Condense Nation

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4章 ブラインド編

第17話  大消失

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1ヶ月後

 再び時が経ち、サド島で籠城ろうじょうを繰り返す日々が続く。
作戦は失敗に終わり、出戻りを余儀なくされるばかりで、
アール・ヴォイドは混乱寸前に対応を追われている。
前回の天主殻潜入作戦はまたもや失敗に終わり、相手の未知なる金属に
崩す手段をも失わせかけられた。
ただ、対応するのは通常の人だけに限らず
人だけではない1つの混沌が芽生え始めていた。


PDネットワーク内

[え、ブラインドから離脱?];
[そうだ、マスターから組織を離脱するよう命令を受けた。
反逆ではなく、プログラムコード改変防止のためだ];

 ダーマとアヴィーが青白い単一色の空間にいる。
上位互換のアンドロイドの2体は誰にも干渉されない世界で会話をしていた。
会話という様なコードで今後の動きを相方に話しをする。

[機械ゆえの危険性を考慮して彼らの事を電子世界からサポート。
 天主殻で出来る限り検出した結果、
 よって、我々はネットワーク内部に依存して行動するべきと判断した];
[共にいちゃダメってこと?];
[そうだ、先の相手から発した波動内部の周波数帯域に
 命令レジスタに酷似したコードが含まれていた。
 バイナリーコードはAIの根幹にも用いて大きな影響を及ぼす質で、
 アンドロイドの思考すらも変えられてしまう恐れがあると
 マスターはここに居るよう指示をした。
 これは我々にとって危険性の高いものだ];

ミシェルは天主殻の前兆を事前に察知して自分達を離脱しようとしていた。
1か月前の作戦に参加させなかった理由もこれに関する実験で、
新たな手段を企てる物がいるにもかかわらず、メンテナンスを
行う内にさらなる時を要求される事情がここあった。
危険性とはこの身体も乗っ取られてブラインドにすら襲いかかる。
アンドロイドですら無敵ではないとアヴィーもすぐに理解。

[洗脳されちゃうからか。アセンブリ言語が元のわたしたちじゃ、
 ハックされて頭がおかしくなるね];
[ああ、ニンゲンの言う洗脳と等しい状態へ変えられて彼らに牙を向く様に
 改造される前に保護帯域へ逃げ込む。
 当然、ここはネットワーク世界だ。普通の人間は連れていけん];
[例の未知数をもった謎の波動か、アレってAUROを超えた性質を
 もっているって事は計測していなかった物質を使用している可能性が
 とても高いんじゃない? おそらくは天主殻に人が居て新たな装置を
 造っているから上塗り回避にここを用意してくれたんだ。
 マスターもホント、勘が鋭いんだね];
[我々にはない直感という意識はAIですら及べない存在だろう。
 原因は断定しきれない点もあるが、経験則という習慣的なもので
 何かが起こる前に気付く予想ができるらしい]
[ニンゲンの世界でいう、別れの挨拶をしていくの?];
[不要だ、いつ暴走してコントロール不可になるのか不明。
 予測だが、天主殻は更なる干渉を地上にもたらしてくるだろう。
 ここはマスターのみ操作できる独立サーバーだが、
 もう彼は全て整える事が叶わない。
 完全と認識するまで構築が終了次第移動する];

これは人すら目に入れない聴こえもしない領域。
外見だけは男女の姿をしている2人は感情の一片も出さずに、
人によってサポートされた人工知能は電子の世界の中へ潜っていった。


サドガCN拠点

「え、1ヵ月寝てろって?」

 アポロンがアリシアから指示される。
後の検査で俺はバイタルサインが不調を起こしている報告を受けた。
先の天主殻から受けた波動が原因か、身体回復のためにメディカルポッドで
休むよう言われた。重症でなく記憶障害との関係はないものの、
突然訪れる不具合修正を他の部隊よりも行わずにはいられない。

「あなたは大脳気質が他の人よりも不安定で、シナプス小胞の管理が
 人一倍かかってより慎重に調整しなければならない。
 だから、完了まで約2678400秒必要なの」
「えっと・・・1日が86400秒で、31日分だからその数。
 逆に体の方が悪くなりそうな気がするけど」
「大丈夫、感覚神経は常に電気マッサージさせているから衰弱化は
 たった1か月ではそんなに起こらないの。
 それに、もう次の作戦を企画しているわ。
 目処が立つまで安静にしておきべきよ」
「でも、緊急事態の場合はどうするんだ?
 俺が抜けているポジションは誰が・・・?」
「エイコウとフリードリッヒがいるわ。
 時がきたらまた起こしてあげるから今は寝ていなさい」

頭の悪さが足引っ張りなのだけは思い知っている。
2人とは違うからそうやって特別な検査をしなければならないのは
仕方ないと渋々承諾しょうだくをした。

プシュ―

アポロンは期間の眠りについた。
心拍数、脈のリズムも調子も異常は起きていない。
体調不良を起こす隊員は他にもいるが、いつも目を配る
この子の体を優先してしまう母親気質に戸惑いがある。
自分は本当に司令官としてまっとううしているのか。
本物の軍隊でもないのに時折そう考える時がある。
チーフという立場にえこひいきは決してしてはならない御法度。
でも、心底ではどうしようもなく感化してしまう部分もある、
公私混同を味わいそうになるのだ。
当然、誰も死なれるわけにはいかないけど、絆の情は偏りがちに
目を向ける回数はこうなってしまう時ばかり。
私の子、私の子、私の子、私の子、私の子、私の子、私の子。
脳内はいつもこうやって優先順位や感覚がこうなってしまう。
良くないのは分かっていても、心がこれ。
人前でのみっともない発作はほとんど起こらなくなったけど、
身体の内側は今でも抑えの利かない衝動がまだ巡っている。
行き過ぎた特別扱いをつい思ってしまう様子をふらっと考えている内、
社員から呼び出しを受ける。
もう1人異なる眠りにつこうとした者がいたのだ。


医務室










「「まあ・・・こんなものだよね・・・人生なんてさ」」

心拍数が徐々に低下する者、対するもう1人の幕が閉ざされようとしている。
ミシェルの寿命もすでに限界へと近づいていた。
アリシアが入室してきた時には、もう周りも観えていない状態で
ベッドに横たわり、音の判別くらいで話せるのみだ。
私は大きな声を出さず、できるだけ彼の耳に合わせるように
会話を試みようとする。

「「ぼくは・・・ぼくの分身を・・・つくりたかった」」

それがミシェルの行動原理だった。
健全な肉体に恵まれていなかった彼は強靭な金属に体を
移したかったのだ。人間の精神を数値解析学に基づきつつ、
ブレイントラスト所属時に老婆とり合いながら開発してきた。
才能では早熟というべきか、それと設備の不遇もあるのか、
叶わずに終わろうとする。
よく見るともっと何か言いかけるように口を一生懸命動かしている。
彼はある事について何か語ろうとした。

「「CNの・・・機体・・・ライオット・・・ギア、
  あれは・・・ぼくの・・・せい――」」
「いいえ、違うわ。あなたのせいじゃない。
 あれはブレイントラストから技術流出して起きてしまった出来事。
 当時、あなたはただの一般業者と取引していただけ。
 あの後で自衛隊を通じて勝手に伝わってしまったの。
 あなたのせいじゃない」
「「・・・・・・」」
「いざこざはあってもアンドロイド完全体を生み出した業績は
 ある意味ブレイントラストも成せなかった功績の1つよ。
 ダーマとアヴィーのおかげで天主殻の装甲や電子励起現象など
 色々なものを発見してもらった。
 だから、あなたの生み出したもの、決して無駄にはしないわ」

最初に挨拶していた時に忠告していた件についてミシェルは
戸惑うようにどもった声で関わっていないと言っていた。
確かにアンドロイド技術の骨格動作などの基本技術は彼が出元で、
報われない男性のために異性ロボットを造っていたのは事実だった。
今更そんな出来事を責めるつもりなんてない、あんな人型がなくても
元からこの国の性質よりすぐに閉じた風習にまみれるのは分かっていたから。
すぐに“~のせい”にして省みない者の数程、何かを利用したがるもの。
彼もそんな数に呑まれた被害者、科学を奪われた1人にすぎない。
看護師と彼女以外誰もいない医務室。
理解者がほとんどおらず、孤独に生きてきたミシェルだが、
あれだけ大きな態度でいた彼を前にしても、座りながら
アリシアは静かに看取みとっていた。
世間への話題はそこで留まる、理解してもらえたのか
彼は震える手で横にある水槽を指差し、懇願こんがんする。

「「この子達を自然に還してあげて・・・お願い」」
「カエル・・・」

中にいるのはコガネガエル。
鳴き声を出すが、自身は音が聴こえない習性をもつ生物だった。
ミシェルは自分と同じく他とのコミュニケーションがとれない
このカエルに境遇を重ねて飼っていたのである。
陸に這い上がる水の生物が新たな世界を目指す様が、
AIという人工知能に換える様に賭けて人生を送ってきた
行動心理こそ、彼の全てだったのだ。

「「ぼくの分身・・・これからもよろしくね」」
「ええ、今までありがとう」



ミシェル ロスト



生命維持装置が一定音に変わる。
それから彼は一言も発しなくなった。
鳴り物入りでブラインドに参加してきた20年前では
とても元気に持ち前の計画を話していたのは覚えている。
何かを調べていたのか、トウキョウへの密偵を積極的に行っては
返り討ちに遭い、実学の難しさに叫んでいたくらいだ。
悔し紛れに私とも口論になりかけては励ましていた時もあった。
そういった元気さも数十年も続かないもの。
自信喪失しかけて大きく主張する様子も見せなくなっていた。
本当にとてもすごい子、でも、もう今日限りで有能な人材を1つ失う。
棺の準備もしなければならない、どういうわけか涙も出ないものの、
悲しみは確かにここにある。
人の声が聴こえても、紛れて聴き取りづらかった私は
いつの間に聞こえていたミゾレの呼びかけにハッとした。

「チーフ、大丈夫ですか?」
「「大丈夫、あいつらに何か?」」
「また動きがあったようです・・・ですが」


指令室

 またすぐに目の前の現実に戻される。
どこから湧いてきたのか、奇妙な機体が活動を再開していたのである。
しかし、いつもと様子がおかしい。
外装が以前とは異なっているのをエイコウが指摘した。

「数十機に及ぶ人型の機体が地上から飛び始めています!」
「地上から・・・天主殻じゃない。
 CNの仕業?」
「天主殻のゲートが開いた形跡がありません。
 やはり、CNの軍によって製造された可能性が極めて高いです。
 20年前に地上に放たれた残存型が地上の者達によって改造され、
 変形して起動したものと考えられます」

天裁時に討伐していた部品も地上のあらゆるエリアに落ちて、
ブラインドでも回収しきれなかった物はかなり多い。
少し見覚えのある光景が見えた。
有り合わせのパーツをどこから集めたのか定かでないが、
明らかに強武装化しているのは事実で周囲を攻撃しようとしている。
対処すべきとエイコウが要請をだした。

「数機のみですがニイガタにも侵攻している恐れあり、すぐに出動を!」
「気を付けて行きなさい、天主殻ではないけど以前とは異なる新型よ。
 フリードリッヒ、あなたも同行して」
「セントラルトライアドはまだ整備中です、ヘリならば・・・」
「かまわない、すぐに向かう」

3機はまだ出動態勢がとれずに通常の装備で挑むしかない。
彼は問題なさそうな表情で近場の戦闘区域へ出向こうとした。
黒い高周波ブレードを手に、エントランスから出ていく。
彼らが出動していった後、周囲の状況を再び確認すると
赤い斑点は同時に円状から移動しているのが判明。
敵機体が一斉に動き始めていたようだ。
だが、それらはここだけでなくある場所へ集中して向かっていた。

「敵影、移動予測ルートを表示します・・・・・が、進路方向が一致!」
「場所はどこ?」
「トウキョウ・・・西部」
「何ですって、まだあそこに会長がいるのよ!?」

作業でまだ現地に残り続けていたオーディン会長がいる。
狙っているまでは不明だが、奇襲を受けると判断。
居場所が知られたのか分からずにも、退避するよう急ぎ通信した。
1秒も経たずに応答する彼に私は救助の声をだそうとする。

「会長、聞こえますか!?」
「「ああ、聞こえている。こちらからも敵機の姿は確認できた。
  トウキョウ一派が資源巡りに侵攻し始めているのだろう」」
「そちらの武装はあそこ程強化されておりません!
 貿易収支のこじれでサイタマとカナガワと違い、独立を目指していた
 反感によって制圧を図ろうとしていると推測」
「「分かっている、こちらもそれなりの手を打っていた。
  その前にとある情報を入手した、今から転送する」」
「それは一体?」
「「説明している時間はない、転送時間が少々要る・・・。
  言い切れるのは今後のお前達にとって必ず有用性ある内容である」」
「分かりました、感謝致します。
 ですが、会長も脱出ルートを確保するようにすぐに応援を送ります。
 20分以内になんとか――!」
「「近づくな!!」」
「!?」

初耳とばかり強く拒否された。
会長は逃げる様子もなく、部屋の機材に腰掛けて残る。
近づくな、というワードの意味を理解できる者はいない。
撃退できそうな武力も兵器も現地で用意している話も聞いていない。
落ち着いてボードをタップして認証操作、最高権限者専用の
コード画面を表示した。アリシアは様子がおかしいとすぐに勘づく。

「何を!?」
「「空間の縮閉線エボリュートを表す図だ。エネルギー負励起、
  核爆縮を起こす作用のものだ・・・だが」」

かつて会長が組み込んだソースコードを変更している。
次に言い放った会長の言葉は全員を驚愕させるものだった。










「「AURO動力源を変位操作させよう、
  内側から外側へとな。」」
「!!!!!?????」

外側、すなわち通常の核爆発と同じ。
複素場電磁による縮閉線状の粒子による流動内部でミンコフスキー粒子を
放出するように逆流させると言う。
発想の逆転で爆縮を爆発に換える防衛策をとろうと図った。


トウキョウ西部

 (結局、私も彼と同じか・・・)

 彼とはコウシの事、ブレイントラストの部下。
彼の出世をうれいて思っているのには理由があった。
初めてミンコフスキー粒子を発見してから名誉や栄光を手に
しても常に自分を付きまとう空虚感。それに拍車をかける
とあるきっかけとなった彼への対抗心が生まれていたのである。

当時、私は爆縮の研究に行き詰ってしまっていた。
研究を始めてからは失敗の連続、原子の基本構造を何度も
見直す術をこなさない事などない。
モニター越しの複素数プラグラムの羅列ばかりを目にしない
日は1日たりともなく、次第に部屋の中にある雑貨すら
数式と点線の集まりに錯覚するくらいに目まぐるしい日々だった。
あの時もらった花がきっかけでそれを見つけた。

どこかで買ってきたのか、妻が花を差し出してきた。
もらったのはキクの花とよばれる花だ。
この国の伝統らしく、これでも観て落ち着けという献身けんしんというべきか、
私は疲れた目でそれを部屋に飾り、うつろな視線で眺め続けていた。
白や黄色、1枚1枚が太く広がる花弁を見つめた瞬間、
花びらに縮閉線が重なり合うイメージが脳内に映し出されたのだ。

中心の真円しんえんから重なる様に外側に伸びた楕円だえん曲線の空間図、
連続の狭間はざまから飛び出てきたミンコフスキー粒子。
花の中心部はへこむ構造だが、キクはふくらみがある。
へこみとふくらみのギャップが私をさらに狂わせたが、
幸いな事にそれが負の力場の発見に繋がったのだ。

AUROが誕生、長きに止まる動力の革命を創り出した。
そして、先祖の起こした行為に謝罪するべく代表して、
ヒロシマとナガサキに平和のシンボルを提供。
マイナスという世界を見出したあの感覚は喜びと同時に
贖罪しょくざいの思いも生まれてしまったようだ。

結局は繰り返してしまう、先祖と同じ道を。

「私は・・・先祖と同じ過ちを犯す。
 子を守るための核、それがどれだけ重き罪でも背負ってみよう」

エネルギー変位、つまり起爆。
地ではなく、組織を守るため。
己の体ごと道連れに消去を選択した。

「「あああ・・・お父さま」」
「無茶は止めろ、会長ォ!」
「やめてええええええええええええええええ!!」
「「後は任せたぞ・・・彼を・・・コウシ君を止めてやってくれ」」
「会長おおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!」


ボワアオオオオオオオオオ

青白い光がドーム状に拡張し、一瞬にして街を覆いつくす。
侵攻しに来た機体も全て飲み込まれて戦闘が始まる様子すら見えずに、
人々は異変を察知するこくすらなく消え去っていく。
内側の1人は誰よりも速く存在を消失した。



オーディン ロスト



トウキョウ西部 上空

 ヘリから身を乗り出して至近距離にいたフリードリッヒの顔は
まばゆい光景を観てひきつった。
一瞬何が起きたのか分からなかったが、オーディン会長が何か
施策しようとする連絡だけ受けていた。そんな短い間の中、
目に入ったのは天主機と同時にドーム状の青白い何か。

「あれは!?」
「フリードリッヒさん、ドアを閉めて下さい! すぐ退去を!!」

モブ隊員の警告。
攻撃を受けている事実だけはすぐに察知して操縦を回避しようとする。
だが、言葉の速さは光とエネルギーに及べず。
ただの爆発とも違う膨らみ方をしていて思わず体が震えた。

「高エネルギー反応、緊急回避ィ!」
「ぐっ、うおおお、あああああおおおおお!」
「フリードさんッ!!」

ヘリは巻き添え一歩手前で青い波動から逃れる。
腕で頭を隠す動作をして被爆を逃れようとするも、
閃光は彼の身体をすれすれに焼き付いてしまう。
身体が焦げて赤黒い色に染まりかける。





サドガCN ブラインド拠点医務室

「彼の容態は!?」
「一部火傷を負ってるだけで、命に別状はないようね。
 まだ呼吸があるわ!」
「AURO被爆を受けているかもしれない、すぐに治療を施します」

 待機していたパスカルが治療に当たる。
運ばれてきた2人は担架で運ばれてすぐに応急手当てを開始。
AUROが人体に与える影響をある程度理解していたエイコウも
放射能除去から火傷まで施し、フリードリッヒを救出する。

「メディカルポッドも使用します! あなたは無事ですか!?」
「「お、俺は大丈夫です。この人を優先してやって下さい・・・」」

ヘリの操縦をしていた隊員も一命を取り留めて最悪なケースは回避。
フリードリッヒだけ目を開かずに意識は止まっているようだ。
それにしてもあんな爆撃を間近に生還できたのは奇跡で、
おそらく上空に滞空していたのが幸運で助かったと言う。
威力は地を這う様に膨らみ、下部から何もかも飲み込んでゆく様が
最後に観えていて、そこにいたら助からなかっただろう。
地方も突然の発生に多くの人々が入り乱れて普段から近寄ろうともしない
山林地帯などに逃げ込んだ様子もちらほら聞かされた。
サップはここの様子も安全か聞く。

「ニイガタに攻めてきた連中はどうなった?」
「すぐに撤退したようです、近場のCNがあんな事になって
 よその相手などしていられなくなったんでしょう」

もう民放TVも放送していないので町の様子や感想もうかがえずに
僕達はただこうして人目を忍ぶ行動は変化していない。
ここもほとんど気取られずに見つけられずに済む。
悪運に強いと言えば良いのか、今回も拠点の難だけは逃れられた。
対する西部の街は止められず、瞬く間に1つのエリアは消滅した。
助けられなかったのはブラインド、アール・ヴォイドの最高責任者。
現地ではどうあがいても襲われると悟ってあんな暴挙に出たのだろう。
後でエイコウがどうなったのか偵察に行ったが、確認できたものは少ない。
ゴールドペインから撮影していた映像、爆発後の現場は
言葉に出尽くし感すら例えられないもの。
言うなら、目にするのは土、コンクリート、その他。
そこに残っていたのは青白く光りの粒がまばらに見える荒野のみ。
誰も何もないエネルギーが過ぎ去った大地だけだ。
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