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第30話 面喰いポテンシャル
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首狩り魔の正体は同級生の拓男だった。
悪魔の姿のまま砕け散り、跡形もなく遺去。
別れの言葉もろくに言えないまま、また1人と
結晶に引きずり込まれる様に世界から喪失。
一応に助ける事ができなかった。
(またか・・・またクラスメイトが)
拓男とはあまり多く話をした方じゃなかった。
でも、ほんの身近な者が世間を震撼させるまでに
ACの影響は目に見えないところにまで浸蝕。
あいつの一方的な攻撃で仕方なく戦闘になったものの、
救いの手もなく悲惨な結果を迎えさせてしまう。
任務としては一応の成功で終わる。
誰かの犠牲をもって、いつも残された塊だけが落ちる。
仕事の名目といえども、目の前で消える人影に
今は心を無にしたくて仕方がない。
乳白色の鉱石を拾い上げ、科警研にわたして
いつも通りにこのACを検査。
邪悪なカタツムリに
豹変した理由が明かされた。
「メタモルフォーゼス、一部の肉体のパーツをすり替え
拒否反応も起こさずに自身のものにできる性質」
ACの中には複数の頭部が収められていたという。
美形的な顔面ながらも、惨たらしく
並べられて詰められていた。
厘香以外でも、物を収納できる力をもった者は点在し、
一種によらず似た性質も色々とあるようだ。
頭部を綺麗に抜き取っていたのも、
いかにも悪魔な手法とばかり忌まわしいやり口だ。
「悪魔も他世界にしてはこっちと形状が相似するわ。
ヒルジンと似た物質を出して首を溶かしていた」
「あいつは、自分の顔を嫌がっていました。
そして、顔を自分のとすり替える・・・」
「自分を変えると行動心理も変化するようね。
心臓を移植された人が別の趣味をもち始めるみたいに」
そして、自身が気に入られようとして
頻繁に街を歩く様になっていった。
寄生虫に憑りつかれたカタツムリの様に
誘惑につられて部屋内だが顔という表を出してしまう。
どんな気持ちで首を集め続けてたのだろうか。
これを武器や補助装備に用いるかというと気が進まない。
えげつないものを詰めていた扱いなんて、
とてもじゃないけどやりたくなかった。
「性質はよく精査してないから不明だけど、
容器として扱える代物だわ。
適性としてならあんたもそつなく使えるけど、
さすがにこんな物は利用したくないわね?」
「俺も勘弁してほしいです。
なんだか祟られそうで・・・」
主任もさすがにこれを自分に預ける気はなく、
メタモルフォーゼスは科警研で保管する事にした。
拓男の苦しみを引き継ぐべきだとは思うも、
陰湿な立ち回りを納得できる配慮もみじんもない。
灰色の結晶をケースにしまい、隠すように収めた。
「何でもACのせいにはできないわよ。
人が人を物のように扱う。
彼だけでなく、今に始まった事ではないわ」
「・・・・・・」
「多分、また似たような事件は起こるでしょ。
ところであんた、体の調子はどう?」
「え、ええ。別になんとも」
言葉が詰まる。
友人がまた1人いなくなった自分を見かねてか、
体調という語で心身をうかがっているのだろう。
なんともないと言いつつ口が動かなくなるものの、
実は言いたいことはあった。
「主任さん」
「なに?」
「悪魔に意思ってあるんですか?」
「悪魔の?」
「拓男が言ってたんですよ。
ACから声が聴こえたって。
川上とか風見鳥みたいに悪魔と同化する点で、
自分が自分じゃなくなる・・・ような感じがするとか、
デメリットとかって起こるんですか?」
「・・・・・・」
ACを取り扱うのは彼女も同じ。
剣の製造で使用する過程で夢中になるから、
共通感覚に何か知ってそうだと思った。
剣を手にした時と同様、隣に誰かがいる様な気がして
一体感と言えば良いのか例えようのない同化みたいに、
漠然とした意思が時折どこかへ
いってしまう様な感じを伝える。
上手に形容できない状態に、主任はNoと言った。
「そうね、ACの言語については一切不明だけど、
解離性同一性障害の類も考えられるわ。
あんたは声を聴いた事はないでしょ?」
「ないです」
「ACの過干渉による影響は今のところ根拠がないわ。
現実とかけ離れた目前の光景が自身との印象の
ギャップを感じてそう感じるのかも」
「差・・・」
「怖くなった?
辞めたければやめても良いのよ?」
「いや、いまさらやめるわけには・・・」
主任は不安がられたのか、顔をジッと見て近づく。
お互いの顔が寸前までとどきそうになると、
息がとどいて吹聴した。
「「これは私の見解だけど、人と悪魔の境界とは
能力の差異くらいで、一応な共通点から差分で
線引きする根拠はないと思ってる」」
「え、ええ」
「「今までの経緯をみなさい。
悪魔本体じゃなく、人間本体より引き起こした
事例ばかりじゃないの。
悪魔自体、人間の誰かが召喚した他にならない。
世の中には悪魔みたいな人間もいるって事、
忘れちゃならないわ」」
「・・・・・・」
悪魔の姿のまま砕け散り、跡形もなく遺去。
別れの言葉もろくに言えないまま、また1人と
結晶に引きずり込まれる様に世界から喪失。
一応に助ける事ができなかった。
(またか・・・またクラスメイトが)
拓男とはあまり多く話をした方じゃなかった。
でも、ほんの身近な者が世間を震撼させるまでに
ACの影響は目に見えないところにまで浸蝕。
あいつの一方的な攻撃で仕方なく戦闘になったものの、
救いの手もなく悲惨な結果を迎えさせてしまう。
任務としては一応の成功で終わる。
誰かの犠牲をもって、いつも残された塊だけが落ちる。
仕事の名目といえども、目の前で消える人影に
今は心を無にしたくて仕方がない。
乳白色の鉱石を拾い上げ、科警研にわたして
いつも通りにこのACを検査。
邪悪なカタツムリに
豹変した理由が明かされた。
「メタモルフォーゼス、一部の肉体のパーツをすり替え
拒否反応も起こさずに自身のものにできる性質」
ACの中には複数の頭部が収められていたという。
美形的な顔面ながらも、惨たらしく
並べられて詰められていた。
厘香以外でも、物を収納できる力をもった者は点在し、
一種によらず似た性質も色々とあるようだ。
頭部を綺麗に抜き取っていたのも、
いかにも悪魔な手法とばかり忌まわしいやり口だ。
「悪魔も他世界にしてはこっちと形状が相似するわ。
ヒルジンと似た物質を出して首を溶かしていた」
「あいつは、自分の顔を嫌がっていました。
そして、顔を自分のとすり替える・・・」
「自分を変えると行動心理も変化するようね。
心臓を移植された人が別の趣味をもち始めるみたいに」
そして、自身が気に入られようとして
頻繁に街を歩く様になっていった。
寄生虫に憑りつかれたカタツムリの様に
誘惑につられて部屋内だが顔という表を出してしまう。
どんな気持ちで首を集め続けてたのだろうか。
これを武器や補助装備に用いるかというと気が進まない。
えげつないものを詰めていた扱いなんて、
とてもじゃないけどやりたくなかった。
「性質はよく精査してないから不明だけど、
容器として扱える代物だわ。
適性としてならあんたもそつなく使えるけど、
さすがにこんな物は利用したくないわね?」
「俺も勘弁してほしいです。
なんだか祟られそうで・・・」
主任もさすがにこれを自分に預ける気はなく、
メタモルフォーゼスは科警研で保管する事にした。
拓男の苦しみを引き継ぐべきだとは思うも、
陰湿な立ち回りを納得できる配慮もみじんもない。
灰色の結晶をケースにしまい、隠すように収めた。
「何でもACのせいにはできないわよ。
人が人を物のように扱う。
彼だけでなく、今に始まった事ではないわ」
「・・・・・・」
「多分、また似たような事件は起こるでしょ。
ところであんた、体の調子はどう?」
「え、ええ。別になんとも」
言葉が詰まる。
友人がまた1人いなくなった自分を見かねてか、
体調という語で心身をうかがっているのだろう。
なんともないと言いつつ口が動かなくなるものの、
実は言いたいことはあった。
「主任さん」
「なに?」
「悪魔に意思ってあるんですか?」
「悪魔の?」
「拓男が言ってたんですよ。
ACから声が聴こえたって。
川上とか風見鳥みたいに悪魔と同化する点で、
自分が自分じゃなくなる・・・ような感じがするとか、
デメリットとかって起こるんですか?」
「・・・・・・」
ACを取り扱うのは彼女も同じ。
剣の製造で使用する過程で夢中になるから、
共通感覚に何か知ってそうだと思った。
剣を手にした時と同様、隣に誰かがいる様な気がして
一体感と言えば良いのか例えようのない同化みたいに、
漠然とした意思が時折どこかへ
いってしまう様な感じを伝える。
上手に形容できない状態に、主任はNoと言った。
「そうね、ACの言語については一切不明だけど、
解離性同一性障害の類も考えられるわ。
あんたは声を聴いた事はないでしょ?」
「ないです」
「ACの過干渉による影響は今のところ根拠がないわ。
現実とかけ離れた目前の光景が自身との印象の
ギャップを感じてそう感じるのかも」
「差・・・」
「怖くなった?
辞めたければやめても良いのよ?」
「いや、いまさらやめるわけには・・・」
主任は不安がられたのか、顔をジッと見て近づく。
お互いの顔が寸前までとどきそうになると、
息がとどいて吹聴した。
「「これは私の見解だけど、人と悪魔の境界とは
能力の差異くらいで、一応な共通点から差分で
線引きする根拠はないと思ってる」」
「え、ええ」
「「今までの経緯をみなさい。
悪魔本体じゃなく、人間本体より引き起こした
事例ばかりじゃないの。
悪魔自体、人間の誰かが召喚した他にならない。
世の中には悪魔みたいな人間もいるって事、
忘れちゃならないわ」」
「・・・・・・」
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