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元旦の風2
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「キャアアア!」
「でっけえ鳥がああ!?」
「いや、牛だ! ウシだろあれは!?」
寺の最東のフロアで悲鳴があがる。
10mのウシ型の悪魔が突然、球状の飾りから
液体の様な流れで音もなく現れた。
「庭から加護モンが勝手に、頭ァ!?」
「参拝客を避難! 出現位置をすぐに閉鎖しろ!」
空が部下達に市民を避難させるよう指示。
自分も庭の上部で何かが浮いている姿を目にして
催し物などではないとすぐ察知した。
「向こうで何かデケエのがいるぞ!?」
「昼間に悪魔が!?」
正確には正倉院家の加護として扱っていた従者で、
どういうわけか突然発現してしまったらしい。
やはり昼間でも普通に出現するようで、夜限定という
条件は関係なく意図的に仕組まれた事のようだ。
放つも抑えるも悪魔の意思がどんなものか。
濁流の如く逃げ惑う人々の脇をすり抜ける自分達は
ACを懐に忍ばせながら討伐を試みる。
「制御が効かないみたい、対処しましょう!
兄さんもすでにいるはず!」
「姉さんと郷はすぐに車で待っていてくれ!」
「分かったわ、気を付けて」
逃げ惑う参拝者をすり抜けて目標へ近づく。
寺の飾りと見間違えるような翠玉色の
模様をしたものが鮮明に見えてきた。
「兄さん!」
「発現してしまった、討伐する」
厘香は弓矢で狙撃する。
巫女の人達はアルバイトで元から正倉院の者でなく、
戦力として扱えない。AC使いは最低限でも適性をもって
いなければこういった世界に関わるのは許されず。
少なくとも関係者が後始末しなければ事は進まなかった。
それにしてもここを狙って悪魔を放ったのか?
オリハルコンオーダーズが手段を変えたのかと疑うが。
「こいつはどこから?」
「モーシッシね、魔除けとして家の周囲に設置してあった
ACだけど、外に展示してあった所から発現したみたい」
「・・・・・・」
頭がウシの翼を生やしたそれは妖怪の一種として
言い伝えられてきたらしい。
封印していたはずだが、突然這い出てきた。
何か怯えている様な状態らしく、結晶内へ戻らせようにも
拒否されて制御できないという。
れっきとした敵と言えず、こちらは今までと同じように
気付けばクラーレを握り、討伐したいろころだが。
(とどかない・・・)
相手は20~30mの高さで飛び回り、
近接武器では到底近寄る事すらできずに敵わない。
水完公園の時と同様、自分の所持するACは飛び道具を
付与できずに剣で対抗するしかできなかった。
今回は上の方、空中に浮いている物だからまず向かえない。
クラーレの柄を親指でこすり、戸惑う。
厘香に攻略手段を促された。
「聖夜君、グリーンフローライトの力を地面に向けて!」
「下に?」
厘香の言う通りに放つと、一瞬だけ浮力が発生した。
完全に空を飛べないが、少しでも近づける。
が、相手はさらに高く位置取りしているので、
簡単に接近するのは困難だ。
ウシ型は羽を飛ばしてきた。
剣で全てを弾き返せず、3つ腕と脚に刺さる。
「ぐっ!?」
「後ろに下がれ、聖夜!」
「空さん!?」
空は羽を全て弾いた。
彼もACを所有して、手にしている扇をあおぎ
風を発生させて切り刻む。
要人の護衛力をここでも発揮とばかり、
自ら盾になろうと前衛する。
彼らも実際ウシ型と戦うケースは初めてで、
守られる側がこうなるなんて思いもよらなかっただろう。
関心している余裕もなく、宙の丑に注目。
厘香は機動力の元を考慮して皆に攻略法を発言した。
「翼を破壊すれば下に降ろせるかも!」
「できそうか!?」
羽を射出した瞬間に隙がある。
厘香は翼を狙って機動力低下を狙う。
好タイミングでウシ型の高度が下がる。
この機を逃さないようにグリーンフローライトで
浮き上がり、跳び上がった。
(こいつも生物、ならクラーレが効くはず)
しかし、そこからウシ型は離脱を始める。
風の浮力は上昇してもせいぜい1mくらいで、
とどかないと思った時であった。
(え!?)
腕の振りが非常に速い。
それどころか、全身が重量感がない様に軽く、
空を飛びだす鳥すらも捕まえられるくらい追いつける
身の余しに、いつもと違う感じがした。
緑結晶の追加効果か、考える間もなく太い胴体へ最接近。
「とどいた、ここだッ!」
クラーレで胴体部を一斬りし、深緑の泡で毒化させて
動きが鈍ったところへ空が追撃。
ACの補助効果でも発動したのか、
厘香からもらったグリーンフローライトの力といえど、
本気をだした割でも速すぎる。
空も異変に気付き、本調子のそれを超えたとばかり
モーションが増している事に気付いた。
「妙だ、軽すぎる」
「矢が速い、弓道の時よりもずっと・・・」
「ここのACの利益とかじゃないんですか?」
「違う、物理的促成効果は敷かれていない。
こんな場そのものを先導させるようなものなど」
正倉院の者達にも覚えがないという。
対処メンバーが沈黙しかけていると部下の声がした。
「頭、避難完了です! 死傷者0!」
「そうか・・・こっちはとりあえず片付いた。
皆ご苦労だった」
後の調査で、出現の原因は郷。
ヒョウの悪魔に起因されたようで、
触発されたかのように出てきてしまった。
縄張り意識があるのかはともかく、
地球の生物と似た形状に、悪魔という呼び名も
少しためらいがちになりそうだ。
神社としても損害がでて正倉院家に迷惑させたものの、
故意によるわけじゃないからどうにもならず。
一応、郷にはきちんと頭を下げさせて事は済む。
こうして一部の奇妙な現象を残しつつ、
今日の争乱は無事に終わった。
「でっけえ鳥がああ!?」
「いや、牛だ! ウシだろあれは!?」
寺の最東のフロアで悲鳴があがる。
10mのウシ型の悪魔が突然、球状の飾りから
液体の様な流れで音もなく現れた。
「庭から加護モンが勝手に、頭ァ!?」
「参拝客を避難! 出現位置をすぐに閉鎖しろ!」
空が部下達に市民を避難させるよう指示。
自分も庭の上部で何かが浮いている姿を目にして
催し物などではないとすぐ察知した。
「向こうで何かデケエのがいるぞ!?」
「昼間に悪魔が!?」
正確には正倉院家の加護として扱っていた従者で、
どういうわけか突然発現してしまったらしい。
やはり昼間でも普通に出現するようで、夜限定という
条件は関係なく意図的に仕組まれた事のようだ。
放つも抑えるも悪魔の意思がどんなものか。
濁流の如く逃げ惑う人々の脇をすり抜ける自分達は
ACを懐に忍ばせながら討伐を試みる。
「制御が効かないみたい、対処しましょう!
兄さんもすでにいるはず!」
「姉さんと郷はすぐに車で待っていてくれ!」
「分かったわ、気を付けて」
逃げ惑う参拝者をすり抜けて目標へ近づく。
寺の飾りと見間違えるような翠玉色の
模様をしたものが鮮明に見えてきた。
「兄さん!」
「発現してしまった、討伐する」
厘香は弓矢で狙撃する。
巫女の人達はアルバイトで元から正倉院の者でなく、
戦力として扱えない。AC使いは最低限でも適性をもって
いなければこういった世界に関わるのは許されず。
少なくとも関係者が後始末しなければ事は進まなかった。
それにしてもここを狙って悪魔を放ったのか?
オリハルコンオーダーズが手段を変えたのかと疑うが。
「こいつはどこから?」
「モーシッシね、魔除けとして家の周囲に設置してあった
ACだけど、外に展示してあった所から発現したみたい」
「・・・・・・」
頭がウシの翼を生やしたそれは妖怪の一種として
言い伝えられてきたらしい。
封印していたはずだが、突然這い出てきた。
何か怯えている様な状態らしく、結晶内へ戻らせようにも
拒否されて制御できないという。
れっきとした敵と言えず、こちらは今までと同じように
気付けばクラーレを握り、討伐したいろころだが。
(とどかない・・・)
相手は20~30mの高さで飛び回り、
近接武器では到底近寄る事すらできずに敵わない。
水完公園の時と同様、自分の所持するACは飛び道具を
付与できずに剣で対抗するしかできなかった。
今回は上の方、空中に浮いている物だからまず向かえない。
クラーレの柄を親指でこすり、戸惑う。
厘香に攻略手段を促された。
「聖夜君、グリーンフローライトの力を地面に向けて!」
「下に?」
厘香の言う通りに放つと、一瞬だけ浮力が発生した。
完全に空を飛べないが、少しでも近づける。
が、相手はさらに高く位置取りしているので、
簡単に接近するのは困難だ。
ウシ型は羽を飛ばしてきた。
剣で全てを弾き返せず、3つ腕と脚に刺さる。
「ぐっ!?」
「後ろに下がれ、聖夜!」
「空さん!?」
空は羽を全て弾いた。
彼もACを所有して、手にしている扇をあおぎ
風を発生させて切り刻む。
要人の護衛力をここでも発揮とばかり、
自ら盾になろうと前衛する。
彼らも実際ウシ型と戦うケースは初めてで、
守られる側がこうなるなんて思いもよらなかっただろう。
関心している余裕もなく、宙の丑に注目。
厘香は機動力の元を考慮して皆に攻略法を発言した。
「翼を破壊すれば下に降ろせるかも!」
「できそうか!?」
羽を射出した瞬間に隙がある。
厘香は翼を狙って機動力低下を狙う。
好タイミングでウシ型の高度が下がる。
この機を逃さないようにグリーンフローライトで
浮き上がり、跳び上がった。
(こいつも生物、ならクラーレが効くはず)
しかし、そこからウシ型は離脱を始める。
風の浮力は上昇してもせいぜい1mくらいで、
とどかないと思った時であった。
(え!?)
腕の振りが非常に速い。
それどころか、全身が重量感がない様に軽く、
空を飛びだす鳥すらも捕まえられるくらい追いつける
身の余しに、いつもと違う感じがした。
緑結晶の追加効果か、考える間もなく太い胴体へ最接近。
「とどいた、ここだッ!」
クラーレで胴体部を一斬りし、深緑の泡で毒化させて
動きが鈍ったところへ空が追撃。
ACの補助効果でも発動したのか、
厘香からもらったグリーンフローライトの力といえど、
本気をだした割でも速すぎる。
空も異変に気付き、本調子のそれを超えたとばかり
モーションが増している事に気付いた。
「妙だ、軽すぎる」
「矢が速い、弓道の時よりもずっと・・・」
「ここのACの利益とかじゃないんですか?」
「違う、物理的促成効果は敷かれていない。
こんな場そのものを先導させるようなものなど」
正倉院の者達にも覚えがないという。
対処メンバーが沈黙しかけていると部下の声がした。
「頭、避難完了です! 死傷者0!」
「そうか・・・こっちはとりあえず片付いた。
皆ご苦労だった」
後の調査で、出現の原因は郷。
ヒョウの悪魔に起因されたようで、
触発されたかのように出てきてしまった。
縄張り意識があるのかはともかく、
地球の生物と似た形状に、悪魔という呼び名も
少しためらいがちになりそうだ。
神社としても損害がでて正倉院家に迷惑させたものの、
故意によるわけじゃないからどうにもならず。
一応、郷にはきちんと頭を下げさせて事は済む。
こうして一部の奇妙な現象を残しつつ、
今日の争乱は無事に終わった。
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