Crystal of Latir

文字の大きさ
上 下
4 / 99

     日常の崩壊2

しおりを挟む
 突然現れた人骨の群れは彼女達の手で救われた。
背後から雷や氷が飛んでいたのを横目に、
自分は受け取った銀色のナイフで一体だけ斬り付け、
闇雲ながらどうにか危機を回避。
まるですぐ起こるとばかりすんなりと対応してくれた。

「ありがとう、助かった。
 ていうか、なんでこんな危ない物を――?」
「えへへ、まあ、こういう事が起こると思って」
「アンタがいつピンチになっても対策として
 いつも備えてんのよ、感謝しなさい!」

3人の女生徒が側に来る。
栗毛のウェーヴヘアーのマナ・アヴィリオス。
黒髪ボブカットの正倉院厘香しょうそういんりか
ブロンドロングヘアーのカロリーナ・ヴァレンティノ。
いずれも同じクラスの同級生で、
自分を心配してくれて来てもらったのはありがたいけど、
先の言葉“自分がいつピンチになっても”というのが
引っかかる。

「ところで、お前達はなんでここに?」
「来るべき時がきたから・・・と言えば良いかも」
「そうね、だから学校にも結界を張るけど
 さっそく悪魔がきちゃったから」
「け、結界!?」

オカルトも良いとこだ。
まるで魔法でも使うとばかり、さっきの悪魔を退ける
聖なるバリアなファンタジーを繰り出すという光景は
決して幻ではなく今ここで発生していた。
夢をみているはずがない。
肌寒い現実の中で起きているから間違いじゃないはずだ。

「クリスマスって奇術を生み出すためにあったのか!?
 死者がよみがえる伝説なんて聞いた事ないぞ!」
「クリスマスウンヌンじゃないのよ。
 人知れず隠された物が唐突に動き出しているだけ。
 ここなら大丈夫、すぐに片付けるから」
「すぐに?」

マナは懐から2cmくらいの玉を取り出した。
悪魔に向けてかざすと、みるみる消えてゆく。
手慣れているようで、当たり前のように現実離れした
超常を目の中に入れられた。

「そんな事までできるのか。お前達は一体・・・?」

手品を見せられた気分だ。
自分が襲われるのをあらかじめ知っていたように
タイミング良く駆けつけてきた。
そして、自分にも用がある。
マナは大事そうな目で話をもちかけてきた。

「聖夜さん、落ち着いて聞いて。
 私達もあなたに話があってここに来たの」
「何の事だ?」
「この能力を発揮する石みたいな物を探していて、
 今まで目立たないように回収しているの」
アンジェラスAngelusクリスタルCrystal
 古来より異界から精通された特殊な鉱石よ」
「あんじぇらすくりすたる?」
「そう、略してアンジェスタルともよばれてるわ。
 さっきの魔物が来た理由もこれの影響なの」
「これは?」

アンジェラス・クリスタル。
略称、ACとよばれるそれは様々な色の石で、
先の悪魔もそこから来たと言う。
なんで、結晶から悪魔が?
と、常識からして誰もが思うだろう箱の中の異物を
見せながらマナは示しを発言した。

「今、晃京で何者かが悪魔を発現させています。
 いにしえの力を用いて混沌におとしいれようと。
 そして、先の出来事で分かったんです。
 あなたもACの適性があると」

「俺が、ACと?」

自分は何かしらの素質、力をもっていると言う。
わたされたナイフを使っただけの攻防だけで、
何かを見据えてわざわざ迎えられた。
別に宝石を集める趣味をもっているわけでもないのに、
選ばれた理由に胸が落ち着かず。
宝石は石だから、そこら辺にある物から
わんさかい出てくるとでもいうのか。

「でも、宝石っていろんな場所にあるんだろ?
 一般人だって持ってるんだから、
 全部集めるなんて無理なんじゃ?」
「ACは普通の宝石とは違うの。
 中に特殊な文字が刻まれていて、
 超常現象が起こる。今の出来事のように」
「文字が?」
「異界との交信やエネルギーを放出したりできるの。
 火が出たり、悪魔が出たり、色々」
「あ~、うん、そうか・・・」
「アンタ、この前の化学何点よ?」
「いや、こんなの習ってないんだけど・・・」
「ハハハ」

彼女達3人とも結晶を持っていた。
アンジェラスというよりデンジャラスな代物しろもの
女子高生が流行はやりで集めているわけでもなく、
使命感をもって所持しているらしい。

「そんな物があるとはいえ、なんで俺が回収を?」
「今だからこそ言えるけど、君もACの力を
 大きく解放できる素質をもっている。」
「ACを・・・俺が?」

自分にもその力があると言った。
何か特別な素質、詳しくは理解できない
ご都合で聴こえの良い言葉が向けられる。

「本当にそんな事ができるのか!?」
「始めは信じられないかもしれない。
 でも、本当の事なの」
「じゃなければ、あたし達がここに
 来るわけないでしょ?」

事実は事実、前触れもなく実際に起きたから
具現化したという悪魔の対策と実行者への阻止を
手伝えと要求された。

「俺にも、結晶の・・・」
「ACは種類によって適性のある人にしか扱えない。
 あなたにしか手にできない結晶もあるの」
「だけど、適性者も全てて回れる程多くない。
 対するACはたくさんあって私達では手数が少ないの。
 お願い、手伝って」
「今助けたのも協力要請への貸しよ。
 しばらく、その武器も貸してあげるから
 ゴタゴタ言わずに協力しなさいっ!」
「あ・・・うん」

カロリーナにゴリ押しされる。
何やらとんでもない事になりそうなものの、
突然の要求で3人の女同級生に迫られた俺は
Noを突き出す気力も立場もなかった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

常世の守り主  ―異説冥界神話談―

双子烏丸
ファンタジー
 かつて大切な人を失った青年――。  全てはそれを取り戻すために、全てを捨てて放浪の旅へ。  長い、長い旅で心も体も擦り減らし、もはやかつてとは別人のように成り果ててもなお、自らの願いのためにその身を捧げた。  そして、もはやその旅路が終わりに差し掛かった、その時。……青年が決断する事とは。 ——  本編最終話には創音さんから頂いた、イラストを掲載しました!

処理中です...