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第13話 野に放たれた雛達
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2011年12月28日
「この剣、ACの中に入れられるのか!?」
「うん、悪魔が空間を曲げて出てくるように、
物も出し入れができるよ。
そうすれば、目立ちにくくて便利だから」
通学路の途中で厘香に収納できるACを1つもらう。
剣なんて危険な物を持ち歩くわけにはいかないので、
これで収めておけという。
やり方は、念じて、入れて、出す。
確かにそれだけで難なく行える。
本当に感覚だけでできてしまった。
ファルマカンシダラァトを収納した原理なんて
どこへやらと、聞く余裕もない。
まあ、マナが言っていたようにコツをつかんで
順に知れば良い。
悪魔は結晶から出てくるが、行動範囲が決まっていて
周辺地域のどこかを探せば見つかる。
まだ少し理解しづらい部分があるものの、
こうして、1つの仕事は終わった。
次も似たような事をやらされると思うが、
まだ時間が必要だろうと待つだけだ。
ところで、学園の方はどうなのか。
避難所に代えてからは授業も行ってないから、
生徒達もどこで何をしているのかいざ知らず。
24日からまったく来ない連中もいて、
どんな生活ぶりか気になるところであった。
「なあ、クラスの皆はどうしてるんだ?」
「避難所で炊飯の手伝いとかする子もいるけど、
みんながみんな何をしてるのかまでは・・・」
休学から大半はマイペースに独自行動をしていた。
受験も受けられないので進学する生徒は
てんやわんやだが、その他はその他な立ち回り。
実際は冬休み期間で、学園から招集がこない限り
来る必要もないけど、来る制限が解放されたとたん
何をしてるのか晃京のどこかで独自の時を過ごす
人は多くも塊なき自由分子ばかりだ。
同クラスの女子生徒が来る。
「厘香、学園に来てたの!?」
「うん、炊飯を手伝うよう頼まれたから。
静江ちゃんもお手伝いに?」
「ちがう、野暮用で。
あんたもちょっと呼ばれたらすんなり受けるから
お人好しよね~」
「お前の言う野暮用か。郷から聞いたけど、
夜まで都心でほっつき歩いてるらしいな?
悪魔がいるってのに」
「あたしらはあんま襲われないから関係ないし~。
郊外も家を壊されたって話もないし、
あれだけ人がいるから狙われないじゃん。
そうそう、あのバイト考えてくれた!?」
若葉静江がバイトの誘いをする。
いつも女子生徒だけで密集して何かやろうとするのは
今回ばかりじゃないが。
「ごめんなさい、今はちょっと・・・」
「ちぇ、厘香なら一緒にやってくれると思ったのに。
京香もやらないって言うから、誰もいないじゃん」
仲間集めでここに来ていたようだ。
野暮で人集めなんて、良いイメージが湧かない。
ムダと分かるや、静江は帰っていった。
少なくとも厘香はACの仕事でやる余裕がない。
学生が晃京中をフラフラしている光景も見られた。
そういえば、都内情勢もずいぶんと落ち着いてる。
悪魔が襲来しても、個人宅が襲われた話とかは聞かない。
古宿区を中心とした都庁の結晶から現れるといっても、
その悪魔の動向も色々と変に思えた。
水完公園で出現した奴も被害があったケースが
ほとんどなく、パッと出でそこにいましたとばかりで
逆にやる気があるのかと思うくらいだ。
とはいっても、出現元の都心部は激戦区だけあって
対応している彼女達も気掛かりに思う。
「なあ、今、都心部で夜の時はどうなんだ?」
「カロリーナちゃんの報告だと、
都庁から1時間に5~6体の悪魔が発生して
時々討伐チームに参加してるの。
午前3時頃まで散策してるって」
「あいつはそんな無茶してたのか。
マナも独自にやってるのか」
「マナちゃんはクォーツで各地を監視できるから、
教会の人達を派遣したりさせてるよ。
私は夜に出歩くのは許可されないから。
家の人達が・・・」
「すぐ納得できた」
強面の部下にキッチリと保護されているので当然。
全ての件は自分に回ってくるわけじゃない。
自分はまだ出歩くなという暗示、警告か。
半人前の待遇として読み取れた。
事実は事実と、無意識に周囲を見直す。
学園で寝泊まりしているのは教師や身寄りのない者。
ビ・エンドという人も仕切り内で座っている。
事情と気苦労のある人達ばかりのようだ。
今度は図書委員の生徒も作業している。
黒髪カールの男が数冊の本を運んでいた。
白峰光一、学園一の優等生で
マナと同等の学力をもつくらい頭が良い。
何をしているかよく見ると、図書に手をかけて
あいつらしい立場な事をしていると思うが。
「ん、本の運搬か?」
「ああ、貴重なものは他へ移そうと。
種類によっては、値がある本もあるからね」
「もう年末になるのに、1人じゃ大変だろう。
図書はもっと人がいたはずだけど?」
「図書委員も数人登校していないからね。
拓男君も事件からここに来ていないんだ。
だから、僕が代わりにやっている」
「大変だな」
本が盗まれたりしてはならないので、
知人のいる図書館へ預けにいくらしい。
見るからに装飾ある高そうな本を運んでいた。
都心程多くなくとも、最低限の用心をするべきと
わざわざ移動させるのも関心事だ。
「都笠図書館に持っていく。
あそこには知り合いがいるからね」
「巷区のとこか、けっこう大きいとこだよな。
本だって、中には高い物もあるだろう?」
「そうだね、れっきとした貴重品だから。
混迷を狙って価値ある書物を漁りに来る者もいる。
これから区画整理されてゆくかもしれない。
時間が・・・それじゃあ」
「ああ」
光一は外に出ていく。
1つの事件で物資も流れる場に疎開感を覚えた。
今日はちょっとした同級生達の流動を垣間見る。
あたかも1つの籠から抜けてゆく様に、
それぞれの道を歩く。
いつまでも同じ部屋で共にするわけではないのだ。
「この剣、ACの中に入れられるのか!?」
「うん、悪魔が空間を曲げて出てくるように、
物も出し入れができるよ。
そうすれば、目立ちにくくて便利だから」
通学路の途中で厘香に収納できるACを1つもらう。
剣なんて危険な物を持ち歩くわけにはいかないので、
これで収めておけという。
やり方は、念じて、入れて、出す。
確かにそれだけで難なく行える。
本当に感覚だけでできてしまった。
ファルマカンシダラァトを収納した原理なんて
どこへやらと、聞く余裕もない。
まあ、マナが言っていたようにコツをつかんで
順に知れば良い。
悪魔は結晶から出てくるが、行動範囲が決まっていて
周辺地域のどこかを探せば見つかる。
まだ少し理解しづらい部分があるものの、
こうして、1つの仕事は終わった。
次も似たような事をやらされると思うが、
まだ時間が必要だろうと待つだけだ。
ところで、学園の方はどうなのか。
避難所に代えてからは授業も行ってないから、
生徒達もどこで何をしているのかいざ知らず。
24日からまったく来ない連中もいて、
どんな生活ぶりか気になるところであった。
「なあ、クラスの皆はどうしてるんだ?」
「避難所で炊飯の手伝いとかする子もいるけど、
みんながみんな何をしてるのかまでは・・・」
休学から大半はマイペースに独自行動をしていた。
受験も受けられないので進学する生徒は
てんやわんやだが、その他はその他な立ち回り。
実際は冬休み期間で、学園から招集がこない限り
来る必要もないけど、来る制限が解放されたとたん
何をしてるのか晃京のどこかで独自の時を過ごす
人は多くも塊なき自由分子ばかりだ。
同クラスの女子生徒が来る。
「厘香、学園に来てたの!?」
「うん、炊飯を手伝うよう頼まれたから。
静江ちゃんもお手伝いに?」
「ちがう、野暮用で。
あんたもちょっと呼ばれたらすんなり受けるから
お人好しよね~」
「お前の言う野暮用か。郷から聞いたけど、
夜まで都心でほっつき歩いてるらしいな?
悪魔がいるってのに」
「あたしらはあんま襲われないから関係ないし~。
郊外も家を壊されたって話もないし、
あれだけ人がいるから狙われないじゃん。
そうそう、あのバイト考えてくれた!?」
若葉静江がバイトの誘いをする。
いつも女子生徒だけで密集して何かやろうとするのは
今回ばかりじゃないが。
「ごめんなさい、今はちょっと・・・」
「ちぇ、厘香なら一緒にやってくれると思ったのに。
京香もやらないって言うから、誰もいないじゃん」
仲間集めでここに来ていたようだ。
野暮で人集めなんて、良いイメージが湧かない。
ムダと分かるや、静江は帰っていった。
少なくとも厘香はACの仕事でやる余裕がない。
学生が晃京中をフラフラしている光景も見られた。
そういえば、都内情勢もずいぶんと落ち着いてる。
悪魔が襲来しても、個人宅が襲われた話とかは聞かない。
古宿区を中心とした都庁の結晶から現れるといっても、
その悪魔の動向も色々と変に思えた。
水完公園で出現した奴も被害があったケースが
ほとんどなく、パッと出でそこにいましたとばかりで
逆にやる気があるのかと思うくらいだ。
とはいっても、出現元の都心部は激戦区だけあって
対応している彼女達も気掛かりに思う。
「なあ、今、都心部で夜の時はどうなんだ?」
「カロリーナちゃんの報告だと、
都庁から1時間に5~6体の悪魔が発生して
時々討伐チームに参加してるの。
午前3時頃まで散策してるって」
「あいつはそんな無茶してたのか。
マナも独自にやってるのか」
「マナちゃんはクォーツで各地を監視できるから、
教会の人達を派遣したりさせてるよ。
私は夜に出歩くのは許可されないから。
家の人達が・・・」
「すぐ納得できた」
強面の部下にキッチリと保護されているので当然。
全ての件は自分に回ってくるわけじゃない。
自分はまだ出歩くなという暗示、警告か。
半人前の待遇として読み取れた。
事実は事実と、無意識に周囲を見直す。
学園で寝泊まりしているのは教師や身寄りのない者。
ビ・エンドという人も仕切り内で座っている。
事情と気苦労のある人達ばかりのようだ。
今度は図書委員の生徒も作業している。
黒髪カールの男が数冊の本を運んでいた。
白峰光一、学園一の優等生で
マナと同等の学力をもつくらい頭が良い。
何をしているかよく見ると、図書に手をかけて
あいつらしい立場な事をしていると思うが。
「ん、本の運搬か?」
「ああ、貴重なものは他へ移そうと。
種類によっては、値がある本もあるからね」
「もう年末になるのに、1人じゃ大変だろう。
図書はもっと人がいたはずだけど?」
「図書委員も数人登校していないからね。
拓男君も事件からここに来ていないんだ。
だから、僕が代わりにやっている」
「大変だな」
本が盗まれたりしてはならないので、
知人のいる図書館へ預けにいくらしい。
見るからに装飾ある高そうな本を運んでいた。
都心程多くなくとも、最低限の用心をするべきと
わざわざ移動させるのも関心事だ。
「都笠図書館に持っていく。
あそこには知り合いがいるからね」
「巷区のとこか、けっこう大きいとこだよな。
本だって、中には高い物もあるだろう?」
「そうだね、れっきとした貴重品だから。
混迷を狙って価値ある書物を漁りに来る者もいる。
これから区画整理されてゆくかもしれない。
時間が・・・それじゃあ」
「ああ」
光一は外に出ていく。
1つの事件で物資も流れる場に疎開感を覚えた。
今日はちょっとした同級生達の流動を垣間見る。
あたかも1つの籠から抜けてゆく様に、
それぞれの道を歩く。
いつまでも同じ部屋で共にするわけではないのだ。
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