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1章 中つ国編
山際に星あり山の端に光あり2
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備高竹山駐屯地 宿泊施設ベランダ
その後、すっかり夜も更けて静けさだけが残った。
シンジ達はすぐに寝て、オカヤマとヤマグチの音は消えて
俺は相変わらず夜空を眺めていた。
隊長の見回りと言えばらしいけど、今は任務の時間じゃない。
カチャッ
再び暗視ゴーグルをかぶる。
頭を上に向き、何かを追うように星空を眺めてみた。
星の部分は光って白色だが、その周りは碧の閃光を放っている。
兄やマナミも同じものを観てそこに居る世界。
まるで俺だけが地上に取り残された気分になる。
碧の星団とは一体何なのだろう。
翌日
「ん、オカヤマに戻るって?」
「一度両親に顔を出しに行って来る。あと、町で買い出しに行くだけだ」
今日は休みだという連絡がきた。
特にラボリはないと言われて時間が空いたので、
1人で市民街にある家に行こうかと思った。
といっても、CNについて詳しい人がそこにいるのもあるから
用事がまったくないわけでもない。
なんていうか、あやふやな頭をスッキリとさせたいからだ。
オカヤマCN市民街 ケイ実家
「どうだ、調子は?」
「いつも通りだよ。ただ、今は油断ならないけど」
木造住宅の台所で父親と話をする。
父カズキはかつてオカヤマCNの司令官で、
俺が20歳になる前に引退をし、今は隠居生活をしている。
といっても、細かい事をちょくちょく聞きに戻ったりしていた。
「お前も今はもう部隊長だからな。
部下をまとめる責任もあるが、あまり気負いすぎるな」
「分かってる、隊長になれたのも父さんのおかげさ。
俺は大丈夫だよ・・・ただ」
マナミが星団にいる事を話す。
俺の身近にいた者が次々と上の世界に行ってしまったのが
どうにも腑に落ちない。星団の存在理由が分からず、
元司令官なら知っているんじゃないかと聞いてみると、
父親は悲しそうに心境を語りだした。
「エイジは勝手に家を飛び出してしまったが、まさか彼女もか・・・」
「司令官って、CNで一番権限をもってる人なんでしょ?
そもそもなんで碧の星団なんてチームがあるわけ?」
「星団は中つ国連合の特殊部隊として扱う組織だ。
CNの一部なのは違いないが、複合組織として構成されている」
「ふ、ふくごう? 何、CNから飛び出してまんまああなったの?」
「そうだな、かつてA.D50年の大戦より反重力技術の活性化を
推し図るように結成されたとだけ聞く。
だが、未だに星団のやり方には理解できないところがある。
さらに参加者を集めて新たな活動でもやろうとしてるのか?」
「父さんでも分からないの?
じゃあ、星団の責任者って誰?」
「星団は中つ国全CNから選抜されている。
だから、全ての司令官が責任者なんだ」
「え?」
今更ながら星団の構成を知る、いわゆる兵士が同盟CNから選ばれて
いるから司令官も星団の幹部に含まれて成り立っているらしい。
1人ではなく、司令官全員で取りまとめていると言う。
しかし、俺の頭に何かおかしいと思うところがでてきた。
父の話を聞くと、どこか過去の話で引っ掛かるものを感じる。
(あれ、じゃあ、あの人はウソ言ってたのか?)
「エイジもまったく何をしているのか・・・。
まるで垣根を無くそうとせんばかりなやり方だな」
「垣根って、まるで中山みたいだね」
中つ国山地の様に分かれた地形みたいだと珍妙な例えを言うのが
いつも俺がバカにされる日常だ。
自身でも意味を把握せずに冗談を言ってしまうから。
親が元司令官で俺がなんでアホなのか、遺伝子なんて絶対平等じゃない。
横目で部屋には丸い万成石が飾られている。
個性あったとしても世の中で通用できなきゃ意味がないだろう。
己のアホさにやさぐれていると、父親は奇妙な言葉を口にした。
「この中つ国CNの本懐はそこにあるかもしれないな。
北と南の因縁はそう簡単には消えないものだ」
「北と南だって?」
北と南、それはこの地に伝わる山陽と山陰の事である。
山陽はオカヤマ、ヒロシマ、ヤマグチ。
山陰はシマネ、トットリの地域で分けたエリアだ。
太陽の当たるエリアとそうでないエリアという理由で名付けられた。
「その北と南が星団と何の関係があるの?」
「昔はそれらの地域で抗争があったらしいんだ。
死者がでる程にな。星団のリーダーはその中から現れたという話だが、
詳しくはどうか分からない」
「北と南での争いがあったのか・・・」
中つ国山地を隔てただけで、そんな抗争が起こるなんて馬鹿げている。
ただでさえ他の敵性CNによる侵攻があるというのに、
内側同士で揉めている場合ではないだろう。
「とにかく、お前は駐屯基地の周辺に警戒しておくんだ。
中つ国の要なんだからな」
「うん、気をつけるよ・・・それじゃあ行くね」
やっぱり情報があやふやで星だけに宙に浮いた状態だ。
結局、確かな情報は得られないまま話だけがこんがらがっただけ。
エイジやマナミ、他数人もいるだろう詳細不明な精鋭部隊に
俺は状況が飲み込めないまま、早々に買い物を済まして
再び山の駐屯地へと戻っていった。
その後、すっかり夜も更けて静けさだけが残った。
シンジ達はすぐに寝て、オカヤマとヤマグチの音は消えて
俺は相変わらず夜空を眺めていた。
隊長の見回りと言えばらしいけど、今は任務の時間じゃない。
カチャッ
再び暗視ゴーグルをかぶる。
頭を上に向き、何かを追うように星空を眺めてみた。
星の部分は光って白色だが、その周りは碧の閃光を放っている。
兄やマナミも同じものを観てそこに居る世界。
まるで俺だけが地上に取り残された気分になる。
碧の星団とは一体何なのだろう。
翌日
「ん、オカヤマに戻るって?」
「一度両親に顔を出しに行って来る。あと、町で買い出しに行くだけだ」
今日は休みだという連絡がきた。
特にラボリはないと言われて時間が空いたので、
1人で市民街にある家に行こうかと思った。
といっても、CNについて詳しい人がそこにいるのもあるから
用事がまったくないわけでもない。
なんていうか、あやふやな頭をスッキリとさせたいからだ。
オカヤマCN市民街 ケイ実家
「どうだ、調子は?」
「いつも通りだよ。ただ、今は油断ならないけど」
木造住宅の台所で父親と話をする。
父カズキはかつてオカヤマCNの司令官で、
俺が20歳になる前に引退をし、今は隠居生活をしている。
といっても、細かい事をちょくちょく聞きに戻ったりしていた。
「お前も今はもう部隊長だからな。
部下をまとめる責任もあるが、あまり気負いすぎるな」
「分かってる、隊長になれたのも父さんのおかげさ。
俺は大丈夫だよ・・・ただ」
マナミが星団にいる事を話す。
俺の身近にいた者が次々と上の世界に行ってしまったのが
どうにも腑に落ちない。星団の存在理由が分からず、
元司令官なら知っているんじゃないかと聞いてみると、
父親は悲しそうに心境を語りだした。
「エイジは勝手に家を飛び出してしまったが、まさか彼女もか・・・」
「司令官って、CNで一番権限をもってる人なんでしょ?
そもそもなんで碧の星団なんてチームがあるわけ?」
「星団は中つ国連合の特殊部隊として扱う組織だ。
CNの一部なのは違いないが、複合組織として構成されている」
「ふ、ふくごう? 何、CNから飛び出してまんまああなったの?」
「そうだな、かつてA.D50年の大戦より反重力技術の活性化を
推し図るように結成されたとだけ聞く。
だが、未だに星団のやり方には理解できないところがある。
さらに参加者を集めて新たな活動でもやろうとしてるのか?」
「父さんでも分からないの?
じゃあ、星団の責任者って誰?」
「星団は中つ国全CNから選抜されている。
だから、全ての司令官が責任者なんだ」
「え?」
今更ながら星団の構成を知る、いわゆる兵士が同盟CNから選ばれて
いるから司令官も星団の幹部に含まれて成り立っているらしい。
1人ではなく、司令官全員で取りまとめていると言う。
しかし、俺の頭に何かおかしいと思うところがでてきた。
父の話を聞くと、どこか過去の話で引っ掛かるものを感じる。
(あれ、じゃあ、あの人はウソ言ってたのか?)
「エイジもまったく何をしているのか・・・。
まるで垣根を無くそうとせんばかりなやり方だな」
「垣根って、まるで中山みたいだね」
中つ国山地の様に分かれた地形みたいだと珍妙な例えを言うのが
いつも俺がバカにされる日常だ。
自身でも意味を把握せずに冗談を言ってしまうから。
親が元司令官で俺がなんでアホなのか、遺伝子なんて絶対平等じゃない。
横目で部屋には丸い万成石が飾られている。
個性あったとしても世の中で通用できなきゃ意味がないだろう。
己のアホさにやさぐれていると、父親は奇妙な言葉を口にした。
「この中つ国CNの本懐はそこにあるかもしれないな。
北と南の因縁はそう簡単には消えないものだ」
「北と南だって?」
北と南、それはこの地に伝わる山陽と山陰の事である。
山陽はオカヤマ、ヒロシマ、ヤマグチ。
山陰はシマネ、トットリの地域で分けたエリアだ。
太陽の当たるエリアとそうでないエリアという理由で名付けられた。
「その北と南が星団と何の関係があるの?」
「昔はそれらの地域で抗争があったらしいんだ。
死者がでる程にな。星団のリーダーはその中から現れたという話だが、
詳しくはどうか分からない」
「北と南での争いがあったのか・・・」
中つ国山地を隔てただけで、そんな抗争が起こるなんて馬鹿げている。
ただでさえ他の敵性CNによる侵攻があるというのに、
内側同士で揉めている場合ではないだろう。
「とにかく、お前は駐屯基地の周辺に警戒しておくんだ。
中つ国の要なんだからな」
「うん、気をつけるよ・・・それじゃあ行くね」
やっぱり情報があやふやで星だけに宙に浮いた状態だ。
結局、確かな情報は得られないまま話だけがこんがらがっただけ。
エイジやマナミ、他数人もいるだろう詳細不明な精鋭部隊に
俺は状況が飲み込めないまま、早々に買い物を済まして
再び山の駐屯地へと戻っていった。
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