上 下
103 / 280
1章 トウキョウ編

     電子の海2

しおりを挟む
1時間後 トウキョウ湾

「で、結局みんなの実験をやる事にしたのか・・・」

 海岸沿いに来てボクは半目で聞いてみた。
イキナリ決定したAURO海中試験はこんな準備の早さで始まって、
それぞれのしたい事を天気の良い青空の下でやる。
言い出しっぺはボクだけど、なんだか普段から気にしていた事を
発散させようとしてのせられた感も否定できないと思った。
メンバー達は各々機材を持ち込んでそれぞれの実験を行う。
来たからにはやるだけやるしかなく、一緒に交じる。
さっそく皆は和気あいあいに水辺で作業を始めた。


ビリビリビリ
101001011101001010100101110001111010010110101101
101001001100111010100100110100001010010010101011


「ほほーっ、データでは海水に浸した場合、有機的触媒活性なのか
 かなり深くまで届く力があるようだ」
「塩分が高いなら通電率も高いけど、AURO内部の情報蓄積値は
 なかなか消滅しないで長い時間で滞在するね~」
「う~ん、混合物の海水が電気と情報へ分散したとき、
 かなり高い確率で近場の情報が遮断防止に収束して寄り添う様に
 固まる性質があるみたい・・・まさか水素? 何気に新発見じゃない?」
「・・・・・・」

味方モブA~Dの様子をモッソリと観る。
AURO粒子、トウキョウの技術革新に拍車をかけたもの。
青い電気が走り、よどみのある液体の様な不思議な物質だ。
実際、動力だけでなくメモリー機能も備えていてバッテリーとエンジン、
どちらでも利用できるから設備も無駄を減らして生成できる。
これで一部の規格もこぞって変更されてステップアップを遂げてきた。
特に下層階の人達に大きな影響も与えたと思うけど。
イキアタリバッタリに始めたとはいっても、確かにこんな生成物は
この世の物とは思えないような性質と思わされる。
エネルギーとコードを共に内蔵する、ボクですら詳細不明な一物。
改めて目の前で見てみると、技術力の高さに驚くばかりだ。
一体、どうやって生み出したのか。

 (と、思いながらみんな楽しんでるなぁ・・・)

すっかりと場に馴染んでいるボクもボクだ。
始めは気がすすまなかったけど、元から技術者の心得があるから
まったく気乗りしないかといえばそうでもないみたい。
こうしてみんなと一緒に実験をするのはやっぱり楽しい。
主任そっちのけでやると、確かに出し抜いた気分にもなれる。
毎日、過酷をきわめてエンドルフィンがすり減る頭脳労働といえど、
一種の新世界をのぞく開拓の間、雰囲気が良いと思ってしまう。
だけど、約1名だけいない。さっきからセレーネの姿が見えなかった。

「そういえば、セレはどこだ?」
「みんな、ちょっとどいてー!」
「うえっ!?」

後ろからピンク色のライオットギアが歩いてきた。
天井の低い出口からつんいにヨチヨチ歩きで、
彼女専用の機体がどういう訳か水辺まで持ってきたのである。

ドボン

潜らせる、水中での機動実験を行うようだ。
人型を海で泳がせるタイプなんて物はトウキョウでも造っていない。
彼女は目を輝かせて操作している。

「キャ~ッ、やっぱり速いね!」
「セレの機体って、水中に適してたっけ?」
「昨日、夜遅くまで工房で何かやってたみたいだけど、
 それを改造するために遅れたのね、脚部に変なヒレが付いてるし」

彼女はメンバーの中でも人一倍ライオットギアにこだわりをもっている。
装甲、エンジン、神経回路、関節駆動など色んな部分を追求して
人工機能に関する物に精通して周囲に関心されていた。
ボクがトーマス部署に来た時からすでに在籍して、
かなり幼少期から古宿エリアで仕事をしていたらしい。
ブロンドボブヘアーでオマケに可愛く、技術者なんていったら
いかにもモテなさそうな男からの注目度も高いだろう。
そんな機能性を含めた用意周到さには頭が下がる。
変な目線で何気なくその様子を眺めていたその時、
何やら水面に異物が見えてきた。

「ね、ねえ水面に何か浮いてきてるんですけど・・・?」
「え?」

徹底ゴミ処理されたはずの区域で、よく目を通すと生物。
水面にサカナが浮いてきた、感電してショック死していたのである。

「し、しまった!?」
「やばっ、生物ロストさせちまった!?」
「これって、不許可資源回収で横領になるんじゃ?」

なんと、実験の影響で海中の生物をロストさせてしまった。
普段から動物と接していなかったからいる事すら忘れてしまって、
干渉させる心配すら思っていない。
確か・・・ラボリと関係のない摂取とかはダメだとか。
こういった時、どんな通達が来るのか? まったく経験した事がない。
そんな間、隣にいた人型から音がした。

ブブーッ

「「禁止行為確認
  CN法違法行為警告通知」」
「うわあああああああああああああああああ!」

個人情報覧にオトガメ通知書がくる。
結局、皆にそれぞれ厳重注意が下されてしまった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

鋼殻牙龍ドラグリヲ

南蛮蜥蜴
ファンタジー
歪なる怪物「害獣」の侵攻によって緩やかに滅びゆく世界にて、「アーマメントビースト」と呼ばれる兵器を操り、相棒のアンドロイド「カルマ」と共に戦いに明け暮れる主人公「真継雪兎」  ある日、彼はとある任務中に害獣に寄生され、身体を根本から造り替えられてしまう。 乗っ取られる危険を意識しつつも生きることを選んだ雪兎だったが、それが苦難の道のりの始まりだった。 次々と出現する凶悪な害獣達相手に、無双の機械龍「ドラグリヲ」が咆哮と共に牙を剥く。  延々と繰り返される殺戮と喪失の果てに、勇敢で臆病な青年を待ち受けるのは絶対的な破滅か、それともささやかな希望か。 ※小説になろう、カクヨム、ノベプラでも掲載中です。 ※挿絵は雨川真優(アメカワマユ)様@zgmf_x11dより頂きました。利用許可済です。

❤️レムールアーナ人の遺産❤️

apusuking
SF
 アランは、神代記の伝説〈宇宙が誕生してから40億年後に始めての知性体が誕生し、更に20億年の時を経てから知性体は宇宙に進出を始める。  神々の申し子で有るレムルアーナ人は、数億年を掛けて宇宙の至る所にレムルアーナ人の文明を築き上げて宇宙は人々で溢れ平和で共存共栄で発展を続ける。  時を経てレムルアーナ文明は予知せぬ謎の種族の襲来を受け、宇宙を二分する戦いとなる。戦争終焉頃にはレムルアーナ人は誕生星系を除いて衰退し滅亡するが、レムルアーナ人は後世の為に科学的資産と数々の奇跡的な遺産を残した。  レムールアーナ人に代わり3大種族が台頭して、やがてレムルアーナ人は伝説となり宇宙に蔓延する。  宇宙の彼方の隠蔽された星系に、レムルアーナ文明の輝かしい遺産が眠る。其の遺産を手にした者は宇宙を征するで有ろ。但し、辿り付くには3つの鍵と7つの試練を乗り越えねばならない。  3つの鍵は心の中に眠り、開けるには心の目を開いて真実を見よ。心の鍵は3つ有り、3つの鍵を開けて真実の鍵が開く〉を知り、其の神代記時代のレムールアーナ人が残した遺産を残した場所が暗示されていると悟るが、闇の勢力の陰謀に巻き込まれゴーストリアンが破壊さ

入れ替われるイメクラ

廣瀬純一
SF
男女の体が入れ替わるイメクラの話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

美少女アンドロイドが空から落ちてきたので家族になりました。

きのせ
SF
通学の途中で、空から落ちて来た美少女。彼女は、宇宙人に作られたアンドロイドだった。そんな彼女と一つ屋根の下で暮らすことになったから、さあ大変。様々な事件に巻き込まれていく事に。最悪のアンドロイド・バトルが開幕する

魔術師のロボット~最凶と呼ばれたパイロットによる世界変革記~

MS
SF
これは戦争に巻き込まれた少年が世界を変えるために戦う物語。 戦歴2234年、人型ロボット兵器キャスター、それは魔術師と呼ばれる一部の人しか扱えない兵器であった。 そのパイロットになるためアルバート・デグレアは軍の幼年学校に通っていて卒業まであと少しの時だった。 親友が起こしたキャスター強奪事件。 そして大きく変化する時代に巻き込まれていく。 それぞれの正義がぶつかり合うなかで徐々にその才能を開花させていき次々と大きな戦果を挙げていくが……。 新たな歴史が始まる。 ************************************************ 小説家になろう様、カクヨム様でも連載しております。 投降は当分の間毎日22時ごろを予定しています。

INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜

SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー 魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。 「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。 <第一章 「誘い」> 粗筋 余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。 「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。 ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー 「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ! そこで彼らを待ち受けていたものとは…… ※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。 ※SFジャンルですが殆ど空想科学です。 ※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。 ※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中 ※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。

ラスト・オブ・文豪

相澤愛美(@アイアイ)
SF
技術の進歩により、AIが小説を書く時代になった。芥川、夏目、川端モデルが開発され、電脳文豪(サイバライター)が小説を出版する様になる。小説好きの菊池栄太郎はある男と出会い、AI小説の危険性を聞き、AIとの小説対決をする事になる。

処理中です...