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荒ぶる男のローレライ3
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TV局員の出張取り調べは終了した。
どんな成り行きなのか、主任1人だけで話にいった事で
メディア暴動事件の詳細を少ししか知る余裕が
与えられてないような気がする。
パトカーの中で自分は先の質疑応答の結果を
彼女に聞き直すと、あっさりと答えた。
「さっきの話、どうなんですかね?」
「黒よ、星は連中にいる」
「ええっ、もう分かったんですか!?」
何気ない返答にもかかわらず、
局員が犯人だと見抜いたようだ。
やはり、煽りの仕掛人はTV局内から。
後は物的証拠などを挙げて出直しを図るのかと言うと。
「一度泳がせるわ、単純所持だけで検挙はできない。
星が直に“ACを発動した”証拠がなければ、
ただの宝石所持でつかめない」
「現行犯逮捕狙いですか」
「そう、結晶を道具として及ばせたきっかけを突く。
スタッフはまた同じ手口でやらかすはず。
今度は警察の目が近いところで発動の機会を狙うの」
この言葉で主任の作戦は分かりやすくなった。
包丁を持っているだけでは逮捕できないから、
包丁で襲う瞬間を押さえるのと同じ。
そして、肝心な英津さんはというと、メディア間で
物議をかもした結果、ファンの強い要望も兼ねて
晃京ドームでライブを行う事が決定。
性懲りもせず、美の音を奏でる
歌謡祭が大々的に始まろうとした。
当日、自分はパトカーで現地に行って
客のフリして警備する役割を与えられる。
主任はライブ中継でドーム会場を見張り、
状況に応じて指示を下すようだ。
「「同じように見回りして頂戴」」
「了解」
万が一に備えて3人の女御三方は今回控え。
来場者は当然のように女性ばかりで、男が少ない中で
自分が居ても大丈夫かと不穏になる。
一応、TVに映ってしまったから顔を隠すようにするが、
AC内から出てくる悪魔より、
人に絡まれる心配の方が大きいと思う。
別の意味で凶波に変わらなければ良いけど、
内心くもりがちとなる。
今はとりあえずドーム外周で歩き回り、
異性の川に沿って様子を見守ってゆく。
(音がした)
公演が始まったようだ。
結局、歌ってしまって大丈夫かと思ったところ。
パクパク
実は今回、英津さんは口パクで歌唱していた。
安全確保でCD収録時の音声を用いて公開。
事件前のものならACの怪音波の影響がないので、
起こらないように配慮。
今のところ何も異常は起こっていない。
が、自分はトイレに行きたくなる。
場所はドーム内にあるので、すぐに入る。
幸い、今日は男が少ないから並ばずに済む。
このまま時間をつぶそうかと用を足し終えると、
通路奥から大きな声があがる。
発しているのはやはり女性陣であった。
「「なんで!?」」
「英津さんは歌っていないはずなのに!?」
自分と主任の言葉が交わらずに交差。
ステージの上まで押し寄せてきた。
玄米の重心がかかる腰が宙に浮く。
いざという時のためにワイヤーを括り付けて
天井から脱出を図らせていた。
男スタッフの手配もスムーズに働いたおかげで、
無事に外に出られたようだ。
あっという間にステージは占領されて山盛りになるも、
天井まではとどかず。
女性達の動きは会場外の方向へ変わり始めた。
一方、中継組のTV局スタッフはドーム内の
一室を借りて生放送の映像を撮影。
目を見開きながら会場の光景を観察する。
内の1人、御手洗三郎は震えながらカメラマンに
演出的回しを徹底させていた。
「プロデューサー!?」
「これしかないィ、数字を取るにはもうこれしか!
第1~8カメラ、もっと旋回ッ!
玄米の顔をもっと滑らかにアップ!
ウチュチュ、チュウケェイ!」
三郎は片手に透明のACを握っている。
ちょうど腰の高さにある宙に浮いたディスプレイを
見ながら会場を乗っ取るようにアンプを設置し、
喉に融和させた声のVTRをドーム内に放送させた。
しかし、周囲は気付かずにドーム中の狂乱ばかり
目を向け続けていた。
会場の人々がパニックとなる。
「目立てば良い、ここ晃京では目利きが優遇される。
メダツモノガイキノコレルセカイナンダカラ・・・
時代のヒョウゲンは私が決める。
注目こそ、人をイケる像に秀でた象徴となるのだ。
数字数字数字数字数字数字すうじスウジィ!」
眼の虹彩が上を向き、視線が定まらない状態で
放送の指示をだし続けた。
以前のマーガレットの訪問時にACを尻の間に隠し、
すっかりと怯えてもなお、結果に囚われて
パニック物の手法で世間の視線をかき集めようとする。
周りの部下も彼の異常に気付きながらも、
仕事の立場で反論する者はいなかった。
一方、用を足し終えた自分は入り乱れていた人の雪崩に
巻き込まれつつ、外への脱出が困難に追いやられていた。
ドーム廊下は数ヶ所と複数分かれているが広くなく、
案内で通ったから進められたものの、
荒れた女性ばかりのここでおいそれと先に
進められそうになかった。
「サインサインサインサインサインコサインサイン!」
「邪魔よぉ、フィゴオン!」
「うわっ!?」
ペンを持った女性が殴りかかってきた。
生身の人間相手に武器は使えない。
リビアングラスもこんな狭い廊下では活かせず、
反射がてらに途中で人とぶつかってしまう。
あの謎の俳優と二の舞を踏むわけにはいかず、
瞬間移動でもおいそれと発動できないのだ。
「ジョアッ!」
(なんだ、この人!?)
女性が忍者みたいに壁に張り付いてきた。
ACの影響で身体能力が向上したのか、
ムササビの様に侵入するモーションで
綺麗な曲線美を空中に描く。
ちょっとしたステップならばぶつかりにくく
接触する危険が低くなる。
ここでグリーンフローライトが再び役立つとは
意外で、物には使い様。
ただ、自分はただひたすらかわすしかなく、
攻撃という手段が一切許されない中で、
ここから外に出るしかなかったのだが。
「キシャアア、ミャオオ!」
「ああっ、ちょっと!?」
不覚にもぶつかってしまった4人になだれ込まれ、
40くらいの視線の定まらない女性にしがみつかれ、
床に伏せられてしまう。
首から頭だけ動かせる状態で上を向くと、
通常とは倍はある体積の人がそびえていた。
「・・・・・・え?」
顔を上げると、体重100kgはある女性が立っていた。
ずっとこちらを見ている。
会場に駆け込む群れとは異なり、彼女だけは
目線も確認できずに側から離れる気配がない。
「「ウソ・・・ウソだろ? なあ、ウソだって――」」
どうして自分が狙われているのかまったくもって不明。
大きな人は腹部を膨らませて飛び跳ねてダイブ。
天井の蛍光灯は覆われ、視界から明るさが消えた。
一方でTV局スタッフ達も混乱と化した周囲に
危険を肌で感じさせられそうにもち始めていた。
壁を爪で擦り、周辺のオブジェにも
人波の重圧で壊されて多大な損害をもたらす。
いつ、自分達が襲われてもおかしくな状況に、
プロデューサーへ退避を促し始める。
「第3、5、6のカメラが倒されました!
スタッフ1名、通路角に押し詰めで骨折!
プロデューサァ!?」
「むむむ無理か、むひぃん。撤退するゥ!」
正直、ここまで暴動が甚大になるとは
思っていなかった。
だが、出口が群れで塞がれてしまい出られない。
人の裂け目をどうにかして見つけようと、
通路という四角の奥に目を配っていると。
「プロデューサー、こっちです!」
「新堂君!」
部下が示している。
何故か正常を保っていて避難経路を確保してくれたようで、
部下の対応にあやかって一緒に非常口へ出ようとした
その時であった。
「え?」
そこにいたのは警察だった。
いた理由は暴動者ではなくプロデューサーのため。
突然の事で追い込まれた三郎は逃げる術なく、
両腕を抑えられて床に伏せられた。
「御手洗三郎、暴行幇助の現行犯で逮捕する!」
「スウジイイイィィィン!」
数人の警官に取り押さえられたプロデューサーは観念し、
握っていた透明の玉は床に転がる。
拾い上げたのは陽動した女性局員の新堂。
携帯で通信を始めた。
「回収しました、主任」
「「よくやったわ、帰還して頂戴」」
実は彼女はTV局を密偵する警察の内通者。
アクアマリンで洗脳されなかったのは
ACを内蔵された耳栓で不協和音を極力抑えていた。
(・・・・・・止まった?)
その時、聖夜は女性に押しつぶされるような状態で
通路内が静まった事に気が付く。
同時に喧騒だった通路も静かになり、
女性達も正常らしい態度や発現に戻っていた。
「あら、私なんでこんな所に?」
「確か、ドームに来てたはずよ」
「英津君どこ?」
女性達は我に返り、しおらしい発言で何も気付かずに
今の現状が分かっていないように見渡す。
乗っかってきた人がなかなかどいてくれなかったが、
男スタッフの助力でやっとの事で全員退いていた。
マーガレットに携帯で詳細を聞く。
「主任さん、これは一体?」
「「会場に不協和音を混ぜた。
音で洗脳されてるなら、無関係な音の混入で
発生を止められるとふんで」」
「そんな事ありえるんですか!?
女性のみ反応するなんて」
「「男のあんたに言うのもなんだけど、
美声というのは女性に大きな影響をもたらす
泥酔効果を発揮するときがある。
すぐ口説き文句に引っ掛かるのがいるでしょ?」」
「な、なるほど」
「「何故起こるのか根拠はまだつかみきれないけど、
なんとか阻止する事に成功した。
でも、1つ判明したわ。
オリハルコンオーダーズはメディアを利用して
何か企んでいる可能性がある」」
「世間へのアピールを・・・」
「今回のような洗脳紛いの行為をとられたら
人口の多い区画はかなり深刻な状況になる。
だから、重要度の高い問題は私自ら出向く主義なの。
警察の基本は“足を使え”、古今東西の鉄板よ」
直に足を運んだ理由がそれだったようだ。
女性のみ反応した件についてはまだ判明できない。
関係者と接触した線を辿ればいずれ足が着くと、
主任はTV局をマークする方針をとる。
いずれオリハルコンオーダーズの尻尾をつかむために
対称となるだろう、メディア関連も洗おうと
計画する算段を打ち立てた。
――――――――――――――――――――――――
物書きを始めて4年くらいになりますけど、
1つ気が付いた事があります。
文を書くのもエネルギーが要るものだと。
脳内で文字を形成して書き放った瞬間、
ふっと穴が空いて再び書く度に血や気の様なものが
溜まっては流れてゆく感覚がします。
意識をしてからまた文字を生み出しますが、
時に詰まり、押し出し感がパタッとなくなったりして
書けなくなったりして。
一定間隔で生まれるとは限らないんですね。
どんな成り行きなのか、主任1人だけで話にいった事で
メディア暴動事件の詳細を少ししか知る余裕が
与えられてないような気がする。
パトカーの中で自分は先の質疑応答の結果を
彼女に聞き直すと、あっさりと答えた。
「さっきの話、どうなんですかね?」
「黒よ、星は連中にいる」
「ええっ、もう分かったんですか!?」
何気ない返答にもかかわらず、
局員が犯人だと見抜いたようだ。
やはり、煽りの仕掛人はTV局内から。
後は物的証拠などを挙げて出直しを図るのかと言うと。
「一度泳がせるわ、単純所持だけで検挙はできない。
星が直に“ACを発動した”証拠がなければ、
ただの宝石所持でつかめない」
「現行犯逮捕狙いですか」
「そう、結晶を道具として及ばせたきっかけを突く。
スタッフはまた同じ手口でやらかすはず。
今度は警察の目が近いところで発動の機会を狙うの」
この言葉で主任の作戦は分かりやすくなった。
包丁を持っているだけでは逮捕できないから、
包丁で襲う瞬間を押さえるのと同じ。
そして、肝心な英津さんはというと、メディア間で
物議をかもした結果、ファンの強い要望も兼ねて
晃京ドームでライブを行う事が決定。
性懲りもせず、美の音を奏でる
歌謡祭が大々的に始まろうとした。
当日、自分はパトカーで現地に行って
客のフリして警備する役割を与えられる。
主任はライブ中継でドーム会場を見張り、
状況に応じて指示を下すようだ。
「「同じように見回りして頂戴」」
「了解」
万が一に備えて3人の女御三方は今回控え。
来場者は当然のように女性ばかりで、男が少ない中で
自分が居ても大丈夫かと不穏になる。
一応、TVに映ってしまったから顔を隠すようにするが、
AC内から出てくる悪魔より、
人に絡まれる心配の方が大きいと思う。
別の意味で凶波に変わらなければ良いけど、
内心くもりがちとなる。
今はとりあえずドーム外周で歩き回り、
異性の川に沿って様子を見守ってゆく。
(音がした)
公演が始まったようだ。
結局、歌ってしまって大丈夫かと思ったところ。
パクパク
実は今回、英津さんは口パクで歌唱していた。
安全確保でCD収録時の音声を用いて公開。
事件前のものならACの怪音波の影響がないので、
起こらないように配慮。
今のところ何も異常は起こっていない。
が、自分はトイレに行きたくなる。
場所はドーム内にあるので、すぐに入る。
幸い、今日は男が少ないから並ばずに済む。
このまま時間をつぶそうかと用を足し終えると、
通路奥から大きな声があがる。
発しているのはやはり女性陣であった。
「「なんで!?」」
「英津さんは歌っていないはずなのに!?」
自分と主任の言葉が交わらずに交差。
ステージの上まで押し寄せてきた。
玄米の重心がかかる腰が宙に浮く。
いざという時のためにワイヤーを括り付けて
天井から脱出を図らせていた。
男スタッフの手配もスムーズに働いたおかげで、
無事に外に出られたようだ。
あっという間にステージは占領されて山盛りになるも、
天井まではとどかず。
女性達の動きは会場外の方向へ変わり始めた。
一方、中継組のTV局スタッフはドーム内の
一室を借りて生放送の映像を撮影。
目を見開きながら会場の光景を観察する。
内の1人、御手洗三郎は震えながらカメラマンに
演出的回しを徹底させていた。
「プロデューサー!?」
「これしかないィ、数字を取るにはもうこれしか!
第1~8カメラ、もっと旋回ッ!
玄米の顔をもっと滑らかにアップ!
ウチュチュ、チュウケェイ!」
三郎は片手に透明のACを握っている。
ちょうど腰の高さにある宙に浮いたディスプレイを
見ながら会場を乗っ取るようにアンプを設置し、
喉に融和させた声のVTRをドーム内に放送させた。
しかし、周囲は気付かずにドーム中の狂乱ばかり
目を向け続けていた。
会場の人々がパニックとなる。
「目立てば良い、ここ晃京では目利きが優遇される。
メダツモノガイキノコレルセカイナンダカラ・・・
時代のヒョウゲンは私が決める。
注目こそ、人をイケる像に秀でた象徴となるのだ。
数字数字数字数字数字数字すうじスウジィ!」
眼の虹彩が上を向き、視線が定まらない状態で
放送の指示をだし続けた。
以前のマーガレットの訪問時にACを尻の間に隠し、
すっかりと怯えてもなお、結果に囚われて
パニック物の手法で世間の視線をかき集めようとする。
周りの部下も彼の異常に気付きながらも、
仕事の立場で反論する者はいなかった。
一方、用を足し終えた自分は入り乱れていた人の雪崩に
巻き込まれつつ、外への脱出が困難に追いやられていた。
ドーム廊下は数ヶ所と複数分かれているが広くなく、
案内で通ったから進められたものの、
荒れた女性ばかりのここでおいそれと先に
進められそうになかった。
「サインサインサインサインサインコサインサイン!」
「邪魔よぉ、フィゴオン!」
「うわっ!?」
ペンを持った女性が殴りかかってきた。
生身の人間相手に武器は使えない。
リビアングラスもこんな狭い廊下では活かせず、
反射がてらに途中で人とぶつかってしまう。
あの謎の俳優と二の舞を踏むわけにはいかず、
瞬間移動でもおいそれと発動できないのだ。
「ジョアッ!」
(なんだ、この人!?)
女性が忍者みたいに壁に張り付いてきた。
ACの影響で身体能力が向上したのか、
ムササビの様に侵入するモーションで
綺麗な曲線美を空中に描く。
ちょっとしたステップならばぶつかりにくく
接触する危険が低くなる。
ここでグリーンフローライトが再び役立つとは
意外で、物には使い様。
ただ、自分はただひたすらかわすしかなく、
攻撃という手段が一切許されない中で、
ここから外に出るしかなかったのだが。
「キシャアア、ミャオオ!」
「ああっ、ちょっと!?」
不覚にもぶつかってしまった4人になだれ込まれ、
40くらいの視線の定まらない女性にしがみつかれ、
床に伏せられてしまう。
首から頭だけ動かせる状態で上を向くと、
通常とは倍はある体積の人がそびえていた。
「・・・・・・え?」
顔を上げると、体重100kgはある女性が立っていた。
ずっとこちらを見ている。
会場に駆け込む群れとは異なり、彼女だけは
目線も確認できずに側から離れる気配がない。
「「ウソ・・・ウソだろ? なあ、ウソだって――」」
どうして自分が狙われているのかまったくもって不明。
大きな人は腹部を膨らませて飛び跳ねてダイブ。
天井の蛍光灯は覆われ、視界から明るさが消えた。
一方でTV局スタッフ達も混乱と化した周囲に
危険を肌で感じさせられそうにもち始めていた。
壁を爪で擦り、周辺のオブジェにも
人波の重圧で壊されて多大な損害をもたらす。
いつ、自分達が襲われてもおかしくな状況に、
プロデューサーへ退避を促し始める。
「第3、5、6のカメラが倒されました!
スタッフ1名、通路角に押し詰めで骨折!
プロデューサァ!?」
「むむむ無理か、むひぃん。撤退するゥ!」
正直、ここまで暴動が甚大になるとは
思っていなかった。
だが、出口が群れで塞がれてしまい出られない。
人の裂け目をどうにかして見つけようと、
通路という四角の奥に目を配っていると。
「プロデューサー、こっちです!」
「新堂君!」
部下が示している。
何故か正常を保っていて避難経路を確保してくれたようで、
部下の対応にあやかって一緒に非常口へ出ようとした
その時であった。
「え?」
そこにいたのは警察だった。
いた理由は暴動者ではなくプロデューサーのため。
突然の事で追い込まれた三郎は逃げる術なく、
両腕を抑えられて床に伏せられた。
「御手洗三郎、暴行幇助の現行犯で逮捕する!」
「スウジイイイィィィン!」
数人の警官に取り押さえられたプロデューサーは観念し、
握っていた透明の玉は床に転がる。
拾い上げたのは陽動した女性局員の新堂。
携帯で通信を始めた。
「回収しました、主任」
「「よくやったわ、帰還して頂戴」」
実は彼女はTV局を密偵する警察の内通者。
アクアマリンで洗脳されなかったのは
ACを内蔵された耳栓で不協和音を極力抑えていた。
(・・・・・・止まった?)
その時、聖夜は女性に押しつぶされるような状態で
通路内が静まった事に気が付く。
同時に喧騒だった通路も静かになり、
女性達も正常らしい態度や発現に戻っていた。
「あら、私なんでこんな所に?」
「確か、ドームに来てたはずよ」
「英津君どこ?」
女性達は我に返り、しおらしい発言で何も気付かずに
今の現状が分かっていないように見渡す。
乗っかってきた人がなかなかどいてくれなかったが、
男スタッフの助力でやっとの事で全員退いていた。
マーガレットに携帯で詳細を聞く。
「主任さん、これは一体?」
「「会場に不協和音を混ぜた。
音で洗脳されてるなら、無関係な音の混入で
発生を止められるとふんで」」
「そんな事ありえるんですか!?
女性のみ反応するなんて」
「「男のあんたに言うのもなんだけど、
美声というのは女性に大きな影響をもたらす
泥酔効果を発揮するときがある。
すぐ口説き文句に引っ掛かるのがいるでしょ?」」
「な、なるほど」
「「何故起こるのか根拠はまだつかみきれないけど、
なんとか阻止する事に成功した。
でも、1つ判明したわ。
オリハルコンオーダーズはメディアを利用して
何か企んでいる可能性がある」」
「世間へのアピールを・・・」
「今回のような洗脳紛いの行為をとられたら
人口の多い区画はかなり深刻な状況になる。
だから、重要度の高い問題は私自ら出向く主義なの。
警察の基本は“足を使え”、古今東西の鉄板よ」
直に足を運んだ理由がそれだったようだ。
女性のみ反応した件についてはまだ判明できない。
関係者と接触した線を辿ればいずれ足が着くと、
主任はTV局をマークする方針をとる。
いずれオリハルコンオーダーズの尻尾をつかむために
対称となるだろう、メディア関連も洗おうと
計画する算段を打ち立てた。
――――――――――――――――――――――――
物書きを始めて4年くらいになりますけど、
1つ気が付いた事があります。
文を書くのもエネルギーが要るものだと。
脳内で文字を形成して書き放った瞬間、
ふっと穴が空いて再び書く度に血や気の様なものが
溜まっては流れてゆく感覚がします。
意識をしてからまた文字を生み出しますが、
時に詰まり、押し出し感がパタッとなくなったりして
書けなくなったりして。
一定間隔で生まれるとは限らないんですね。
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