Condense Nation

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1章 ホッカイドウ編

第8話  白の横槍

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ホッカイドウCN拠点

「フライングフィッシュ、起動可能状態となりました!」

 オペレーターが気象情報を観てビークルの出動ができた事を発言。
吹雪が治まりかけて警戒態勢がレベル1まで下がったので、
飛行もできるから捜索もようやく行えるようになった。
ホットゾーンは変わらずあいまいに表示されていないものの、
救助だけはできるようになる。
知庄エリアからの連絡はまだ来ない、無線機器も凍結して電源が
利かなくなっているようで、ガブリエル隊長もすでにそこへ
向かっていったから拠点にまで攻められる心配はないはず。
しかし、敵性の規模も先の気象でつかみきれていなかったので、
まだどこかに潜伏している恐れもあった。
Bランク兵数人はクリアリングもするべきだと確保しようと
同じく出動しようとする。

「オペレーター、俺達も行くからサポートしてくれ」
「はい、まだ少し風もあります。操縦に気を付けて下さい」
「レベル1ならいつもの事だ、それくらいこなせないとな。
 今、援護できるのは俺達しかいない。すぐに乗っていくぞ」
「了解、武器も装備しなければ」

レイチェル司令もとこしている中で判断もここでする必要がある。
惜しくもAチームに入れないだけあってBならではの実行力を
どうにかもたせたいところもあり、一大事も未然に防ぎたい。
ただ、待機していた兵達もこのまま何もしないわけにもいかずに
武器保管庫へ取りにいこうとした時。

「あれ、SRが一丁無くなってるぞ?」
「さっき出た部隊の数か?」
「いや、数分前まではそろっていたはずだ。
 誰か持っていった?」

以前に拠点から出動した分ではなく、今の数。
アーチャーフィッシュが1つだけそこから消えていた。


数時間後 某所

 それから、想像つかないくらい歩いた時の後。
エリザベート達の彷徨さまよいは変わらずに続いている。
吹雪は止み、ヨハンが地に突き刺さった矢印を見て知らせた。

「ここは・・・分岐点だ」

私達は拠点から近いと思われる道に到達。
帰り道を見つけたメンバー達は正気に返ったのか笑顔になり、
希望の心にあふれだしていた。

「・・・ここは確かに一度来たとこだよな」
「ああ、間違いない。拠点がここから南2kmにあるはずだ。
 雪量が多すぎて見辛かったが・・・今度こそ確定だ!」
「やった・・・やったぞーっ!」

誰が観ても、周辺は白い泡で大きく埋め尽くされて別世界の様だ。
わずかに払った障害物から看板が出たのが幸運で、
無線もつながり、救援要請をだして位置を知らせる。
しかし、メンバーから離れている者がいる。
1人だけ沈黙を貫いている兵がいた。

バシュッ

「!?」

銃弾の風切り音を聴いて異変に気が付き後ろを観ると、
発砲したのはニコライ。
いつの間にか彼は1人だけ背後の高い丘へ登っていて、
SRを取り出してゆっくりと私に向けた。

「てめぇ、まだキチガイやってんのか!? 正気になれよ!」
「いやいや、私は正常な判断をしているよ。
 エリザ嬢に否があるからこうしてるのだ」
「・・・・・・」
「一体何を言ってるんだ?」

ニコライは責任を私に押し付ける。
やつれた顔をしながらも、怒りと笑顔が交じる感情をあらわに、
理由を冷静かつ淡々と話し出した。

「今回の件、ホッカイドウにおいて重要な兵というリソースを喪失ロスト
 ガブリエル隊長及びその関係者が責任をとるべきではないのか?」
「なんだと?」
「たかが軍事演習でこんなにもロスト者をだしてしまった。
 その決定を下した者、その者が推している候補者が
 責任をとるべきではないのかぁ?」
「候補者・・・エリザ嬢のことか!?」
「なんでお嬢まで責任とる必要があんだよ!?」

ヘルマンが言い返す。ニコライに突っかかろうとしたが、
彼は地面に撃って距離をあける。

バシュッ  ガラガラ

「てめえ!?」

撃ち抜いた穴からすぐに亀裂が入り、雪が坂下へ流れてゆく。
粉雪の性質は滑らかで足場を簡単にゆずらせない。
元から消費されて動けないのも見計らって上部に位置していた。
軍服のフードを取り、今の行動理由を続けて明かす。

「私は元々このメンバー構成が不満だったのだ。
 上位者エリザベートを筆頭につくられたこの構成が。
 ガブリエルは娘を次期隊長にさせる算段でこうしたのではないのか?」
「仮にそうだとしても、何が不満なんだよ?」
「不満だろう、“家族だけの一族構成”で成り立つ組織など。
 最初から決められた世襲制など納得できん。
 我々末端の兵が上がれぬ場所なぞ、誰が認める!?」
「・・・・・・」

ニコライは日頃から思っていた不満を露呈ろていする。
やっているのは事故に乗じたどさくさ紛れの責任追及。
最初から仕組んでいたのは定かではないが、自然災害の影響で
苦しみを晴らそうと日頃思っていた事を本性で表していた。
ヨハンは正しい内容といえども形式に従って返す。

「色々不服もあるだろうが、実力がなければ認めてもらえん。
 ホッカイドウはそういう場所だろう?」
「確かに私は狙撃の能力はそれほどない。
 だが、戦略性は誰にも負けてはいないんだぁ。
 何度も、何度も意見を出してきたのに採用されたままそこで終わるぅ。
 知識者はTOPに務めてこそ成立するふふぅ」
「今までそれを根にもっていたのか、Aクラスに入れた時点で
 お前も優秀な者だろう?」
「いいや、私が求めるのはここと等しい頂点だぁ、オアッ、オアアァ!
 あのガブリエルやレイチェルにもな・・・いつまでも、いつまでもこんな。
 何故、私は認められないんだああぁぁ!!」

知識役として精を出してきたが、出世できない点に怒りをみせる。
どこまでも実行者が優遇されるホッカイドウを変えたいと、
最も実力あるエリザベートを目のかたきに仕立てて脅迫。
ニコライは山の下部まで後退して地面に銃を突きつけた。
何をしようとするのかすぐに分からなかったが、
周囲に溜まる白い集まりが想像をふくらませてゆく。
そして、大声で立場の危険性を問いかける。

「ヨハン、地理に詳しい貴様でもここがどこだか理解できるだろう!?」
「ここは・・・まさか!」
「最も雪崩が発生する山岳だぁぁ!
 エリザベートに責任をとらせなければ地面を爆破するッ!」
「・・・・・・」

ここは下部に衝撃を加えたらすぐに雪崩が起こる所で有名だ。
過去でも80人近く犠牲者がでている。
男の手にはグレネード、銃弾どころか爆発物で場を崩壊させる気で
皆を巻き添えにさせようとした。
SRであんな男を撃ち抜くのは簡単なはず。
でも、今の状態でSRをエイムし始めたら逆に返されてしまい、
続けて皆も後から狙われるだろう。
待遇、確かに手厚くサポートされてきたのは認める。
もう何人もロストした、事がこの1人で済むなら・・・。
背に腹は代えられなく、自身の死で残りのメンバー達は助かる。
私は皆のため、彼に向かって応答した。

「分かったわ、私がここで死ねば皆も許してくれるでしょう!?」
「そうだぁ・・・許してやるぞおおぉぉ」

不気味な笑みで答える。
確かに責任は上がとる事で改めて下も整え直せるもの。
私は頭にハンドガンを突き付けた、そしてゆっくりと指を動かす。
メンバー達の顔がいっせいに引きつり始める。
彼女も判断を誤ってしまったのか、決してやってはならない行為に
声を上げて止めさせようとする。

「「私の命がつぐないとなるのなら・・・ごめんなさい」」
「何をするつもりだ!? 早まるなァ!」
「お嬢、ダメだあああああああ!!」
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