは粉雪。
すでに溶けているはずの白き氷物はまだここに
痕跡を残していた。
(あたし・・・思い違いをしてた)
何故ならば、関東に降るはずのない雪は異物。
襲来時に本を読んでいた線もありえるが、
犯人はこの本を一度手にしていた事になる。
後は指紋を調べて割り出せばすぐに見つかるだろう。
だが、本だけで直接犯行を起こした証拠にはならない。
たまたま読んだと言われたらそこまでなので、
直に能力を発動したという証拠も必要だ。
側にあったカレンダーをふと見る。
バレンタインデーが近づいている。
ヴァレンティノがバレンタインを忘れているとは
なんたる失態。
自分は一度もあげた経験がないので、
無縁とばかり記憶のワードが遠ざかっていた。
それはさておき、今までの経緯で集めた情報をまとめ、
自分の推理として3つくらい立ててみた。
つまり、彼女達は男子生徒がかぶらないように
リストを作り上げ、縄張りデッドプールを築いている。
犯人も、チョコをあげるべくあげられない状況の内で
かぶらないまでも他とおおいかぶらせるように
目当ての男にアプローチしにくる可能性に注目。
星も負けじと関わりに来る線を踏み、
ここで一度整理してみた。
・犯人は女
・バレンタインデー関連で恨みをもつ
・目的の男子生徒と見知り経験がある
と、判明する部分だけ挙げてみる。
ここまで分かれば警察の調査でも見つかると思うが、
何がなんでも自分の手腕で明かしてやりたい。
が、犯行手口がまったく見つかっていなかった。
後は、どうやってACを扱っていたか。
「おおう、さむいさむい・・・」
「!?」
おっさんが温かくなるホカカカ(商品名)を
手で擦っている光景を見て、1つの確信を得る。
擦る、すなわち摩擦で熱を起こす動作で、
氷結と対称的な原理を観てある事に気付く。
スマホでエドワード先生に条件付きで確認をとる。
そして、“結晶というカテゴリーにスレスレ含む”ような
逸物の存在も、ACをそこから消えたように
見せかけるトリックもできると見出した。
(・・・・・・なるほど、こんな結晶もあるのね)
季節らしく清々しいまでに展開が早すぎるが、
複雑に乱れた線が1本に繋がった。
自分は無数にある鉱石の特殊性に、
常識というものがいかにして小さいのか思い知る。
この性質はあまりにも通常のものをかけ離れたもので、
日本の自然で採取するのは不可能。
確信をもち、ACを奮いかざしたものの正体を突き止めた。
翌日、星にとって邪魔者を排除した今の現状で
おそらく動きだすチャンスを捉えるため、
冷気を暴く炙り出し作戦を展開した。
「先生、ここでバレンタインイベントを
ここで開催したいんですけど?」
「バレンタインイベントォ!?」
学園にいた女教師にバレンタインチョコ宅配イベントの
開催許可を申し出た。
内容は教師が特別主催の下で女子生徒から代行して
男子へわたしてあげようというカットアウト方式で、
照れ隠し無用のオープンプレゼントギヴィングを提案。
生徒が開催したなんて言えば警戒されて来ないだろう。
だから、世代の離れた手を借りる策でやろうと決めた。
偽の捜査令状をチラつかせ、断りの道を絶たせる理。
毎回、こんなパターンを使ってる気がする。
(犯人の望みを交えた上でなら・・・きっと)
周囲の罠かけは今に始まったわけではないけど、
ACに突き動かされている者は歯止めをかけず。
犯人は必ずそこでアプローチをかけてくる。
星の望みを叶える策を編み出すのが囮の真骨頂なのだ。
2012年2月14日
数日後、問題迫った当日。
派手な演出も行わずに、即席で作った看板とテーブルに
校庭の片隅で女教師が面倒くさそうに催しする。
開始から数時間、学園にいくつかの贈り物が届く。
集まったのはわずか10箱。
グループでわたしにきた生徒はほとんどなく、
皆コッソリと隙をみて持ってきた。
目立つと角も立つので無理もなし。
自分は校舎2階から1人1人の顔を視認。
受け付け終了後、すぐに中身を調べにかける。
送った女子生徒の名前が堂々と記載された物を視て
決定打を発見する。
何故ならば、ありえない性質のチョコレートが混入。
そして製作者の名前が如実に書かれてあったからだ。
――――――――――――――――――――――――
忘れもしない小学校時代の出来事。
ある女子生徒が自分にチョコを差し出して
もらえると思いきや、別の男子生徒にわたせと。
そこでカットアウトという手法を学びました。
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