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4章 ブレイントラスト編
第19話 天皇閉口
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地上の世界はかつての歴史の様な鎖国状態と化していた。
制限かかる封鎖の連続で、情報過多だったはずの世界は瞬く間に収縮。
下界の者達は行動範囲を抑えられてうろたえながらも、
身の安否をうかがいつつ静かに生活している。
旧態政府も成果を上げられず、生まれ変わった絶滅生物の訴求を
圧する様に同じ思いをさせられてゆく。
かつての体制などもはやどこにも通用せず、金属の支配から逃れずに
列島の枠の中でいつまでも囚われの生物同様に留まるのみだった。
セレファイス 指令室
「「アニマルガジェットK-001~540まで製造完了。
オカピ再誕、規格製造開始。完了予定は約10日後」」
「うむ、問題なし。そのまま継続してくれ」
クロノスはMが構想した新たな生物型の製造を受諾。
コウシ所長が造っていなかった種類を代行して携わっていた。
教育当初から管理を任せると発言していた通りに製造から制御まで
全てを取り組ませて再誕、以前より遥かにペースを上回る成果に
私達も関心を大きく尊敬の念を交えて上回った。
「生物再誕プロジェクトは順調に進んでいます、
かつての希少生物にも着手し始めたそうで、我々が認知していない
種類すらも製造してもらえるでしょう」
「実に助かる、もう直に私の手で生み出す事が叶わんからな」
「本当に時は残酷だと思い知らされます。
人間の手で果たせないものをAIが成す、業界でも再三挙げられていた
テーマも日をまたごうと障害なくこなせるものですから」
「製造も当然秒単位で成立できる事ではないからな。
とはいえ、今はもうA.D7年を迎える。計画直後から執行すべきだった
公布タイミングも少し遅れつつあるのではないか?」
「ええ、私もその点について気掛かりとなっておりました。
計画も全て一致しきれずにズレが生じている点もあるので」
所長にA.Dというワードを挙げられてある話題に代わる。
遅ればせながらこの年号に関する話はすでに数年前から設定して
制圧時から定めた年号、A.Dの時も急ぎでそのまま7年を過ぎた。
実際にMも7歳となり、この子の誕生年より00年と設定付けしていた
企画にはある理由でそうしていたわけでおざなり状態。
いわゆる上下の誤差で理想と成果の乖離が生じて裂け目を見せ始めてゆく。
威厳などと驕り昂るような言い方はしたくない。ただ、象徴が離れすぎて
制定の権威などが薄まってしまうと良い心象をもたらせない。
政府も結局自衛隊の勝利も果たせない状態が続こうものなら
非難を浴びるだけでセレファイスの要求に応じざるをえないだろう。
踏まえてCN制定公布を行いたいところであるが、
そこを語る前にこの物事について決定させてきたのだ。
7年前 セレファイス 制御管理室
数年前のある日、私はコウシ所長と歴史証左の話をしていた。
CNより始りを成す制定年度も敷こうと考えていて旧暦をも廃止し、
イエス・キリストより始めた西暦の代わりに我々の歴史を
時間軸でも示そうと粛々と案じてきたのだった。
「それでアンドロイド・ドミニかね?」
「ええ、CNの存在を奥深く定式化させるために企画しました。
Mの誕生、生物型が解放された記念日を紀年と同化させる。
白金の軸、時間の分野も考慮すべきと設定する事で」
コウシ所長に新たな設定を伝えて採用の賛成を得る。
A.D、アンドロイド・ドミニの頭文字を表すそれは新時代を表示する
偉大なる年号を創ろうとした。
ドロイドと名称したのは人工物の起源、叡智者による創造物を主に
発展してゆく世界を願って付けた。
ドミニはそのまま時を表し、歴史繁栄と結合させて設定。
今一度0に回帰させ、プラチナレプリカントを世界に染め直し、
白金の軸に沿った輝かしき時代を送らせるために構想。
一見、西暦と等しいよくある真似事に思われがちだが、
私も誕生と記念日について“残留思念”を時に当てはめる何かを
制定にもどうにか適用させるきっかけを起こしたかった。
たいてい独裁者などは自身の名前をあてがうケースがあり、
アンドロイド・クロノスなど本名を露呈する程愚かではないのだ。
ただ、偶然にも頭文字は重なり、外見は従来のものと等しいゆえ
下界の者達にとって強い印象は与えにくいだろう。
このシーンの様に後になってから発覚する出来事も色々と生じるものだ。
そして時は戻り、制定を示す機会がようやく訪れてくる。
コードの計測と計画の推進も少しずつ狂いがある。
本来ならセレファイス登場直後に定めるべきだったのかもしれないが、
制圧とMの年齢上、時間を考慮して機会を決めてこれなかった。
「それで誕生年と設定してしまったのだな、
Mによる公布年に合わせても良いと思うが」
「歴史の人物の動向に準えて企画してしまった事実でもあります。
正直、ここだけは失敗してしまったかもしれませんが、
下界の様子から0を定めるのも違和感が消えずに」
「過ぎた事は仕方がない、何事も同時発進などできぬ時もある。
CN法と深く関わるところもあまりない」
「ええ、MもA.D設定概要に違和感をもたれていないので、
このまま継続しても異常事態が起こる事は0に近いでしょう」
「では、変更するかね?」
「いえ、やはりそのまま保留にしておこうと思います。
Mの訓示から00年とする事でやり直しも意識しておりましたが、
意味合いもあまり強くなくCN法と接点も大きくないので。
我々が頭角を現して知らせるわけにもいきません」
「私も変更しない方が良いと思っている。
そうなればまた生物型のコード設定も入力し直しになるな、
閏年の様に繰り上げバグが発生する恐れもあるかもしれん」
「-1~0~+1による誤差ですか、しかし、西暦と異なるので
負の値まで考慮する必要はないと思いますが」
「M自体は別に問題がない、あるのは生物型の方でな。
天文学的紀年法を用いてAIコードに適用して記載している。
世代ごとにどの様な種類が存在していたかなどを時代分けして
当時の環境などどの様に生活していたか行動パターンに記している。
まあ仮説であるが、悪用されない限り懸念する事でもないが」
天文学で0とマイナスの差で数字にズレが生じる恐れがあると言う。
紀元前に生きていた生物について例では20が19年と表記になるなど、
ほんの1の誤差で不具合が生じる事もあるそうだ。
機械への体内時計も設定し直しでは不具合も生じるらしい。
Mの誕生年と同時に起こした天裁は再誕計画のコードも書き込まれている。
本来なら誕生年と同時に公布するはずだったものが予定がズレてしまい、
00年とCN法制定が同時に行えていなかったのだ。
元をたどれば自衛隊との抗戦が予定より長引きすぎたのがきっかけで、
そこはもうどうにもならず、Mの訓示は数年経とうとA.D歴から
切り離してそのまま実行させようと決めた。
CN法制定から全てはこの子が管轄、+からの開始は問題ないものの
誕生と0はどうしても切り離せられない関係で、
古来より失った-との間を埋める方法はどこにもなかった。
(0を基軸とした概念、数学の中心を成す存在は天文学として
無ではなく間を表すもの。人の誕生ですら有としているのだから
そこも機軸に適用したいなど誰も想像できないだろう)
数字とは分析、分別を施すために生まれた概念。
今まで通用できなかった事象を無機物に取り込み、
低能者へようやく台頭できたもの。
形としてはAIや年号にまつわる事、及び伝達における数量は
程度や尺度を測る意味で理に叶った世界を構築できた。
もし、数というものが無かったとしたらまた概念も変わるのか。
西暦XXXX年、こんな表示をしようものなら何人理解できるだろう?
デザインは機能の一角、細かく分け、大きく表示、台頭するものの
側に添えて理解させられると心理学でも学んだ。
これは俯瞰として扱うのか、本当にみえない存在を示そうというのも
説明すら抽象的すぎて概念の形が捉えきれずに脳内が疼く。
また深く思慮にふけってしまう。
こうでもしなければ叡智の一片も示しなど与えられず。
どれもこれも下界とのセッションがいつまでも合わずに続いてしまい、
いつまでも住民達に破壊ばかり見せるのも良いとは言えず。
さすがにこれ以上強引に物事を進められずに膠着状態が続いていた。
歴史どころではない現場の成果も重要で、どんな設定を練ろうとも
神路への示しは必ずもたらさなければならない。
何をするべきか検討した後、そんな彼らから再び通達がきた。
「クロノス君、彼らから返答がきたようだ。
自衛隊最高幹部であるニトベ幕僚長から要求を聞き入れる姿勢を
持ち始めて我らの交渉内容を伝えろとの事だ」
「ついにきましたか」
自衛隊達は完全に降伏したとの知らせが来た。
武力行使を止め、抵抗の類を捨ててこちらの要求を聞き入れると
白旗を表して我々の対応を待つとの事だ。
下が静まる事で、管理体制の兆しはようやく事が進む。
ここでようやくMの公布、訓示を伝える機会が訪れる。
ただ、会談だけは必ずさせてほしいとの事。
政府ではなく自衛隊が話し相手というのも不審点が芽生える。
「応対するのは総理大臣じゃないのね」
「彼は逃亡して行方不明との事、だが、自衛隊が応対するというのも
少々キナ臭さを感じる」
「では私が――」
「主任、ここは俺らが行きますよ。
生身で相手するのは危険、セレファイスマネージャーに万が一
何かあったら組織は終わってしまいます」
「君はニンゲンだ、彼らはまだ罠をもって待ち構えているかもしれん。
我々ならAUROのバックアップ機能で身体が破壊されようと
出戻りできる。身柄を拘束されると危険なので、ここに残ると良い」
「分かりました、待機しています」
メンバー達に言われて私だけセレファイス内に残る事にした。
念のために外見はデコイスキンをまとって変えておく、
名前も伏せてブレイントラスト出身だけは明かさないよう心掛けた。
機械化した事で銃で撃たれてもロストする恐れはない、
身柄拘束で破壊される懸念もあるがMによって復元が可能らしく、
精神状態も保存可能なAUROで保険。
下界にいる者達にCN法を伝えて成り行きを精査するのみだ。
プラチナレプリカントの方向性が定まりつつある。
皆に任せて地上世界を委ねようと、報告を待ちわびた。
上空
ヴウウゥゥゥン
レイチェルがパネル操作で折り重なった細長い機体を操縦する。
プラナリア型で搭乗できるビークルはプラチナレプリカント計画の一端で
製造、世界最高峰の偵察機として規格していた。
4人は搭乗して肉眼で見えない程に小さく縮み、ゲートから出た。
「では旧国会議事堂に向かおう、Mから情報を伝える公布、
基本兵器の伝授などを与えてゆく」
コウシ所長の指示でCNの細かな概要を直に教えに行こうと
ゲートを開いて外出した時だ。
グイイイイイイン
「何だ?」
突如としてセレファイスのゲートが閉まってしまう。
ビークルそのものは出られたから何も支障がないものの、
まだ閉じる指示も出していないはず。
この状態では周囲の生物型の護衛や予備を追加できなくなる。
アメリアがクロノスに様子を聞きだした。
「ねえ、勝手に閉まったんだけど?
主任、あんたが指示をだしたの?」
「「私は何もしていない・・・M!」」
「「緊急事態発生、高電圧ゲートに異常の物質が付着。
錆と類似した物質散漫、侵入防止のため、封鎖」」
「「錆だと 一体ど から!? 何 起こ た!?」」
「セレファイスへのジャミング、聞き取りにくくなっています」
4人が異変に気付き、セレファイスの状態を再確認する。
黄土色の粒子の様な粉末がいつの間にか漂って電盤が機能しなくなった。
降り立つ前にゲート開放を試みたが開かない。
「門が開かんだと? 錆・・・不導体制御か!?」
「帰れねーじゃん!!」
可能性から辿って錆を用いたのは動力盤に不具合をもたらすためだと推測。
しかし、いつどこで仕掛けられたのか出元が理解できずに対応が混乱する、
繋がりだけはすぐ予測してアメリアがハッキングの仕業かと疑いをかけた。
「あいつらでしょうか?」
「我々を締めだすのが狙いだったのか、外出を見計らい
Mから迂回してゲート封鎖があったとしか・・・」
「主任、今作動できるのはどこです!?」
「「動力 止磁界とわ かなMとの通信 ステムだけだ。
他は全 起動停止 態だと・・・」」
やはりMに再びハッキングがかけられていた。
先に起きたダミープログラムが一部を制御して再び浸食。
私達を締め出そうとアリシアが門を完全に封鎖してしまったのだ。
ただ、アール・ヴォイドに高電圧ゲートの原理までは知られていないはず。
AUROの複素場電磁技術からの仮設でもここで応用している線も
そう気取られると思いもしないが。
「「まさかとは思うが・・・K君か」」
「誰ですかそいつは?」
「いや・・・憶測だ、いくら彼でも・・・気付いていないはず」
「ここで犯人捜しなんてしてられないわよ!
まずは戻る方法を考えなきゃダメじゃない」
「手動で開けられないっすか!?」
「ゲートは全て自動モードだ、Mが最終権限をもって制御しているが
ハッキングで手のとどかないコードに取られてしまった。
あんな高度から手で開けられるはずがない、凍結するぞ」
「レイチェル博士の流体技術で入れないか?」
「ゲート、その他コネクトパーツは高密度の吸着性で
全て高電圧液状密封されている。
どうやらただの錆でなく酸化物被膜の様な状態でそこを固められた。
微生物1匹も侵入するのは不可能だ、こんな手法など、どのように?
私の構想がどこかで・・・裏手を突かれた」
「「そんな・・・」」
研究職の特徴を利用された感じで閉鎖的設備を逆手に封鎖されてしまう。
灯台下暗しというべきか、手動などという原始的な操作を
取り入れていなかったのが仇となってしまったのだ。
4人は立ち往生してしまう、帰る方法を断たれて喪心しかけていた。
「「もう天裁も起こせない・・・」」
「「おいマジかよ・・・」」
自衛隊との会合などしていられずに、宿りなく公布などできず。
いきり立つアイザックがアール・ヴォイドのメンバーを
直接手にかけようとAUROスキャナーを用いた。
「もう容赦しねえ、すぐに見つけて始末してやる!」
あの病室の時に一緒に始末しなかったのが甘かったのか、
完璧主義の彼に火がついた。しかし、元長に姿勢は止められる。
コウシ所長がまだ手があると待ったをかけた。
「「待つのだ、まずは規格製造元を辿り、彼らの滞在場所を調べる。
ハッキングツールの在り処を見つけるのが先だ」」
「「あたしはトウキョウに戻ります、適当に良いホテルでも見つけて
西側のアールヴォイド本社へ監視を試みてみます」」
「「国外逃亡している可能性がないかどうか、
ポート開放している北海道を調べます」」
(あの人もいるかもしれない)
「「予定変更する、アールヴォイドの関係者達を探す。
出元のシステムを奪うのだ!」」
「はい!」
セレファイス
一方で、クロノスはモニター画面のコードに覚えのない部分を確認。
どこからもたらされたのかMに詳細を問いだした。
「M、何が起きた!?」
「「ゲートコネクト、セッション不可。開閉操作ができない」」
「錆か何かが付着したと言っていたな、生物型でこじ開けるのも無理か?」
「「不可、AUROコーティングは原子分解が行えない規格。
ゲート部、白金も同様の原理で電離分解不可能。
開閉制御もコード不介入で機能不全」」
「またハッキングされていたのか・・・」
セレファイスの装甲は全てAURO分解ができないよう施されていて、
外部からの衝撃、破壊も効かない耐久性をもっている。
制御も通電させようと入力しても命令信号が別に分かたれて、
中央演算処理でなく末端の別コードとして侵入された部分によって
ゲートを制御されているとの事。
つまり、最終部であるMの意志でも書き換えができない。
アール・ヴォイドの追及を防ぎきれなかったのが悔やまれる。
手動操作の機能も取り付けられておらず、完全に密閉された
宙に浮かぶ円盤になってしまったのだ。
言わば孤立、ここには2つの有機物と無機物のみ残された。
アイチ
一方で、4人はアール・ヴォイドの者達を追うために散開していた。
アイザックは工業の線で中部に出向いて調査。
以前少しだけ貿易関係で聞いていたサド島も調べてみた。
しかし、最先端のAUROスキャナーで探したが反応なし。
所属、体型、外見などの個人情報を入力しても
まったくもって見つからない。アメリアも同じ感じだと言う。
「「アール・ヴォイド本社、すでにもぬけの殻。そっちはいた?」」
「「いません、天裁より船が出入りしたのはわずか3隻。
北海道の入出国記録でも出ていった者は1人もいないようです」」
「「私は今九州にいる、経済水域範囲でも船の反応がほとんどない。
まだ国内のどこかに・・・」」
「あの女、どこにいやがんだァ!?」
ガシャン
スキャナーを地面に叩き付け、足で踏みにじる。
憤りは止まらず自棄になりつつあるアイザックは
面倒くささでそれを拾いもせずにその場を後にしてしまう。
そこへ一部始終を見ていた人が男がいなくなった後、コッソリとやってくる。
「「何だ、この機器?」」
オキナワ
コウシはかつての故郷に向かいつつオキナワ国軍の様子を観ながら
出港記録を調査していた。アリシアという名は一切見当たらずに、
自衛隊との連携する線を疑ったものの、居所が感じられず。
この時代で偽名で海外に出て行くとID詐称で向こうに影響を及ぼす
恐れもあるから別の手を用いた可能性もあるが。
「ううむ、見つからん。
生体センサーにもかからんとはどうなっている・・・?」
「「所長、一体どうすれば・・・」」
コウシは今一度、規格を思い返してゆく。
そういえば、セレファイスの遠隔操作システムはまだ別の場所、
ブレイントラストビルに予備機器を残していた。
正確に言えばセレファイスが何かしら崩壊してもデータを残せるように
起動システムの末端のみ動かせるものだけとっておいた。
本来ならアール・ヴォイドも加入させた上で完全仕様にするつもりが、
ダニエルとの件で袖を別ってしまったので停滞。
三機に内蔵されたコードを思いだし、それらを探すよう指示を出した。
「ゲートを開く事は・・・可能だ。
セントラルトライアドに基本開錠機能が備わっている」
「「でも、あれって試作段階のはずじゃ?」」
「もちろん、セレファイス全機能まで備えてはおらん。
そんな物まで残そうものなら我々はとうに抑えられている。
アールヴォイドで足される予定だったマザーコードの一部だ」
「「ホントにできるっすか?」」
「だが、直接ビルには行けん。政府、自衛隊に科学関連経由の容疑で
ブレイントラストをマークしている懸念もある。
近場で残存するライオットギアを操作して確認する。
M、偵察用の機体を1機向かわせてくれ」
「「認証」」
ピピッ ガシャン
ビル群の隙間に潜んでいた1機がカサカサと静かに動き出す。
閉所の侵入が可能なテレフォシデイを操りブレイントラストの
地下を見て回ったが、所長が関係者しか立ち入れないはずの
内部を観て異常の発生を伝えた。
「無い・・セントラルトライアドが無くなっている!?」
「何故、三機が紛失を・・・!?」
そこはもぬけの殻と化していた。
三機とも全て消失、こじ開けられた形跡もなく入力によって入室。
収めていたはずのケージを開けるパスワードを入力されていたのだから、
アール・ヴォイドが手を入れてきたと考えられるのはそれしかない。
だろうにも、実際の居場所を探さない事には何も始まらない。
4人は周囲に気付かれず地上に降り立ってコツコツと沈着に捜索し始めた。
自らの姿を隠し続けて各地の状況を見て回るはめになるなど
想定外な展開になってしまう。
三機以外に手立てがなく、セレファイス内で身動きのできない
自分は4人を頼りに、発見を急がせた。
「セントラルトライアド、三機を探すのだ!」
制限かかる封鎖の連続で、情報過多だったはずの世界は瞬く間に収縮。
下界の者達は行動範囲を抑えられてうろたえながらも、
身の安否をうかがいつつ静かに生活している。
旧態政府も成果を上げられず、生まれ変わった絶滅生物の訴求を
圧する様に同じ思いをさせられてゆく。
かつての体制などもはやどこにも通用せず、金属の支配から逃れずに
列島の枠の中でいつまでも囚われの生物同様に留まるのみだった。
セレファイス 指令室
「「アニマルガジェットK-001~540まで製造完了。
オカピ再誕、規格製造開始。完了予定は約10日後」」
「うむ、問題なし。そのまま継続してくれ」
クロノスはMが構想した新たな生物型の製造を受諾。
コウシ所長が造っていなかった種類を代行して携わっていた。
教育当初から管理を任せると発言していた通りに製造から制御まで
全てを取り組ませて再誕、以前より遥かにペースを上回る成果に
私達も関心を大きく尊敬の念を交えて上回った。
「生物再誕プロジェクトは順調に進んでいます、
かつての希少生物にも着手し始めたそうで、我々が認知していない
種類すらも製造してもらえるでしょう」
「実に助かる、もう直に私の手で生み出す事が叶わんからな」
「本当に時は残酷だと思い知らされます。
人間の手で果たせないものをAIが成す、業界でも再三挙げられていた
テーマも日をまたごうと障害なくこなせるものですから」
「製造も当然秒単位で成立できる事ではないからな。
とはいえ、今はもうA.D7年を迎える。計画直後から執行すべきだった
公布タイミングも少し遅れつつあるのではないか?」
「ええ、私もその点について気掛かりとなっておりました。
計画も全て一致しきれずにズレが生じている点もあるので」
所長にA.Dというワードを挙げられてある話題に代わる。
遅ればせながらこの年号に関する話はすでに数年前から設定して
制圧時から定めた年号、A.Dの時も急ぎでそのまま7年を過ぎた。
実際にMも7歳となり、この子の誕生年より00年と設定付けしていた
企画にはある理由でそうしていたわけでおざなり状態。
いわゆる上下の誤差で理想と成果の乖離が生じて裂け目を見せ始めてゆく。
威厳などと驕り昂るような言い方はしたくない。ただ、象徴が離れすぎて
制定の権威などが薄まってしまうと良い心象をもたらせない。
政府も結局自衛隊の勝利も果たせない状態が続こうものなら
非難を浴びるだけでセレファイスの要求に応じざるをえないだろう。
踏まえてCN制定公布を行いたいところであるが、
そこを語る前にこの物事について決定させてきたのだ。
7年前 セレファイス 制御管理室
数年前のある日、私はコウシ所長と歴史証左の話をしていた。
CNより始りを成す制定年度も敷こうと考えていて旧暦をも廃止し、
イエス・キリストより始めた西暦の代わりに我々の歴史を
時間軸でも示そうと粛々と案じてきたのだった。
「それでアンドロイド・ドミニかね?」
「ええ、CNの存在を奥深く定式化させるために企画しました。
Mの誕生、生物型が解放された記念日を紀年と同化させる。
白金の軸、時間の分野も考慮すべきと設定する事で」
コウシ所長に新たな設定を伝えて採用の賛成を得る。
A.D、アンドロイド・ドミニの頭文字を表すそれは新時代を表示する
偉大なる年号を創ろうとした。
ドロイドと名称したのは人工物の起源、叡智者による創造物を主に
発展してゆく世界を願って付けた。
ドミニはそのまま時を表し、歴史繁栄と結合させて設定。
今一度0に回帰させ、プラチナレプリカントを世界に染め直し、
白金の軸に沿った輝かしき時代を送らせるために構想。
一見、西暦と等しいよくある真似事に思われがちだが、
私も誕生と記念日について“残留思念”を時に当てはめる何かを
制定にもどうにか適用させるきっかけを起こしたかった。
たいてい独裁者などは自身の名前をあてがうケースがあり、
アンドロイド・クロノスなど本名を露呈する程愚かではないのだ。
ただ、偶然にも頭文字は重なり、外見は従来のものと等しいゆえ
下界の者達にとって強い印象は与えにくいだろう。
このシーンの様に後になってから発覚する出来事も色々と生じるものだ。
そして時は戻り、制定を示す機会がようやく訪れてくる。
コードの計測と計画の推進も少しずつ狂いがある。
本来ならセレファイス登場直後に定めるべきだったのかもしれないが、
制圧とMの年齢上、時間を考慮して機会を決めてこれなかった。
「それで誕生年と設定してしまったのだな、
Mによる公布年に合わせても良いと思うが」
「歴史の人物の動向に準えて企画してしまった事実でもあります。
正直、ここだけは失敗してしまったかもしれませんが、
下界の様子から0を定めるのも違和感が消えずに」
「過ぎた事は仕方がない、何事も同時発進などできぬ時もある。
CN法と深く関わるところもあまりない」
「ええ、MもA.D設定概要に違和感をもたれていないので、
このまま継続しても異常事態が起こる事は0に近いでしょう」
「では、変更するかね?」
「いえ、やはりそのまま保留にしておこうと思います。
Mの訓示から00年とする事でやり直しも意識しておりましたが、
意味合いもあまり強くなくCN法と接点も大きくないので。
我々が頭角を現して知らせるわけにもいきません」
「私も変更しない方が良いと思っている。
そうなればまた生物型のコード設定も入力し直しになるな、
閏年の様に繰り上げバグが発生する恐れもあるかもしれん」
「-1~0~+1による誤差ですか、しかし、西暦と異なるので
負の値まで考慮する必要はないと思いますが」
「M自体は別に問題がない、あるのは生物型の方でな。
天文学的紀年法を用いてAIコードに適用して記載している。
世代ごとにどの様な種類が存在していたかなどを時代分けして
当時の環境などどの様に生活していたか行動パターンに記している。
まあ仮説であるが、悪用されない限り懸念する事でもないが」
天文学で0とマイナスの差で数字にズレが生じる恐れがあると言う。
紀元前に生きていた生物について例では20が19年と表記になるなど、
ほんの1の誤差で不具合が生じる事もあるそうだ。
機械への体内時計も設定し直しでは不具合も生じるらしい。
Mの誕生年と同時に起こした天裁は再誕計画のコードも書き込まれている。
本来なら誕生年と同時に公布するはずだったものが予定がズレてしまい、
00年とCN法制定が同時に行えていなかったのだ。
元をたどれば自衛隊との抗戦が予定より長引きすぎたのがきっかけで、
そこはもうどうにもならず、Mの訓示は数年経とうとA.D歴から
切り離してそのまま実行させようと決めた。
CN法制定から全てはこの子が管轄、+からの開始は問題ないものの
誕生と0はどうしても切り離せられない関係で、
古来より失った-との間を埋める方法はどこにもなかった。
(0を基軸とした概念、数学の中心を成す存在は天文学として
無ではなく間を表すもの。人の誕生ですら有としているのだから
そこも機軸に適用したいなど誰も想像できないだろう)
数字とは分析、分別を施すために生まれた概念。
今まで通用できなかった事象を無機物に取り込み、
低能者へようやく台頭できたもの。
形としてはAIや年号にまつわる事、及び伝達における数量は
程度や尺度を測る意味で理に叶った世界を構築できた。
もし、数というものが無かったとしたらまた概念も変わるのか。
西暦XXXX年、こんな表示をしようものなら何人理解できるだろう?
デザインは機能の一角、細かく分け、大きく表示、台頭するものの
側に添えて理解させられると心理学でも学んだ。
これは俯瞰として扱うのか、本当にみえない存在を示そうというのも
説明すら抽象的すぎて概念の形が捉えきれずに脳内が疼く。
また深く思慮にふけってしまう。
こうでもしなければ叡智の一片も示しなど与えられず。
どれもこれも下界とのセッションがいつまでも合わずに続いてしまい、
いつまでも住民達に破壊ばかり見せるのも良いとは言えず。
さすがにこれ以上強引に物事を進められずに膠着状態が続いていた。
歴史どころではない現場の成果も重要で、どんな設定を練ろうとも
神路への示しは必ずもたらさなければならない。
何をするべきか検討した後、そんな彼らから再び通達がきた。
「クロノス君、彼らから返答がきたようだ。
自衛隊最高幹部であるニトベ幕僚長から要求を聞き入れる姿勢を
持ち始めて我らの交渉内容を伝えろとの事だ」
「ついにきましたか」
自衛隊達は完全に降伏したとの知らせが来た。
武力行使を止め、抵抗の類を捨ててこちらの要求を聞き入れると
白旗を表して我々の対応を待つとの事だ。
下が静まる事で、管理体制の兆しはようやく事が進む。
ここでようやくMの公布、訓示を伝える機会が訪れる。
ただ、会談だけは必ずさせてほしいとの事。
政府ではなく自衛隊が話し相手というのも不審点が芽生える。
「応対するのは総理大臣じゃないのね」
「彼は逃亡して行方不明との事、だが、自衛隊が応対するというのも
少々キナ臭さを感じる」
「では私が――」
「主任、ここは俺らが行きますよ。
生身で相手するのは危険、セレファイスマネージャーに万が一
何かあったら組織は終わってしまいます」
「君はニンゲンだ、彼らはまだ罠をもって待ち構えているかもしれん。
我々ならAUROのバックアップ機能で身体が破壊されようと
出戻りできる。身柄を拘束されると危険なので、ここに残ると良い」
「分かりました、待機しています」
メンバー達に言われて私だけセレファイス内に残る事にした。
念のために外見はデコイスキンをまとって変えておく、
名前も伏せてブレイントラスト出身だけは明かさないよう心掛けた。
機械化した事で銃で撃たれてもロストする恐れはない、
身柄拘束で破壊される懸念もあるがMによって復元が可能らしく、
精神状態も保存可能なAUROで保険。
下界にいる者達にCN法を伝えて成り行きを精査するのみだ。
プラチナレプリカントの方向性が定まりつつある。
皆に任せて地上世界を委ねようと、報告を待ちわびた。
上空
ヴウウゥゥゥン
レイチェルがパネル操作で折り重なった細長い機体を操縦する。
プラナリア型で搭乗できるビークルはプラチナレプリカント計画の一端で
製造、世界最高峰の偵察機として規格していた。
4人は搭乗して肉眼で見えない程に小さく縮み、ゲートから出た。
「では旧国会議事堂に向かおう、Mから情報を伝える公布、
基本兵器の伝授などを与えてゆく」
コウシ所長の指示でCNの細かな概要を直に教えに行こうと
ゲートを開いて外出した時だ。
グイイイイイイン
「何だ?」
突如としてセレファイスのゲートが閉まってしまう。
ビークルそのものは出られたから何も支障がないものの、
まだ閉じる指示も出していないはず。
この状態では周囲の生物型の護衛や予備を追加できなくなる。
アメリアがクロノスに様子を聞きだした。
「ねえ、勝手に閉まったんだけど?
主任、あんたが指示をだしたの?」
「「私は何もしていない・・・M!」」
「「緊急事態発生、高電圧ゲートに異常の物質が付着。
錆と類似した物質散漫、侵入防止のため、封鎖」」
「「錆だと 一体ど から!? 何 起こ た!?」」
「セレファイスへのジャミング、聞き取りにくくなっています」
4人が異変に気付き、セレファイスの状態を再確認する。
黄土色の粒子の様な粉末がいつの間にか漂って電盤が機能しなくなった。
降り立つ前にゲート開放を試みたが開かない。
「門が開かんだと? 錆・・・不導体制御か!?」
「帰れねーじゃん!!」
可能性から辿って錆を用いたのは動力盤に不具合をもたらすためだと推測。
しかし、いつどこで仕掛けられたのか出元が理解できずに対応が混乱する、
繋がりだけはすぐ予測してアメリアがハッキングの仕業かと疑いをかけた。
「あいつらでしょうか?」
「我々を締めだすのが狙いだったのか、外出を見計らい
Mから迂回してゲート封鎖があったとしか・・・」
「主任、今作動できるのはどこです!?」
「「動力 止磁界とわ かなMとの通信 ステムだけだ。
他は全 起動停止 態だと・・・」」
やはりMに再びハッキングがかけられていた。
先に起きたダミープログラムが一部を制御して再び浸食。
私達を締め出そうとアリシアが門を完全に封鎖してしまったのだ。
ただ、アール・ヴォイドに高電圧ゲートの原理までは知られていないはず。
AUROの複素場電磁技術からの仮設でもここで応用している線も
そう気取られると思いもしないが。
「「まさかとは思うが・・・K君か」」
「誰ですかそいつは?」
「いや・・・憶測だ、いくら彼でも・・・気付いていないはず」
「ここで犯人捜しなんてしてられないわよ!
まずは戻る方法を考えなきゃダメじゃない」
「手動で開けられないっすか!?」
「ゲートは全て自動モードだ、Mが最終権限をもって制御しているが
ハッキングで手のとどかないコードに取られてしまった。
あんな高度から手で開けられるはずがない、凍結するぞ」
「レイチェル博士の流体技術で入れないか?」
「ゲート、その他コネクトパーツは高密度の吸着性で
全て高電圧液状密封されている。
どうやらただの錆でなく酸化物被膜の様な状態でそこを固められた。
微生物1匹も侵入するのは不可能だ、こんな手法など、どのように?
私の構想がどこかで・・・裏手を突かれた」
「「そんな・・・」」
研究職の特徴を利用された感じで閉鎖的設備を逆手に封鎖されてしまう。
灯台下暗しというべきか、手動などという原始的な操作を
取り入れていなかったのが仇となってしまったのだ。
4人は立ち往生してしまう、帰る方法を断たれて喪心しかけていた。
「「もう天裁も起こせない・・・」」
「「おいマジかよ・・・」」
自衛隊との会合などしていられずに、宿りなく公布などできず。
いきり立つアイザックがアール・ヴォイドのメンバーを
直接手にかけようとAUROスキャナーを用いた。
「もう容赦しねえ、すぐに見つけて始末してやる!」
あの病室の時に一緒に始末しなかったのが甘かったのか、
完璧主義の彼に火がついた。しかし、元長に姿勢は止められる。
コウシ所長がまだ手があると待ったをかけた。
「「待つのだ、まずは規格製造元を辿り、彼らの滞在場所を調べる。
ハッキングツールの在り処を見つけるのが先だ」」
「「あたしはトウキョウに戻ります、適当に良いホテルでも見つけて
西側のアールヴォイド本社へ監視を試みてみます」」
「「国外逃亡している可能性がないかどうか、
ポート開放している北海道を調べます」」
(あの人もいるかもしれない)
「「予定変更する、アールヴォイドの関係者達を探す。
出元のシステムを奪うのだ!」」
「はい!」
セレファイス
一方で、クロノスはモニター画面のコードに覚えのない部分を確認。
どこからもたらされたのかMに詳細を問いだした。
「M、何が起きた!?」
「「ゲートコネクト、セッション不可。開閉操作ができない」」
「錆か何かが付着したと言っていたな、生物型でこじ開けるのも無理か?」
「「不可、AUROコーティングは原子分解が行えない規格。
ゲート部、白金も同様の原理で電離分解不可能。
開閉制御もコード不介入で機能不全」」
「またハッキングされていたのか・・・」
セレファイスの装甲は全てAURO分解ができないよう施されていて、
外部からの衝撃、破壊も効かない耐久性をもっている。
制御も通電させようと入力しても命令信号が別に分かたれて、
中央演算処理でなく末端の別コードとして侵入された部分によって
ゲートを制御されているとの事。
つまり、最終部であるMの意志でも書き換えができない。
アール・ヴォイドの追及を防ぎきれなかったのが悔やまれる。
手動操作の機能も取り付けられておらず、完全に密閉された
宙に浮かぶ円盤になってしまったのだ。
言わば孤立、ここには2つの有機物と無機物のみ残された。
アイチ
一方で、4人はアール・ヴォイドの者達を追うために散開していた。
アイザックは工業の線で中部に出向いて調査。
以前少しだけ貿易関係で聞いていたサド島も調べてみた。
しかし、最先端のAUROスキャナーで探したが反応なし。
所属、体型、外見などの個人情報を入力しても
まったくもって見つからない。アメリアも同じ感じだと言う。
「「アール・ヴォイド本社、すでにもぬけの殻。そっちはいた?」」
「「いません、天裁より船が出入りしたのはわずか3隻。
北海道の入出国記録でも出ていった者は1人もいないようです」」
「「私は今九州にいる、経済水域範囲でも船の反応がほとんどない。
まだ国内のどこかに・・・」」
「あの女、どこにいやがんだァ!?」
ガシャン
スキャナーを地面に叩き付け、足で踏みにじる。
憤りは止まらず自棄になりつつあるアイザックは
面倒くささでそれを拾いもせずにその場を後にしてしまう。
そこへ一部始終を見ていた人が男がいなくなった後、コッソリとやってくる。
「「何だ、この機器?」」
オキナワ
コウシはかつての故郷に向かいつつオキナワ国軍の様子を観ながら
出港記録を調査していた。アリシアという名は一切見当たらずに、
自衛隊との連携する線を疑ったものの、居所が感じられず。
この時代で偽名で海外に出て行くとID詐称で向こうに影響を及ぼす
恐れもあるから別の手を用いた可能性もあるが。
「ううむ、見つからん。
生体センサーにもかからんとはどうなっている・・・?」
「「所長、一体どうすれば・・・」」
コウシは今一度、規格を思い返してゆく。
そういえば、セレファイスの遠隔操作システムはまだ別の場所、
ブレイントラストビルに予備機器を残していた。
正確に言えばセレファイスが何かしら崩壊してもデータを残せるように
起動システムの末端のみ動かせるものだけとっておいた。
本来ならアール・ヴォイドも加入させた上で完全仕様にするつもりが、
ダニエルとの件で袖を別ってしまったので停滞。
三機に内蔵されたコードを思いだし、それらを探すよう指示を出した。
「ゲートを開く事は・・・可能だ。
セントラルトライアドに基本開錠機能が備わっている」
「「でも、あれって試作段階のはずじゃ?」」
「もちろん、セレファイス全機能まで備えてはおらん。
そんな物まで残そうものなら我々はとうに抑えられている。
アールヴォイドで足される予定だったマザーコードの一部だ」
「「ホントにできるっすか?」」
「だが、直接ビルには行けん。政府、自衛隊に科学関連経由の容疑で
ブレイントラストをマークしている懸念もある。
近場で残存するライオットギアを操作して確認する。
M、偵察用の機体を1機向かわせてくれ」
「「認証」」
ピピッ ガシャン
ビル群の隙間に潜んでいた1機がカサカサと静かに動き出す。
閉所の侵入が可能なテレフォシデイを操りブレイントラストの
地下を見て回ったが、所長が関係者しか立ち入れないはずの
内部を観て異常の発生を伝えた。
「無い・・セントラルトライアドが無くなっている!?」
「何故、三機が紛失を・・・!?」
そこはもぬけの殻と化していた。
三機とも全て消失、こじ開けられた形跡もなく入力によって入室。
収めていたはずのケージを開けるパスワードを入力されていたのだから、
アール・ヴォイドが手を入れてきたと考えられるのはそれしかない。
だろうにも、実際の居場所を探さない事には何も始まらない。
4人は周囲に気付かれず地上に降り立ってコツコツと沈着に捜索し始めた。
自らの姿を隠し続けて各地の状況を見て回るはめになるなど
想定外な展開になってしまう。
三機以外に手立てがなく、セレファイス内で身動きのできない
自分は4人を頼りに、発見を急がせた。
「セントラルトライアド、三機を探すのだ!」
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