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第20話 矢直
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2012年1月7日
年明けで正月終わりの午後。
昴峰学園の校庭に様々な人達が行き来していた。
避難所としてすっかりと役割をもったここは
若者の集う場所とはいえない所と変わっていて、
入居者は都会に似合わず疎らで、
職員も学生への授業ではなく、すっかりと難民キャンプの
管理仕事に変わったようにチェックする。
内1人の大人が仕事をしていたようで休憩時間になり、
校庭端のテーブルで食事を始めていた時。
「ビ・エンドさん」
「どうも、こにちは」
厘香はビ・エンドの元を訊ねている。
自分はすでに食べ終わったが、
彼は食事していたようで体調もすでに良くなり、
すんなりと学園の一角で根付くように住み込んでいた。
側には荷物がある、重そうな物もあるので手伝いを勧める。
「あれ、これは学園の」
「そう、ここの、荷物。わたし、てつだう」
「他にお手伝いできる人がいますので、
私達学生が手伝いますよ」
「わたし、いま、ホームレス。
だから、ほかにいけないから、ここ、てつだう」
「そうですか・・・」
役立たずと思われないように、
様々な避難所で物資の運搬の手伝いをしていた。
悪魔の奇襲に直接危害を受けずとも、関係者や設備の
被害に遭った者も都心部から散乱している。
以前も言っていたが、居場所を失った者も少なくない。
晃京でトラブルを起こし、帰国できない者や
職を失った外国人労働者も多い。
箸を置いて、校庭を観る。
彼は役立たずという烙印を嫌がり、
少しでも活動を広げたいと主張する。
「ことば、ろくに、はなせなくても、
こうどうで、ひとたち、かわす
いろいろ、二ホン、まなびたい」
「・・・・・・」
片言ながらの思想を含んだ協力したい気持ちに黙認。
異国との最初の出会いも、お互いの一歩を確かめるような
こんなシチュエーションだったのか。
彼の目は葡萄染に澄ませた様にも思えた。
「厘香ちゃん、荷物運ぶから手伝ってー!」
「はい!」
女教師に支給された物資の手伝いを催促される。
気付けば昼食も終わり、それぞれの持ち場や仕事を始め、
夜に備えて安全索道を構築。
最低限の生活をここで過ごさせるためには
明るい内に済まさなければならないからだ。
自分は指定先へ運び込もうとした時、
彼も同じ行動を始めて両手で抱えだした。
「いや、わたし、これはこぶ。
すこしでも、てつだいたい」
「ビ・エンドさん・・・」
役に立ちたいというのが先の言葉にはまる。
身長190cmはあろう彼の長い腕はずいぶんと積極的で
気配り上手な感じがした。
食後に直ぐ動くのもどうかと思ったけど、
断る理由もないので、お言葉に甘えて
自分は手伝ってもらおうと荷物を分ける。
「ここに来られたのも僥倖に思います。
警察や自衛隊が解決するので玉響の辛抱です。
遠慮せずに周りを頼ってください」
「わかった、ありがとう」
彼は持ち上げて運んでいった。
重い荷物を分割できた機会を得られたのは
確かに幸運のようであった。
その頃、聖夜は買い物で街に出ていた。
姉に頼まれて一部の材料が不足してしまい、
甘谷区まで来なければならなかった。
情報最先端の中心部など獣眼の群ればかり。
あんなイベントを迎えてしまった矢先で、
また人気の多い所に来るなんて皮肉も良いとこ。
サングラスと帽子を装着し、目立たないように
道路端を歩いていたのだが。
「有名人はっけーん!」
「うおお、マジじゃん!」
「うわ、なんだ!?」
案の定、見つかってしまう。
元々目立ちがちな銀髪だけに、偽装の意味がないくらい
特徴を捉えられて通行人に絡まれた。
うっかりと都心に近い所に来てしまったが故に、
噂好きな情報捕食者にたかられる。
「違う、別人、ひと違いだ!」
「本人じゃん。髪色、声、顔の輪郭。
Vとまったく一致してるし」
「ここでなにしてんのー?
また収録? ねえねえ!」
情報収集力は日本TOPのここで、否定の1つも
ろくに通じずにもみくちゃにされる。
逃げても回り込まれ、カゴメカゴメの如く
スマホを構えられて円状の監視をされていた時だ。
「いい加減にしとけ」
「!?」
白い背広姿の男が現れた。
角刈り頭に190cmはあろう外圧で取り巻きを一蹴。
怯えた野次馬はクモの子を散らす様に去ってゆく。
見知らぬ人だけれど、おかげで助かった。
「あ、ありがとうございます・・・」
身なりからして、どう考えても普通の会社員ではない。
厘香の家に仕えてる者なのか聞こうとする寸前、
命令文を先制された。
「あんまり人前で力を奮う真似はするな」
「・・・・・・」
その一言のみで男も去っていった。
明らかに自分の事を知るようで、
詳細を聞き返そうとしたくてもすでにいない。
警告メッセージとばかり思わせぶりで脚を止められた。
――――――――――――――――――――――――
諸事情により、人物の住んでいる住所の一部を
記載しないようにしています。
フィクションですが、プライバシー印象の理由です。
年明けで正月終わりの午後。
昴峰学園の校庭に様々な人達が行き来していた。
避難所としてすっかりと役割をもったここは
若者の集う場所とはいえない所と変わっていて、
入居者は都会に似合わず疎らで、
職員も学生への授業ではなく、すっかりと難民キャンプの
管理仕事に変わったようにチェックする。
内1人の大人が仕事をしていたようで休憩時間になり、
校庭端のテーブルで食事を始めていた時。
「ビ・エンドさん」
「どうも、こにちは」
厘香はビ・エンドの元を訊ねている。
自分はすでに食べ終わったが、
彼は食事していたようで体調もすでに良くなり、
すんなりと学園の一角で根付くように住み込んでいた。
側には荷物がある、重そうな物もあるので手伝いを勧める。
「あれ、これは学園の」
「そう、ここの、荷物。わたし、てつだう」
「他にお手伝いできる人がいますので、
私達学生が手伝いますよ」
「わたし、いま、ホームレス。
だから、ほかにいけないから、ここ、てつだう」
「そうですか・・・」
役立たずと思われないように、
様々な避難所で物資の運搬の手伝いをしていた。
悪魔の奇襲に直接危害を受けずとも、関係者や設備の
被害に遭った者も都心部から散乱している。
以前も言っていたが、居場所を失った者も少なくない。
晃京でトラブルを起こし、帰国できない者や
職を失った外国人労働者も多い。
箸を置いて、校庭を観る。
彼は役立たずという烙印を嫌がり、
少しでも活動を広げたいと主張する。
「ことば、ろくに、はなせなくても、
こうどうで、ひとたち、かわす
いろいろ、二ホン、まなびたい」
「・・・・・・」
片言ながらの思想を含んだ協力したい気持ちに黙認。
異国との最初の出会いも、お互いの一歩を確かめるような
こんなシチュエーションだったのか。
彼の目は葡萄染に澄ませた様にも思えた。
「厘香ちゃん、荷物運ぶから手伝ってー!」
「はい!」
女教師に支給された物資の手伝いを催促される。
気付けば昼食も終わり、それぞれの持ち場や仕事を始め、
夜に備えて安全索道を構築。
最低限の生活をここで過ごさせるためには
明るい内に済まさなければならないからだ。
自分は指定先へ運び込もうとした時、
彼も同じ行動を始めて両手で抱えだした。
「いや、わたし、これはこぶ。
すこしでも、てつだいたい」
「ビ・エンドさん・・・」
役に立ちたいというのが先の言葉にはまる。
身長190cmはあろう彼の長い腕はずいぶんと積極的で
気配り上手な感じがした。
食後に直ぐ動くのもどうかと思ったけど、
断る理由もないので、お言葉に甘えて
自分は手伝ってもらおうと荷物を分ける。
「ここに来られたのも僥倖に思います。
警察や自衛隊が解決するので玉響の辛抱です。
遠慮せずに周りを頼ってください」
「わかった、ありがとう」
彼は持ち上げて運んでいった。
重い荷物を分割できた機会を得られたのは
確かに幸運のようであった。
その頃、聖夜は買い物で街に出ていた。
姉に頼まれて一部の材料が不足してしまい、
甘谷区まで来なければならなかった。
情報最先端の中心部など獣眼の群ればかり。
あんなイベントを迎えてしまった矢先で、
また人気の多い所に来るなんて皮肉も良いとこ。
サングラスと帽子を装着し、目立たないように
道路端を歩いていたのだが。
「有名人はっけーん!」
「うおお、マジじゃん!」
「うわ、なんだ!?」
案の定、見つかってしまう。
元々目立ちがちな銀髪だけに、偽装の意味がないくらい
特徴を捉えられて通行人に絡まれた。
うっかりと都心に近い所に来てしまったが故に、
噂好きな情報捕食者にたかられる。
「違う、別人、ひと違いだ!」
「本人じゃん。髪色、声、顔の輪郭。
Vとまったく一致してるし」
「ここでなにしてんのー?
また収録? ねえねえ!」
情報収集力は日本TOPのここで、否定の1つも
ろくに通じずにもみくちゃにされる。
逃げても回り込まれ、カゴメカゴメの如く
スマホを構えられて円状の監視をされていた時だ。
「いい加減にしとけ」
「!?」
白い背広姿の男が現れた。
角刈り頭に190cmはあろう外圧で取り巻きを一蹴。
怯えた野次馬はクモの子を散らす様に去ってゆく。
見知らぬ人だけれど、おかげで助かった。
「あ、ありがとうございます・・・」
身なりからして、どう考えても普通の会社員ではない。
厘香の家に仕えてる者なのか聞こうとする寸前、
命令文を先制された。
「あんまり人前で力を奮う真似はするな」
「・・・・・・」
その一言のみで男も去っていった。
明らかに自分の事を知るようで、
詳細を聞き返そうとしたくてもすでにいない。
警告メッセージとばかり思わせぶりで脚を止められた。
――――――――――――――――――――――――
諸事情により、人物の住んでいる住所の一部を
記載しないようにしています。
フィクションですが、プライバシー印象の理由です。
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