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4章 ブラインド編

第12話  天の甲殻

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0:00 サド島 ブラインド拠点指令室

 ミゾレはモニターをタップして記入漏れがないか確認する。
設定した作戦項目の最終チェック、ビークル駆動検査の間、
サド島にアール・ヴォイドの関係者達が集い始めていた。
会長の隠れ家的拠点として位置付け、ブレイントラストへの
戦略をつくる最低限度を保つための場所だ。
もう1つここに分岐点も訪れようとする。

「チーフ、封鎖作戦の手筈てはずが終わりました」
「完成したのね!」

パスカルの報告を聞いてアリシアは意気込む。
中つ国地方のケイトから伝授された電磁封鎖を行う準備が整った。
シーケンスを再確認、段取りを追う。

「手順は先の通り、5人が天主殻から出た直後に赤塵封鎖する」
「はい!」

まずはハッキングを行い、システムからゲート操作して
次に赤塵で密封する。教わった通りの手順で口封じを狙う。
その次はセレストクライで天主殻まで接近、開発したEMIRを
封入するのだ。

「上出来、これなら作戦こなせそうね」
「俺だってやりゃ、こんぐらいできるわ!」

ちなみにセレストクライの操縦者はサップ。
素人でもこなせる自動操縦付きだが、航空に長けた者は他
アール・ヴォイドにはいなく、本人の熱烈な志願で成り行き上
決定したのである。情報だけの役立たずではないと奮起ふんきしつつ
傍らでもう1人遅れてやって来た。

「遅れてごめん、すぐに取り掛かるよ!」
「準備して!」

アンドロイド開発の第一人者、ミシェルも今回参加する。
AI開発以外、ハッキングの心得もあった彼はケーブルに
仕込んだ独立したマルウェア感染させて、注文請書を書き換えて
ブレイントラストに送っていたのだ。
あらゆる分野でありながら共同の行いを観ているアンドロイド。
今行う仕事を終えて、傍から観ていたダーマは興味深そうに
人間のやり取りを感想する。

「役割分担によって1つの目標へと向かう。
 これがニンゲンの結団力というのか?」
「そんなものね」

人工知能から引き出す言葉を聴きながらモニター画面をタップする。
集団の性質、と簡素に言えばその通りかもしれない。
0と1で性質を深められる力などあるのか、
アンドロイドの人工AIにどう解釈されているのかは
誰にも解釈できない。
理解できるのはミシェルのような精神の内側を理論化する者くらいだ。

「この2人はこうやって人の動向に関心をもってるでしょ?
 だから、知りたがる行為は一定の知識量に不足が生じた時とか
 空白があれば残りの隙間を埋めたがるようになってるのかもね」
「空白ね・・・」

私の心象もまさに同じだ。
それはともかく、有機物と無機物の競り合いで世界は変わってゆく。
天主殻のサーバーにアクセス。
ケーブルに仕込んだ一部のマルウェアで侵入、制御したのだ。
ケイトの話同様、ゲート部も手動操作はまったくできず、
システム作動のみなのは分かっていた。
複雑な回路を辿り、外側から抑えようとする。

「ハッキング開始!」
「了解、ハッキング送信・・・侵入成功」
「やったか!?」
「サップ、出動準備しておきなさい!」

つまりあぶり出し、慌てて外に飛び出してくるに違いないと
捕縛を狙う。しかし、内部から音一つも出さなかった。

「「・・・あいつら動かねえな」」
「ハッキングを止めようとしてるのかも」
「このから察するに、確かにそうだね。
 あの人達、修整に時間をとると思うからすぐ外には出ないよ」

ミシェルの読みは当たっていた。
慌てて外に出ようとする程、奴らは素人ではない。
肝心のターゲットを捕縛しなければ意味がなく、停止を保ち
ゲートを開けずに外側へのアプローチがない以上、
しばらく様子を見る事にする。

「しばらく全員待機!」


数日後

「ブレイントラストに動きがありました!」
「んごっ!?」

 ミゾレの一声に飛び上がって起きたサップ。
開閉コードに動きがあったのを確認、外に出ようとする姿勢が見えた。

グイイイイイン

そして、はるか高く建存する天主殻のゲートが開く。
また地上に裁きを与えるつもりか、数機の飛行型が舞う。
しかし、下へ向かう様子がなく円盤直下で旋回し続ける。
ダーマが別の塊も外出したと伝えた。
だが、肉眼では何も観えない。

「やっと地上の連中とアプローチする気になったんか。
 おい、お前ら、出番だぞ!」
「あんたがそこまでして乗りたいって言ってたんだから、
 きちんと成功させなさい」

ミゾレの言い方に触発された感じで答える。
実はセレストクライの操縦者はサップ。
実働部隊の者を押しのけてまで祈願していた。
確かに四国や近畿へ行った時の運転テクニックはそこそこのものだったが、
今回の作戦まで推薦していたつもりではなく自己申告。

「セントラルトライアド、起動!」

地上の人々にとっては自衛隊がまだ戦っているのではと、
勝手な予想や期待を添えて送るしかない。
そこはともかく、サップはコッソリと接近、
ほぼゲートの真横から入口を見回していた。

「「・・・・・なんも出てこねーな?」」
「いや、もう出ている。質量収縮型のビークルで外に出たようだ。
 ニンゲンの肉眼では目視しれない」
「え? いつ外出したの?」
「電子顕微望遠鏡を通してモニターに表示」
「質量収縮? もう、なんでもありね・・・」

アンドロイドの目では姿を捉えていた。
横で画面に映るビークル内部に人影が4体映っている。
ブレイントラストのメンバーの姿を見つけたアヴィーがすぐに報告する。

「チーフ、あいつら降りてきた!」
「すぐにモニターに出して!」

ブレイントラストのメンバー4人が映っている。
外見はプラズマディスプレイ技術で変化させているものの、
本人達で間違いないようだ。
だが、メンバー達は浮かない顔をしている。誰かが足らない。

「「ん・・・なんか足りなくね?」」
「執行者達は全部で5人いるはずよ、1名のみ搭乗していない模様」
 (奴だけがいない・・・)

不足する数に、アリシアは十分過ぎる程に覚えがある。
クロノスだけが不在。
肝心の目標がいなかったのだ。

「「主任の奴がいないってのか」」
「おそらく、統括者は待機。
 手先だけ国会と接触を図ろうとしています」

身を小さくしてまで降りてきたのは当然見つからないように施策、
誰かと密会するつもりか、おそらく国の役員と交渉するだろうけど。
しかし、不審な点はそれだけでない。
ダーマは4人の状態も何やらおかしいと報告し始めた。

「身体特定・・・不審点を検知。
 パルスセンサーをかけたが、心拍数が計測できん。
 奴らはニンゲンではない、アンドロイドだ」
「なんだって!?」

ブレイントラストの幹部達は人ではなかった。
模擬生体へ変貌を遂げていたのである。

「本物の人ではないって事・・・?」
「あいつら人間までやめちまったっつーのかぁ!?」
「そんなわけないよ、ボク以外にあんなリアルな人間なんてできるわけ」

そっくりなアンドロイドかもしれないものの、ミシェルは当時の
ブレイントラストですら本物そっくりな型を造れる者はいないと言う。
体だけ上に残して地上で活動しようというのか。
常に先を読む意図に対策がまったく読めない。
まだ上で待機しているのは分かっている。
せめてもの降りてきたものだけ捕縛しようと指示した。
クリムゾンアンガーとゴールドペインの搭乗者はモブ隊員、
操縦成績が優秀だった2人を選抜して任務に当たらせる。

「構わないわ、まずはあの4人を捕縛。
 周辺の天主機を破壊してからゲートへ向かうように」
「了解、接近する」

グイン  フォオオオッ

「いない!?」
「肉眼で見えるわけないからこちらで特定する!
 ダーマ、居場所は!?」
「トウキョウCN上空約2000m付近まで降下。
 だが、天主機も数機周囲に展開している」
「ゴールドペイン、クリムゾンアンガー護衛!
 周囲の天主機を殲滅して!」
「「了解」」

2人は目的地を後回しに取り巻き排除を試みる。
そこにいるのは銀色の装甲で翼を広げている機体。
翼竜の様な外見をもつ物と戦闘を試みた。
ここはアリシア達の視点、トビトカゲ型と呼称して常に各地を襲っていた
高機動型は空を飛び回り、実際に自衛隊壊滅を行ったメインタイプ。
事前にどういった性能でどのような動きをするかは分析していたので、
クリムゾンアンガーの両肩に装着されたのはAURO砲で、
並大抵の金属ならば容易に融解できる程の威力。

グインッ

速度は時速180kmと戦闘機と近いスピードで飛行。
急降下する相手に逃げられないようしっかり追跡。
モブ兵だってきちんと戦える様を示そうと追撃。
肝心の攻撃先はミゾレが分析してどこが良いか伝える。

「大抵、こういったタイプは胴体に動力を保有していると推測。
 頭部にAI判断機能があるかまで不明ですが、生物型に則っていれば
 装着されている可能性があります」
「そこを仕留めれば鈍って抑えるのも簡単になる、そうね。
 クリムゾンアンガー、頭部を狙いなさい」
「「了解」」

グインッ

と見せかけて回避、砲身を向けた瞬間姿勢を変える素振りを見せて
向きを変えようとしている。
すると、尻尾らしき部分から青白い光弾が複数飛来。

パパパシュ ボシュッ

「クリムゾンアンガーに着弾」
「損傷率98%、大した影響はありません」

こちらのダメージは低めでウルツァイト装甲の硬さで守られる。
しかし、防衛機能は頑丈さだけの問題ではなく情報を隠す隙も
無くさなければすぐに対策で裏取りされるはず。
ミゾレがある部分に破損が発生したと言う。

「ウミホタルに穴が複数空いた模様!」
「2%の中から一部突き破られたのね」

機体のセンサーにかからないようコーティングしていた
機能が漏れてこちらの概要を検知されてしまうだろう。
ただ、いつまでもおしくらまんじゅうをしていられない。
そこへゴールドペインのエレクトロン砲で機動を鈍らせる。

「「援護する、60度旋回しろ!」」

バリバリバリ グググ

金色の光を放つ雷を凝縮して敵機の胴体に着撃、
少しだけ速度を鈍らせた様で不意の攻撃の効果が見込めた。
ミシェルが感電に対してセンサー部を狙えと指摘。

「もう一度頭を狙ってみて、検知器がそこに付いてる!
 アレって頭を動かしてから翼や脚を動かしてるよ!」
「雷撃ヒット、ダメージはあまりない模様」

天主機の帯電防止に撃墜できる可能性が低い。
偏差射撃を狙って相手の進行先にAURO砲を撃つ。
頭部は破壊してこちらが狙われる恐れがなくなる。
ただ、撃ち合いを繰り返す間を通して懐も多く目立つはず。
サップがバレる心配を無線越しに言う。

「「なあ、もうこれでアールヴォイドの仕業だと気付かれてるだろ?」」
「ウルツァイト装甲だけは分析されてるかもしれないわ、
 でも、サドガCNは向こうでも検索できない。
 拠点を抑えられなければ私達の居場所は特定されないはず」

ただ、操縦している彼にとって視認し続けるのは大変。
2機だけで数機を落とすのもかなりの労力が要る。
エイムしてから射出するのは遅い、空を飛んでいる仕組みは翼で
どちらか片方でも壊せば落とせるはず。だが、撃っても表面が奥に下がり
無駄撃ちするばかりだ。

グンッ

「「クソッ、ここか!」」

トビトカゲ型もスピードが一定でもなく、軌道が緩くなる。
背後を取られたらやられる、ゴールドペインと連携をとって
位置取り把握しながら展開。
ただの生物をかたどった物じゃない、明らかに軍事用として造られている。
そうじゃなければ、こんなエネルギー弾を放ってくるわけがない。
どんな相手だろうとどこかしこ欠点はある、反重力エンジンも旋回は滑らか。
逆に背後を取る、もっと上部に旋回して苦し紛れに近くもエイムをうかがう。

「「当たりやがれ!」」

ボシュウウウゥゥゥッ  フュウウウウン

胴体にヒットさせても直接倒す事ができる。
だが、エイムが少し逸れて奥の方に放出されていった。
奥は上空、先にはあってはならない物体が存在。

「天主殻に着撃!」
「ダメージは・・・ダーマ!?」
「・・・・・・測定不可、破損箇所は0」

天主殻の装甲に光線が当たる、拍子に外れた残りはそこに当たってしまう。
しかし、溶ける様子もなく傷一つ付く外観がまったく見られない。

「AUROの分解力をもってしても効かない・・・」
「流れ弾で威力が弱まったから?」
「かもしれない・・・でも、状態が」

予想外の展開に思わず最終目標に攻撃を当ててしまう。
モブ隊員も危険を察知して上部を注意し直す。
クリムゾンアンガーも一旦留まり、様子を確認していた時だった。


フュウウウウン

「クリムゾンアンガー、エンジン停止!」
「「止まった!? 操縦できません!」」

隊員に異変が起きたと報告、突然エンジンが止まって重心が強まる。
明らかに今、落ちているのがすぐ分かった。

「パラシュート降下準備!」

機体の背中にある緊急着陸装備を展開。
敵機を討伐し終えてから行うはずだった天主殻との交戦は唐突に終わる。
見込みが甘かった、セントラルトライアドですら機動力を奪われて
停止させられ、息子へ手を伸ばすチャンスを失う。
アヴィーとダーマが物体の状態に反応している線を語る。

「クリムゾンアンガーが接近した時は停止されていなかった。
 原因は攻撃した衝撃波の類、高速移動する物体やエネルギーだけ
 反応して辺りを検知しているみたい」
「相手にとって視えているのではなく網に触れたものを感じ取る
 状態と述べた方が適切だろう。クモの糸と例えようのある様で、
 むやみな攻撃は即位置を特定される」
「波動の原理は・・・動態検知」

AUROの性質を利用して周囲の空間に何かを張り巡らせている
可能性があるようだ。
クリムゾンアンガーはパラシュートを開き、地上への衝突は回避。
幸い森の中へ降下していったので回収は難無く行えた。
セレストクライとゴールドペインはまだ滞空し続けている。
2機のみではまた同じ対策を取られて元も子もないだろう。
攻撃で落とせないなら残る手は閉ざす事。
サードプランを変更して天主機の増援を防ぐ道を決めた。

「仕方ない・・・封鎖して!」
「了解、ハッキング送信・・・侵入成功」
「セレストクライ、EMIR散布準備!」
「「応よ!」」

グググググググググ

サップが単純操作でEMIRをゲートに放つ。
電圧間に錆が充満、閉めたままの状態で封鎖。
これでもう扉が開く事ができなくなった。

「システムを迂回、もしくはまるごと破壊しない限り開けられないはずだ」
「「ザマーミロ!」」

ゲートシステムを抑えてしまえば、ただの浮かぶ棺桶。
後はじっくりと地上の機獣と4人を押さえてしまえば良い。
本物である保証はないものの、何かしら捕えなければ始まらずに
新たな情報も得られないはずだから。
ミゾレも複数の画面を見回して状況に目を配る。

「内部には潜入できませんでしたが、天主機の侵攻制圧は阻止できました。
 敵機はおそらく列島各地にまだ散開していると思われます、
 セントラルトライアドの戦力も通用できた事実が確認」
「ええ、ここで焦って不意討ちに遭うよりは良いでしょう。
 少なくとも地上への平和だけは保障できた。
 後日よりアールヴォイドを総動員して包囲網を敷く。
 一旦、会長に報告を――」
「待って下さい!」

ミゾレがアリシアの言動を止める。
レーダーで複数の影を確認して、警告メッセージを出した。

「数機の生物型がこちらに向かっています」
「ここがバレたの!?」

天主機が一斉にアール・ヴォイドの一角を目指して向かっていた。
いや、正確にはここサドガCNではなく近場。
ニイガタ内に進んでいるルートではないかと予測。
取り囲うような赤点の動向をパスカルはある事に気が付いた。

「奴らはクリムゾンアンガーを探している!」

進路の先はここではなく、パラシュート着陸の方面だった。
先の戦闘でマークされてしまってやって来たのだろう。
残りのクリムゾンアンガーは運搬中でセンサーを遮断していなかった。
機動停止されて今も動かせないと思い込み、そのまま持ってきて
アリシアはかつての共同産物にまで目を見張っていなかったために、
何かしら捉えられてしまう。

「初歩的なミス・・・」
「隊員、ニイガタ圏内に到着。今どこにいるの!?」
「「CNに見つからないよう山内ルートを選んだのですが、
  すごく重くってビークルが進まなく」」

運搬車両を送って帰還しようにもかなりの重量で遅いという。
話からしてすぐに戻ってこられそうにないようだ。
単独でいるようなら確実に発見されてしまう。
そこへサップが持ち前の性能で隠しに行くと言い出した。

「「俺が行ってやる、ここからなら2分で行けるわ。
  無線でサポートしてくれ!」」
「気を付けなさい!」

ブレイントラストはおろか、CNの者にすら奪われるわけにはいかない。
サップはすぐにセレストクライで駆けつけて紅機をかくまおうと
山の中へ入っていった。


ニイガタCN 山林

 数分後、すでに1km周辺地域から生物型が近寄ってくる。
隊員たちがおびえながら絶望感をもってたたずんでいた。

「ウヨウヨ集まって来てんぞ!」
「俺ら・・・もうここで人生終了なのかぁ」

どれだけ訓練を受けようと生身であんな機械に勝てるわけがない。
今回の実戦は2人にとって大きな恐怖を味わわせた。
そこに蒼い機体が目に入る。

「サップさん!?」
「お前ら、ウミボウズで隠してやる!」

サップが真っ先に到着してすぐにウミホタルを広げる。
ミゾレの指示で倉庫にあった物をいつの間にか所持して取り出し、
一緒に潜んでやり過ごし作戦をおっぱじめようと決めた。
虹色にも透明にも言い表せない幕をかぶせる。
男3人の沈黙をここで震えながらも耐え抜こうとした。

「「奴ら、音も拾うか分かんねえがとにかくしゃべんな。
  ミゾレを信じてなんとかやりすごすぞ」」
「「はいぃ・・・」」

カクンッ ガタガタ

侵入してきたのはクモの様な機体で脚部の関節が折りたたみ、
わずか1mの幅から隙間をぬって入ってくる。
頭部に内蔵するセンサーから光を放ってきた。

「・・・・・・」
 (来るんじゃねえ、くるんじゃねえよ・・・)

追尾システムの赤い光線がクロマキー越しに観ている。
クロマキーは光を反射、透過のどちらも行えると聞いていて
とにかく触感じゃなければ誰であろうと判別ができないらしい。
あくまでも“らしいと思うのは生物だけ”、生物型にとってはどうか
少なくともここでしか分からないだろう。

カクンッ ガタガタ                  カサカサ

クモ型の機体は退散していった。
幾何学模様な白金のたばの音が次第に遠ざかる。
汗だくでひきつったサップがグッタリと横になり、呟いた。

「「心臓に悪ぅ・・・」」
「「皆、大丈夫!?」」
「身体状大丈夫じゃねえかも、穴があったら入りてえ」

少し誤ったことわざを聞いて、アリシア達は胸を下ろす。
クリムゾンアンガーも大した破損もなく機能停止状態で済んで、

「あー、紅いこいつの状態は大丈夫そうだ。
 ていうか、動くんならこれで攻撃すりゃ良かったかも」
「「地上で発射したら音でCNにすぐ気付かれるわ。
  でも、内装に傷一つもなかったの?」」
「見た感じ、まったく手付かずと同じくらいに無事と思えるくれえだ。
 実際止められたのはエンジンだが、マジでどうやられたんだか」

アヴィーの精査でもエンジン内部にすら破損された箇所も見当たらずに、
動力そのものを抑えられた様子としか考えられないらしい。
謎の波動はAUROに干渉をもたらす、情報の網が円盤を包み込む様に
動力の概要すらつかめる不気味さを覚える。
なんでも攻撃すれば解決できるとは限らない、私達も自衛隊も先読みする
目をもつように侵入手段を空間そのものから張り巡らせていた。


サドガCN 指令室

 こうして結果はゲートを塞ぐ事だけ成功。
ミゾレの機転により天主機の魔の手から逃れる事はできたが、
そう安心したのもつかの間。
アリシアはダーマにブレイントラストメンバーの行方を聞いたが、
手応えはないと言う。

「4人はどこに?」
「消失、反応がなくなっている」

ブレイントラストメンバーのビークルの映像、反応が消失。
4人が乗っていたビークルはすでに行方をくらましてしまった。
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