Condense Nation

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4章 ブレイントラスト編

第12話  プラチナレプリカント

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 コウシ所長は自分をある場所へ案内しようとする。
ブレイントラストの屋上に存在しないはずのゲート
そこは今まで秘匿されてきた創造の間をこれから導いてくれる。
地上との隔離、答えは目に見えない仕掛けの先にあるという。
灰色の通路は外に出ると思いきや、屋内で一度留まっていた。

「こちらだ、実はここが入口で外部からは見えん構造となる。
 ステルス機能で外部は全て透過させているからな」
「プラズマワイド、背景の映像を前方に表示させる技術ですか」
「アールヴォイドの一技術を用いて外壁全てに補装している。
 透明化など反重力に比べればまだ容易い、映像拡張はプラズマ発達から
 とうに応用がとられて薄い幕と同等に作成できる。
 名はセレファイス、空位により構築された理の集合体。
 私の全て、隔離政策を進めてきた研究棟である」
「もうなんでもあり・・・思わず砕けた表現になってしまいます。
 この世界の遠域、ブレイントラストの真髄」

セレファイス、そこはブレイントラストビルの屋上と連結する
半径3000mに及ぶ巨大な円盤型施設だ。
薄い白金色で染まった外装で、内部も同じ素材で造られている
仕様は所長が独自に設計した研究室であった。
実際の建築は人でなくロボットに組み立てさせ、研究目的や
工房の部屋だけではなく、他にも特殊な仕掛けがある。
そこは外界から一切観えない光学迷彩が施されていたのだ。
東京の上空を覆いつくすくらいに広いものの、
飛行機やヘリの衝突が起こらないよう軌道計算で動き、また光の屈折もせず
太陽光がそのまま地上を照らせる程にひっそりと存在していた。

「ふふふ、正確には私の真髄といえるだろう。
 素材は全てAUROで長きにわたって生成した。
 生物型は初期のみどうしても叶わぬ事情で経費を用いてしまったが、
 この場だけはどうしても足を着かせるわけにはいかない」
「あなたが着任した時から何十年も構築を続けてきたのですね。
 プラチナによる白幻はくげん叡智えいちより再び失った存在を回帰させるために」
「荘厳な表現だな、まあ、こんな色にしたのは確かに純白たる内包。
 金の主張よりも高潔さを表しているのも否定はせぬ。
 ずっと、ずっと待ちわびていたのだぞ?
 これでようやく君も招待する事ができるな」
「ええ、私も早々に判断すれば良かったものを。
 決断の遅さに申し訳ございません」
「かまわんぞ、加入してくれただけで大きな利だと言った。
 今から君に見せるものは決して表に出せない存在。
 そして、私の全てでもある」
「「所長の・・・全て」」

政府は無知な程気付いておらず、組織内部でも研究員全てが
ここを知っているわけではない。
しかし、特待研究員の自分達などの一部はすでに知らされていた。
所長と出会った時の言葉、地上との隔離という接点がある意味は
ここからきているものだろう。
事件から居場所を失い、最後に当てを求めてここに来る。
これも観念というのか、何もかも打ち明けようとする気でいる
所長は先と異なり穏やかな表情で私に言い放った。
全て、ブレイントラストの収束要素が集まる何かが在るのか。
その答えが天に広がる世界で待っているのだろう、
革命という運命のかけ橋を自分は今歩いているのだ。
始まりを告げたコウシ所長の導き手に、
どのような形の橋を渡る事になるのか想像もつかない。


セレファイス

グイィィィン

 円状のゲートがゆっくりと開かれる。
所長に連れてこられた部屋には無数の機械が綺麗に整列されて
身動き1つせずに静かな冷たい室内で並べられていた。
率直に言って白い、側だけの印象がそれで雪に染まった世界と錯覚。
さらに追って見ると椅子やテーブルの周りに器材もある。
注視してもただの機械ではなく生物の型をしたロボットで、
様々な種類が並べられていた。

「これは・・・動物の機体」
「そうだ、私が造ってきたのはライオットギアだけではない。
 試験的にどうにか実施しようと生態情報を組み込んで、
 AIで独自判断できる生物用も造っていた・・・秘密裏にな」

生物用、この言葉は目前の光景の有様を意味する。
哺乳類、爬虫類、両生類、魚類、鳥類、昆虫類のあらゆる種類で
人工合金の白金装甲、金のフレームをほとんど用いた外様に
別世界の外観を感じさせた。
まさに神が生み出したと錯覚するくらいに思う創造物である。
もはや芸術品に近いと言っても良いくらいだ。
しかし、これらを造って何の意味が?
所長は生物崇拝のきわみに上り詰めようとしているのか。

「動物のアバターもこれ程まで製造していたとは、AIというならば
 模造ではなく全て動くよう設計されているのですか?」
「大半は絶滅した生物達だ、その行動データを取り組んで動いている。
 言うならば生きた証そのものだ。当初はそのために造ったと言っても良い」

一目見て、膨大な数の動物型も驚きを隠せなかったが、
ボディパーツも並々ならぬ品質だ。
美しく、透き通るような白金の装甲が目から離れない。
どう見てもオーバーテクノロジーというだけのレベルで、
素材の詳細を拝見しても要領を得ない。
1つの機体に触れるのを許されて手に取ってみる。
セレファイスと等しくプラチナ合金で構造されているようで、
単なる余り物で組み込んだわけではないのがすぐ理解できるが。
一体、どのような作成をしたのか。

「まるで世代の狭間を見ているようです・・・あたかもまるごと代替して
 金属体が世界で生きてゆく様な節に思えます。
 有機体が無機へと精工に造られていますね」
「確かにこういう類は無機物より造られるモノだな。
 生物を部品の様に集めて誕生させられん。
 ううむ、無機・・・名称もいささか定まりにくいな」
「何の話でしょうか?」
「いや、こちらの話だ。話を戻すが、計画とは絶滅生物の再誕。
 人を含めた知的財産を優先した世界の再構築だ」
「知的財産を?」
「そう、我々のような世界を築ける頭脳者を上空に確保して
 下界の安定化を見込んでから再び君臨させる。
 理由は当然、君も経験した通り知をもたぬ者からの隔離だ」
「つまり、知識を放棄した者を一切離縁させて地上の脅威を除いてから
 実行したいと・・・かなりの時を必要としますが?」
「うむ、確かにな。そこはこれからの問題ともいえる。
 方法が私にとって大きな障壁を生じさせているのだよ」
「安静化した世界のために・・・反重力技術を」
「反重力は空を飛ぶ乗り物だけではない。
 生活圏をも切り離せる生物の足場を区切りできる、星間の様に。
 相反させて無重力状態を生じさせる事もできるしな」
「無重力ですか?」
「その状態なら比重の違う金属も混じるのだ。
 ダマスカスの様な時代の度を超えた強硬さの如く、
 地上では精製できぬ合金も調合できる」

所長は得意とする重力研究を装甲にも活かしていた。
これらの機体を観ても一目瞭然いちもくりょうぜんと言いたくなる程に
異世界で製造したレベルと同等だ。
ほとんどの発動機の装甲は地上で工程不可能。
精錬された目に物ばかりで、既存の機体とはいっしている。
亡き物をここで再び再現させ、世に放ち直すのが目的であった。

「こういう事でしたか、下界との隔離だけでなく失った物への出戻り。
 あなたは絶滅した生物をアバター化させるために製造していたのですね」
「そうだ、存在したという証明が欲しい。
 今でも現存する動物達でさえ、正義を掲げてきたはずの生物によって
 削られる弱肉強食の世界で言葉も交わせず生かされている。
 火星への安住も叶わなくなった今、場を克服し
 幸福を希求できるのは無機物の世界のみであろう」
「宇宙への展開は視野に入れていますか?」
「一応入れてはいた、だが、そこも頓挫とんざして迷い続けている」

所長は絶えていった生物を復元し、世に解き放つ計画を構築していた。
攻撃性の低い存在はたいてい端に追いやられやすい。
害獣、害虫は劣悪な環境でも無数に湧いてくる。
上層界に位置する純粋に綺麗な水に棲むもの達が場を克服するというのは、
おびやかされずに危害を受けないという要素を含める。
“金属は簡単に傷つかない”、元から命無くしての死はありえない。
生物の自我はあくまでも有機物の塊だ。
無機物への変換によって、爪も牙も通用できない個体で
初めて他の干渉ができない場の確立という進化を遂げる。
存在とは命、決して金銭で解決できないものを科学で改めて創造し、
対等に場を保たせて共に活動するために起こした事。
それが所長の全てであり、次世代の成果の種をつくる悲願だったのだ。

 (ずいぶんと多数に分別された機体ばかりだな)

白金の素材という共通点以外は骨格や大きさが異なる生物型。
あまりにも膨大な生物の数々を製造してきたこれらの
機体のスペックを見たところ、ある1つの疑問が浮かんだ。

「これ程大量の種類である発動機を動かすにも、
 膨大なAIが必要不可欠だと思います。
 どの様にそれぞれ操作しているのです?」
「・・・・・・」

当然、ただのプラモデルを作るのとは異なる。
独自機動という言い方をするだけあり、相当のコードも要るはずだ。
所長はうなだれて口を開かない、次に彼は渋々語る。

「その目処めどが立っていないんだ、機体を動かす動力は可能でも
 自律型を増産できる見込みがなく、臨床試験すら行えず。
 今、我々は複合ネットワーク問題を抱えている」
「現時点では不可能なのですか?」
「ああ、1体のAIでも膨大なコードを使用している。
 現在まともに動かせるのは数種類の機体だけだ。
 現段階の規格で無数に操るとなると、今の技術でも難しい。
 それに管理できる者も少ないのだ、メンテナンス作業も種類別に
 手入れするだけでも時間を多くとりすぎて日が暮れてしまう」
「一般に募集などかければ、すぐに情報漏洩する。
 しまいには機材を盗む者も現れるでしょうね」

初期型のみ全部所長の手作業で造られたのも驚きだ。
確かに増産となればラインも敷いて管理工程も倍に膨らむ。
ブレイントラストの執行役員は自分を含めても7人しかいない。
ダニエルとアリシアもいずれはここに来ると聞いていたが、
最近からどうなのかほとんど様子をうかがっていない。
部下達も大半は辞めていってしまった。
働くにも信頼できる人手が足らなすぎるのだ。
コウシ所長は予想外の研究者低減にうなだれ、膨大な倉庫の持て余しに
活路が見いだせていなかった。
ところで、政府はこの工房を知っているのだろうか。
うかがうと頭を横に振る。

「誰1人として知らんよ、先代も知らずにAURO生成で時間をかけて
 3Dプリンターで増設し続けたのだからな。
 彼らは最初から承諾などするはずもない」
「所長が御一人だけで、ここまで・・・」
「ふふふ、あきらめずに追求すればせば成る。
 国か・・・まあ、私でも答えのだせない事象に考えものだ。
 こんな時代ですら人とシステムは完全に融合できない。
 不釣り合いな点は多いものだな」
 (人の目とシステムの目を両立できるもの・・・)

自律型というのはただの無人操作だけではなく、完全独立型だ。
さらに様々な動物を一斉に動かすので簡単にはいかない。
世界各国から招集されたプログラマーも再招集の目処が立っておらず、
アンドロイドバイオニクスに長けたアメリアも同時操作を熟知できず、
ブレイントラストの長ですら、AI問題の解決には至らなかった。
地上との隔離政策はいつまでも踏み込めなかった事情は人手不足と
規格不足も重なって停滞を余儀なくされる。
そんな膨大な数を生み出す程にアニマルレプリカを造りたかった
理由は何だろうか。人と生物の在り方について語った。

「死とは、世代交代の狭間に起こる事象。
 だが、世代を成す前に尽きる命も多々存在する」
「わずかな命も、証明が欲しかったわけですね。
 全生物の系譜けいふ、あなたはそれを生み出したかった」
「そうだ、一度産み出た存在は質を換えても居続けるべき。
 これはプラチナレプリカント。
 白金を軸とした新たな世界を誕生させる計画だ」
「「白金の・・・軸」」

純粋な中軸という意味でそう名付ける。
セレファイスから人間を管理、運用していく計画を立てていた。
だが、実行するにはまだ障害がいくつもあったのだ。
ライオットギアの制圧力の成功率、管理法や人材育成など
新たな世界の意味はほぼ支配に等しく、万全を期していなかった。

「まだ他にも問題があってな。
 実はプロジェクトチームの主任が決まっていない。
 ダニエル君とアリシア君は例外だ。
 あの3人も、今一やる気がないようでな」
「貴方が取締をしているのではないのですか?」
「私はあくまで製造者だ、生み出す事だけは生物にすら負けてないものの、
 人事マネジメントにはあまり向いている方ではなくてな」
「てっきり、セレファイスを築いたあなたが管理者と
 思っておりましたが、意外です」
「人事とは人の能力だけでなく、性格、行動心理も的確に把握。
 わずかな可能性をも伸ばす目をもつ者が務まらければならん。
 補佐できる技術がなければならんからな」
「と、なりますと・・・?」
「その適役はすでに私の目の前にいる。
 クロノス君、君にこの計画を任せたい」
「!?」

自分がチームリーダーを任された。
管理ではなく、人を牽引けんいんする立場として活動する。
また、所長の目は私の方をしっかりとみている。
言葉の出処がみつからなくなると、ドアが開いてきた。

ウィーン

「君達は!?」


「遅かったっすよ、主任」
「あんたはマジメすぎて決断するのに時間とりすぎ」
「貴方こそ新計画の主導者に相応しい方、会った時から貫禄がありました」

アイザック、アメリア、レイチェルがこの部屋に入ってきた。
あたかも待ち伏せていた様な迎合ぶりに、私の立場が改めて決められた
リーダーシップ誕生とばかりなシチュエーションに思えた。
ここで1つの経緯が明らかとなる。
コウシ所長がブレイントラストに奨励しょうれいしたのは全てこのため。
大脳生理学の実績はあくまでも表向きで、最初からこうするために
隔離政策に加入させようと最初から招かれていた。

「こうして全員揃ったわけだ、ずっと、ずっと、この日を待ち続けて。
 今、この場にいる者達は全員生物への理念と思念をもつ。
 そして、君が最後に入ってきたのだぞ」
「特待生制度、生物管理所見学、高金額保釈・・・そうだったのか。
 そして、私も無意識にそこへ・・・」
「君が無断欠勤してまで管理所に行った時は正直私も驚いたぞ。
 ホエザルの檻を開錠して何をするつもりか、不審行動を起こして」
「「あれは・・・わたしも、よく・・・理解できずに」」

あの件はすでに所長の目に筒抜け、生物脱走に手助けした事を周知。
哺乳類の叫び声に釣られたとしか思われないあの行動は
今思い返しても何故か理由が理解できていない。
行く当てもない、そして彷徨さまよって気が付けばそこにいた。
所長は私があのような奇行を起こしても御咎めをしない。

「もう構わん、君はここに居る。
 これこそが最重要事項なだけにあの様な不祥事など許そう」
「私のせいでブレイントラストはああなってしまったのに。
 及んで主任など務まりようがあるのか・・・」
「自身を責めすぎてはならん、君は確かに真面目だが不断な点もある。
 この国で“肉を切らせて骨を断つ”という言葉がある。
 一組織など何かしらのきっかけや種を持たねば存続などできん。
 方法は千差万別で運もある、この合理主義で埋め尽くされる中、
 時には痛みを伴う改革も起こさねばならんのだ。
 大脳生理学は知識の貯蔵だけでなく決断も備えている」
「・・・・・・」

言い分は間違いなく私の欠点を突いていた。
構造だけで活かす道を模索していない、メンバー達の研究助言などは
行っても自身を活かす手段などまったく考慮できていなかった。
利益のため・・・違う、追究のため。追求?
ただ、生活のためにブレイントラストに居続けたようなものだ。

「次第に痛感させられてきます、私は一個人しか焦点を当てていなかった。
 政治家でもなく、行動心理からもたらす計画と構築。
 脳の追究しかしなかった私に務まるものでしょうか?
 今更ですが、事件発生が引き金で結成された感じも否めないです」
「可能のはずだ、私が鷹の眼で凝らして君を見つけたのだからな」
「そういえば、ダニエル君とアリシア君は?」
「除外だ、2人はアールヴォイドの関係者である疑惑が生じて
 こちらに招くのは危険だと判断して奨励を取りやめている。
 おそらく、情報横領を行っている」
「なんですって? スパイ容疑でもかかっていたのですか?」
「証拠はないが、類似技術がどういう訳か西部で見られ始めていた。
 だが、解雇はできん。アリシア君は会長の娘でもあるから
 後々の縁に支障をもたらすだろう。
 ここさえ教えなければ良い、元から所長室も含めた端末には
 重要な情報などほとんど入れていないのだから」

2人を計画の内には入れない方向を示した。
技術流出は平均化、均一化により再び腐敗と解体の連続が発生。
そんな行為をしていたのか、外見とは裏腹に私のプロファイリングすら
活かせずに身内の不祥事すら懸念しきれていなかったのだ。
アメリアも素っ気ない言い方ながらも相手にするなと言う。

「ま、そんな事いいじゃない。もう下界なんてろくな所じゃないし。
 資源もずっとここで増産し尽くせるから安全に暮らしていけるのよ」
「アメリア君のロイヤルスウィートルームも先日空き巣に入られたようで、
 上層階に魔の手が蔓延しつつある。いや、国の腐敗の拍車だ。
 下層階との癒着が真実なら、居場所は限られてゆく。
 この子も今日からずっとこちらに置いておけるぞ」

レオが大きく顔を覗かせる、威圧か期待かポーカーフェイスさながらに
そうしろと催促している感じで下半身を床に降ろしていた。
所長がいつの間にかここに連れてきたようで気が利くのも失礼。
白金の世界をバックに世界の前進はまだ白紙同然のまま問う。

「私・・・いや、我々は・・・生物達の再誕への道を歩むのでしょうか?」
「再誕と繁栄だ、彼らは人間の傲慢によって滅ぼされた。
 ただ生み出すのではなく、今度こそ本当の意味で存在という
 形を成す事はどういったものなのか認識をする」
「実際、この工房を築いて起こせる事・・・製造、管理、様々に。
 このまま地上を変革するか、放棄して宇宙に向かうか」
「まだ・・・そこに答えがみえていないのだ。
 どうしても、そこから先は君の導きに期待しているところでもある」
「宇宙に行くんならもっと準備が要りますよー」
「地球に滞在するんならロイヤルスウィートルームも造り直してよね」
「静かな所、落ち着けるようなところなら良いですね。
 もちろん、あの子達と一緒に・・・」

意見がまだまとまっていない、そこを私が道標を創造してゆく。
白い塊は純白の誕生とばかり色彩無き存在を管理しなければならないもの。
だが、もはやためらいなどなかった。
元から後もなく自国に帰ろうとも場を失っている今の中において、
真の意味で自分自身が世界に活かせる場を提供できる。
私にとっては哺乳類の在り方、レオとの出会いで始まった。
所長の要望に快く引き受けようと身をもって入魂し直す。
1からでなく0からで。

つつしんで拝命はいめい致します」

所長の任命を引き受ける。
隔離政策、もとい生物型再誕計画の主任を引き受けて
これよりプラチナレプリカント計画を実行する機会が立つ。
ブレイントラストより誕生せし新たなる一歩。
まだ行き先は不明でも、科学と生物の両立をどう求めてゆくか、
この白き景色から未知なる創造を構築してゆく。
今から自分が皆を導いていくのだ。

それ以来、ここを行ったり来たりの生活が続いていく。
開始されたばかりで右往左往ばかりする日々。
大脳生理学を不慣れながらAI工学に結びつく研究にシフトし、
下界の目から避けるように出直しし始める。
備えてある白金の生物型に魂を与えろと任命を
呼びかけられるかの様に入りびたる月日が流れていった。
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